IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
「落ち着いたか?月影」
「えぇ、まぁ……失礼しました」
いまだ殺気をダダ漏れにしながら、勇人は千冬の問いかけにそう返した。
おそらく、急なIS学園入学や慣れない環境だけでなく、ただでさえ人と関わり合いになることを避けているというのに、織斑一夏という世界を変えかねない存在と関わらなければならない状況と環境に問答無用で放り込まれたことがストレスとなっていたのだろう。
そして、今回の大喧嘩でたまりにたまったストレスが大爆発を起こした、といったところか。
それが、千冬と本音の見解であり、少し後になって報告を聞いた楯無と虚が導き出した結論だった。
もっとも、時間もないのでひとまず、それ以上、追求することはなく。
「オルコットの言い分としては、実力を示してもらわなければ、ということだな?」
「その通りです」
「ならば一週間後、織斑、月影の両名と模擬戦をしろ。そこで実力を見ればいい。織斑、月影、構わないな?」
「俺はいいぜ」
「……俺はごめんこうむりたいんですが?」
勇人はいかにも嫌そうな顔をして千冬に反論した。
だが、千冬は問答無用とばかりにその反論を却下した。
「却下だ。貴様も推薦されているだろう?なら、実力を示す義務がある」
「……ですよね……はぁ……」
返ってきた答えに、勇人は陰鬱そうなため息をついた。
もともと、クラス代表になるつもりは毛頭ないため、勇人はこの戦い自体を棄権したいと考えていた。
が、この教室の最高権力者である
潔くはないが、勇人はひとまず、戦わないという選択肢にこだわることを諦めた。
「で?ハンデはどうする?」
「元凶、お前、まさかと思うが『男だからハンデを背負う』なんて思っちゃないだろうな?」
「え?そうだけど」
「……素で馬鹿だ、お前は……」
「なんで馬鹿なんだよ?!」
勇人の言葉に、一夏は反論してきた。
ISだけに限った話ではなく、何事にも経験者と非経験者の壁というものは存在する。
竹刀を握ったことのない人間が、いきなり有段者に挑んで勝てるはずがない。まして、ハンデをつける側が前者だというのならなおのことだ。
そのことを説明しても一夏は引き下がる気はないようだ。
どうやら、男に二言はない、ということらしい。
もはや頑固を通り越して馬鹿な態度ではあったのだが、セシリアが一夏にハンデを背負わせることをよしとしなかった。
「どうやら、あなたよりも二番目の彼のほうが道理をわきまえているようですわね。ハンデを背負った素人に勝ったところで、プロであるわたくしの
「……なら、ハンデはいい」
セシリアからのその言葉に、一夏はようやく折れたらしい。
結局、千冬の鶴の一声で、一週間後に決闘が行われることとなり、その場は解散となった。
なお、その後、真耶から急きょ寮に入ることが決まったことを伝えられ、一夏と勇人はそれぞれの割り当てられた部屋へと向かい、その先でまた一波乱あったのだが、それはまた別の話。
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それから一週間。
勇人と一夏はピットにいた。
だが、まだ一夏の専用機が来ていないらしい。
「遅いな」
「試合開始まで一時間もないな……パーソナライズにフォーマット、
「げっ……てことは試合しながらそれをやれってのか?!まともに動かないだろ!!」
「知らんな。お前の専用機を受け持つことになった企業に文句言え」
なお、勇人はすでに自身の専用機を持っている。
というよりも、自分の異能で作った、というほうが正確だろう。
なお、ISコアのナンバリング登録が世界をまたにかける大企業「ラインフォルト社」となっていたため、勇人の扱いはラインフォルト社の専属操縦者という扱いになっている。
「月影。織斑の専用機がまだ到着していないようだ。すまないが」
「わかりました。俺が先に出ればいいんですね?」
「そういうことだ……すまないな、急なことで」
「いえ……ピットに行きます」
千冬からの謝罪を受けとり、勇人はそのままピットへ向かった。
ピットに入り、勇人は首に下げている蒼い翼を模したペンダントに触れた。
その瞬間、ペンダントは青白い粒子へ変わり、勇人の体にまとわりついた。
光が収まると、勇人は翼を思わせる形状をした蒼いスラスターを備えた、青と白にカラーリングされた装甲をまとっていた。
ISをまとった瞬間、ISのハイパーセンサ―が自分以外の人間の存在を探知したため、人がいる方へと視線を向けると、こちらに背を向けるようにして立っている刀奈の姿があった。
「……なんだ、いたのか。
「ついさっき、来たところよ……管制室には簪ちゃんがいるわ。せめて、手伝いたいんだって……というか、わたしと君しかいないんだから、本当の名前で大丈夫よ?」
「そうはいかんだろ……で?お前は何の用だ??」
「見届けに来ただけよ」
「そうかい」
「けど……」
楯無。自分が背負っているもう一つの名前を呼ばれたことに若干、不機嫌になった刀奈だったが、迫りながらじっと見つめてきた。
体が密着するほどの近距離まで近づいてくると、さすがに気恥ずかしくなり、勇人は視線だけを刀奈からそらしつつ、刀奈の言葉を待っていた。
「負けることは許さないわよ?特に、織斑一夏くんには、ね」
「なんでそこまで……もしかして、簪の専用機開発がストップしたことと関係あるのか?」
「えぇ……詳しくはあとで話すわ」
刀奈はそういうと、扇子を広げ、乞うご期待、と書かれた面を勇人に見せてきた。
その瞬間、スピーカーから簪の声が聞こえてきた。
《勇人、そろそろ時間だよ》
「了解。オペレート頼むぞ、簪」
《任せて》
簪の案内に、勇人はカタパルトまで移動し、発射姿勢に入った。
《システム、オールグリーン。射出口、異常なし……発射タイミングをパイロットに移行します》
「了解……月影勇人、蒼穹、出る!!」
その言葉と同時に、勇人が乗ったカタパルトが作動し、勇人をアリーナへと飛ばした。