IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
まぁ、原作とはだいぶ違いますが、そこはそれということで
シャルル・デュノア。
デュノア、の
だが、それは仮の姿。
彼、いや、彼女の本当の名前はシャルロット・デュノア。アルベール氏が愛人に産ませた妾の子だ。
母の死をきっかけに、アルベール氏のもとに引き取られた彼女は、様々な検査を経て、IS適性があることがわかり、以降、デュノア社のISパイロットとして、生きてきた。
が、その生活が一変する出来事があった。
織斑一夏の登場と、月影勇人の発見。そして、二人のIS学園入学だった。
第二世代IS《ラファール》の世界シェアこそ世界第三位という高い地位にあるものの、第三世代ISの開発が難航しており、欧州各国共同での統合防衛計画『イグニッション
そこで、シャルロットを男装させ、IS学園入学。
それが、シャルル――シャルロットが話してくれた、自身の身の上だった。
全てを聞いた勇人は、そっとため息をついた。
「……まぁ、デュノア社のことはともかく、お前の男装については、もしかしたらっては思ってたけどな」
「え?なんで??」
「理由は三つ。一つ、一夏や俺の上半身を見て顔を赤くしたりそらしたりしていた。二つ、時々うっかり女子トイレに入りそうになっていた。三つ、勘」
「って、最後は勘なのっ?!」
シャルル――シャルロットのツッコミが響いたが、勇人はそれを無視して、問いかけた。
「で?お前はどうしたいんだ?」
「どうしたいって……たぶん、デュノア社から帰還命令が出るだろうし……そしたら、一生牢屋行きかな」
「それは今後起こりうる可能性の話だろ?俺が聞いてるのは、
「僕は……」
勇人の問いかけに、シャルロットは、うつむいた。
自分の本当の気持ちはわかっている。だが、現実がそれを許してはくれない。それもわかっている。
けれど、そうだとしても。
「僕は……自由を望んでいいのかな……?」
「……人間だったら『自由を望む権利』があるだろうが。それはよほどのことがない限り、どんな立場であろうとそれは絶対の権利だ」
シャルロットの言葉に、勇人は呆れたようにため息をつきながら、そう返した。
勇人はそこからさらに追い打ちをかけるように、シャルロットに問いかけた。
「シャルル……いや、シャルロット・デュノア。君は人間か?それとも単に直立二足歩行して言葉を喋るだけの獣か?どっちだ?」
「ぼ、僕は……」
勇人の問いかけに、シャルロットはうつむき、押し黙った。
だが、最初から、彼女の中に答えはあったようだ。
まるで、今まで様々なことを押し付けられてきたことに対する不満を爆発させるように、シャルロットは思いのたけを叫んだ。
「……わたしは人間だ!普通の女の子として暮らしたい!普通の女の子として、買い物したり街を歩いたりしたいし、誰かを好きになってその人とデートだってしたい!!何もかもを無理強いされて、押し付けられるのなんて、もうまっぴらなんだ!!」
「……ふっ……やっと本音を出したな」
その言葉を待っていた、とでも言いたそうに、にやり、と笑みを浮かべ、勇人は天井を見た。
「そういうわけだ、生徒会長」
「あら、やっぱり気づいてたのね?」
「え?」
勇人の呼びかけに、どこからか刀奈が姿を現した。
あまりに一瞬の出来事に、シャルロットは目を丸くして、固まってしまったのだが。
「あいえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ??!!せ、生徒会長?!生徒会長ナンデ??!!」
「……いや、どこの
「失礼ね!こんなかわいいくの一を見てR.S発症するなんて」
「自分で言うな、自分で」
いつものことながら、呆れたようにため息をつき、勇人は刀奈に突っ込んだ。
だが、すぐに表情は引き締まり、仕事の顔つきへスイッチを入れ替え、問いかけた。
「ちょっとあら捜しするが、かまわないか?企業の独断とはいえ、せっかくの代表候補生をフランスだって失いたくはないだろ。それに、大企業がこんなギャンブルをするのは何か裏があると思うしな」
「えぇ、大丈夫よ。むしろ、それをネタにフランス政府にちょっと優遇してもらわないといけないしねぇ」
「そういうわけだ、シャル。ひとまず、この件は俺に預けてくれ」
「う、うん……ね、ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど、勇人って何者なの?」
シャルル、いや、シャルロットの純粋な好奇心からの問いかけに、勇人と刀奈は黒い笑みを浮かべた。
「ふっふふふ……世の中には知らなくてもいいことってのがあるんだぜ?
「それとも、あなたも影の世界に連れて行こうかしら?あなたなら大歓迎よ?シャルロットちゃん」
「え、遠慮します」
地雷を踏み抜いてしまったことに気づいたシャルロットは、内心ではびくびくしながらそう返すのに精一杯だった。
なお、シャルロットは無事に解放され、刀奈から事情を聴いた簪が勇人と一緒になってデュノア社にハッキングを行い、そこに隠された黒い事実を知ることとなったのは、その後のことである。
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翌日。
勇人は簪とともにデュノア社をハッキングして得た情報をまとめ、刀奈となぜか同席している千冬に手渡した。
なぜここに織斑先生が、というツッコミをいれたくなった勇人だったが、おそらく、何か動いていることを察知し、刀奈を尋問、もとい問い詰めた結果なのだろう。
シャルロットに火の粉が降りかからないようにするための処置を行うにしても、やったことは犯罪だ。
が、日本の対暗部任務を担う更識家の当主からの許可は得ているため、事実上、「任務」として扱い、黙認するつもりのようだ。
その代わりに、得た情報を自分に開示するよう要求したのではないか、と勇人は読んでいた。
それは横に置いておいて。
勇人から手渡された資料を目で追い、千冬は呆れたとばかりにため息をついた。
それは刀奈も同じことで、こめかみを抑えながら渋い顔をしていた。
「……念のために確認するけど、これほんとう?」
「俺がハッキングでこの手の情報の素っ破抜きにミスしたこと、あったか?」
「ないわね……気を悪くしないで、あまりにもあまりなことだったから」
念のために言っておくと、刀奈は勇人と簪のハッキングの技術にはかなりの信頼を置いている。
だが、明かされた内容があまりにもショッキングだったため、思わず聞き返してしまった。
そこに記された内容とは。
「アルベール社長はお飾りであり、実質的に権力を握っているのは社内重役の女性社員。しかも女権団に所属するあるいは傾倒する人間をまとめて派閥を作り上げている、か……」
状況は最悪と言えた。
おそらく、アルベール氏はシャルロットを守るためにいままでその存在を隠していたのだろう。
だが、シャルロットの存在が知られたため、世界でも最優先で保護を求められる存在であるIS搭乗者とさせ、さらに足取りを追わせないようにするためか、シャルロットとしてではなく、シャルルとしてIS学園に入学させたのだろう。
となれば、本当の意味でシャルロットがシャルロット・デュノアとして太陽の下を歩けるようにするには、二つの作戦を同時進行しなければならないことになる。
むろん、その場にいた全員がそれがどれほど困難なことかを理解していた。
「どうする?デュノア夫妻の救出と重役とその一派の追放、二つの作戦を同時進行することなど可能なのか?」
「そこについては……一つ、俺に当てが」
「「「え?」」」
「なに?」
勇人からのその言葉に、その場にいた全員が驚愕した。
できる限り人間と関係を築かず、傷つけないよう、あるいは傷つかないように過ごしていた勇人に、このような事態に対応できる人間とのコネクションがあるとは思えない。
だが、実際にはそのコネクションが存在するらしい。
それも。
「そのうえで、アルベール氏とご令嬢には一つ、覚悟していただかなければならないことがある」
「え?」
「デュノア社が別の大手企業の傘下に入ることを容認する、その覚悟をな」
西欧のみならず、アジアやアフリカにも通じるほどの経済的な力を持った企業とのコネクションが。