IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
千冬と楯無、そして勇人とシャルロットが今後の対策を練っている間。
アリーナではセシリアと鈴音が鉢合わせていた。
「あら……奇遇ですわね、鈴さん」
「ほんとね。あたし、これからトーナメントに向けての特訓なんだけど」
「わたくしも同じですわ」
にこやかな、しかしその実、重苦しい雰囲気が二人の間に漂っていた。
国は違えど、二人は代表候補生。いつかは世界大会で戦う可能性もあるライバル同士であるため、無理もないことだ。
もっとも、同じ男を取り合うような関係ではないことが幸いしてか、重苦しくはあっても、どろどろとした雰囲気は一切感じられなかった。
「どうせなら、この間の実習のことも含めて、どっちが上か白黒つけない?」
「名案ですわね。どちらがより優雅でより強いか……」
セシリアがそう言いかけた瞬間、二人は同時に振り向いた。
その視線の先には、黒い機体をまとったラウラの姿があった。
「ラウラ・ヴォーデヴィッヒ……」
「どういうつもり?背後から近づくなんていい度胸してるじゃない!」
そう問い詰める鈴音だったが、まったく意に介さず、ラウラは鼻で笑っていた。
「中国の《甲龍》にイギリスの《ブルーティアーズ》か……データで見た時の方が強そうに見えたがな」
その言葉を挑発と受け取った鈴音は、額に青筋を浮かべた。
「何?喧嘩なら買うわよ?わざわざドイツから来てぼこられに来るなんて、とんだマゾっぷりね」
「あらあら、鈴さん。あちらは言語を持ち合わせていないのですから、あまりいじめるのはかわいそうでしてよ?」
「はっ、二人がかりで量産機に負けるような実力しかないというのに専用機持ちとはな。よほど人材不足と見える。数しか能がない国と古いだけが取り柄の国は」
「……スクラップがお望みのようね……セシリア、どっちが先にやるかじゃんけんしよ?」
「そうですわね」
さすがに自分の祖国を馬鹿にされて黙っていられるほど、セシリアも鈴音も大人ではなかった。
どちらが先にラウラと戦うか決めようとしたその時、ラウラはさらなる爆弾を投下してきた。
「二人同時にかかってきたらどうだ?下らん種馬を取り合ってはいないようだが、尻を振るメスに負けはせんがな」
種馬ども、というのが勇人と一夏であることは間違いないだろう。
転校初日の態度から察するに、一夏にはいい感情を持っていないことはわかっていたため、一夏を貶すようなことを言うのは仕方がないにしても、蔑んだその言い方にはさすがに二人とも堪忍袋の緒が切れた。
「……ねぇ、セシリア。あいつ今なんて言った?あたしには「どうぞ好きにぶん殴ってください」って聞こえたんだけど?」
「言っていたことは違いますが、そういう意味であることは間違いないですわね。この場にいない人を侮辱するなど、同じ欧州連合として恥ずかしい限りですわ……その軽口、二度と叩けないようにして差し上げます」
「とっととかかってこい」
「「上等っ!!」」
ラウラの挑発にまんまと乗ってしまった二人は、ラウラに向かっていった。
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話し合いが終わり、一夏にIS訓練の監督を頼まれていたシャルロットは、再びシャルルに変装して一夏と合流し、一緒にアリーナに向かっていた。
その傍らには、勇人の姿もあった。
変なところでぼろが出ないか、少しばかり心配したというのもそうだが、一夏に頼み込まれて訓練に付き合うことになったということもある。
人間嫌いを豪語していても、なんだかんだとお人好しなのである。
「悪いな、シャルル、勇人。ISは駆動時間によって実力が比例するから、少しでも経験を積んでおきたくって」
「ううん、僕の方こそよろしく」
「……ま、たまにはな」
そんな話をしながらアリーナに向かっていると、爆発音が聞こえてきた。
いくらほかに使っている生徒がいるとしても、訓練で出るような音量ではないことに嫌な予感を覚えた勇人と一夏はアリーナまで走り出した。
アリーナに突入した二人の視界には、ISをまとった状態で倒れているセシリアと鈴音、その二人にとどめを刺そうとしているラウラの姿があった。
「うおぉぉぉっ!!」
一夏は思わず、白式を展開し、雪片を引き抜いてラウラに突撃していった。
だが、ラウラは雪片を片手で受け止めた。
いや、受け止めただけではない。一夏の動きそのものを封じ込めていた。
「ふっ。感情的で直線的、絵に描いたような愚図だな」
「そいつが愚図というか、馬鹿であることは否定しないが。お前も大概視野が狭いな、軍人」
ラウラが一夏にそう語り掛けた瞬間、ラウラの頭上から青白い光が落ちてきた。
ラウラがその一撃を回避したことで、一夏は謎の拘束から解放された。
二人が頭上に視線を向けると、そこには《祓之梓弓》を構え、蒼穹をまとった勇人の姿があった。
「イチ、ひとまず二人を頼む。近接武器しかないお前じゃ分が悪い」
「うぐっ……わ、わかったよ」
勇人の一言に、一夏はおとなしく引き下がり、セシリアと鈴音の介護に向かった。
一方、勇人はゆっくりと一夏が立っていた場所に降り立ち、近接装備である《十拳》を引き抜いた。
「さて、選手交代だ」
「おもしろい。少なくともあそこの愚図よりは手ごたえがありそうだ」
一触即発。
勇人とラウラの間にそんな空気が流れていたが、実際に衝突することはなかった。
衝突する前に、それを停める声が響いてきたのだ。
「両者、すぐにISを解除しろ!これは命令だ!!」
声がした方へ視線を向ければ、そこには千冬が腕を組んで仁王立ちしていた。
だが、腰には打鉄に装備されている近接装備があることから、止まらなければ武力行使も辞さないと暗に告げていた。
「やれやれ……これだからガキの相手は疲れる。模擬戦をやるのはかまわん。だが、アリーナを破壊する事態は教師として黙認できん。各々、この決着は学年別トーナメントでつけろ。いいな?」
千冬の言葉に、ラウラは二つ返事でしたがった。
勇人と一夏、シャルルもそれに従い、その場は解散した。
その後、勇人は一夏、シャルルと一緒にセシリアと鈴音を保健室まで運んでいくのだった。