根絶少女   作:栗山飛鳥

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10月「残念だが、君は強すぎたようだ」

 プロファイター世界ランキングにおいて、10年もの間、2位の座を守り抜いた男がいた。

 その間、1位は4度も入れ替わったにも関わらず、である。

 だが、その男は1度も1位にはなれなかった。

 不断の努力を続ける真摯な姿勢と、それに裏打ちされた安定感に定評のあるプレイング。頂点に相応しい品格と実力を兼ね備えていながら、たびたび現れる天才から王座を奪取することはついぞできなかった“最強の凡人”

 彼は2位の座を保ったまま、10年と少し前、35歳の若さでプロを引退する。

「自分の限界を悟った」

 と言葉を残して。

 その後、彼の行方を知る者はいなかった。

 風の噂によると、片田舎で小さなカードショップを開いたらしいが。その真偽を確かめようとする者も、もういなかった。

 

 

 天海島。

 日本列島の果てにポツンと浮かぶ小さな島。

 100人あまりの島民が暮らすだけの、何も無い島である。

 10年と少し前、その島に1軒のカードショップがオープンした。

 娯楽に飢えていた、島に住む24人の少年少女にとって、初めてプレイするカードゲームは脳髄を稲妻が突き抜けたかのように衝撃的だったことだろう。

 無口で不愛想だが面倒見のいい店主は、はじめは投げ売りも同然の価格でカードを子ども達に配り、懇切丁寧にルールを説明した。

 それにより確かな下地を身につけた子ども達は、互いに競い合うようにして、そのセンスを更に研ぎ澄ませていく。

 絶海の孤島に存在するカードショップであるが故、一切の不純物が混ざることもなく、実力者どうしが切磋琢磨を繰り返すことで生まれた最強のファイター達。

 ヴァンガード甲子園において、常勝軍団と畏怖され崇拝される天海学園カードファイト部はこうして生まれた。

 そして、はじまりの24人の中で最年少だった――残りの21人や店主に最もかわいがられた――3人の少年こそ、天海学園史上最強と称される、現在の3年生達である。

 

 

「プラントのブースト、プラントでヴァンガードにアタックします」

「《ケルピーライダー ペトロス》でガードだ」

「うう……私はこれでターンエンドです」

 25人目の少女――島にカードショップができた当時は幼すぎてファイトに参加できなかった――(ひいらぎ)マナが俯きがちに宣言する。

「私のターン。スタンド&ドロー。

 手札からヴァンガードと同名のカードを捨て、《蒼波元帥 ヴァレオス》のスキルを発動する!

 究極超越(アルティメットストライド)!!!」

 マナの対戦相手、2年先輩にあたる長身の男、清水(しみず)セイジが高らかに叫ぶ。

 それに応じて、片目に深い傷を負った初老の男が、手にした巨大な銛を掲げると、背後に長大な影が姿を現した。それは絶海まで震わせるかのような雄叫びをあげると、志半ばに倒れ、海へと還っていったはずの兵士達が、ひとり、またひとりと渦巻く海中から蘇る。

 その咆哮もじきに小さくなっていき、やがてはすべてが幻であったかのように、影とともに消えた。

「バトルフェイズに移行する!!

《頑迷の蒼翼 シメオン》で《メイデン・オブ・スタンドピオニー》にアタック!

 アタック終了時、ヴァレオスのスキルによって、シメオンとファウロスの位置を入れ替える!」

 そして元帥(セイジ)指揮の下、蒼翼の名を冠する兵士達が、花乙女(マナ)を追い詰めていく。

「ヴァレオスでヴァンガードにアタック!

 ツインドライブ!!

 1枚目、トリガー無し。

 2枚目、(ヒール)トリガー!! 我が蒼翼は全員スタンドする!!」

 手札1枚のマナに対し、残り5回のアタックが確定し、この戦争(ファイト)は終局を見た。

 

 

「ああ……私の負けですね」

 ファイトと同時にイメージを終えたマナは、荒れ狂う海上ではなく、天海学園3年生の教室にいた。

 天海学園カードファイト部に部室などというものはない。もっとも、学園の生徒はこの場にいる4人だけで、その全員がカードファイト部なので、放課後は1年か3年の教室に集まれば事足りるのである。

 大抵の場合はマナが「先輩方に1年生の教室までご足労頂くなど滅相もございません」などと言って3年生の教室に来る。

「ふふふ……これで100連敗です。こうなってくると、もはや笑うしかないですねえ、うふふ……」

 自虐などというありきたりな感情などとうに超越した彼女にしか至れない境地で、マナが不気味な笑みを浮かべる。

「いや。43戦前、アラシとのファイトでは君が勝ったはずだが」

 セイジが冷静に指摘する。

「あれはアラシさんが盛大に事故をして、G1のままファイトしていましたので。あれを勝ちに勘定するほど、私も恥知らずではありません。むしろ、G1相手に3点を受けた私の負けに数えてもいいぐらいかと……」

「変なところでストイックだな、君は」

 鉄面皮を僅かに崩して、セイジは複雑な表情を浮かべた。

「こうやって毎日毎日負かしてやってる俺が言うのもなんだけどよー」

 口を挟んできたのは、だらしなく椅子にもたれてファイトを観戦していた小柄な少年、(あおい)アラシだ。

「お前、そんなんでよくヴァンガード続けてられるよな」

「それは……その、私は、ネオネクタールのユニット達がイメージできるだけで幸せですから」

《メイデン・オブ・スタンドピオニー》を手に取り、マナが困ったようにはにかんだ。

「ふむ。前向きな姿勢を褒めるべきか、向上心の無さを叱るべきか。難しいところだな」

 大真面目にセイジが首を傾げて悩みはじめる。

「それに私は10年前、おふたりが他の先輩方を相手に20連敗くらいしていたのを後ろで見ていましたから。この程度でへこたれてはいられません」

 昔の話を思い出したようにマナが言い、セイジとアラシが目を逸らす。21人の先輩に()()()()()()()()()過去は、ふたりにとっては思い出したくない負の歴史なのである。

「内心では(ちいさいおにいちゃんたち、よわいなあ)って思いながら見ていたんですけどね。まさか、その時の感想が、今の私にブーメランとなって返ってくるとは。

 アラシさんだって、100連敗まではしていませんでしたし。持って生まれた素質の差に恐れ入るばかりです」

「それはしゃーねぇだろ。10年前の先輩と、今の俺達じゃ、実力に天地の差があるしな。

 当時の先輩達の強さって、今の聖ローゼの連中と同じくらいだったと思うぜ?」

「聖ローゼ? ああ、最近島によくいらっしゃる……。確かにそのくらいだったのでしょうか。幼い頃の記憶なので曖昧なのですが、私にとってお姉ちゃんやお兄ちゃんは、果てしないくらいに大きくて、強くて、格好いい、憧れの存在でした」

 デッキを何枚かめくりながら、マナが昔を懐かしむように呟く。彼女がネオネクタールを選んだのも、はじまりの24人の中でもっとも年長だった少女が使っていて、それに憧れたからだ。

「それは私も変わらないよ」

 セイジが答え、珍しいことに、アラシも神妙に頷いている。

「先輩方が全てを余すことなく授けてくれたからこそ、私達はあの人達を越えることができた。先輩方より強くなっても、畏敬の念が消えて無くなることはないさ」

 そう言って、マナをまっすぐ見据える。

「そして次は、私が私の全てを君に授ける番だと思っている。さあ、そろそろ練習を再開しよう」

「はい。よろしくお願いします」

 マナがぺこりと一礼した。

「次はアラシがファイトをするか?」

 セイジが問いかけ、アラシは「うーん……」とわざとらしく悩むような仕草で腕を組み。

「なあ、ヒビキ! 息抜きにマナと一戦くらいしねえか?」

 部屋の隅にいる少年に声をかけた。

 その息を呑むほどに美しい銀髪碧眼の少年は、机の上に分厚い参考書を開き、その内容をノートに書き写したり、注釈を加えたり、とにかく勉強をしていた。

 何の勉強をしているのかは、学が無いと自覚するアラシにはさっぱり分からないが、その美少年――綺羅(きら)ヒビキは、来年の4月から村長である父の補佐のため、そしてゆくゆくは父の跡を継ぐため、覚えなければならないことが山ほどあるのであった。

 そんな大切な勉強をしている最中にも関わらず、ヒビキは丁寧に顔を上げ、アラシの目を見ながら言う。

「ごめんよ。見ての通り、ボクは忙しいんだ」

 そして、また参考書に視線を落としてしまう。

「チッ。それなら、教室なんかで勉強すんなっつーの」

「いや。教室は勉強する場所だが」

 アラシが毒づき、セイジが生真面目に指摘した。

「そういう意味じゃねーよ! 勉強したけりゃ、家に帰ってしろっつってんだ」

「ファイトの音を聞いている方が落ち着くんだよ。マナが成長していく様子を見るのは、ボクにとっても励みになる」

 再び参考書から顔を上げ、ヒビキが答えた。

「そんな。私なんて先輩方からどれだけ教えを受けても、その場で足踏みをしてばかりの無能です。私ごときがいても、ヒビキさんの悪影響になるだけで……」

「てめーは黙ってろ。ややこしくなる」

「すみません。死にます」

「生きろ」

 舌を嚙み切ろうとしたマナは、セイジの制止によって命を救われた。

「はっきり言うぜ! お前は居心地いいのかも知れねーが、ファイトする気の無いやつがいたんじゃ、こっちの邪魔になるんだよ!」

「……ごめんよ」

 今にも泣きだしそうな表情で、ヒビキが微笑んだ。

「たしかにアラシの言う通りだ。ボクはこれにて失礼するよ」

 ヒビキが参考書を閉じ、カバンに片付ける。

「待て、ヒビキ!」

 それを慌てて止めたのはセイジだ。

「アラシが言いたかったのはそうじゃない。1回でもいいから、ファイトをしていけと言ったんだ。

 お前は、このまま一生ファイトをしないつもりなのか?」

「その覚悟だよ」

 決意を込めてヒビキが頷いた。その開き直った態度が、セイジをさらに苛立たせる。

「私は、お前ならプロになれると思っていた」

「なれただろうね。ボクの才能なら」

「その自意識過剰な発言も、今のお前が言うなら、ただの戯言だ。行動で証明して見せろ。

 お前はこんな島で終わっていいようなファイターじゃないんだ……!!」

「できない理由があるんだよ。知っているだろう? ボクは父の跡を継がなければならない。そういう星の下に生まれたんだ」

「格好をつけた台詞で誤魔化すな!!」

 怒号を発し、今にもヒビキに掴みかからんばかりの勢いで身を乗り出したセイジを止めたのは――

「あのー……」

 どこか間の抜けたマナの声だった。

「要するに、ヒビキさんがファイトできなくて、プロにもなれない理由は、お父さんの跡を継がないと……つまりは村長にならないといけないから、なんですよね?」

 一触即発の雰囲気の中、いつも通りのおずおずとした口調で喋る。図太いのか臆病なのかよく分からない少女である。

 そんな少女は、次にとんでもなく図々しい発言をして、少年達を絶句させた。

「なら、私が村長になってしまえばいいんじゃないでしょうか」

 先ほどの緊張状態より遥かに気まずい沈黙が教室中に満たされていく。

 さすがにその空気には耐えられなかったらしく、マナはしどろもどろになって弁解に努めた。

「ほ、ほら、私の両親は村役場の職員ですし。私もゆくゆくは、ヒビキさんと同じ職場で働くことになると思うので。そ、それなら職員も村長も同じかな、と……」

「……キミは本気で言っているのかい?」

 やがてヒビキは、珍しいことに笑みを消し、悪戯をした子どもをたしなめるような声音で問いかけた。

「……いえ。私としたことが、出過ぎたことを申し上げました。先ほどの発言は撤回致しますので、どうかお忘れ頂きたく……」

「待て!!」

 我に返ってあっさり引き下がろうとしたマナの肩を、アラシが掴んで止める。

「その言葉、続けてくれねえか?

 ひょっとしたら、俺はお前にとんでもないモノを押し付けようとしているのかも知れねえ……。

 けど、あのバカ野郎の考えを改めさせるには、もうお前の思いつきに頼るしかねえんだ。

 だから、頼む……」

 マナの肩を掴んで離さないまま、アラシが項垂れるように頭を下げた。

「私からも頼む」

 空いている肩に、今度はゴツゴツした大きな手が乗せられ、セイジが腰を直角に折り曲げて頭を下げた。

「アラシさん……セイジさん……」

 今までさんざん人に嫌がらせをしてきて、謝ったことすらないアラシが。

 誰にも頼らず、実際ひとりで何でもできてしまうセイジが。

 今は揃ってマナに頭を下げている。

 マナの細い肩には、あまりにも重たい宿命を背負わせようとしている。

 それでもいいと思った。

 アラシとセイジにはそれだけの恩がある。具体的にはアラシ1割、セイジ9割。いや。よくよく考えてみれば、アラシの頼みなど聞いてやる義理など無いのだが、セイジへの義理はそれを補って余りある。

「……ヒビキさん」

 アラシの手を払いのけ、セイジの手を優しく握ってそっとはずし、マナは改めてヒビキと向かい合った。

「もう一度、言います。私がヒビキさんに代わって村長になります。ですので、ヒビキさんはプロファイターとなって、世界に羽ばたいてください」

「……マナ。キミには無理だよ。村長の仕事はね、とても激務なんだ。キミのような小さな体じゃ、すぐに体を壊してしまうよ」

「いや、それならヒビキも無理じゃね?」

 からかうように、されど冷静に指摘したのはアラシだ。

「お前、そうとう体弱いよな? 1ヵ月に1度は熱出して学校休んでるじゃねーか」

 それにセイジも追従する。

「むしろ、こう見えてマナは頑丈だぞ。彼女が学校を休んでいるところや、体調が優れなさそうにしているところなど、私は見たことがない」

「馬鹿は風邪をひかないと言いますので」

 威張れないことに限って、マナは何故か自慢げに胸を張った。

「……仮にマナが村長になったとして、村役場の職員に空きができるじゃないか。それはどうするんだい?」

「私の両親は生涯現役を公言していますし、3つ下の妹もいます。あの子は私に似ずしっかり者で、すでに村役場で務める意思を固めています」

(まあ、こんな姉がいたらしっかり者になるよなぁ……)

 そんなことを言ってもマナが不利になるだけなので、アラシは誰にも聞こえない心の中で呟いた。

「……本気、なのかい?」

「本気ですし、正気です。何なら勢いに任せて、今からヒビキさんのお父様に直談判しにいってもいいくらいですけれど……私が如何に本気かを確かめたいのなら、もっと適した手段があるのではないでしょうか」

「……カードファイトかい?」

「はい。受けて、頂けますか?」

 今度はマナの方から、試すような視線をヒビキへと向けた。

「……フッ」

 ヒビキがようやく相好を崩し、彼らしい人好きのする笑みを浮かべた。

「そうだったね。ボクらは何かあれば常に、カードで語り、カードで悩み、カードで答えを出してきた。

 いいよ。今日だけは乗せられてあげよう」

 そう言って、ヒビキはカバンからデッキケースを取り出した。

(しっかりデッキは持ってきてんじゃねーかよ)

 ヒビキに聞こえて気を悪くされても困るので、これもまた心の中でアラシがツッコんだ。

「とは言え、ようやくここまで辿りついた」

 アラシと同じことを思っていたのだろうセイジが、口の端を小さく上げた。

「ああ、後はマナにすべてを託すだけだ。頼んだぜ……」

 祈るようなアラシの視線の先で、マナは先ほどまで使っていたデッキを片付けると、別のデッキケースをカバンから取り出した。

(デッキを変えるのか?)

 アラシが眉をしかめて訝しむ。

「それでは、はじめようか」

「はい。よろしくお願い致します」

 さすが天海学園というべきか、ファイトの準備が整うのは一瞬だ。

「「スタンドアップ! ヴァンガード!!」」

「《バミューダ△候補生 シズク》!」

「《菜の花の銃士 キーラ》!」

 

 

「《睡蓮の銃士 ルース》にライドします。

 ルースのスキルで、プラント・トークン2体をスペリオルコール。

 さらに、《鈴蘭の銃士 レベッカ》をコール。プラントトークンのパワーを+5000……」

「マナのやつ、いつの間に銃士を……」

 後攻のマナがG1にライドしたところで、アラシが呟く。

「マナは……たしか銃士は使わないと言っていたな」

 それにセイジも答えた。

 マナがネオネクタールを使い始めた理由は、元々それを使っていた先輩に憧れたからである。その女性は、特に銃士デッキを愛用していたのだが、マナはその遠慮がちな性格のため「私ごときが、あの方と同じ銃士を使うなど恐れ多くて……」などと理由をつけて、銃士以外のネオネクタールを使用していたのである。

「あれも彼女なりの決意の表れというわけか」

 セイジが改めて盤面に目を向けると、ヒビキはすでに3点のダメージを受けていた。

「私はこれでターン終了です。ターン終了時、レベッカのスキルでプラントを退却。このカードを手札に戻します」

「くくく……しっかりと銃士を使いこなしてるじゃねーか」

 アラシが楽しそうに笑う。

 銃士を操るマナの動きは淀みなくスムーズで、部活や大会で使っていなかっただけで、家では繰り返し動きを研究していたのだろう。

「ボクのターンだね。スタンド&ドロー!

 ライド! 《ジュエリィライト クラシーナ》!

 クラシーナのスキルで山札の上から3枚を見て……《レイニーティア ステッツァ》をコール。1枚を手札に加え、もう1枚は山札の下へ。

《甘美なる愛 リーゼロッテ》をコール。山札の上から1枚見て……《トップアイドル アクア》をコール。

 アクアのスキルでリーゼロッテを手札に戻し、1枚ドロー。手札から《類稀なる才覚 ラウラ》を捨てるよ」

(すげえな……毎度のことながら、デッキがガン回りしてやがる)

 2ヵ月のブランクなど無きに等しいとばかりに、ヒビキはヒビキで絶好調だった。

 気が付けば、3ターン目にも関わらず、ヒビキの盤面に6体のユニットが揃っていた。

「ステッツァのブースト! クラシーナでルースにアタック!」

「ノーガードです……」

「ドライブチェック! トリガーは無いね。

 ステッツァのスキルで、このカードを退却させ、1ドロー。さらに、ドロップゾーンのラウラをデッキに戻し、1ドロー」

「ダメージチェック……私もトリガーはありません」

「《確信的自信 ルサロス》のブースト、《鮮やかなる夢幻 アクティアナ》でヴァンガードにアタック!」

「《ダンガン・マロン》でガードします」

「《マーメイドアイドル セドナ》のブースト! 《トップアイドル アクア》でヴァンガードにアタック!」

「ノーガード。ダメージチェック……トリガーではありません」

 だがまだダメージは2点。マナがリードしている。

「私のターンです。スタンド&ドロー。

《パンジーの銃士 シルヴィア》にライドします。

《リコリスの銃士 サウル》をコール。サウルのスキルでヴァンガード後列のプラントを退却させ、山札の上から3枚確認……《月下美人の銃士 ダニエル》をスペリオルコールします。

 トリガーユニットをコールしたので、トリガー効果も発動します。パワーと(クリティカル)はすべてヴァンガードに!

 レベッカをコールして、プラントにパワー+5000!

 バトルです! パワー10000になったプラントでアクアにアタック!」

「アクティアナでインターセプトだよ」

「ダニエルのブースト! 合計パワー25000、★2のシルヴィアでヴァンガードにアタックです!」

「フッ。ヴァンガードにパワーと★を集中させての速攻など、もうボクには通じないよ!

 あまねく治癒の歌声よ、守護者となりて我らを護りたまえ!

 ガード!! 《世界を包め愛の歌 ベネデッタ》!!

 そのスキルで、シルヴィアの★を-2する!」

「……治ガーディアン」

 マナが小さく呻いた。

「いや、ルサロスもそうだが、何で8月に引退宣言したやつが、堂々と最新カード使ってんだよ」

 アラシは呆れながら、ヒビキに聞こえないよう小声でツッコミを入れた。

「ふっ。ヒビキがヴァンガードを忘れられるわけもあるまい。あいつはそういう男だ」

 一方のセイジは嬉しそうに笑っていた。

「そうなんだろうけど、やっぱ釈然としねぇー」

 これでマナに大勝して、「ボクの意思は変わらない。ヴァンガードを辞めるよ」とか言い出しても、説得力が無さすぎる。

「うう、どうせダメだろうけど、ドライブチェック……トリガーではありません。

 レベッカのブースト、サウルでヴァンガードにアタックします」

「《凛々しき瞬き ラトカ》でガードだよ」

 続くアタックもあっさり防がれ、マナはターンエンドを宣言する。

「ボクのターンだね! スタンド&ドロー!!

 深き闇に眠りし静かなる才能よ。深海より音を震わせ、響け!

 ライド! 《ベルベットボイス・レインディア》!!」

 迷いの森の奥深く。銀髪の人魚が湖に腰かけ、透き通った水面に尾びれを遊ばせていた。

 それはこの湖に住まう妖精かと見紛うほどの美しさだったが、彼女はまごうことなき余所者であり、ここにいるのは仕事のためである。

 メガラニカの歌姫、レインディア。ズーにおける特別出張ライブ、間もなく開演の時。

「フォースⅠを右前列のリアガードサークルに。

 その上にリーゼロッテをコール! 山札の上から1枚見て……《陰の主役 ヒルダ》をヴァンガードの後列にスペリオルコール!

 バトルフェイズだよ!

 ルサロスのブースト! リーゼロッテでヴァンガードにアタック!」

「ノーガード。ダメージチェック……トリガーではありません」

 これでマナのダメージも3点。

「セドナのブースト! アクアでヴァンガードにアタック!」

「《ダンガン・マロン》でガード! サウルでインターセプトです!」

「ヒルダのブースト! レインディアでヴァンガードにアタック!」

「《清心の花乙女 フィオレンサ》! レインディアの★を-2します!」

 シルヴィアを守るようにして大輪の白蓮が咲き、戦いの意思を奪う歌声を遮断した。

「おっ! マナも治ガーディアンか」

「当然だ。治ガーディアンは、ヒビキだけの専売特許ではない」

 アラシとセイジが楽しそうに話し合う。

「フッ。やるね。

 ツインドライブ!!

 1枚目、★トリガー。……★はレインディア。パワーはヒルダに。

 2枚目、こちらはトリガーではないね。

 そして、バトル終了時! 手札を2枚捨てることで、レインディアのスキル発動!!

 山札の上から10枚を公開するよ。

《ドッキンシューター ペレーア》

《天真爛漫 メルニル》

《包み込む心 リリー》

《泡立つ激励 ピピレア》

《学園の綺羅星 オリヴィア》

《繋がる絆 ファネッサ》

《ハートを独り占め アネシュカ》

《あなたに届け パーシュ》

《孤立の静淑 レフィアレード》

《煌きのお姫様 レネ》

 ふふ、どの子も皆、かわいいね。

 さて! 公開されたカードがすべて別名だったので、ボクはこの中から1枚を選び、ライドできる!

 この舞台には、キミこそが相応しい!」

 10枚のうちから1枚のカードをピッと抜き出し、それをヴァンガードへと優しく重ねる。

「掌握せよ! 世のすべてを手中に収めるがいい!!

 スペリオルライド! 《ハートを独り占め アネシュカ》!!」

 物静かで大人びた雰囲気を漂わせるレインディアとは対照的な幼い容姿のマーメイドが、桃色の短いツインテールをぴょこんと跳ねさせ、水面からレインディアと入れ替わるようにして飛び出した。

「フォースⅠはヴァンガードサークルに!

 そして、アネシュカのスキル発動! 山札の上から10枚を公開! ……すべてが別名だったので、ボクはフォース、アクセル、プロテクトを得る!」

 惑星クレイからも愛される無垢で裏表の無いマーメイドの少女は、その祝福(ギフト)を最大限に受け取ることができた。

「フォースⅠを左前列のリアガードサークルに! アクセルⅡサークルを置いて、1枚ドロー! プロテクトⅠを手札に加える!

 さあ! ヒルダのブースト! アネシュカでヴァンガードにアタックだ!!」

(レフィアレードまでデッキに入れてる……じゃなくて、オリヴィアもあったのに、アネシュカを選んだ?)

 ヒビキの意図が読めず、マナは首を傾げた。手札の完全ガードに指で触れ、脳をフル回転させる。

「……ノーガード、です」

「ドライブチェック……残念。トリガーは引けなかったね」

「ダメージチェック……私もトリガーは無いです」

「アネシュカはレインディアに戻り、フォースⅠはアクセルサークルへ。

 ボクはこれでターンエンドだ」

「私のターンです。スタンド&ドロー」

 マナは初手から温存していた切り札を掴むと、意を決して引き抜いた。

「ライド! 《リコリスの銃士 ヴェラ》!!」

 一迅の風が吹き、彼岸花の意匠を凝らした軍服と、それを纏った女性の黒髪を優しく揺らす。

 女性はこちらに気付いたかのように振り向くと、整った顔立ちを僅かに動かして苦笑したような表情を形作る。

『ようやく銃士(わたしたち)を使ってくれたな、我が主よ(マイ ヴァンガード)。光栄の至りだ』

 その声は、イメージを越えて、マナにもはっきりと聞こえてきた。

(はい。お待たせして申し訳ございません。どうか貴方達の力をお貸しください。ヒビキさんに私の覚悟を伝えなければならないんです)

『心得た。この刃は貴女の為に』

 黒髪の銃士は引き抜いた刀を縦に構えると、マナに向けて一礼した。

「フォースⅡを右前列のリアガードサークルへ!

 プラントとダニエルを退却させ、ヴェラのスキルを発動します!

 ドロップゾーンの★トリガーを2枚山札に戻し、デッキの上から5枚見て……《牡丹の銃士 トゥーレ》と《パンジーの銃士 シルヴィア》をスペリオルコールします! 銃士を2体コールしたので、このユニットのドライブ+1!

 さらにシルヴィアのスキルでプラントをコール! シルヴィアを退却させ、トゥーレのスキルも発動! 山札の上から3枚を見て……きました! 《紅団扇の銃士 ガストーネ》と《リコリスの銃士 サウル》をスペリオルコール!

 ガストーネは自身のスキルでパワー+10000!

 プラントを退却させ、サウルのスキルも発動! 山札の上から3枚を見て……トリガーユニット《月下美人の銃士 ダニエル》をスペリオルコール! そのトリガー効果をすべてヴェラに与え、ヴェラが得たパワーは前列リアガードすべてにも与えられます!」

「すばらしい……」

 ヒビキは手札をテーブルに置き、マナに惜しみない拍手を送った。

「はじめてで銃士をここまで使いこなせるなんて。本当に成長したんだね、マナ」

「いいえ。私などまだまだです。前列にはサウルとマルティナを並べたかったところですし、後列にはガストーネを3体並べることが理想でした」

「それは腕の問題じゃなく、運の問題じゃねえか?」

 アラシが今日何度目かのツッコミを入れた。

「ですので、私の成長はあなたに勝つことで証明します!

 バトルです!

 ダニエルのブースト! ヴェラでヴァンガードにアタック!」

「《大切なフレーズ レイナ》、《手作りの愛情 エレナ》でガード! そのアタックは通らないよ」

「トリプルドライブ!!!

 1枚目、★トリガー! ★はサウルに! パワーはヴェラに与え、前列リアガードにも同じだけのパワーを!

 2枚目、★トリガー! ★はトゥーレに! パワーはヴェラに!

 3枚目、★トリガー! ★はトゥーレに! このパワーも、もちろんヴェラに!」

「3連続★!? いや、サウルも含めりゃ、4連続★か!」

 アラシが歓声をあげて喜ぶ。

「だが、ヒビキはそれも予想していたようだ……」

 一方のセイジは、鉄面皮に渋面を滲ませていた。

「レベッカのブースト! ★3のトゥーレでヴァンガードにアタック!」

「《恋への憧れ リーナ》と《沸き立つ共感 ベッティ》でガード! アクアとリーゼロッテでインターセプト! ……さらにルサロスも後列からインターセプト!」

「……っ! ガストーネのブースト、サウルでアタック」

「プロテクトで完全ガードだよ」

「……ターンエンド、です」

 マナが弱々しくターンエンドを宣言し、アラシ達は先のターンを振り返る。

「そうか。ヒビキのやつ、完全ガードを握ってなかったのか」

「ああ。だからこそアネシュカでプロテクトを取得したのだ。マナが3枚の★トリガーを引くことを前提にな」

「どんな予想だよ」

「だがまだマナは4点だ。手札の質もいい。ヒビキのターンを耐えることができればまだ……」

「《めくるめく夢物語 ぺリシア》をコール。手札から《巡り巡る奇跡 アトロキア》をドロップに置き、1枚ドロー。このユニットのパワー+10000、★+1。

 ……ありがとう。ボクのピンチに駆けつけてくれたんだね」

 ヒビキの優しい声音に、不穏な空気と悪寒を感じ、アラシ達はおしゃべりを止めて、盤面に目を向けた。

「《パールシスターズ ペルル》、《パールシスターズ ペルラ》をコール」

「!?」

「……っ」

「……」

 その場にいる誰もが二の句を告げられなかった。

「これでボクの手札は0枚になった。しかし、ボクの前列リアガードは、どの子も★2だ。」

 ヒビキだけが、それがさも当然のことであるかのようにファイトを続けている。

「バトルだよ!

 ペルルでヴァンガードにアタック!」

「《ダンガン・マロン》と《清心の花乙女 フィオレンサ》でガードです!」

「アクセルサークルのぺリシアでアタック!」

「《花園の乙女 マイリス》でガード!」

「セドナのブースト! ペルラでヴァンガードにアタック!」

「マイリスでガード! サウルとトゥーレでインターセプト!」

 しかし、マナも諦めていない。怒涛のようなヒビキのアタックを、丁寧なガードで捌いていく。

「……銃士を使いこなしていることなどよりも、今のマナの方がずっと立派だと、私は思うよ」

 セイジがぽつりと呟き。

「……だな」

 アラシも同意した。

「ヒルダのブースト! レインディアでヴァンガードにアタック!!」

「……ノーガード、ですっ」

 マナは意を決して宣言した。

 唯一の★1であるこのアタックをノーガードで凌ぐしかない。

「ツインドライブ!!

 1枚目、トリガー無し。

 2枚目、……★トリガーだよ。★はレインディアに。パワーはペルルに」

「……そう、ですよね。

 ダメージチェック。

 1枚目、トリガーではありません。

 2枚目、……っ!! 治トリガーです!! ダメージ回復して、パワーはヴェラに!」

「おめでとう。それはきっと、頑張ったキミへのごほうびだよ。

 それでは、ボクは手札を2枚捨てて、レインディアのスキルを発動する! 山札の上から10枚を確認……」

 マナはまだ手札に完全ガードを残している。スペリオルライドするユニット次第では、逆転の目はあった。

「水面に煌めく綺羅星よ。銀河へと続く階段を駆け昇り、闇夜を照らす一等星となれ!

 スペリオルライド!! 《学園の綺羅星 オリヴィア》!!」

 そしてヒビキは、そんな希望をいとも容易く打ち砕く。

「ヒルダのブースト! オリヴィアのアタック時にスキル発動!

 それぞれ別名のリアガードをスタンドさせ、3体以上スタンドさせたのでオリヴィアの★+1!!」

「……オリヴィアのアタックを防いだとして、残り3回のアタック。それらの★はすべて2か」

 セイジが無念そうに呟いた。

 それらを防ぎきることのできるカードはマナの手札に残っておらず、治トリガーも3枚が公開されている。

 終わりを迎えてみれば、実にヒビキらしいパーフェクトゲームだった。

 一時は対戦相手に花を持たせ、自らのピンチを演出しつつも、最後は必ず華麗な逆転劇へと繋がるよう計算し尽くされたファイト。

 それは、上質な推理小説のように巧妙で、甘い恋愛小説のように人を魅了し、美しい幻想小説のように心を昂らせる。

 綺羅ヒビキのファイトは、まさしく壮大な物語であり、ひとつの芸術だった。

 それを理解した瞬間、マナの大きな瞳から、ぽろぽろと涙が零れた

「!? マ、マナ!? 泣いてはいけないよ! ヴァンガードは楽しくファイトしなくちゃ! ……ごめんよ、久しぶりのファイトで手加減ができなくて」

 大慌てで慰めようとするヒビキに、アラシが茶々を入れる。

「バカか。100連敗してヘラヘラしてるような女が、たかが1回ボコボコにされたくらいで泣くかよ」

「え? じゃ、じゃあ、何で?」

「ちがうんです……負けるのが嫌なんじゃなくて……ヒビキさんの盤面が、あまりにも綺麗で……」

 ぬぐってもぬぐっても溢れ出す涙でびしょびしょに頬を濡らしながら、マナが途切れ途切れに言葉を紡いでいく。

「このファイトを見れなくなるのが……嫌だなって、思ったんです……」

「マナ……」

 普段は饒舌な美少年が、この時ばかりは言葉を失っていた。

「お願いです、ヒビキさん。ヴァンガードを辞めるなんて言わないでください。私は、ヒビキさんのファイトをもっと見ていたいです。私なんかよりもずっと強い人とファイトして、さらに輝くヒビキさんを見たいんです。それさえ叶うのなら、私はどんな地獄に落ちようと、必ず笑顔でいられます!

 ファイトで証明することはできなかったけど……それが、私の率直な想いです!!」

「そしてそれは我々の総意でもある」

 セイジとアラシが、マナの隣に並び立ち、ヒビキと向かい合う。

「セイジ……アラシ……マナ……」

 ヒビキの頬を一筋の涙がつたった。

「いいのかい? キミ達はヴァンガードを辞めることになるのに。すべてをキミ達に押し付けて、ボクだけが島を出てヴァンガードを続けても、本当にいいのかい?」

「チッ。やっぱりそんなことを気にしてやがったのか」

 アラシがボサボサの頭をバリバリとかき乱し、「お人好しが」と吐き捨てた。

「俺はな、お前と違って要領がいいからよ。親父の船を継ぐことになっても、ヴァンガードを辞めるつもりはないぜ。たとえ海の上だろうと、俺はカードを触り続けてやる。

 けど、ヒビキ。お前は違うだろ? 不器用で、ヴァンガード以外はからきしで、それでもファイトだけは腹立つほどに強ぇ。

 そんなお前が村長になったとしても、村の寿命が縮むだけだ。さっさとプロになって、島から出ていきやがれ」

「……ひどいな」

 ヒビキが泣き笑いのような複雑な表情を浮かべた。

「私もアラシと同じだ。漁がどれだけ忙しくなろうと、ヴァンガードを辞めるつもりはない。何とか両立の道を探していくさ」

「というか、ヒビキさんより上の先輩方も、皆、こっそりヴァンガードを続けてますよね? 去年の年末も、集まれる人で集まって『1年ぶりのファイトだー』って騒いでましたよ。お酒飲みながら」

「え? そ、そうなのかい?」

 アラシ、セイジ、マナから次々と明かされる驚愕の事実に、ヒビキは目を丸くする。大真面目に引退しようとしていたのが、自分だけだったとは。

「こんな楽しいもん、そう簡単に辞められるかよ……ってこったな。

 くくく……その集会に参加するのが、今から楽しみだぜ」

「酒は20歳になってからだがな。

 そういうことだ、ヒビキ。我々は我々で上手くヴァンガードと付き合っていく。お前は何も気にすることなく、お前の……いや、天海の強さを世界に知らしめてくれ」

「お前が世界一になれば、お前と互角の戦いを繰り広げた俺も、世界で2番目に強いことが証明されるんだ。けけっ、戦わずして世界2位になれるとは、楽な話だな」

「ヒビキに10回に1回勝てればいい方のお前が何を言うか」

「あ? お前の勝率もそのくらいだろうが」

 そんなことを言い合いながらケンカを始めるアラシとセイジを見て、ヒビキとマナが同時に「ふふっ」と微笑んだ。

「マナ。キミ達の気持ちは伝わったよ。今度、一緒に父さんのところへ相談に行こう。簡単には許してくれないだろうけど、言葉を尽くして説得してみせるさ」

「はい。どれほどお役に立てるか分かりませんが、私も助力は惜しみません」

 ヒビキの差し出した手を、マナはそっと包み込むように握りしめた。

 

 

「さあ、セイジ。今日はボクのレフィアレードとファイトしてくれたまえ」

「いいだろう。私の蒼翼テトラドライブで返り討ちにしてやろう」

「いや、それって強いのか? 最初のツインドライブで治トリガー引けないとテトラドライブも止まるだろうが」

「私はそれに5連敗しましたけどね。ふふふ……」

 天海島唯一のカードショップ『アルカナ』では、常連である3人の少年と1人の少女が騒いでいる。

 そのいずれもが、途轍もない才能を有した子ども達だ。

 それは自分が唯一持ち得なかったものである。

 と『アルカナ』の店主は自嘲した。

 現代のカードゲーム知識に染まっていない無垢な原石を求めて、ヴァンガード未開の地である天海島に店を開いた。

 男の読み通り、その島には才気溢れる24人の少年少女がいた。彼らに自らの技術を与え、才能と技巧を兼ね備えた究極のファイターを生み出す。そこまでは計画通りだったが、島民の結束が強すぎて、島を出ていこうする子どもがいないのは誤算であった。

 男は新聞を読むフリをしながら、少年少女の話し声に聞き耳を立てる。

「レフィアレードのスキル発動! このユニットをレストし、3枚を公開するよ……おや、3枚とも★トリガーだね」

「おい、なんだその引きは」

「ヒビキさん、島を出てプロになることが許されてから絶好調ですね」

「いや。こいつはいつもこんな感じじゃねえかな」

 だが、子ども達の中でも最も才能に恵まれた、男のもっとも目をかけていた少年が、ついに島を出ることになったらしい。

(俺の頭を飛び越えていった天才どもよ。俺はついに、お前たちに勝るとも劣らない才覚を見出したぞ。5年後……いや、2年後には、ヒビキが証明してくれるだろう。真に強かったのは俺だったと言うことを……)

 男は子ども達のファイトを横目で見守りながら、新聞紙の裏でほくそ笑んだ。




3年生編10月の本編をお送り致しました。

なんと2話連続で主人公不在。
全24クランを登場させると決めた時点で群像劇になることは覚悟していましたが、ミオが好きで根絶少女を応援してくださっている皆さま方には申し訳ないです。
次回はしっかり登場するので、お楽しみにして頂ければ幸いです。

そして、もうひとつ謝罪を。
『共進する双星』のえくすとらを発売日前後に公開すると予告しておりましたが、
公開日を来週の月曜日とさせて頂くことになりました。
えくすとらでネタにする前に、どうしてもルールを確認しておきたいカードがありまして、事務局に問い合わせをしていたというのが理由になります。
本編と同時公開するのも、読者様が大変だと思うので、公開日を分けさせて頂きました。

そのようなわけで、次回は10月4日!
『共進する双星』のえくすとらでお会いできれば幸いです。
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