ダークゾーンの中心部に存在するスパイクブラザーズの本拠地、ギャロウズボールスタジアムは、
黄金の鎧を纏った、影の如き竜が双刃の槍を掲げると、その周囲にいた生命が一瞬にして失われていく。
一瞬前まで騎士団と大乱闘を繰り広げていたギャロウズボールの選手から、影竜に忠誠を誓っていたはずの黒騎士。野蛮だが戦闘力を持たない観客に至るまで無差別に。彼らは皆、糸の切れた人形のように崩れ落ち、その魂を影竜に捧げていた。
鈍く輝く黒鋼の刃が命を喰らい、血を思わせる朱に染まる。影竜はその切っ先を、死が蔓延る中、平然と腕組みして立っている白髪のオーガに向けた。
「絶望せよ! 貴様の仲間はすべて死に絶えた!」
「まだ俺様がいるぜ?」
オーガ――ライジング・ノヴァが不敵に笑う。
「ギャロウズボールのルールを知らねえのか? 戦える選手が一人でも残っている限り、チームは負けにならんのよ」
「くだらぬ!」
状況にそぐわぬ大真面目な解説を、影竜は一笑に付した。
「ならば残されたその命、刈り取ってくれよう!」
死神が鎌を振るうが如く、紅に輝く槍がライジング・ノヴァの首筋目掛けて迫る。
オーガはそれを手にした楕円形のボールで難なく受け止めた。
「なんだと?」
驚愕する影竜の眼前で、さらに予想外の事態が勃発した。
ボールが爆発したのだ。
彼は知る由も無かっただろうが、ギャロウズボールで使用されるボールには、惑星クレイで最も堅くて重い金属や、爆発物が仕込まれたりしていることなど日常茶飯事なのだ。彼らの反則にかける執念は、時に最新の科学技術すら凌駕する。
だが、命を奪う術に長けた影竜は、変転する状況の中でも冷酷に、爆風に紛れて高く跳んだオーガの気配を鋭敏に嗅ぎ取り、そこに目掛けて鋭く槍を突き出した。
爆煙の中、パッと鮮血が散り、影竜の顔を朱に濡らす。
槍はライジング・ノヴァの眉間を抉っていた。
だがそれまでで、金剛石より堅いオーガの頭蓋を貫くには至らなかった。
「てめえに隙は見せたくなかったから、こうしてヘラヘラしてるがよ……」
額で槍をへし折ると、ライジング・ノヴァは大きな掌で、影竜の顔面をボール代わりに掴み取る。
「仲間をブチ殺されて、本当は怒り狂ってんだぜ!!」
そして、血に染まった怒りの形相で、影竜の頭部をエンドゾーンへと叩きつけた。確かな手ごたえの後、その感触が影のように消え去り、そこから黒い煙が立ち昇る。
『オノレ……』
影竜の体が瘴気となって怨嗟の声をあげる。
『ダガ、オボエテオケ。“心ノ闇”アルカギリ、ワレハカナラズヨミガエル……』
「はっ! だったら他を当たりな。
俺達はスパイクブラザーズ。勝つためなら反則するヤツもいるし、敵は死ぬまで痛めつけるが……その心には一点の曇りもねえ!」
心臓のあたりを親指で指し示し、ライジング・ノヴァは堂々と宣言した。
その啖呵に気圧されたわけでもないだろうが、瘴気は天に昇り、断末魔を思わせる絶叫をあげて霧散していった。
影竜の生み出した闇は払われたが、ダークゾーンの空は今日も分厚い雲に覆われたままだ。
だが、それを貫くようにして輝く巨星がただひとつ、英雄と呼ばれるに相応しいハートを持ったアスリートを照らし出していた。
「ふん。俺の負けだ」
憮然とした面持ちで――いつもこんな調子ではあるが――ムドウが6枚目のカードをダメージゾーンに置く。
「っしゃああ! ついにムドウ先輩に勝ち越したぜ!」
オウガが立ちあがり、カードショップ「エンペラー」の低い天井に届きそうなくらい高々と拳を突き上げた。
「もう俺が教えられることはなさそうだな」
「うす! ありがとうございました! 高校選手権は終わったのにこうして鍛えて頂いて感謝してます! その高校選手権も勝ちきれなかったのに……」
「構わん。ヴァンガードを始めて1年にも満たないやつが、あそこまでやれれば上出来だ。
それに、お前にヴァンガードを教えたことは、俺の糧にもなった。聖ローゼにいた頃は、自分の技術を他人に与えることが嫌で、後輩にも必要以上のアドバイスをすることはなかったが。……他人にモノを教えるというのは、自分の見つめ直すきっかけにもなるものだな」
「そんなもんすか」
「ああ。もうすぐしたら、お前にも後輩ができるだろう。試してみるといい」
「……そうっすね」
ストンと椅子に座りこんだオウガが、僅かに俯きがちになって答えた。
その様子に、ムドウが怪訝な顔をして尋ねる。
「どうした? ああ、お前のところのカードファイト部は小さいからな。そもそも新入部員が入るか不安なのか」
「なっ! そんなんじゃねーっすよ! 今年は先輩方も大活躍してましたから、絶対に新入部員は来ます!」
「そういうことにしておこう。
さて。俺から教えることはないと言ったが、最終試験として俺以外とファイトしているところも見ておきたいところだが……」
ムドウの冷淡な瞳がファイトスペースをざっと見渡す。彼と目が合いそうになったファイター達が、慌てて目を逸らした。
「ふん。ここには俺の弟子に相応しい対戦相手はいないようだ」
「あんまり他の人を脅かさないでくださいよ。俺がこの店に出入りしにくくなるじゃないっすか」
オウガが目つきの悪い瞳をさらに半眼にして注意する。ただでさえ見た目で驚かれて、対戦相手を探すのは一苦労なのだ。響星のホームである『エンペラー』で悪評が立つのは勘弁して欲しい。
「フウヤか
3人とも、家は『エンペラー』から離れているし、3人が好んで出入りするカードショップ『ストレングス』も然りである。
スマホを取り出したままムドウが悩んでいると、ファイトスペースに新たな客が入ってきた。
何とはなしにオウガはその客に目をやり、驚愕のあまり、ぽかんと口を開けたまま固まった。
(でけえ……)
アメフト部で大男は見慣れていたオウガすら唸らせるほど、その男は巨大だった。
一瞬、セイジとも見紛えたが、それよりはほんの少し背が低い。ただし、横幅はそれ以上だった。それも脂肪ではなく引き締まった筋肉のためそうなっている。はちきれんばかりのワイシャツから覗く大胸筋は、山籠りから帰ってきたばかりの格闘家を連想させた。
というかこの真冬に、何故ワイシャツ1枚なのだ、この男は。
「お! お前は……」
大男が声をあげる。
無遠慮に観察していたことがばれたと思い、オウガが首をすくめ、慌てて謝罪しようとした。
「お前! どこかで会ったことなかったか?」
が、大男の興味はオウガではなく、ムドウにあったようだ。大きな歩幅で詰め寄って来ると、彼の肩を無遠慮にバシバシ叩きながら尋ねてきた。
ムドウもヴァンガードファイターの中では背が高い方だが、それでも大男に叩かれるたび、衝撃でグラグラ揺れており、滅多なことでは形を変えない鉄面皮を痛そうにしかめていた。
「俺はお前を知っているぞ。
ムドウが口を開くと、ライガと呼ばれた大男の手がピタリと止まる。
「俺は聖ローゼの卒業生、
「近藤、ライガさん? 有名な人なんすか?」
オウガが口を挟んだ。
「むしろ、お前の関係者だ。こいつは
「えっ!?」
オウガが慌ててライガに視線を向け、彼もようやくムドウの連れに気付いたようだった。
「ほう! ということは、こいつが響星カードファイト部の新入生……ミオちゃんの後輩ってわけだな!」
「ミオ先輩をご存知なんすか?」
「ああ! 前年度には、何度かファイトしたぞ! 今年度は俺が忙しくてショップに寄れていなかったからご無沙汰だけどな!」
どうでもいいがこの男、体だけでなく、声も大きい。
「4年前の話になるか。ヴァンガード甲子園の1回戦で
そして、ムドウがやおら解説を始めた。
「当時1年だった
響星の大金星にして、聖ローゼの悲劇とよばれた事件。その一端を担った男だ」
「すげえ!」
「だが、この近藤ライガは2回戦で当たった無名高校の1年にあっさり負けた!」
「……ええー」
「続く12月の高校選手権でも、今ではプロとして活躍している優勝候補の一角を破りながらも、次の試合でやはり負けた!
それ以来、こいつは一部のファイターからはこう呼ばれ恐れられている。“むら気の雷神”と」
「まさかその変な異名を言いふらしてるの、ムドウ師匠じゃないっすよね!?」
「それはともかく、いいところで会った。お前の卒業試験に、これほど相応しい相手もあるまい?」
指摘をさらりと流したムドウが僅かに口の端を上げ、オウガの表情がサッと引き締まる。
「お、何の話だー?」
「近藤ライガ。響星学園カードファイト部のOBとして、響星学園カードファイト部の1年生にして俺の弟子、
「おう! よくわからんが、売られたファイトは買う主義でな!」
そう言うと、ライガはムドウの譲った席にどっかりと腰かけた。店の備品である椅子が、危うい悲鳴をあげて軋む。
「いいか? ちゃんとやれよ? くだらん引きはやめろよ? ライド事故とかするなよ?」
「そればっかりはカードをめくってみなければわからんなあ!」
ムドウの心配をライガは豪快に笑い飛ばす。
「だが……全力でファイトすることだけは約束しよう!」
そして、真剣な笑顔でオウガと向かい合った。
「上等っす!」
オウガもそれに威勢よく応えた。
「いい返事だ! では、はじめるか! いくぞ! スタンドアップ!!」
「ヴァンガード!!」
「《バリット・ドラコキッド》!」
「《メカ・トレーナー》!」
「ミオさん! カードファイト部でチョコレートを作りませんか?」
同じ頃、サキがよく利用しているという小綺麗な雰囲気のカードショップ『ムーン』にて。
彼女とファイトするため向かい合う席についたミオに、サキは藪から棒にそんな話を切り出した。
まるで一世一代の告白でも行われたかのように、客もまばらな早朝のファイトスペースがしんと静まり返る。
拳の中にじわりと汗が滲む音を聞きながら、サキは辛抱強くミオの返事を待っていた。
チョコレートを作ろうかという話をしているというのに、緊張感は早くも渡す時のそれだった。
「……どうしてですか?」
さんざん待たせた割には、何の変哲もない疑問とともに、ミオはこてんと小首を傾げた。
「やっぱり説明が必要ですか」
予想通りだが信じられないと言いたげな、複雑な面持ちで嘆息し、サキは続ける。
「あと一週間でバレンタインデーですよ」
それを聞いたミオが目をぱちくりさせるのを見て、まさかバレンタインすら知らないのかと本気で疑いかけたサキだったが、今度のミオの返答は早かった。
「その必要性は?」
意味は理解できなかったが。
「え?」
と思わず聞き返す。
「さすがの私も、女が男とチョコレートを舐め合うバレンタインと呼ばれる儀式が、この国で行われている事は知っています。ですが、それをわざわざカードファイト部で行う必要性はあるのですか?」
真顔で尋ね返され、サキも思わず言葉に窮した。本人にそのつもりは無いのだろうが、興味の無い事柄に対してのミオは冷淡すぎて恐怖すら感じる。
だが、こんなところでくじけてはならないと、サキは再度口を開いた。
「ミオさんは……オウガさんのこと、好きではないんですか?」
言ってから、少し恨みがましい口調になってしまったと後悔する。
「大好きですよ?」
ミオは何の躊躇も無く答えた。
「そのっ、恋愛感情とかじゃなく、後輩とか、友達とか、そういう意味で!」
「そのつもりで言いましたが?」
急に顔を真っ赤にして、わたわたしながら言い直すサキに、ミオはあくまで平静だった。
「こほん」
わざとらしい咳払いをして気を落ち着かせたサキは、改めてミオの瞳をまっすぐ見据えて言う。
「では、その気持ちをたまには形にして伝えてみませんか? 確かにバレンタインデーは、お菓子会社がでっちあげたイベントで、ミオさんのような現実的で賢い人からすれば、それに踊らされている人は愚かで滑稽に映るのかも知れません」
「そこまでは言ってませんが」
「ですけど! 何事もきっかけです。いつもお世話になっている人に、これからもよろしくねという他愛のない感情を、甘いチョコレートに託して送る。それだけの事がいけない事ですか? 私は素敵な事だと思います」
「ふむ」
顎に手を当てるミオの瞳に、小さな興味の火が灯った。
「確かに。オウガさんにプレゼントを贈るのはやぶさかではありませんが、何でもない日にそれをするのは少し不自然ですね。そこでバレンタインデーがいい口実になってくれるというわけですか」
「ええと、まあ、そういうことです」
何故この先輩を通すと、ここまでロマンが減じてしまうのか気にはなったが、機嫌を損ねてはならないと、サキはとにかく頷いた。
「わかりました。作りましょう、チョコレート」
ミオが頷き、サキは何も始まっていないにも関わらず、一仕事終えた心地でホッと息を吐いた。
「では、行きましょうか」
そう言って、テーブルに置いていたデッキケースをしまい、ミオが立ちあがる。
「え、どこへですか?」
突然の展開に、サキがぽかんと問い返す。
「チョコレートを作るのでしょう? では、それを作れる場所に移動しましょう。それとも、サキさんにはすでに用意があるのですか?」
「いえ……」
次にその事を相談しようと考えていたのだが、ミオには既にアテがあるらしかった。
ついさっきまでバレンタインとは無縁という態度をしていたくせに、いざ行動となると、この先輩は常に二手三手先を行く。
「幸い、調理部の方々とは交流があります。頼めば、部室の一角くらいは貸してもらえるでしょう」
「そ、そうですか。それは助かりました」
何故カードファイト部と調理部に交流があるのかは疑問だったが、ここから先は彼女に任せようとサキは思うのであった。
「できました」
「早すぎですっ!!」
家庭科室に到着して2時間。包装まで終えたチョコレートをテーブルに置いて勝ち誇るミオに、サキはツッコミという名の咆哮をあげた。
「こう、もっと、風情というものは無いんですか!? 一緒にきゃっきゃっしながらチョコ作りするのを楽しみにしていたのに……包丁で指を切ったりとかトラブルにも見舞われながら、下校時間になってようやく完成した不格好なチョコレートを、二人で『おいしいよ』と言いながら舐め合うんです」
「失礼な。私が、そんなそそっかしい女に見えますか?」
「見えませんけど。メッセージカードがガタリヲなのはどうかと思います」
「確かに。メッセージカードは、オウガさん宛てであることを考えたら、《メカ・トレーナー》の方がよかったかも知れませんね」
「いえ。もう、ミオさんはそれでいいと思います。
私はまだ湯煎の段階なんですけど、やり方を教えて頂けませんか? これが結構難しくて……」
「まかせてください」
ミオに渡すと一瞬で完成させられてしまうので、できる限り手は借りないようにしながら、サキはアドバイスに従って、ゆっくり調理を進めていく。
ちなみにこの家庭科室だが、ミオが調理部に事情を説明すると、一角どころか、部屋を丸々明け渡してくれた。
この時期にもなると、チョコ作りの道具や材料は一通り揃っており、それも含めてである。
その調理部員達は、一部が管理責任者という名目で残っていた。今も部屋の隅でミオの手際を食い入るように見つめており
「あの子、何て鮮やかなテンパリングなの……?」
「音無ミオ……やはり彼女は調理部に必要な人材だったのよ」
「エプロン姿がカワイイしね」
などと噂していた。
余談ではあるが、バレンタイン期間は調理部は休日にも活動していることがほとんどで、なおかつ男子はたとえ部員であろうと立ち入り禁止になる。
なら、ホワイトデーの期間には女人禁制になるかと言うとそうでもなく、女子生徒のダメ出しやら注文やらをひっきり無しに受けながらクッキーやらマカロンやらを作らされるようだ。
とは言え、女子部員全員からチョコは貰えたも同然なので、この年頃の男子高生としては不遇とも言い切れないのだが。
閑話休題。
「ミオさんの作ったチョコレート、ホワイトが多めでしたよね? オウガ君、ホワイトが好きなんですか?」
溶かした白いチョコレートを型に入れながら、サキはミオに尋ねた。
「確証はありませんが、恐らくは。
大会に遠征する時とか、部員で遠出した時、オウガさんの買ってくるおやつのチョコレートにはホワイトが多かったように思います」
「……そんなにずっとオウガ君の事を見てるんですか?」
「まさか。さすがの私も、そこまで過保護ではありません。記憶から掘り起こしてきただけですよ」
(私はずっと見てたのに……)
チクリと胸が痛むのを感じて、サキはミオから目を逸らした。
オウガがおやつに何を口にしていたかなど、覚えていなかった。
ミオの超人的記憶力に嫉妬するが、それをしてどうにかなるものでもない。得られるものでもないし、ましてや勝てるわけなどないのだから。
「ふふ、オウガさんったら、ああ見えて甘党ですね」
ボウルの底に残ったチョコを指につけて味見したミオが顔を小さくほころばせた。
サキも真似をしてみるが、苦いものが口に広がっては溶けていくだけだった。
暗雲立ち込めるスタジアムにて、ギャロウズボールの選手に憑依したオウガと、雷竜に憑依したライガが睨み合う。
お互いにダメージは2点。
先行のオウガが、更なるユニットにライドする。
「ライド! 《逸材 ライジング・ノヴァ》!! ギフトⅠ・Ⅱは両方とも右前列のリアガードサークルへ! 先輩がまだG2だからって遠慮はしませんよ!」
「おう! 来い!」
「うす! ライジング・ノヴァをコールして、さらに《アンブッシュ・デクスター》をコール!
デクスターのスキル発動! ライジング・ノヴァをソウルインして、デッキから《デッドヒート・ブルスパイク》! 《スパイキング・サイクロン》をスペリオルコール!
そして、ライジング・ノヴァのスキル発動! その2体のスキルを全て得るぜ!!」
スパイクブラザーズ鉄板の布陣を組み立てたオウガが、さらに後列にもリアガードをコールして、バトルフェイズを宣言する。
「デクスターのブースト! ブルスパイクでヴァンガードにアタック! フォースの効果で合計パワーは31000!
「《スパークエッジ・ドラコキッド》! 《ライジング・フェニックス》でガード!」
「ライジング・ノヴァでヴァンガードにアタック! アタック時にフォースをすべてヴァンガードサークルに移動させ、フォースの数だけパワーもアップだ!
合計パワーは33000で、さらにブルスパイクをスタンド!」
「ノーガードだ!」
「ツインドライブ!!」
1枚目はノートリガー。2枚目は
ライガのダメージゾーンにも3枚目、4枚目のカードが置かれるが、こちらも4枚目のダメージで引トリガー。
「やるぅ! だが、まだまだアタックは通るぜ! ブルスパイクでヴァンガードにアタック! フォースも移動!」
「《ドラゴンダンサー・カタリナ》でガード!」
「《アクロバット・ベルディ》のブースト! 《スパイキング・サイクロン》でアタック!」
眉目秀麗の
「バリアー!! 《ワイバーンガード・ガルド》で完全ガードだ!」
「くーっ、おしい! だが、次のターンでキメるぜ。俺はこれでターンエンドっす」
「ハハッ! いいアタックだった」
追い詰められたライガが楽しそうに笑う。
「だが、なるかみを相手に、次も同じことができると思うなよ?」
自信に満ちた笑みと共に言い放ち、雷を想起させる怒号と共にカードを引く。
「スタンド&ドロオオオォォォ!!
ライドォ! 《ドラゴニック・ヴァンキッシャー》!!」
曇天に包まれた空が割れ、霹靂に雷竜の影が浮かび上がった。
雄々しき4枚の翼に、捻じれた蒼の双角。銀のたてがみを嵐になびかせた紅竜が雷鳴の如く吠え叫ぶ。
「ヴァンキッシャーのスキル発動! 前列の《スパイキング・サイクロン》をバインドさせるぞ!」
ライガの宣言と共に、ヴァンキッシャーが両掌から生み出した巨大な雷球を叩きつける。その一瞬で悪魔の肉体が消し飛び、黒い灰となって虚空に散った。
「まだまだ行くぞ! 《妖剣の抹消者 チョウオウ》をコール! そのスキルで《デッドヒート・ブルスパイク》もバインド! さらに、後列の《アクロバット・ベルディ》も前列へと移動させる!」
粗野な笑みを浮かべた剣士が、妖気を漂わせた剣をかざすと、落雷がブルスパイクを穿ち、彼もまた灰となって消えた。
「トドメだ! 《ドラゴニック・デスサイズ》をコール! 《アクロバット・ベルディ》をバインド!」
細身の竜が、その体躯に似合わぬ大鎌を一閃し、選手がまたひとり灰と化す。
「これで俺がこのターンにバインドしたカードは3枚! ヴァンキッシャーのスキルが適用され、前列のユニットは+10000される!」
ヴァンキッシャーが吠え、雷を伴った嵐がなるかみの戦士を鼓舞するかのように吹き荒れる。
「《ロッククライム・ドラグーン》をコール! 《ヴァイブロクラッシャー・ドラゴン》もコールして、1枚ドロー! お前のデクスターを前列へ移動させる!
待たせたな! バトルだ!
まずは、チョウオウでヴァンガードにアタック! チョウオウ・ソード!」
「ノーガード……トリガーは無し」
「続けて、ヴァンキッシャーでヴァンガードにアタック!」
(パワーは22000……なら!)
「《チアガール アダレード》でガードだぜ!」
『ハーイ!』
オウガの呼び声に応えて、見目麗しい(ゴブリン基準)チアガール達が、ライジングノヴァの前で壁を作るようにして立ちはだかった。
「ツインドライブ!!
1枚目、トリガー無し!
2枚目、トリガー無し!
くらえ! ヴァンキッシャー・ライトニング!!」
『ワーオ!』
ヴァンキッシャーの落とした稲妻の衝撃で、壁が容易く瓦解する。それでもその甲斐あってか、ライジング・ノヴァには焦げ跡ひとつついていなかった。
「続けて、アクセルⅡサークルにいるロッククライムでヴァンガードにアタック! ロッククライム・アクセル・スラッシュ!」
「ノーガード! ダメージチェック……」
オウガのダメージゾーンに4枚目のカードが置かれる。トリガー表示は無し。
「ロッククライムのスキル発動!
このユニットを退却させ、1枚ドロー!
さらにぃ! 俺の手札を1枚バインドすることで、デクスターをバインドする!」
「くそっ! これで俺のリアガードは全滅か……」
「それだけじゃないぞ! 俺が手札からバインドするのはこのカード!
手札からバインドされた時、手札を1枚捨てることで、このユニットにライドできる!
スペリオォルライドォッ! 《ドラゴニック・ヴァンキッシャー“
突如、ヴァンキッシャーに一筋の稲妻が落ちた。
たてがみと鎧を雷光の如き金色に染めて。新たなる力を手にしたヴァンキッシャーが全身から放電すると、轟音と共に空が引き裂かれた。
「おっと! ユニットがバインドされたので、こいつも忘れちゃいかんなあ! ドロップゾーンから《ライジング・フェニックス》をスペリオルコール!
そして、ふるぶろんとのスキル発動! 前列ユニットすべてにパワー+10000!
ふるぶろんとでヴァンガードにアタック!!
くらえい! ヴァンキッシャー・スパーク!!」
「
どうでもいいことを横からツッコんだのはムドウだ。
「《ソニック・ブレイカー》、《陽気なリンクス》でガード!」
「ドラーイブチェーック!
……
「げっ!?」
「そしてヴァンガードのアタック終了時、チョウオウはスタンドする!
さあ、俺のアタックはまだまだ続くぞ?」
雷竜達を従えた
「で、できました……」
「はい、上手くできましたね」
下校時間ギリギリに、ようやく固まったチョコレートを前にし、サキは感動に打ち震え、ミオは小さな拍手で祝福してくれた。
「あ、ミオさん……ありがとうございました」
「? どういたしまして」
大げさなくらい深々と頭を下げるサキに、ミオは疑問を抱いたようだったが、これは謝罪の意味も含まれていた。
(何であれ、こんな優しい先輩に嫉妬なんかしてたらダメだよね……)
はじめは乗り気でなかったチョコ作りに付き合ってくれて、自分のチョコが完成した後も、丁寧に作り方を教えてくれた。今も下校時間まで嫌な顔ひとつせず残ってくれている。
チョコレートと一緒に頭も冷えたかのようだった。
妬心の炎は消え、今は黒々とした罪悪感が心の中でザラついている。
「さあ。手早く包装してしまいましょう」
ミオに促されるまま、サキは出来上がったチョコレートを箱に入れ、その箱をさらに包装紙とリボンで包んでいく。
後は名刺サイズのカードに、メッセージを書き込んで完成なのだが……
「…………」
サキは手にしていたペンを置き、自分の鞄からデッキケースを取り出すと、その中から1枚のカードを抜き出して手に取った。
《ドラゴンエッグ》
勇ましいディノドラゴンになる事を夢見る雛竜。まるで自分の分身。
サキはデッキに入っていたそれを、躊躇無くリボンと包装紙の間に挟み込んだ。
「む。人の事は批判したくせに、マネするんですね」
それを目敏く見つけたミオが言ってくる。サキはそれには答えず、不敵に笑って言い返した。
「ミオさん。私、負けませんから」
「むむ。勝負ですか? そうですね。オウガさんに、どっちがおいしかったか、渡した次の日に聞いてみましょうか」
やはり見当違いの答えが返ってきて。
サキはおかしくなって、口元に手を当てて笑った。
「『どっちもおいしかった』としか答えませんよ。オウガ君、優しいから」
「そうですね。あの人は、そういう人です」
2人でひとしきり笑い合って、目と目を合わせて、また笑った。
夕暮れを背にしたサキの影だけが、泣いているように肩を震わせていた。
「デスサイズでヴァンガードにアタック! デスサイズ・右ストレート!」
「ノーガード! ……★トリガー! 効果はすべてヴァンガードに!」
大鎌を投げ捨てた雷竜の拳が、ライジング・ノヴァの顔面に突き刺さる。
「フェニックスでヴァンガードにアタック! ライジング・アクセル・くちばし!」
「《サイレンス・ジョーカー》でガード!」
不死鳥の執拗なつっつきが、今度は別の選手のこめかみを抉る。
「ヴァイブロクラッシャーのブースト! チョウオウでヴァンガードにアタック! チョウオウ・ジャイアントスイングゥ!!」
「ちくしょう! 《アンブッシュ・デクスター》! 《ガンバースト・ラインバッカー》でガードだ!」
妖剣を放りだしたチョウオウがデクスターの両脚を掴んでブン回し、最後はラインバッカーに投げつける。
(くそー。デクスターをガードに使わされちまった。あいつさえいれば、盤面を構築し直せたのに……)
そして手札はデクスターのコストにするはずだったライジング・ノヴァのみ。
「エンドフェイズ、俺のふるぶろんとはヴァンキッシャーに戻る。
ふっふっふ。俺はこれでターンエンドだ」
腕組みして勝ち誇ったように宣言するライガの手札は6枚。ダメージ4にしては心許ない枚数ではあるが、それはスパイク側が万全であったならの話だ。ライジング・ノヴァ単体で突破できるほど少なくもない。
(師匠が認めるだけあって、すげー強ぇ。言ってることはバカらしいのに、マジでチョウオウがジャイアントスイング仕掛けてくるところをイメージできちまう)
追い詰められている。
にも関わらず、オウガの顔には自然と笑みが浮かぶ。
「だが! そういう相手だからこそ面白ぇ! あんたを喰らって、俺はさらに強くなるぜ!」
「おう! よくわからんが、来い!」
「スタンド&ドロー!! ……!?」
引いたカードを見て、オウガの脳裏にふたつのアイデアが浮かぶ。
ひとつは既に手札にあるライジング・ノヴァにライドして、ヴァンガードにフォースを与え、もう1枚もフォースサークルにコールしての2回アタック。
もうひとつは……。
「ライドフェイズをスキップ。
手札から『パワーバック・レナルド』をコール! 手札のライジング・ノヴァをソウルに置いて、デッキの上から3枚をスペリオルコールだ!」
「確実にフォースを得られるライジング・ノヴァへのライドより、未知の3枚を選んだというわけか! おもしろい!」
その言葉通り、ライガが楽しそうに笑う。
(これでG3を引けなきゃ、確実にパワー不足だ。頼むぜ、レナルド……!!)
オウガが山札の上から3枚をめくり、恐る恐る目を通す。
「……きたぜ! 《ソニック・ブレイカー》! 《チアガール ティアラ》! そして、《将軍 ザイフリート》をスペリオルコールだ!!」
「むっ! ザイフリートだと!?」
ライガの笑みがわずかだが引きつった。
「ライジング・ノヴァのスキル発動! ザイフリートのスキルを得るぜ!!」
ライジングノヴァとザイフリートが拳と拳をぶつけ合う。
その衝撃だけでスタジアムが揺れ、芝のフィールドが割れる。
「ライジング・ノヴァが新たに得たスキルを発動! ザイフリートをソウルに置いて、新たなザイフリートをスペリオルコール! ライジング・ノヴァとザイフリートのパワー+10000!
このスキルに回数制限は無え! ティアラも対象に同様のスキルを発動!」
「デッキから治トリガーを減らすのか!?」
「★トリガーを引く確率は上がるっしょ?」
オウガが勝負師のような笑みを浮かべてライガを見据えた。
「不退転というわけか! お前は本当におもしろいやつだなあ! こんなにみなぎってきたファイトはひさしぶりだ!
さあ来いっ!!」
「うっすっ! まずはレナルドでチョウオウにアタック!」
「ノーガード! チョウオウは退却!」
「ティアラのブースト! ザイフリートでヴァンガードにアタック!」
「《ドラゴンダンサー カタリナ》、《チェインボルト・ドラグーン》でガード! デスサイズでインターセプト!」
「ソニック・ブレイカーのブースト! ライジング・ノヴァでヴァンガードにアタック!!」
「ノーガードッ!!」
ライガが胸を張り、堂々と宣言する。
「ツインドライブ!!
1枚目……トリガー無し。
2枚目……★トリガーッ!!
パワーはザイフリート! ★はライジング・ノヴァに!
ライジング・ノヴァ・スープレックス!!」
「おい。お前までこいつのマネをするな」
ムドウが半眼になって告げる。
ダメージ4点のライガは、絶体絶命の状況にも関わらず、ニッと微笑み、デッキに手をかけた。
「ダメージチェック!!
1枚目……
2枚目……」
ライジング・ノヴァがヴァンキッシャーの胴体に掴みかかると、美しく弧を描くバックドロップで、その脳天をフィールドに叩きつけた。
「きゅう」と見た目の割に可愛らしい声をあげてヴァンキッシャー(に憑依したライガ)が昏倒し、ライジング・ノヴァが高々と拳を掲げる。
ギャロウズボールのスタジアムに紙吹雪が舞い、何故か高らかにゴングが鳴り響いた。
「がっはっは! 俺の完敗だ!!」
6枚目のカードをダメージゾーンに置いたライガが豪快に笑う。
「ふん。ヒヤヒヤさせる場面もあったが、合格としておくか」
ムドウがいつもと同じ調子の仏頂面で肩をすくめた。
「あ~~~~っ! 強っえー!! そんでもってすっげー楽しかった!!」
「おう! 楽しんでもらえたのなら何よりだ!」
忌憚のないオウガの感想に、ライガも豪快に笑って応える。
よいファイトができれば勝っても負けてもヴァンガードは楽しいものだが、ここまで勝ち負けに頓着しないファイターも、オウガの周囲では珍しかった。
根っからの趣味人で、競技者には向いていないのだろう。十分な実力を持ちあわせているにも関わらず、大会で中途半端な結果しか残せなかったのもそのためか。
「ライガ先輩! もう一回ファイトしませんか!?」
「おう! 受けて立つぞ!」
ファイトの興奮が収まらず、すぐさま再戦を申し込むオウガに、ライガも快く応じた。
――そして
「ふるぶろんとでヴァンガードにアタック!!」
「ノーガード……くっそー、トリガー無しだ!」
「はっはー! 今度は俺の勝ちだな!」
ふたりが楽しそうにファイトをしているものだから、周囲のファイターも集まってくる。
「な、なあ! あんた、今度は俺とファイトしてくれないか!?」
「次は俺と頼む!」
「その次は俺とだ!」
次々と挑まれるファイトに、オウガもはじめは困惑していたものの。
「おう! 全員まとめて相手してやるからかかってきやがれ!!」
その申し出を、オウガは全て断ることなく受けることを約束した。
「じゃあ、待っているやつらは俺とファイトだな!」
そこにライガも参加し、和気あいあいとした乱戦が始まった。
その喧騒に紛れるようにして、ムドウが静かに席を立つ。
「あ、ムドウ師匠?」
それに気付いたオウガが声をかける。
「こういう雰囲気は好かん」
「師匠……」
「もう俺が教えられることはないと言ったはずだ。あとはお前のやり方で強くなってみせろ」
「……うす! 今までありがとうございました!」
ファイト中にも関わらず、オウガは席を立ち、去りゆくムドウの背に深々と頭を下げた。
一瞬、ムドウが振り返り――その表情には笑みが浮かんでいるようにも見えたが。
それは恐らく気のせいだろう。
――それから一週間後。
「オ、オウガ君……」
毎日会話を交わしている男友達に、この日に限っては声をかける事すら緊張した。心臓が激しく鼓動し、肋骨に痛みすら覚える。たっぷり湿らしたはずの唇はカラカラに乾き、言葉も上手く紡げない。
「ん?」
熱心にデッキを調整していたオウガが、強面に似合わぬ優しい笑みを浮かべて顔をあげる。声をかけたサキとばっちり目が合った。
この日は何故か響星カードファイト部に緊急招集がかけられ、休日にも関わらず部員が部室に集められていた。と言っても、その理由を知らないのはオウガだけだったが。
「あ、邪魔してごめんね。えと……今日って何の日だか分かるかな?」
「ああ、ふんどしの日だろ?」
「何よそれ!?」
「なんでも日本ふんどし協会が制定してるらしいぜ」
「え? その豆知識って、バレンタインデーよりオウガ君の中で上位なわけ?」
「ああ、そっちかー。ん? バレンタインってもしかして……」
「そのもしかしてだよ!」
いつに無く声を荒げながら、サキが両手で抱えていたチョコレートを突き出した。
いつの間にか緊張は何処かへと消え去っていた。それがふんどしのおかげかと思うと複雑だが。
「マジで!? いやー、嬉しいなー! チョコなんて中一の時に、アメフト部のマネージャーに貰って以来だぜ。それも五円のやつ」
「こ、これは、ちゃんと手作りだから……」
「マジで!?」
「ボキャブラリー少ないね」
「いや、でも、マジ嬉しいわ。ありがとな、サキ」
「う、うん。お口に合えばいいんだけど……」
「ふっふっふっ……」
不気味に笑いながら、いい雰囲気に割り込んできたのは、その様子をじっと眺めていたミオである。本人におじゃま虫の自覚は無いだろうが、タイミングが悪すぎる。
なお、セリフこそ笑っているが、表情はいつものぼんやりとした無表情のままである。
「実は私からもチョコレートがあります」
「なっ!?」
ミオがチョコレートを差し出すと、オウガは反射的に跳び退いた。
廊下でゴキブリと鉢合わせたような反応を見せたオウガに、ミオの冷酷にして冷徹な視線が突き刺さる。視線だけで人をデリートしてしまえそうな禍々しさだ。
「どんな反応をしても、私なら傷つかないと思ったら大間違いですよ」
「すんませんした。本当にすんませんした。けど、先輩がそんな甘いイベントに興味を持つなんて思わないじゃないすか。何らかの陰謀を警戒して然るべき……いや、本当にすいませんでした」
平謝りしながらも言い訳するオウガに、さらに冷厳な視線を浴びせると、彼はただ謝るだけの存在になった。
「ですが、バレンタインに興味など無かったのは事実です。そういう意味では、オウガさんは私を理解してくれていると好意的に解釈して赦しましょう」
「聖者っすね」
「いいえ、根絶者です」
本人同士でしか通じ合わない珍妙なやり取りの後、ミオからオウガにチョコレートが手渡される。
「オウガさん。あなたがカードファイト部に入部してくれて、私はものすごく感謝しているんですよ」
嘘偽りもごまかしも無い、率直な想いと共に。
「ユキさんがいなくなって、アリサさんも9月に引退して、また退屈な日々に戻るのではないかと……少し不安だったんです。
ですが、そんな事はありませんでした。オウガさんと出会ってもう少しで1年になりますが、この1年、本当に楽しかったです。退屈なんて何一つ無い毎日でした。これからもよろしくお願いします」
照れているのか、オウガはばつの悪そうに頭をかいた。
「サキさん。もちろん、あなたにも」
ミオは鞄からもう一つチョコレートを取り出すと、サキに差し出した。
「えっ? 私にも、ですか? いつの間にこんなものまで……」
サキがおずおずとチョコレートを受け取る。メッセージカードがガヰアンなのは激しくツッコミを入れたかったが、どうにか堪えた。
「私の手際を見ていたでしょう? あなたに作り方を教えつつ、密かにもうひとつチョコレートを作るなんて造作も無いことです。この世界には、友チョコとか言う儀式もあるようですし、ね」
そう言って、ミオが下手糞なウインクをした。
「ありがとう、ございます……」
やっぱりこの人には敵わないな。
そう思わせるには十分すぎる不意打ちに、とんでもない相手に宣戦布告してしまったことを、サキは改めて自覚するのであった。
その日の夜。
勉強机の真ん中に置いたデッキを前にして、椅子に腰かけていたオウガが、意を決した表情でスマホを手に取り、電話をかける。
程無くして、その相手は電話に出た。
「……よう。
ああ、そうだ。待たせたな……そろそろ決着をつけようぜ」
来月は、季節外れの嵐になりそうな予感がした。
根絶少女バレンタイン回をお送りさせて頂きました。
えくすとら等との兼ね合いで投稿が遅れるというのもウソで、本当は14日に投稿したかっただけでした。
作品のためとは言え、楽しみにされていた方には、ウソついてごめんなさい。
作中では、なるかみ使い「近藤ライガ」が久しぶりに登場です。
ほとんど第2話に登場したきりのキャラクターなので、忘れられている方も多そうですが。
第2話で主人公とファイトする相手は、初期案ではモブのつもりだったのですが、ちょうどいいからここでなるかみを出そうと急きょ変更し、即興で生まれたキャラクターが、この近藤ライガでした。
名前もインスピレーションだけで決めたので、オウガと若干被ってしまったりもしています。
そんな経緯もあり、今まで出しあぐねていたのですが、今回ようやく正式に再登場させることができ、キャラクターを掘り下げることもできました。
よりにもよって対戦相手がオウガなのは、なんの因果か。
けど、チョコ作ってるより、この人の方が書いていて楽しかったです。
次回はクラセレ2のえくすとらを、発売日の19日前後にはお届けできる予定です。
そして! いよいよ2年生編ラストとなる3月の本編は、こちらもホワイトデーとなる14日に公開予定です。
お楽しみにお待ちして頂ければ幸いです。