IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
ならそれ以上集まったらどうなるんでしょうね?(-▽-;
急なタッグ変更を余儀なくされはしたが、おおむね予定通り、学年別トーナメントの当日を迎えることとなった。
むろん、そのことを説明したときに、千冬は渋い顔をして腹をさすり、楯無は扇で口元を隠してため息をついていたことは言うまでもない。
とはいえ、もう過ぎてしまったことなのでどうしようもない。
楯無としては、簪と一夏を組ませるなど言語道断であるため、本音を急きょエントリーさせて挑ませようかとも思っていた。
だが、簪から『あいつと組むくらいなら出ない。というか《弐式》の改善点をまとめるのに時間を使いたいから今回は出ない』と連絡が入ったため、勇人とシャルロットで組むことに問題がなくなった。
そうこうしているうちに、タッグトーナメント当日をむかえ、会場は多くの来賓でにぎわっていた。
「金の卵を探すのに躍起になっている連中がわらわらと……」
「ははは、上位入賞者はどこの企業も注目するからね」
うんざりした様子で呟く勇人に、シャルロットは苦笑を浮かべながら返していた。
「となれば、お前も気合入れないとだな、
「え?」
「これからどう転ぶにしても、お前の実力を見せつけるチャンスだからな」
デュノア社がどうなろうともシャルロットという一人のISパイロットの実力を、他者に評価してもらうことができる。実力が認められれば、あるいはデュノア社が潰れて再生不可能になったとしても、少なくともシャルロットの居場所は確保されるということだ。
勇人からのその言葉に、シャルロットは照れたような笑みを浮かべた。
「……どした?」
「う、ううん!なんでもないよ!!」
「そうか」
慌てた様子で返すと、勇人はそのまま何も聞かなかった。
だが、シャルロットは一夏から、勇人は人間嫌いで他人を名前やあだ名で呼ぶことはめったにない、という話は聞いていた。
だが、いま勇人は自分のことを『シャーリー』と呼んだ。
『三番目』という、IS学園で認識されている男性操縦者の順番でも、『お前』という二人称でもなく、あだ名で呼ばれた。
つまり、勇人にとってそれだけの価値がある、と認められたということだ。
――いきなり女の子をあだ名で呼ぶなんて……ちょっとずるいよ……
頬を赤く染めながら、シャルロットは心中でそう呟いていた。
だが、そんなシャルロットの心中など知ったことではないように、勇人は背を向けながら問いかけた。
「で?初戦からイチとドイツ軍人が相手だが、いけそうか?」
「正直、手の内を見てからにしたかったけど、大丈夫。勇人は?」
「イチはともかく、ドイツ軍人の手の内が読めればよかったが、まぁ、どうにかなるだろ」
敵を知り己を知らば、ということわざがある通り、シャルロットは相手への対抗策を講じて、できる限りリスクを抑えて戦いたいというスタイルのようだ。
社会の裏側で暗殺者として活動している勇人もそれは同じで、できる限り相手の情報を集め、対策を講じ、確実に仕留めることを基本としている。
ある意味、この二人は似ているのだ。
「ふふ、さすが。頼りにしてるよ、勇人?」
「なら、背中は預かるかな」
「せめて、背中は預けた、とか言ってほしいな」
「俺は誰かに背中を預けるのは滅多にしないんでな」
「え~?」
勇人のそっけない一言に、シャルロットはニコニコとしながら返していた。
冗談ではないこともわかっているが、なんだかんだ言って背中を預けてくれることは、短い付き合いではあるが理解しているようだ。
そんな二人の対戦相手は、まさかの一夏とラウラである。
もっとも、この組み合わせは二人にとっては最もやりやすいものだった。
一夏が猪突猛進の単純な戦法しかとらない、ということもそうだが、ラウラが連携を考えない可能性が高いことは、普段の授業や生活態度を見ればわかる。
実質的に、一対一対二の奇妙な三すくみになるのは目に見えていた。
そして、その三すくみの状態にこそ、付け入るスキがある。
「じゃ、いっちょやったるか」
「うん!」
入場のアナウンスが入り、勇人とシャルロットはアリーナへと入っていった。
入場と同時に、二人は自身のISを展開し、対戦相手である一夏とラウラに視線を向けた。
「よぉ、イチ。顔色悪いな?さっさと
『冗談!降参なんてカッコ悪いまね、誰がするかよ』
『ふっ、ずいぶんと強気だな。時代遅れの旧式機風情、わたし一人で十分だ』
「へぇ?ドイツの人ってもう少し慎み深いと思ってたけど、ずいぶん傲慢なんだね?」
互いが互いにヒールをぶつけ合っていると、試合開始のカウントダウンが始まった。
カウントダウンがゼロになった瞬間、一夏が《
が、同時に勇人も《十束》と《布津御霊》を抜いて迎え撃った。
「開幕と同時の先制攻撃、やっぱわかりやすいな、お前は」
「あいにくと、これしか能がなくてな!けど、シンプルなのがわかりやすくていいだろ!!」
「あぁ、おかげさんで心置きなく……」
ざわり、と一夏の背中に冷たいものが走った。
以前にも一度、クラス代表戦で感じたことがある感覚――殺気だ。
自分の人生設計を狂わせた張本人である自分を許すつもりがない、そう公言しているため、いつもことあるごとに堂々と殺気をぶつけてきているため、よく理解していた。
こういうときのパターンは大体覚えている。一夏は背後を振り返り、《雪片弐型》を構えた。
同時に、がきん、と音が響き、勇人の《十束》と《雪片弐型》が交差した。
「お前を!心置きなく!!ぼこぼこにできるってもんだ!!!」
牙をむき、どう猛な笑みを浮かべながら、勇人は一夏にそう宣言した。
クラス代表を決める試合のときに、一方的に殴っていたが、あれで足りるほど勇人の怒りは甘くはない。
そこに加えて、シャルロットがシャルルとして編入してきたときから、勇人以外の同性ということで暗に拒否されているにも関わらず、お節介を焼き続けている行為によって、女を腐らせた生徒たちが
自身の性癖に関して誤解を生むようなその設定が作られる原因を作った一夏を許せないと感じているのは無理からんことであろう。
かくして、公式の場で、誰に咎められることもなく、勇人は一夏に思う存分ストレスをぶつける場を得たのであった。