IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~   作:風森斗真

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埋まる、姉妹の溝

簪の様子が気になったのか、刀奈がアリーナののぞき見をしていたことに気づいた勇人は、影でこそこそしていた刀奈に声をかけた。

隠れている意味がなくなってしまった刀奈は、気恥ずかしそうに壁の影から出てきた。

 

「あ、あはは……ばれちゃってたわね……」

「たく、仕事サボるなよ会長……また虚に文句言われっぞ」

「うっ……し、仕方ないじゃない!!簪ちゃんが一人でISを完成させたんだもの!見てみたいって思うのは人情でしょ?!」

 

なんだかんだ、簪のことが大切な刀奈は少しばかり過保護気味というか、過干渉になりがちな面があった。

だが、彼女が楯無の名を襲名し、簪を突き放すようなことを言ってしまってから、互いに距離感をつかめずにいるらしく、姉妹間の会話がなくなっていたことに付き人である布仏姉妹と、二人の幼なじみである勇人は気づいていた。

どうにかきっかけがつかめれば、とは思っていたが、きっかけというものはなかなか見つけることができないもので。

 

刀奈は刀奈で、きっかけをつかみたくても亀裂を生んだ原因が自分の出した言葉にあることをわかっている手前、気まずさのほうが勝ってしまい、動くに動けず、簪は自分が無能ではないことを証明するために打鉄弐式をくみ上げることに夢中だった。

すぐ近くで見ていた布仏姉妹と勇人も、さりげなく二人を和解させようと動いていたのだが、なかなか動くことができず、結局、ずるずると今までろくな会話をすることなく過ごしてきた。

だが、打鉄弐式の完成が長く続いた冷戦を終わらせるきっかけになってくれそうだった。

 

「お姉ちゃん……見てみたいって、わたしが造った、ISを?」

「えぇ……だって、倉持が途中で放棄したのを簪ちゃん一人で頑張って仕上げたんだもの!」

「……」

 

その言葉に嘘がないか、簪は少しばかり警戒してしまった。

が、距離を置いてしまっていたとはいえ、血のつながった姉妹だ。その言葉に嘘がないことは、なんとなく察しがついた。

だが、その沈黙は刀奈には耐えがたいものだったらしく、まっさきに口を開いた。

 

「……簪ちゃん、頑張ったわね。ほんとうに」

「……お姉ちゃん……」

「それから、ごめんね。あなたにあんなこと言ってしまって」

 

あんなこと、とは、二人の間に溝ができるきっかけになってしまった言葉のことだ。

本来ならばもうしばらく先になるはずだった楯無襲名、そこに付随する血にまみれた仕事。それらの出来事は多感な思春期の少女を変えるには十分すぎた。

そんなものを、大切な妹には背負わせたくない。

そう思ってしまったから出てきた言葉が。

 

「あなたは、そのままで、無能なままでいなさい。お姉ちゃんが全部やってあげるから」

 

だった。

少なくとも、自分よりも能力がないことがわかれば、自分に万が一があったときに次の楯無として指名されることはないし、そうでなくとも、政治的な動きに巻き込まれることはない。

そう思っての言葉だったのだが、彼女のその思いとは別に、簪は自分は無能ではないことを証明するために、胸を張って更識楯無の妹だと言うために努力してきた。

自分の思惑が外れてしまったこともそうだが、何よりも妹を追い詰めてしまっていたことを、刀奈は後悔していていた。

 

「……お姉ちゃん。わたし、怒ってるから」

「……うん……」

「無能だって言ったこともだけど、心配だからって本音をつけたこととか。苦労が倍になったんだけど」

「う……ん~??本音ちゃんがついてたのは本音ちゃんが簪ちゃん専属の使用人だからだと思うんだけど」

 

的外れなことを怒られ、さすがの刀奈も困惑してしまったようだ。

そのおろおろとした様子に、簪はくすくすと意地悪な笑みを浮かべていた。

わかっていたわざとそういった、ということに気付いた刀奈は、顔を真っ赤にした。

その光景は、立場こそ逆だが、かつての更識姉妹が見せていた光景であることを知っている本音と勇人は、ひとまず、わだかまりはなくなったと判断した。

 

「……連れ戻しに来たのはわかるが、もうちっと姉妹だけにしといてやってくれねぇか?生徒会書記さんよ」

「やはり、わたしにも気づいていたわね」

「え?……あ、お姉ちゃん」

「へ?……い、いつの間に……」

 

気配に気づいた勇人が声をかけると、刀奈が出てきたときと同じように、入口の影からそっと顔をのぞかせているヘアバンドとメガネが特徴的な少女、布仏虚がいた。

虚さすがに空気を読んでいるらしく、ため息交じりに承諾した。

 

「わかっています……ですので、勇人さん。代わりに手伝ってください」

「おっと、藪蛇だったか……」

 

普段から勇人は自分に割り振られた生徒会の仕事はきっちりとこなしている。

そのため、比較的余裕があり、基本ぐーたらな本音の仕事も手伝っている。

いまさらもう一人分の仕事が増えるくらい、大差ないと、虚は考えているのだろう。

 

基本的に他人には薄情だが、更識と布仏には育ててもらった恩と助けられた恩がある。

これが一夏やほかの生徒、あるいは千冬であれば、何が何でも断ろうとするが、今回は虚からの頼みであることと、刀奈の手伝いという二つのことから、藪蛇と口では言いつつも手伝うことにした。

 

「本音、セシリィ連れて戻っててくれ。俺はこのまま生徒会室に行くから」

「ん~、りょ~かい」

「何を勝手なことを……あなたも来るのよ、本音」

「うぇ~っ?!」

 

せっかく逃げられると思ったのに、と心中で叫びながら、本音は虚に襟をつかまれ、まるで猫のように持ち上げられるとそのまま生徒会室へ連行された。

その光景を見ていたセシリアは、あまりの早業に呆然としていた。

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