IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
IS学園、入学
――これは、さすがに気まずい
IS学園一年一組の教室で、織斑一夏は気まずそうにしていた。
その理由は、隣にいる男子以外、全員が女子でるため、物珍しさゆえの視線が突き刺さっているためだった。
それもそのはず。IS学園とは、文字通り、ISの操縦やISを扱う上での規則を学ぶ場所であり、実質的には女子校なのだから。
だが、なぜ男子禁制ともいえるこの学園に、男子である一夏がいるのか。
その理由はこの学園にいることからも簡単に推察できることだった。
すなわち、女性にしか動かすことのできないはずのISを、男性でありながら起動させることができたためである、と。
そして、それは、少し後ろの席に座っていた勇人にも言えることだった。
もっとも、勇人の場合、一夏とは少々、事情が異なる。
――ISのコアを受け取ってしまったことと、織斑一夏の護衛だからとはいえなぁ……
あまり人との交流を好まないというのに、ここに来てさらに好奇の視線に晒されるという苦行に耐えながら、勇人は心中でそう呟いていた。
あの日、天才であり天災である束と
束に言われた通り、そのコアを使うための新たな装甲を作り上げ、コアを組み込んだうえで起動させてみた。
コアを組み込んだ時点でISとして機能するため、男性である勇人には扱うことが出来なくなるはずだった。
だが、どういうわけか、ISは起動し、勇人がユーザーとして登録されてしまった。
当然、更識家はその事実について動揺し、ひとまず、幹部と当主との会議が開かれることとなった。
その結果、一人目の例外である織斑一夏を護衛する、という任務が勇人に与えられることとなったのだ。
「あ、あの~……織斑くん?」
「へ?あ、はい」
「いまは自己紹介の時間で、五十音順だと、織斑くんからなんですけど……」
「あ、す、すみません」
メガネをかけた童顔の女性教師、山田真耶教諭にそう言われ、一夏は席から立ち上がり、自己紹介を始めた。
「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」
「……」
「……」
「え、えぇと……以上です」
「って、おぉいっ??!!」
あまりにも簡単すぎる自己紹介に、クラス中の女子は椅子から滑り落ちそうになり、勇人は思わずツッコミを入れるのであった。
勇人のツッコミが響いた次の瞬間、スパーン、と気持ちのいい音が教室に鳴り響いた。
音源のほうへ視線を向けると、黒いキャリアスーツに身を包んだ、一人の女性が出席簿を手に、一夏の席の近くに立っていた。
どことなく、顔つきが一夏に似ているところから、勇人は、この女性が"
なお、千冬が登場してから教室が急に騒がしくなったことは、言うまでもない。
それだけ、「ブリュンヒルデ」の名は世の女性たちにとって魅力的、ということなのだろう。
もっとも。
――そのメッキの下がどうなってるのか、ちょっと気になるけどな
ブリュンヒルデという称号に飾られたその素顔、というものがどういうものなのか、ということのほうが、勇人にとっては重要なことだった。
その後、千冬の一喝で教室は落ち着きを取り戻し、自己紹介が再開された。
そして、ついに勇人に順番が回ってきた。
「月影勇人。ご覧の通り、二人目の男性適合者だ。ほんとは別の高校に進む予定だったんだが事情が事情になってしまったため、ここに入学することになった。現在進行形でISに関しては勉強中だから、わからんところがあったら聞くかもしれん。そのときは、よろしく頼む」
「織斑、自己紹介は最低限、これくらいはするべきだぞ……少しは月影を見習え」
「…………はい…………」
勇人の自己紹介が終わると、千冬が一夏にむかってそう告げた。
さすがに何も言い返せなかった一夏は、素直に頷くしかなかった。
----------------------------
S.H.Rが終了し、休み時間に入ると、勇人は四組の教室へとむかっていった。
後ろからのほほんとした顔見知りが一人、ついてきているが、それはまったく気にしていないようだ。
「すまない、更識さんはいるか?」
「へっ??!!……あ、う、うん、ちょっと待って!!」
突然、世界で二番目に確認された男性操縦者が教室を訪れたものだから、驚かないはずがなかった。
返事をしてくれた生徒は、そわそわしながら教室を見回したが。
「いない、みたい。たぶん、整備室じゃないかな?」
「そうか……ありがとう」
「ううん……あ、ねぇ、一つ聞いていいかな?」
「手短に頼む」
あまり休み時間が終わらないうちに戻らないと、どういう目に合うのか容易に想像できてしまった勇人は、女子にそう話すと、それじゃ、と一つだけ質問してきた。
「更識さんとは、いったい?」
「ちょっと世話になったことがあってな。これ同様、ちょっと長い付き合いだ」
「む!ゆーとん、いまわたしのこと『これ』って言わなかった?」
「言ったな」
「ひっどーい!仮にもレディを物扱いしないでよーっ!!」
ぷくぅっ、と頬を膨らませながら、これ、と呼んだ知り合いの女子が抗議してきた。
割とのんびりとした口調ではあるが、ご立腹であることは顔を見ればすぐにわかるだろう。
もっとも、本音と呼ばれた少女は、態度こそ怒ってはいたが、目はどこか楽しそうにしていたのだが。
そうこうしているうちに、休憩時間終了まで時間が無くなってしまっているため、勇人はそのまま、女子をからかいながら教室へ戻っていくのだった。