IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
いよいよ、最後のオリ主ヒロイン登場です
なお、展開は少しばかりいじってますので悪しからず
二人の転入生
謎の敵性IS――学園では、今後、ゴーレムと呼称することに決定したISの襲撃から数日。
一時の平穏を取り戻した一組は、いつも以上に浮足立っていた。
先日の襲撃による反動なのだろうが、勇人にとって、その姦しさは苦痛でしかなかった。
「だ、大丈夫ですか?勇人さん……」
「あんまし大丈夫じゃない……うるさすぎて頭痛い……」
机に突っ伏している勇人に、セシリアが心配そうに声をかけてきた。
ここ数か月で慣れてきたし、ほんの少し、髪の毛一筋分程度には警戒心も薄れてきていたのだが、まだ騒がしい空間には慣れていないらしい。
そもそも、ウィルスを発症させてから研究機関に囚われていたため、本来なら教育機関で受けるはずの義務教育を受けることができず、更識家に救出されてからは簪や刀奈たちから一般常識や義務教育課程の知識を教えてもらっていたこともあり、にぎやかな教室、というものにまったく縁がなかった。
それだけでもにぎやかな空間を騒がしいと感じてしまうのだが、その異能のせいか、勇人の聴覚は異常なほど鋭く、意識すれば遠くからでもしっかりと相手の声を聞き取ることができるほどだ。
便利ではあるのだが、そのせいで、余計に喧しいと思ってしまっているのだろう。
それを察した本音は、どこから取り出したのかイヤーマフと呼ばれる、耳を騒音から保護する器具を差し出してきた。
「ゆーとん、使う?」
「使ったところで意味がないが……もらう……ありがとう……」
本音の気遣いは正直なところありがたいのだが、少しばかり耳がいいため、完全に音をふさぐことはできない。
むしろ耳に感じる違和感のせいで余計にストレスがたまりそうなのだが、やらないよりまし、と考えたのか、受け取っていた。
それも、普段はめったに口にしないお礼つきで。
「あちゃ~……ゆーとん、こりゃかなりダメージ入ってるね~」
「そうなんですの?」
「そだよ~?」
勇人がお礼を言うことが珍しいということを知っている本音がそうつぶやくと、セシリアは首をかしげながら、本音にあれこれと聞いていた。
そうしているうちに、真耶が教室に入ってきた。
にこやかな顔をしているところから察するに、何かいいことでもあったのだろうか。
そんな推察をしていると、真耶が衝撃の発言をしてきた。
「今日はうれしいお知らせです!なんと、このクラスに転入生が来ることになりました!!しかも二人です!!」
2組の鈴音に続き、今度はこのクラスに転入生。
一体全体、何がどうなっているのやら、と思いながら、勇人は早く終わってほしいとばかりにため息をついた。
そんな勇人をよそに、教室前方に並んだ二人の転入生は自己紹介を始めていた。
「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。こちらいん、僕と同じ境遇の人が二人いると聞き、転入してきました。日本では不慣れなことが多いと思いますので、いろいろ教えてください」
同じ境遇、という言葉に反応し、勇人は顔を上げた。
視線の先には、金色の長髪を一本に束ねた
――……やべっ!!
本音から受け取ったイアーマフを素早く身に着け、そのうえで手のひらでぐっと力を込めて耳をふさいだ。
その瞬間、教室に窓ガラスが割れるのではないかと思うほどの衝撃が走った。
「三人目の男子!」
「守ってあげたくなる系の王子様タイプ!!」
「日本に生まれてよかった!!」
「静かにしろ!騒ぐな!!」
「み、みなさん、静かにしてください!まだ自己紹介は終わってませんから!!」
ざわめきだす女子たちを、千冬と真耶が諫めた。
二人の、というより千冬の一言に教室中はしんと静まり返った。
ようやく騒音が収まったことに、ほっと安堵した勇人はイアーマフを外し、正面を見た。
すると、いつの間にやってきたのか、もう一人の転校生が勇人の前に立っていた。
「ん?」
「貴様が織斑一夏か?」
「俺はそいつに巻き込まれた被害者。主犯はあっち」
「そ、そうか……すまない、感謝する」
そう言って、転校生は勇人の前から立ち去ると一夏のほうへまっすぐに向かっていき、いきなりその顔に平手打ちを食らわせた。
いや、食らわせようとした。
「はい、ストップ」
「なっ?!い、いつの間に……離せ!!わたしはこいつに一発お見舞いしないと気が済まん!!」
「だったら実技の授業の時に有無を言わさないほどコテンパンにすりゃいいだろ?今面倒ごと起こすと、戦乙女――織斑先生に何言われっかわからんぞ?」
「ぐっ……わかった。ひとまず今は殴らないことにする。離してくれ」
千冬の名を出した瞬間、転校生はそう告げた。
どうやら、この銀髪の転校生は、一夏に何か因縁があるらしい。
そう察した勇人だが、別に興味がないので掘り下げることはしなかった。
この姉弟はどこまで他人の人生に干渉するのか、と半ばあきれたようにため息をつきながら、勇人は転校生の手を離した。
が、手を離した瞬間、転校生は一夏の前に向かっていき、静かに告げた。
「わたしは認めない!お前があの人の弟などと……認めてなるものか!!」
そうはっきりと宣告すると、銀髪の転校生は割り当てられた席に向かっていった。
一方的に認めないと言われた一夏は、何が何だかさっぱりわからない、という様子で困惑していたが、勇人は更識家が調べ上げた千冬の経歴を思い出し、どこか納得したらしく、呆れた、と言わんばかりのため息をついた。