IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
書いてなかったおまけ回みたいなものです
時間軸は第8話「決闘前の静けさ」のあたり、クラス代表戦を行うことが決定したのちの話になります
まぁ、たぶんだいたいの人は察しがついてると思いますが
~これは、一夏と勇人、セシリアがクラス代表をかけて勝負をすることが決定したその日の話である~
クラス代表戦を行うことが決まったその日の放課後。
勇人は千冬からの頼みで一夏にIS関連の知識を教えていた。
が、やはり事前知識が少ないため、どうしても悪戦苦闘していた。
「だから、ここは……」
「え?……あ、あぁ、なるほ、ど?」
「ほんとにわかってんのか?おめぇ」
ただでさえ自分のことで手一杯だというのに、不慣れなことをさせられているこの状況。
胃がどうにかなりそうになるのをこらえながら、勇人は根気強く一夏に事前配布教本の知識を叩き込んできた。
そんな時だった。
頬にうっすらと汗をたらしながら、真耶が教室のドアを開け、勇人と一夏に声をかけてきた。
「織斑くん、月影くん!よかった、まだいたんですね」
「先生?」
「なんすか?」
「少し急なことなんですが、お二人に過ごしてもらう寮の部屋が決定したので、鍵を届けに」
そう話す真耶の手には、二本の鍵があった。
どうやら、それが二人に割り当てられた部屋の鍵らしいということは、すぐに察しがついた。
だが、いくらなんでも急すぎるような気がした。
「部屋割りの調整とかで数日かかるって聞いてたんですが……」
「お前たち二人の立場を考慮しての結果だ。荷物はすでに寮の部屋に運んである。着替えと携帯の充電器、それから下着類があれば当面は大丈夫だろう?月影はある程度まとめられていたから、それを持ってきた」
「なるほど……お手数かけました」
「え?どういうことだよ??」
一夏はわかっていないようだが、勇人は千冬の「二人の立場」という言葉で大体の事情を察した。
二人、というのが勇人と一夏の二人を指すことは言うまでもない。
一夏は、自分はただの高校生という認識でしかないが、周囲は「ISを動かすことができる男子高校生の一人」として見ている。
そして、「ISを動かせる」という部分が特に重要になる。
なにしろ、今まで女性しか動かせなかったはずの超兵器を、男性が動かすことができるようになった初めてのケースなのだ。
ISの恩恵によりその地位を高めた過激な女性はもとより、男性の復権を目指す過激派や純粋にISを研究し、男性が使用できない理由を探ろうとしている技術者たちからすれば、是が非でも手元に置いておきたい、あるいは消し去りたい存在。
それが世間の二人に対する見方だ。
勇人は更識の仕事を手伝っている都合上、そのことを理解しているが、一夏はまだ理解できていないらしい。
平和ボケしている、といえばそれまでなのだが、さすがに危機感がなさすぎる気がして、ため息をついてから勇人は一夏に告げた。
「お前な、女性しか使えなかった超兵器を男が突然使えるようになったんだぞ?研究機関だけじゃない、政府や権利団体は俺らを手元に置く機会を虎視眈々と狙ってるはずだ。それはわかるな?」
「あ、あぁ……そもそも、ここに入学することになったのはそれが原因だしな」
「なら、自宅は安全か?ジャーナリストの嗅覚はすげぇぞ?ジャーナリストだけじゃない、各政府の諜報機関だって俺らの行動を気にしているはずだ」
「な、なるほど……あぁ、だからか」
ここまで言って、ようやく理解したらしい。
本当に頭がからっぽなのではないか、と疑いたくなり、勇人は陰鬱なため息をついた。
------------------------
その後、鍵を受け取り、勇人は一夏とともに学園の寮に来ていた。
荷物については、どうやら布仏家の誰かがまとめてくれていたらしい。
あるいは、使用人の鏡ともいうほど気が利く、刀奈の専属である虚が隙を見てやってくれていたのか。
それはどうでもいい。
どのみち、私物と呼べる私物はほとんど持っていないのだから。
「……で、俺の部屋はここか」
手渡されたカギにつけられたナンバータグと、ドアの部屋番号を見比べてそうつぶやいた。
と同時に、再び陰鬱なため息が漏れ出てきた。
誰と同室になるかはわからないが、異性と同室、というのが精神的に大きな負担になっていた。
ただでさえ、あまり人と交流したくないのに、誰かと同居、というのは勇人にとって負担以外の何物でもない。
だが、これに従わなければ任務失敗という不名誉を背負うことになる。
それはごめんなので、勇人はいよいよ覚悟を決め、ドアノブに手をかけようとした。
「……あ、そうか。IS学園は実質女子校……」
だが、重要な事実を思い出し、勇人はその手を止めた。
仮に、このままドアを開けてしまった場合、その数秒後にどうなるか。
そんなことはすぐに想像がついた。
これがもし一夏だったら、ついうっかり、ノックや確認もせずに開けてしまうだろう。
だが、勇人はそんなへまはしなかった。
軽くこぶしを握り、コンコン、と二度ほどドアをたたいた。
すると、がちゃり、とドアノブが動き、かすかにドアが開いた。
ドアの隙間から覗き込んでくる赤い瞳と水色の髪の毛には見覚えがあった。
「勇人?どうしたの??」
「やっぱり簪か……急きょ、寮に住むことになってな。ここ、俺に割り当てられた部屋らしい」
「そうなんだ?ちょっとまってて」
そういって、簪は一度ドアを閉めたが、一分としないうちに、入っても大丈夫、という声が聞こえてきたため、勇人はドアノブをつかみ、ドアを開けた。
それと同時に、何かが勢い良くぶつかる音が一夏がむかった部屋のほうから響いてきた。
「な、なんだぁっ?!」
「な、なんか大きな音したけど、どうしたの?!」
突然の音に、目を丸くした勇人と、慌てた様子で部屋から顔をだした簪は音がした方へ視線を向けた。
廊下から聞こえてくる喧騒から察するに、どうやら一夏が確認もせずにドアを開けた結果、ラッキースケベを発動してしまったらしい。
それを知った簪は、まるでごみを見るように半眼になり。
「……わたしのIS、あんな奴のために製造凍結されたの……?」
「……はぁ……あのバカは……」
簪のご機嫌が一気に氷点下になったことと、モラルがなっていない元凶に、勇人はこの一時間足らずで何度目かわからないため息をついた。