IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
ちなみにラッキースケベはありません
ラウラに必要以上の攻撃を加えられたために気絶したセシリアと鈴音だったが、勇人たちに保健室に運ばれ、応急手当てを受けた。
結果、大事には至らず、数分で目を覚まし、現在、不機嫌そうにしていた。
「別に助けなくてもよかったのに!!」
「あのまま続けていれば勝っていましたわ!」
「お前らなぁ……」
一夏も勇人も、シャルルもそれが強がりであることはすぐにわかった。
それでもプライドの高さゆえか、それとも鈴音は一夏、セシリアは勇人にあまりカッコ悪い姿を見せたくないためか、無理にでも起き上がろうとしていた。
「こんなの怪我の内に……いったたたたたっ!!」
「だいだい、寝ていること自体無意味……っつうぅぅぅぅっ!!」
「……無理しないで寝ておけ。治るものも治らなくなるぞ」
「まぁまぁ。好きな人にカッコ悪いところ見られたくないもんね?」
呆れたようにため息をつきながら、勇人が忠告した。
その背後から意地の悪い笑みを浮かべたシャルルの言葉に、鈴音もセシリアも顔を真っ赤にして、あきらかに動揺しながら否定してきた。
そんな二人をなだめるように、シャルルは鈴音にウーロン茶を、セシリアに紅茶を手渡した。
「まぁ、先生もしばらく休んだら帰って大丈夫って言ってたし、しばらくは……」
一夏がそう言いかけると、保健室の廊下から何十人もの足音が聞こえてきた。
足音は保健室の前で止まり、勢いよく、ドアが開かれ、その向こうから、何かの用紙を持った女子が押し寄せてきていた。
「織斑くん!デュノアくん!月影くん!!」
「……保健室では静かに」
「……あ……ご、ごめん」
勇人の静かな指摘に、女子たちは少しばかりおとなしくなった。
指摘されて落ち着いたのか、女子たちが一斉に手にしている用紙を差し出してきた。
そこには、タッグエントリー申請書、という文字があった。
どうやら、自分たちとタッグを組んでほしいというつもりだったらしい。
「え、えっと……」
シャルルは困惑しながら勇人の方へ視線を向けた。
先ほどの話し合いで、勇人は一夏、シャルルは簪と組む方向でまとまっていたのだが、それは当日、抽選による組み合わせでそうなるよう、調整することが前提であった。
そもそも、タッグ申請を事前に行う必要があるなど、楯無からは何も説明されていなかった。
「……すまん、さっきこいつと組むことを約束しててな」
「……っ?!ゆ、勇人?!」
勇人はシャルルの頭に手を置きながらそう告げた。
どうするべきか困惑していた手前、シャルルはそう提案してきたことに驚きはしなかったが、まさか勇人のほうから言い出してくるとは思わなかったため、驚いていた。
一方、もう一人、驚いていた人物がこの場に。
「なっ?!いつの間に……」
同じ男なのに、なぜ俺が誘われなかったのか。
そう言いたそうな表情をしていたが、すぐにその理由を思い出したらしい。
だが、こうなると一夏に女子の視線が集中することは当然であり。
「……わ、悪ぃ、勇人!シャルル!ここ、頼むわ!!」
「あ、逃げた!!」
「追いかけるよ!!」
「逮捕だ~っ!」
まるで世界をまたにかける大泥棒の三代目を追い続ける警部のようなセリフを口にしながら、女子たちは一斉に一夏を追いかけた。
それを見送りながら、勇人とシャルルはそっとため息をついた。
「あ、あの、勇人さん!」
「ん?」
「わ、わたくしと!わたくしとは組んでいただけないんですか?!」
今にも泣きそうな表情でセシリアは勇人に問いかけてきた。
だが、勇人がその質問に答える前に、どこから現れたのか真耶が口をはさんできた。
「だめですよ!オルコットさん!あなたの怪我もそうですが、ISのダメージランクがCに達しています!!これ以上はISの駆動に悪影響が出ますので、一度、修理する必要があります!!」
ISはマルチフォームスーツとしての側面が強いが、戦闘時を含めた操縦経験を蓄積し、より進化した状態へと移行することができるという側面を持っている。
だが、それはISが破損した状況での経験も含まれるため、下手に破損したままで操縦するとその時の経験を蓄積する結果、進化に支障をきたす可能性があるのだ。
大怪我がもとで怪我した部分をかばいながら行動すると変な癖がつくのと同じようなものだ。
それをわかっていたからか、セシリアは残念そうにその場を引いた。
もっとも、万全の状態であっても、簪と組むという先約があるため、どのみちセシリアとは組めないのだが。
――それ話したらなんか収拾つかなくなりそうだから話すのはやめておこう
混乱を呼びそうな気がしたため、そのことはうっかり口に出さないよう、心に誓う勇人であった。
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部屋に戻ると、開口一番、シャルロットが勇人にお礼を言ってきた。
「ありがとう、勇人」
「ん?」
「さっき、かばってくれたよね?」
「あぁするのが一番面倒がなくて済むからな」
そっけない態度で勇人はシャルロットに返した。
だが、シャルロットは、それでも、と続けた。
「ううん、それでもとっさにあんなこと言ってくれたのは、勇人が優しいからだよ」
「ただ楽な方を選んでるだけだ」
「もう、偏屈なんだから……」
自分のその優しさを否定するような返し方に、シャルロットは苦笑した。
そういえば、とシャルロットは一つ思い出したように問いかけた。
「このこと、織斑先生は知ってるのかな?」
「……知らんだろうな。これから話してくる」
「え?いまから??」
「早い方がいいだろ?その間に、お前さんも着替えられるだろうし」
どうやら、勇人なりに気を使ってのことのようだ。
もっとも、それを口にしたところで勇人はそれを認めないだろうが。
「別に気を使わないでもいいのに……」
「気にすんな。てか、会長にも話さないといけないからな」
面倒くさい、と言わんばかりのため息をついて、勇人は部屋から出ていった。
シャルロットはその背中を見送り、苦笑を浮かべながら、着替え始めた。