根絶少女   作:栗山飛鳥

32 / 94
11月「世界の半分が、むなしく闇に沈んだ」

 音無(おとなし)ミオはスマホと向かい合っていた。

 就寝前のちょっとした空き時間をスマホと過ごすこと自体、今時の若者としては珍しいことではないが、その表情は真剣かつ鬼気迫るものがあり、それは単なる暇つぶしのようには到底見えず、常に無表情で何事もソツ無くこなす彼女がそのように感情を表に出すことは、非常に珍しいことであった。

 そんな彼女の手元で、スマホが大きく振動する。間の悪いことに、着信があったようである。

 ミオは着信を拒否しようとスマホの画面に指を伸ばすが、そこに表示された名前を見て、さすがにそれを無視することもできず、彼女はしぶしぶその電話に出た。

「もしもし、ユキさん?」

「あら? 何で私だと分かったのかしら?」

 聞き慣れた――今となっては少し懐かしくもある――少しとぼけたような声が、薄いスピーカーを通して聞こえてくる。

 たったそれだけで、白い着物を纏った凛とした佇まいが、鮮明にイメージされた。

 白河(しらかわ)ミユキ。

 ミオの先輩にして、恩人にして、いずれ越えるべき目標でもある。

「スマホに名前が表示されていましたので」

「あらそう。最近の電話ってすごいのね」

 まさか未だに黒電話を使っているのかと、ミオは口に出さず訝しむ。

「改めましてこんばんは。白河ミユキです。夜分遅くにごめんなさいね」

「まだ20時ですが」

「今、お時間は大丈夫かしら?」

「手短にお願いします。私はヴァンガードZEROのデッキ掲示板で、根絶者デッキにイイネするので忙しいので」

「どうやら暇そうね。

 もうすぐ文化祭の季節だけれど――」

「相変わらず人の話を聞いてくれませんね」

「文化祭の季節だけれど、今年のカードファイト部では何をやるのか決まっているのかしら?」

「いいえ。たしかにカードファイト部は、分類で言えば文化部なのでしょうが、何かしら形として残るものを作っているわけでもない私たちが、文化祭で何かを発表する必要性が感じらませんので」

「けど、文化部は何か一つ催し物を企画するのが規則でしょう?」

「それはそうですが」

「そこでね。私からひとつ提案があるの。実は私、すごい人とお知り合いになってね。

 もしあなたが望むのなら、その人をあなたの文化祭に招待してあげてもいいわ。きっと盛り上がること間違いなしよ」

「話が見えません。いったい誰の話をしているのでしょうか」

「プロファイター世界ランキング1位。ダルク・ヴァーグナー」

「……ほう」

 その名前は、世情に疎いミオですら知っていた。

 いや、世界でその名を知らぬ者の方が珍しいだろう。

 カードゲームは今や世界中に普及しており、その中でもっとも遊ばれているのがヴァンガードである。

 それのプロ選手、ましてトップランカーともなれば、野球やサッカーのスター選手に匹敵する人気と知名度を誇る。

 ヴァンガードを始める前、中学生時代のミオですら、名前だけなら聞いたことがあった。

「それは興味深いですね」

「でしょう? 失礼さえなければ、彼の扱いはカードファイト部に一任するわ。サイン会を開くにしろ、インタビューをするにしろ、好きにしてちょうだい。

 ……もちろん、カードファイト部と生ファイトなんてのも面白いかも知れないわね」

「わかりました。明日、部員と相談してみます。大まかな計画は明後日まで。具体的な計画は1週間以内でユキさんに共有させて頂きます」

「ええ。相変わらず話が早くて助かるわ」

「ありがとうございます。楽しみにしています」

「うふふ。どういたしまして。けど、文化祭の出し物なのだから、自分本位の計画を立てちゃダメよ?

 去年の根絶者喫茶みたいな、ね」

「む。どうしてそれを」

「私は響星の卒業生よ? 可愛い後輩の出し物を見に行くのは当然のことでしょう? ……まあ、入口に立てられた、やたら不気味な《発酵する根絶者 ガヰアン》の看板を見て、他人のフリをしながら、その場を離れたのだけれど」

「かわいい系を目指したのですが」

「だからと言って、ガヰアンにフリフリのお洋服を着せて、パンケーキを持たせて『いい感じに発酵してるよ!』と言わせることはなかったと思うわ」

「それは部員にも指摘されましたが、部長権限で押し通しました」

「暴君ねぇ。いったい誰に似たのかしら」

「あなたです」

 そんな時間を忘れるほどに楽しい(?)会話は、日付が変わるまで続き、やがてユキが名残惜しそうな声をあげた。

「あら? もうこんな時間ね。すっかり夜更かししてしまったわ」

「まだ0時半ですが」

「それを夜更かしと言わず何と言うの? 早く寝なさい」

「わかりました」

 いつも以上に無感情で気の無い返事である。

「おやすみなさい、ミオ」

「おやすみなさい、ユキさん」

 名残惜しそうに、互いに別れを告げると、ガチャンという聞き慣れない音と共に通話が途切れ(やはり黒電話だったらしい)、静寂が部屋を支配する。

 ミオは小さな吐息をひとつついてその余韻を吹き消すと、根絶者デッキにイイネする、己の使命を再開するのであった。

 

 

 そして、文化祭当日――

 冬服の上にセーターを着込んでなお少し肌寒くなってきた早朝。響星学園の校門前で、音無ミオ、藤村(ふじむら)サキ、そして時任(ときとう)レイら、カードファイト部の3名は、世界一のプロファイターを出迎えるため、その到着を待っていた。

「あばばばば、あ、あ、あ、あのダルクさばがうちの学校にににににに」

 サキが声とメガネと全身を震わせながら、何かうわごとのような声をあげている。目の下には大きなクマができており、昨晩はまったく眠れなかったのであろうことが、容易に想像できた。ミーハー気質な彼女にとって、世界でもっとも有名なヴァンガードファイターの到来は、刺激が強すぎたようだ。

 今日の彼女は使い物にならないですねと、ミオは内心でシビアに評価する。

「無理もないよー。ダルク・ヴァーグナーと言えば、1年すら維持の難しい世界ランキング1位の座を4年も守り続けてるすごい人なんだよ! それもまだ28歳と若くて、ルックスもイケメン!! サキちゃんじゃなくても緊張しちゃうよ」

 サキと同様にプロファイトの観戦が趣味のレイがフォローする。

「ヒビキさんがブームになっていた頃も思いましたが、ヴァンガードファイターにルックスは関係あるのでしょうか」

 ミオがもっともな疑問を口にし、首を傾げた。

「アタシも本音ではそう思うけど、世の中そう簡単に見た目と中身を割り切れるものじゃないんだよ」

 レイもまたもっともな意見を返す。

「それに、自覚ないかもだけど、お姉ちゃんも期待の超美少女高校生ファイターだって、男の人から絶大な人気なんだよ?」

「そうなんですか?」

「やっぱり自覚ないー。身の回りには気をつけてよ? ストーカーされたり、大切なものを盗まれても知らないからね」

「私から根絶者コレクションを盗もうものなら、地獄の果てまで追い詰めて、八つ裂きにしたあげく、溶岩にばら撒いてあげますが」

「怖っ!! じゃなくて、そんなの盗まれる心配はしてないよ!?」

 姉妹が会話に花を咲かせていると、サキが「あべばっ!(あれはっ!)」と叫んで震える指をさす。ほとんど照準の合っていないその先には、こちらに向かってゆっくりと走ってくる豪華な黒塗りのリムジンがあった。

 それはミオ達の待つ校門前に停車すると、助手席から出てきた黒服の男が、手慣れた様子で後部座席のドアを開ける。

 そこから現れたのは、腰まで届くプラチナブロンドの長髪が印象的な、黒いコートを羽織った痩身長躯の美青年だった。

「グーテンモルゲン! 響星学園カードファイト部の皆さん! お会いできて光栄です!」

 美青年が人好きのする笑顔を浮かべて、ミオ達に歩み寄る。

「あばば!

 わ、わばし、ふびぶらばきとぼぼしばす!(わ、私、藤村サキと申します!)

 ぶしつけべぼうしばけぼざいばせんが、ばびんぼ……(ぶしつけで申し訳ございませんがサインを……)」

 のんびり屋な普段の彼女らしからぬ俊敏さで、カードを差し出そうとしたサキを押しのけ、ミオが一礼した。

「はじめまして、ダルク・ヴァーグナーさん。私は響星学園カードファイト部の部長を務めております、音無ミオと申します」

「これはご丁寧に、音無ミオさん。お噂はユキさんからかねがね伺っております。

 僕はダルク・ヴァーグナー。プロファイターです。本日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。日本語、お上手ですね」

 ダルクの差し出してきた綺麗な手を握り返しながら、ミオが言う。この日のためにドイツ語も習得してきたのだが、必要は無さそうだった。

「ヤー! 日本と言えばヴァンガード発祥の地! とても興味あります! このような機会を頂けて、とても嬉しく思います!」

 そう言って、少年のような笑みを浮かべるダルクに、世界で一番強いファイターだと言う印象は、あまり感じられなかった。

 ミオの知るファイターの中では、ヒビキが近いか。圧倒的強者であるからこそ、誰よりも余裕があるのだ。

「そこのあなた! サインなら今すぐしてあげられますよ?」

「え? いいんですか!?」

 ミオに突き飛ばされて正気に戻ったサキが、急に声をかけられて、驚きのあまり目を見開いた。

「もちろんです! ですが、そのクランのカードでいいですか? たちかぜのカードにもサインしてあげますよ?」

「あ、ありがとうございます!!!」

 サキが最初に差し出したのは、ダルクに気をつかってか、彼のクランに属するカードだったのだが。

(サキさんの使っているクランを見抜いた?)

 ミオはそのことの方が気になった。

「わ、私の《ドラゴンエッグ》に神が宿りました……」

 サキがサインカードを太陽に掲げて喜んでいる。

「あ! アタシもサインお願いしていいですか!?」

 それを羨ましく思ったのか、レイもすかさず手をあげておねだりする。

「いいですとも! キミのクランはリンクジョーカー……いや、ギアクロニクルですね?」

「はい! 時任レイです! よろしくお願いしまーす!」

(サキさんは全国大会の出場経験がありますが、レイさんにはなかったはず……)

 サキの場合はヴァンガード甲子園の放送を見ていたとして、まだ説明がつくが(国籍すら違う、いち高校生のファイトを、世界で活躍するプロが観戦していたとも考えにくいが)、レイの場合はいよいよ説明がつかない。

 つまりこの青年は、本当にファイターの顔を見ただけで、その人の使っているクランを言い当てているのだ。

(なるほど。これが世界一のファイターですか。たしかに底知れないものがありますね)

 ヒビキと相対した時にも感じたものと同質の、そして、それ以上の脅威をミオは覚えた。

 プレイングや、デッキ構築論だけなら、ミオは自分も相当のものであると自負している。だが、だからこそ、そういった計算や理屈とは無縁な、人とは違うものが見えている異能のファイターが一番恐ろしい。

 ……まあ、小金井フウヤや、早乙女マリアに言わせれば、自分もその分類らしいが。根絶者以外のカードを入れないリンクジョーカーでここまで勝てるなど、本来ならありえないらしい。意味がわからない。根絶者は最強なのだから、根絶者だけ入れるのが強いに決まっている。

「ミオさんのクランはリンクジョーカーかな? サインはいかがですか?」

「いえ。せっかくの申し出ですが、辞退させて頂きます。校門前をサイン会場にするわけにもいきませんので」

 ただでさえ人通りの多い場所で、世界的な有名人がたむろしているものだから、いよいよ学生達の視線が無視できないレベルになってきた。今は文化祭の準備があるので自制しているようだが、いつ彼らがダルクに殺到するかわからない。

「ふふ。ユキさんから聞いていた通りの人ですね。人と馴れ合わず、相容れることもない孤高の少女。にも拘わらず、人のことを思いやれる、とってもいい子だと」

「そんな女の子は知りません。私が思いやるのは根絶者だけです」

「あと、ツンデレだと」

「…………」

 まるでその場にユキがいて、からかわれているかのようだった。ダルクがユキの言葉を借りているからか、性格が似ているのか。恐らくは後者だからこそ、ユキとダルクは知り合い、呼べば日本にまで来てくれるほどに親交を深めることができたのだろう。

「……とりあえず部室へ行きましょう。最終確認もしておきたいですし。その後は、何も無い場所ですが、しばしお寛ぎください」

「オー、ダンケシェーン。これが日本人のケンソンというやつですね?」

「うーん。申し訳ないけど、本当に何も無い部屋なんだよね」

 レイが困ったように口を挟む。世界的なプロファイターを迎えるにあたって、あの部室ほど失礼も無いだろうが、こればかりはどうしようもない。ミオ達にできたことは、学園の応接室から、やたら豪華なソファを拝借してきたことぐらいである。

「なるほど。ワビサビというやつですね!」

「それも少し違うんだけど、そういうことにしておいた方がいいのかな?」

 レイがそう言って首を傾げた。ダルクに聞こえているのでまったく意味は無かったが。

 なお、実際に部室を訪れたダルクは、少ないながらもカードが丁寧に並べられた環境に好印象を抱いてくれたようだった。

 

 

 ここはダークゾーンと呼ばれる無法地帯。

 紫色の濃霧がたちこめ、草木も枯れ果てる不毛の地で、二人の英雄が、その地を支配する魔王と対峙していた。

 いや、追い詰められていたと言っていい。

 太陽の如き黄金の鎧を纏った、まだあどけなさを残した顔立ちの青年騎士、グルグウィント。

 宝石の飾られた軽鎧を纏った、凛々しい顔立ちの女騎士、アシュレイ。

 単騎で千の魔物を討ち果たせる、文字通り一騎当千の英雄達が、ただ一体の悪魔に。

 その悪魔の名はブルブファス。

 ダークゾーンのみならず、惑星クレイに悪名を轟かせるアモンやアスタロトと比べれば若いが、一片の慈悲を感じさせない非情さと、生まれ持った強大な魔力を武器に、怒涛の勢いで版図を広げる新鋭の魔王である。

 ブルブファスの胸部に埋め込まれたオーブのような器官が生物のように蠢き、そこから一条の光線が放たれた。

 グルグウィントとアシュレイが二手に分かれるようにして跳び、その間を紫色に輝く閃光が奔り抜ける。魔力の焦熱に焼かれた大地はマグマとなって噴出し、地上に一生消えない傷跡を残す。

 ダークゾーンが荒廃しているのは、立地の関係もあるが、この地の支配権を巡って相争う、魔王達の権力闘争による影響が大きかった。

 グルグウィントは何かを決意した表情で、アシュレイに視線を向ける。その意図に気付いたアシュレイは、ほんの一瞬、逡巡した様子を見せるも、すぐさま覚悟を込めて頷いた。

 グルグウィントが微笑み、即座にその表情を引き締めると、自らの数倍はあるブルブファスの巨体に特攻する。そして、真正面から放たれたブルブファスの熱光線を前に構えた剣で真っ二つに斬り裂いた。

 小賢しいとばかりに、ブルブファスが熱光線の出力を高めていく。瞬間、太陽が爆発したかのような輝きが暗黒の地に炸裂し、黄金色の燐光がちらちらと降り注いだ。

 アシュレイは振り返らず、雄叫びをあげて跳躍し、虹色の軌跡を描く一閃によって、ブルブファスの右腕と右翼を斬り落とした。頭部を狙った一撃だったが、ブルブファスが僅かに身をよじらせたため、必殺には至らなかった。だが、ブルブファスが全力で魔力を放出した後、しばらく光線を放てなくなることは、これまでの戦いで把握している。

 グルグウィントの犠牲に報いるため、アシュレイはブルブファスに引導を渡すべく剣を構え直す。

 ――その刹那。

 斬り落としたはずのブルブファスの右腕が、まるで別の生物のようにアシュレイへと飛び掛かった。それに薙ぎ倒されたアシュレイは、地面に深く爪を突き立てた右腕に、あえなく拘束されてしまう。

 右腕があった箇所からとめどなく紫色の血液を垂れ流しながら、ブルブファスがゆっくりとアシュレイに迫る。その胸部に埋め込まれたオーブに魔力が充填されていく。中央に光を灯したそれは、まるで瞳のようで。

 自分は死に魅入られた哀れな囚人だと自嘲する間も無く、アシュレイの視界を紫色の光が埋め尽くした。

 

 

「《深魔幻皇 ブルブファス》でヴァンガードにアタックです!!」

「つっ……ノーガード。ダメージチェック……わたくしの負けですわ」

「ダンケシェーン。素晴らしいファイトでした」

 ダルクのファイトが終わると同時、大歓声が響星学園のグラウンドから巻き起こった。

 ミオ達が文化祭で企画したイベントとは、ダルクと一般の参加者がファイトできるというものだった。

 最初はダルクの疲労を考慮し、5人のファイターを抽選で選ぶ予定だったが、本人は時間の許す限り挑戦者とのファイトを受け続けることを希望した。

 曰く「僕はどれだけファイトしても疲れないんです」とのこと。

 それについてはミオも同意だったので、途中で何度か休憩を挟むことを条件に加え、ダルクの案を採用させてもらった。必然、人が多く集まることが予測されるため、会場はグラウンドを使うことになった。

「す、すごい……。聖ローゼが手も足も出なかった……」

 観客の誰かが信じられないと言いたげに呟く。

 そして今は、トップランカーと対戦できるという噂を聞きつけた聖ローゼ学園カードファイト部の面々が、次々とダルクに挑み、あえなく返り討ちにあったところであった。

 それどころか、今は聖ローゼ学園を卒業し、大学生限定の大会や、アマチュア大会で華々しい結果を残している、早乙女(さおとめ)マリアと小金井(こがねい)フウヤも成すすべなく敗れている。

 中でも早乙女マリアは、1年前の話にはなるが、ミオが何度も挑戦して、一度も勝てなかったほどの強豪ファイターである。

「まったく。世界は広いですね」

 ミオは観客に同意するように頷いた。

「これが世界最強のファイターの操る、世界最強のダークイレギュラーズですか」

 

 

 ダークイレギュラーズ。

 惑星クレイのどこにも居場所を無くした、寄る辺なき異能者達の行きつく果て。そして、彼らの利用価値を唯一知る悪魔達からなる集合体である。

 ある時は異能者同士で肩を寄せ合い、ある時は悪魔が互いに互いを利用し合い、ある時は魔王が他者を一方的に支配する。

 今にも壊れそうなほど儚く、だからこそ美しい。奇妙で背徳的な協力関係がそこにはあった。

 

 

「やあ、ミオちゃん。今日は素晴らしいイベントを開催してくれてありがとう」

 後ろから声をかけられ、ミオが振り仰ぐと、そこには髪を金に染めた美少年がいた。いや、少年と呼ぶにはもう、顔つきが大人びすぎているか。

「む、さきほどこっぱみじんにされていたフウヤさん。おひさしぶりです」

「誰がこっぱみじんだ」

 半眼でツッコミを入れてから。

「とは言え、あの内容では善戦したとも言えないな」

 魅力的に苦笑する男の名は小金井フウヤ。ミオよりひとつ年上の大学一年生であり、ある時はエースとして、ある時は部長として聖ローゼ学園を率い、ミオと幾度も激戦を繰り広げたライバルである。

「ええ、見ていましたよ」

 ミオが制服のポケットからスマホを出して答える。

 ダルクはグラウンドの中心に建てられた、簡易なステージの上に設置されたファイトテーブル(いつもの勉強机ではなく、公式戦で使われているファイトテーブルで、ダルクの私物である。さすがプロ)でファイトしており、群衆に囲まれているため普通に観戦することは困難だが、テーブルにはカメラが設置されており、盤面なら手元の端末で確認することができた。

 ミオは主催者なので、本来なら不審者がいないか見回らなければならない立場なのだが、自分と同程度の実力者であるフウヤとのファイトはどうしても気になったため、その時ばかりは監視をサキに任せていたのだ。

「完敗ではあったけど、いい経験にはなったよ。ここまで清々しい負け方はひさしぶりだ。

 ミオちゃんは、ダルクさんとファイトをしたのかな?」

「いえ。さすがに準備が忙しく、そんな余裕はありませんでした。今もありがたいことに盛況で、とてもではないですが、主催者が手を挙げていい雰囲気ではありませんしね」

「うおー!! ボーイングソード・ラリアットー!!」

「なんの! ブルブファス・フライングプレス!!」

 今もテーブル上では聞き覚えのある声がダルクと熱戦を繰り広げており、その周囲をダルクとのファイトを希望するファイターが取り囲んでいる。

「それならしかたないな。

 けど、ミオちゃんはどうやってダルクさんを招待したんだい? トップランカーなんて、学生がアポイントメントを取ることすら簡単ではないだろう?」

「ああ、それならユキさんが……」

 ミオは、ダルクを文化祭に呼ぶことができた経緯をかいつまんで説明する。

「白河さん……あの人はいったい何者なんだ?」

「さあ?」

 ミオが首を傾げる。

 その白河ミユキは、この文化祭に姿を見せていない。裏方――もしくは黒幕――を好む彼女の性格もあるかも知れないが、スケジュールを1日空けることすら困難な人気プロファイターを拘束したことで生じる、方々への影響の後始末に追われているのかも知れなかった。

 彼女が何者であれ、頭の下がる思いである。

「ブルブファスで、ボーイングソードにアタックです! ブルブファス・サイクロン・パンチ!」

「ぐおー! 負けたー!!」

「ダンケシェーン。楽しいファイトでした」

 そんな話をしているうちに、聞き覚えのある声のファイトが終わったようだった。

「ありがとうございましたー! さあ、次にトップランカーに挑戦する命知らずのファイターはいったい誰だー!?」

 マイクを片手に司会進行を務めるレイが、人だかりに向かって呼びかけ、数多のファイターがこぞって手を挙げようとしたその時。

「次は俺達とやらせてもらおうか!!」

 有無を言わさぬ声が校門のある方角から放たれ、その動きを制止した。横暴とも言えるその声は、それだけの迫力と、確かな知名度を兼ね備えていた。

「天海だ……」

「天海が来た!」

 群衆が口々に叫ぶ。

 声の主、背の低いボサボサ髪の少年、葵アラシを先頭に、背の高い短髪の少年、清水セイジ。それに隠れるようにして、蔦のような髪が印象的な少女、柊マナが次々に入場し。そしてその最後尾には、銀髪碧眼の美少年、綺羅ヒビキの姿もあった。

 高校生最強のファイター達が集う、天海学園カードファイト部の入場である。

「いやー、悪いね、悪いね」

 ちっともそうは思っていなさそうな口調で、二手に割れた人垣の間をアラシが進む。そして、唯一その場を動かなかったミオの前で、ピタリと足を止めた。

「……ミオちゃん」

 声をあげたのは、最後尾のヒビキだ。彼らしからぬ、どこか遠慮した声音だった。

「こうしてキミに会うのは気恥ずかしいのだけれど……」

「ヴァンガードを続けることにしたそうですね」

 ミオが躊躇無く話の核心に触れる。その顛末はアラシやマナから(正確には、彼らと仲のいいオウガやレイから)聞いていた。

「うん。何もかもキミの言う通りだったよ。ボクは最高の仲間に恵まれた」

「よかったです」

 無表情に頷いて、ミオは心から祝福した。

「私達の文化祭、楽しんできてください」

「うん。そうさせてもらうよ」

 ヒビキはいつぞやのように片膝を立てて跪き、恭しくミオの手を取ると、その細い指に優しく口づけをした。

「これはボクの感謝の気持ちだよ。受け取って欲しい」

「いやまったく嬉しくもなんともないのですが」

 むしろ学校にいるヒビキファンの視線が怖い。帰り道に刺されそうだ。

「まあ、昔ほど嫌な気もしません」

「ありがとう」

 ヒビキは素直に礼を言うと(はじめからそうすればいいのにとミオは思った)、先に進んでいたアラシ達の後を小走りになって追いかける。

「ミオちゃん。あの綺羅ヒビキに勝ったって聞いたんだけど、本当かい?」

 ヒビキが離れてからすぐ、フウヤがそんなことを小声で聞いてきた。

「ええ、まあ」

 特に言いふらしたつもりもなく、最低限、カードファイト部に関わる人間に報告しただけなのだが、音無ミオが綺羅ヒビキに勝利したという話は全国のファイターに噂となって届いていた。確たる証拠は無いため、デマだと疑う者も多かったが。

「すごいな、君は。俺よりどんどん先に行ってしまう」

「星の巡り合わせがよかっただけですよ。あそこまで運がよければ、フウヤさんも十分勝てるだけの実力は備えています」

「……そうか。君がそう言うのなら、そうなんだろう」

 ミオはお世辞や気休めは言わない。それをするだけのデリカシーが無い。そして、その評価は公平にして公正であり、反論は無意味である。そのくらいにはミオを信頼しているフウヤは、それ以上は何も言わなかった。

「せっかくですので、じっくりと見せてもらいましょうか。そのヒビキさんたち、天海学園がプロを相手にどこまで善戦できるのかを」

 

 

「なるほど。君は面白いファイトをしますね」

「はっ! トップランカー様にお褒めに預かり光栄だな! 《七海覇王 ナイトミスト》でブルブファスにアタック! ヒットすりゃ、財宝6枚目だ!」

「それはこうするのかな? 《悪夢の国のダークナイト》でガード。1枚貫通です」

「つっ……てめぇ。ツインドライブ!! 1枚目、2枚目、どっちもトリガー無しだ」

「では、私のターンですね。

 ブルブファスでヴァンガードにアタック!! プロテクトサークルの上にいるスラッシュ・シェイドを退却! パワー+14000、★+1!!」

 意気揚々と先陣を切ったアラシがまずは敗れ。

 

 

「レヴォンでヴァンガードにアタック!!

 トリプルドライブ!!

 1枚目、トリガー無し。

 2枚目、トリガー無し。

 3枚目、(ヒール)トリガー! 我が蒼翼はすべてスタンドする!!」

(だが、ダルクプロの手札は6枚。倒しきれんか……)

「《ヒステリック・シャーリー》でガード!

 僕のターン! 《ノーライフキング・デスアンカー》にライド。

 デスアンカーでヴァンガードにアタック!!」

「くっ。ノーガード!!」

 続くセイジの速攻すら届かず。

 

 

「いや、私ごときがプロ……それも世界ランキング1位の方とファイトだなんて、分不相応すぎるのですが。

 どうせダメだろうけど、ヴェラでヴァンガードにアタックします」

「そんなことありません。君はさっきの二人にも劣らないファイターですよ。

 プロテクトで完全ガード!」

「ああ……お気を遣わせてしまって申しわけございません。

 サウルでヴァンガードにアタックです」

「うーん、奥ゆかしい。これが日本が誇る大和撫子というやつですか?

 プロテクトで完全ガード!」

「いや、この子の言うことは真に受けないでね!?」

 途中で司会(レイ)のツッコミが入ったりもしたが、マナも敗北した。

 

 

 高校生の大会では無敵を誇った天海学園のファイターが、成す術もなく敗北していく。

 高校生最強と世界最強の差をまざまざと見せつける結果となったが、天海学園も全員が敗れたわけではない。

 彼ならもしかしたら、何かやらかしてくれるかも知れない。

 そんなギャラリーの期待を一身に集め、“ミラクルメーカー”綺羅ヒビキが頂点に挑む。

「よろしくお願いします。あなたとファイトできるなど、これほどの名誉はありません」

 ダルクと向かい合ったヒビキは、彼にしては珍しく丁寧に腰を曲げ、普通に挨拶をする。

「はい。よろしくお願いしま――」

 ダルクも頭を下げようとして、途中でその動きが止まり。

「レイちゃん。僕はデッキを変えてもいいですか?」

 とレイに問いかけた。

「え? そ、それはもうご自由にどうぞ」

 特にダルクが使うデッキのことなど考えてはいなかったのだが、レイは適当に許可を出す。

「ありがとう」

 ダルクはこれまで使っていたデッキを、腰のベルトに装着しているデッキケースにしまうと、別のケースから新たなデッキを取り出した。

「この子達が、どうやら君と戦いたがっているようです」

「フッ。それは楽しみですね」

「それでは、はじめましょうか。

 ……スタンドアップ!」

「ヴァンガード!!」

「《ヴァーミリオン・ゲートキーパー》!!」

「《バミューダ△候補生 シズク》!!」

 

 

「ライド!! 《ブレイドウイング・レジー》!!」

 ダルクがそのユニットにライドした時、会場が騒然とした。

「《ブレイドウイング・レジー》だって!?」

 ミオの隣に立っていたフウヤも、思わず大声をあげてしまい、ミオの顔をしかめさせる。

「どうしたんですか、急に?」

「《ブレイドウイング・レジー》は、ダルクプロが現環境で、もっとも愛用しているユニットだ。

 ダルクプロにレジーを使わせた綺羅ヒビキもすごいが、何より、プロがこんな文化祭のイベントなんかで、本気でファイトしてくれるだなんて……」

「こんな文化祭のイベントなんかで悪かったですね」

 そんなことを言いあっている間に、ファイトも佳境に突入する。

「《パールシスターズ ペルル》でヴァンガードにアタック!」

「プロテクトで完全ガード!」

「《パールシスターズ ペルラ》でヴァンガードにアタック!」

「《独眼のサキュバス》でガード!」

 ヒビキの猛攻を凌ぎ切ったダルクだったが、手札は0枚。山札の枚数も2枚。

 もはや誰もがヒビキの勝利を疑っていなかった。

 当人達を除いて。

「フッ。ボクはこれでターンエンドです」

 覚悟を決めたように目を閉じながら宣言するヒビキ。

「うん。スタンド&ドロー!!」

 勝利を確信したように頷き、カードを引くダルク。

「僕がドローしたカードは……《エンブレム・マスター》!!

《エンブレム・マスター》をコールし、スキル発動! ドロップゾーンの《ブレイドウイング・レジー》3枚をソウルに!

 レジーのスキルを2回発動! バインドゾーンの裏向きカード15枚達成!!」

 この瞬間、会場の熱気――いや、怖気が最高潮に達した。

 ヒビキの十八番である仕組まれた大逆転劇を、そのヒビキ相手の猛攻に晒されながら、より高い精度で容易くやってのけたのだ。

「バトルです!!

 レジーでヴァンガードにアタック!! アタック時、レジーのスキル発動!

 バインドゾーンにある裏向きのカードが15枚以上なら、ヴァンガードに2ダメージを与えます!!」

 異能者の背中から鋼鉄の翼が大きく広がった。

 1枚、2枚、3枚、4枚――やがてそれは14枚を数え、中央からさらにもう1枚、一際巨大な翼が太陽を覆い隠すように伸びると、人魚達の楽園を闇に閉ざしていく。

「ダメージチェック。1枚目、2枚目……ボクの負けだね」

 膨張し、暴走した15枚の滅びの翼がすべてを包み込み、世界に破滅をもたらした。

 

 

「ダンケシェーン。ありがとうございました。あなたはきっとプロとしてやっていけるでしょう」

「ありがとうございます。あなたのような人から、それほどの賛辞を頂けるとは」

 ダルクとヒビキが微笑み合い、ファイトテーブルを挟んで固い握手を交わす。

 それは非常に美しい光景だったが、周囲から拍手は起きなかった。

 誰もがダルクの強さに惹かれ、呑まれてしまっていた。

 何者も寄せ付けないような、圧倒的すぎる孤高の強さに。

「……あっ、ヒ、ヒビキ様、ありがとうございましたー。さ、さーて、次の挑戦者は誰かなー?」

 それは司会進行のレイも同様だったが、どうにか一足先に我に返って、自らの務めを果たそうとする。しかし、それに応えようとするものはいなかった。

 聖ローゼや、天海のファイターにとってはちょうどいい壁になるのかも知れないが、一般のファイターにとってすれば、ダルクは全貌すら窺うことのできない、果てしない存在でしかなく、この場にいる誰もが、彼に近づくことすら憚られるほどの畏怖を抱いてしまっていた。

(……ふむ。これはチャンスですね)

 人並はずれて鈍感な、白髪の少女以外は。

(主催者が率先して彼とファイトするわけにはいきませんでしたが、誰も手を挙げる人がいないのであれば仕方がありませんね。ここは私がファイトして、少しでも場を繋ぐべきでしょう。ええ、これは仕方のないことです。けっして私がファイトしたいわけではありません)

 心の中で論理的に言い訳しながら、ミオはゆっくりと挙手をする。

「次は私が――」

 バラバラバラバラッ!!

 ただでさえミオの小さな声は、突如として上空から降り注いできた爆音に虚しくかき消された。ミオが恨めしそうに頭上を見上げると、巨大なヘリコプターが浮かんでいるのが見えた。

「何だあれは?」

 同じように上空を見上げていたフウヤが訝しむ。

 すると突然、そのヘリから人影がばっと飛び降りた。

 群衆のそこかしこから悲鳴があがる。

 だが、人影はすぐさまパラシュートを広げると、人のいないグラウンドの隅に着地し、ごろごろと転がって受け身を取った。

「面白そうなファイトしてるじゃあないか!! 次はあたしにやらせな!!!」

 人影はそこからすっくと立ちあがり、パラシュートをはずしながら、グラウンドどころか学校中に響き渡りそうな大音声をあげた。それはしわがれた女の声だった。

「あ、あれは!?」

 大股で近づいてくる人影がはっきり認識できるようになった距離で、フウヤが叫んだ。

 その人影はライダースーツのような皮のツナギに身を包んだ老婆だった。老婆と言っても、背筋はピンと伸びており、足取りはまったく危なげがない。体つきも細身のアスリートのようにしっかりしているが、深い皺の刻まれた顔と、癖のある短い総白髪は、間違いなく老婆のそれであった。

「世界ランキング第3位……星見(ほしみ)トウコ」

 フウヤがぽつりと呟く。

「現在のプロファイターランキングにおいて日本人最高位であり、現役最年長。プロとして活躍している期間は歴代最長であり、他にも公式戦の優勝数、勝利数、ファイト数。様々な記録で1位の座を獲得している、生きる伝説だ」

 聞いてもいないのに、フウヤがすべて解説してくれた。便利なイケメンである。

「ま、まさかの星見プロが電撃参戦!! ど、どうぞこちらへー!!」

 彼女にとっても想定外の事態だろうに、司会のレイはアドリブを効かせて星見トウコを迎え入れる。さすがの胆力である。

「あばばばばば……星見さんが、あばばばばばばば」

 一方、サキがまたポンコツ化しているのも、遠目に見えた。

「おら! どきな腑抜けども。あんたらがダルクの相手だなんて、百億年早いんだよ!」

 すでに二手に割れた人垣を、わざわざ蹴散らすようにして歩きながら、トウコがファイトテーブルに到達する。

「……ちなみに、粗野で過激な言動から、一部の熱狂的な者を除いてファンは少ない」

 引き続きフウヤが解説してくれる。

「あ、あのー。星見さんは、どうしてこんなボロくて古臭い高校なんかに?」

 ステージでは、レイがトウコにマイクを向けてインタビューをしていた。へりくだるあまり、愛校心の無さが透けて見えてしまっている。

「あたしのダチが、母校の文化祭にダルクを呼んだって言うからさ! あたしも特別大サービスで来てやったのさ。サプライズってやつだよ、ありがたく思いな!」

「は、はあ……」

 さすがのレイも困惑している。その表情には「いや、呼んでないし。急に来られても困るんだけど?」という不満がありありと浮かんでいた。

 そんなレイに気付いてないのか、無視しているのか、トウコは剣呑な笑みをダルクへと向けた。

「そんなわけでファイトだよ、ダルク!!」

「……やれやれ、あなたは相変わらずですね。構わないかな、レイさん?」

 ダルクがレイに確認し、レイはミオに目配せして許可を求めた。ミオも当然とばかりに頷く。

「こ、ここでまさかのサプラーイズ!! 世界ランキング3位の星見トウコと、世界ランキング1位のダルク・ヴァーグナーが、この響星学園でエキシビジョンマッチ!! こんな対戦カード、本来ならメチャ高いチケット予約しなきゃ見れないよー!?」

 レイがぴょんぴょん飛び跳ねながら、声を張り上げた。これを機に、さらに客を集めようという算段らしい。したたかな少女である。

「それじゃ、始めるよ! ほら、グズグズしてんじゃないよ!」

「はい。お待たせしました」

 一瞬で手札交換まで準備を終えたトウコがダルクを急かし、ダルクはのんびりとカードを引き直す。

「「スタンドアップ! ヴァンガード!!」」

 そして、ふたりが同時に、裏向きに置かれたファーストヴァンガードをめくる。

「《ヴァーミリオン・ゲートキーパー》!」

「《バトルライザー》!!」

 

 

 ノヴァグラップル。

 宇宙をリングに、ヒューマンからバトロイドにエイリアンまで、多種多様な種族がしのぎを削るバーリ・トゥード(なんでもアリ)の総合格闘技。

 そのチャンピオンの座を目指して日夜闘いに明け暮れる闘士達を、人はノヴァグラップラーと呼んだ。

 今日も宇宙にゴングが鳴り響く。

 戦いの刻は今。

 

 

「あたしの先行だよ!

 ライド! 《ライザーカスタム》!

 手札を1枚ソウルに置いて、ヴァンガードにアタック!」

「先行1ターン目からのアタック。

 ……さすが、攻めに関してはプロ随一と称される星見トウコですね」

「おだてても何もでないよ! さっさと受けるか守るか選びな!」

「うん。ノーガードです」

 ダルクがダメージゾーンにカードを置く。トリガーは無し。

 続くダルクのターン、ダルクは《ディメンジョン・クリーパー》にライドし、トウコに1ダメージを与えた。

「はっ! ぬるいねぇ!

 ライド! 《スタイリッシュ・ハスラー》!

 コール! 《ジェノサイド・ジャック》! 《アンノウン・アダムスキー》!

 アダムスキーのスキル発動! 《ジェノサイド・ジャック》でエクストラアタック!!」

 戦端が開かれるより先に、漆黒の装甲で武装した殺人マシンが暴走し、鋭い爪を振り上げ、クリーパー(ダルク)へと襲い掛かる。

「今度はエクストラアタックですか。ノーガードです。

 ダメージチェック。トリガーは無し」

「《ライザーカスタム》をコール。ジャックのスキルで《ライザーカスタム》と《アンノウン・アダムスキー》をレストし、ジャックをスタンド! 前列のジャックがスタンドしたので、《ライザーカスタム》もスタンド!」

 ユニットがレストとスタンドを繰り返す、流れるような連携に、観客からは感動の溜息が漏れた。

 言動こそ粗雑だが、星見トウコは紛れも無いトップランカーのひとりなのだ。

「バトルだよ! 《スタイリッシュ・ハスラー》でヴァンガードにアタック!」

「《悪夢の国のダークナイト》でガードです」

「ドライブチェック! (クリティカル)トリガー!

 効果はすべてジャックだ!

《ライザーカスタム》でブーストして、ジャックでアタックだ!」

「ノーガードです」

 再起動した《ジェノサイド・ジャック》が、クリーパーを地面に叩き伏せ、踏みつけ、口から発する熱光線で焼き払う。

 それはまさしく虐殺(ジェノサイド)の名に相応しい一方的な暴力だった。

「ダメージチェック。

 1枚目、トリガーではありません。

 2枚目、引トリガー。1枚引かせてもらいます」

 ダルクのダメージゾーンに、早くも4枚目のカードが置かれる。

「あたしはこれでターンエンドだよ」

「それでは、僕のターンですね。スタンド&ドロー。

 ライド。《デモンテッド・エクスキューショナー》!

 エクスキューショナーのスキルで、ソウルチャージ3。トリガーがソウルに置かれたので、1枚ドローさせてもらいます。

《ブラッドサクリファイス・ルスベン》をコール。ダメージゾーンから《オースティア・ヒーター》をソウルに置きます。

《ヴァリアンツ・キラーテイル》をコール。このユニットをレストして、ダメージゾーンのダークナイトをソウルへ」

 ダルクも負けじとソウルを増やしていく。序盤にどれほどリードされようとも、ソウルさえあれば一発逆転を見込めるのがダークイレギュラーズだ。

「バトルです!

 エクスキューショナーでヴァンガードにアタック!」

「ノーガードだよ!」

「ドライブチェック! ……治トリガー! ダメージゾーンの《ベスティアル・スクイーザー》をドロップに置き、ダメージ回復です!」

「ダメージチェック! ……トリガーは無いよ!」

「ルスベンでヴァンガードにアタック!」

「ノーガード!  (ドロー)トリガーだ。1枚引かせてもらうよ」

 ここまでで、お互いにダメージは3点。

「今度はあたしのターンだ! スタンド&ドロー!!

 ライド!!! 《アシュラ・カイザー》!!!」

 6本の腕を持つ機械巨人が、今、リングに降り立った!

 特徴的な蛇腹状の腕にはそれぞれ、刀や金棒など種類の違う武器が握られている。

 百の武器を振るい、百の勝利を歴史に刻む永劫不敗の闘神。

 アシュラ・カイザーは、この宇宙で最も有名なグラップラーである。

「イマジナリー・ギフトはアクセルⅠを選ぶよ!

《ドグー・メカニック》をコールして、《ライザーカスタム》と共にレスト! 《ジェノサイド・ジャック》をスタンドする! ジャック後列の《ライザーカスタム》もスタンドだ!

 アクセルサークルに《ホワイト・ハンク》! 《超獣神 イルミナル・ドラゴン》もコールだ!」

 アシュラ・カイザーの隣に並び立つように、黄龍を模した機神が並び立つ。

 彼もまた、古き時代からノヴァグラップルの人気を支えてきたリング上の英雄である。

「バトルだ!!

《ホワイト・ハンク》でヴァンガードにアタック!」

「《キューティクルディフェンダー フラヴィア》でガード! スキルでヴァンガードに+10000です!」

「はっ! (ヒール)ガーディアンなんかで守ったつもりかい!?

 手札を1枚捨てて、《ホワイト・ハンク》をスタンドするよ!

 もう一度、《ホワイト・ハンク》でアタックだ!」

「ルスベンでインターセプト!」

「《ライザーカスタム》のブースト! 《ジェノサイド・ジャック》でヴァンガードにアタック!!」

「《ヴェアヴォルフ・ケッツァー》でガード! このカードはソウルインされます」

「《アンノウン・アダムスキー》のブースト! 《アシュラ・カイザー》でヴァンガードにアタックだ!!」

「《ディメンジョン・クリーパー》と《ベスティアル・スクイーザー》でガード!」

「ツインドライブだ!! 1枚目……」

 カードをめくったトウコが、しかめ面を緩ませ、ふっと小さく笑みを浮かべる。

「あたしも治ガーディアンを使わせてもらおうか。……ただし、攻撃にだ!

 あたしが引いたカードは《鋼拳竜 フリオール・ドラゴン》! 治トリガー! ダメージ回復し、パワーは《アシュラ・カイザー》に!

 そして!! フリオール・ドラゴンはG3でもある!!

《アシュラ・カイザー》のスキル発動!! ジャックをスタンド! CB(カウンターブラスト)1してパワー+10000!

 ツインドライブ、2枚目……こいつも治ガーディアン!!」

「!?」

 これまで常に穏やかな笑みを絶やさずプレイしていたダルクの表情が、はじめて驚愕に歪んだ。

「パワーは《アシュラ・カイザー》に! 《ホワイト・ハンク》もスタンドさせて、パワー+10000!!」

 アシュラ・カイザーは、6本の腕を振り上げると、それぞれを時間差で振り下ろした。

 まずは短剣と刀で牽制。両刃剣と斧がガーディアンを薙ぎ払い、無防備になった異能者に剣と金棒が襲いかかる。

 一見、無秩序な連撃に見えて、そのひとつひとつが達人級の一撃に等しい。それはまさしくアシュラ・カイザーをチャンピオンたらしめる怒涛の妙技であった。

「ダメージチェック……トリガーはありません」

「ダメージを与えたので、イルミナル・ドラゴンにパワー+15000!

 イルミナルで、ヴァンガードにアタック!」

「《ヴェアヴォルフ・ケッツァー》でガード! ケッツァーはソウルイン!」

「《ホワイト・ハンク》でヴァンガードにアタックだ!」

「ノーガード。ダメージチェック……トリガーではありません」

 5枚目のカードがダメージゾーンに置かれ、観客達から悲鳴があがる。

「《ジェノサイド・ジャック》でヴァンガードにアタック!」

「《ヴェアヴォルフ・フライビリガー》でガード! クイックシールドも使います!」

「防ぎきったー!!」

 司会のレイが実況だか歓声だか分からない声をあげる。

「でも、ダルクさんの手札は残り1枚! これは恐らくダルクさんのエースユニット《ブレイドウイング・レジー》でしょう!

 それにライドしたところで、ダルクさんのソウルは10枚! 果たして15枚の翼に手は届くのかー!? 運命はこのドローにかかっている! ……ん?」

 実況と解説を続けるレイに、ダルクがちょいちょいと何かを欲しがるように手を差し向けてきた。

「え? マイク?」

 レイが手渡せるものと言えば、司会に使っているマイクしかない。

 レイからマイクを受け取ったダルクは、よく通る声で宣言する。

「ここから逆転するのに15枚の翼は必要ありません。10枚で十分です!

 ファイナルターン!!」

「……言ってくれるじゃないか」

 トウコがひくひくと顔を歪ませる。彼女は手札こそ2枚だが、ダメージはまだ2点だ。

「このターンで裏バインドを10枚にするにしても、このターン中に10枚のソウルチャージが必須! 果たして手札1枚から、そんなことが可能なのかー!?」

 ダルクからマイクを返してもらったレイが解説を続ける。

「スタンド&ドロー!!

 (くろがね)の翼で光を斬り裂け、我が魂! ライド!! 《ブレイドウイング・レジー》!!」

 アシュラ・カイザーと対峙するようにリングに降り立ったのは、長身痩躯の異能者だった。

「そして、コール! 《ドリーン・ザ・スラスター》!!」

 その背後に、小柄なエルフの少女も艶のある黒髪を指で弄びながら現れる。

「ダ、ダルクさんが引いたのは、ソウルチャージできるカードではなかったー!! これは万事休すかー!?」

「心配ご無用。すでに仕込みは終わっています。さあ、皆さん、僕と一緒にカウントしましょう!

 レジーのスキル発動! SB1して、ソウルのカード1枚を裏でバインド!」

 1!

 と観客達が数字を唱和する。

「レジーのスキルを続けて発動! さらにもう1回!」

 2! 3!

「ここでソウルの《ディメンジョン・クリーパー》のスキル発動! このカードを山札の下に戻し、ソウルチャージ3! レジーのスキル発動!」

 4!

「《ヴァリアンツ・キラーテイル》のスキル! ドロップゾーンの《ディメンジョン・クリーパー》をソウルへ。クリーパーのスキルで、さらにソウルチャージ3! レジーのスキルを2度発動!」

 5! 6!

「ソウルの《オースティア・ヒーター》のスキル発動! 手札のプロテクトを捨て、このカードを手札に戻し、ドロップゾーンから2枚をソウルイン。この2枚でレジーのスキル!」

 7!

「《オースティア・ヒーター》をコール。ドロップゾーンの《ベスティアル・スクイーザー》のスキル発動。このカードをバインドし、ヒーターをソウルへ。もう1枚のスクイーザーのスキルで、キラーテイルもソウルへ。この2枚でレジーのスキルを発動!」

 8!

「残る僕のソウルは2枚ですが……ソウルに残したカードは、すべて《ヴェアヴォルフ・ケッツァー》! ケッツァーはバインドすることでソウルチャージ2できる! ケッツァーのスキルを2回発動! レジーのスキルも発動!」

 9!

「これが最後です。レジーのスキル発動!!」

 10!!

「これで裏でバインドされたカードは10枚! レジーのパワー+25000! ★+2! ドライブ+1!

 それだけではありません! このターンにソウルに置かれたカードは15枚! ドリーンのパワー+75000!!

 バトルです!!

 ドリーンのブースト!! レジーでヴァンガードにアタック!! 合計パワーは112000!!!」

「……ちっ。ノーガードだよ!」

「トリプルドライブ!!!

 1枚目、トリガー無しです!

 2枚目、★トリガー!! 効果はすべてレジーに!!

 3枚目、★トリガー!! 効果はすべてレジーに!!

 合計5点のダメージ、受けてもらいます!!!」

 黒髪の少女――ドリーンの周囲に無数の光刃が生まれ、アシュラ・カイザーめがけて降り注ぐ。アシュラ・カイザーは6本の腕を振るってそれらを弾き返すも、すべては防ぎきれず、古傷だらけの装甲にいくつもの新たな傷が刻まれていく。

 そこに異能者の青年――レジーが、アシュラ・カイザーの懐へと飛び込み、その背から1枚だけ生えた鋼鉄の翼でアシュラ・カイザーの装甲を大きく斬り裂いた。

 レジーが翼を振るうごとに、その翼が1枚、また1枚と増えていき、アシュラ・カイザーの象徴たる6本の腕も落とされていく。

『終わりだ。これが10枚目の滅びの翼――いや、ここはお前達に敬意を払い、その流儀に倣おう』

 やがて、その翼が10枚に達した時、レジーが大きく跳躍する。

『これが滅びの……テンカウントだ!!』

 10枚の翼が触手のように蠢いて伸び、すべての腕を失い満身創痍になりながらもなお、威風堂々とリングに屹立するアシュラ・カイザーの全身を貫いた。

 この日、爆光と共にひとつの無敗伝説が幕を下ろした。

「ぐっ……があああああっ!!」

 獣のように吠えながら、トウコが山札の上からカードをめくる。1枚は治トリガーがめくれたものの、5ダメージを覆すには至らず、6枚目のカードが放り投げられるようにしてダメージゾーンに置かれた。

「ふん。あたしの負けだよ」

 不機嫌そうに肩をすくめながらも、微かに笑みを浮かべながらトウコが言った。

「ダンケシェーン。いいファイトでした」

 ダルクが手を差し出し、トウコがそれを乱暴に握り返す。その瞬間、ダルクはすっとトウコの耳元に顔を寄せると、レイや観客達に聞こえないように囁いた。

「でも、ずるいです。本気でファイトしてくれないなんて。あなたの実力は、こんなものではないでしょう?」

「はっ。ガキどもは気づいちゃいないさ。デッキは即興で組んだが、あたし自身は手を抜いていたつもりもないしね。

 こんなところで、学生相手に本気を出すあんたがおかしいのさ。プロが全力を出していいのは、然るべき場所で、然るべき者を相手にした時だけだよ。実際、あんた強すぎてドン引かれてたじゃないか」

「うっ……心に留めておきましょう」

「さあさ、ガキんちょども! プロの、それもランキング1位のファイターと対戦できる機会なんて、そうそうないよ! それでも負けるのが嫌で、この機会を逃すってんならファイターなんてやめちまいな!」

 最後の言葉は、観客達に向けられたものだ。発破をかけられたファイター達から、ひとつ、またひとつと手が上がる。

「ダ、ダルクさん! 次は僕とファイトを!」

「そ、その次は私と!」

「……もう大丈夫そうだね」

 その様子を見て、トウコがステージを降りようとする。

「あんたがやりすぎてないか見にいってくれとユキに頼まれて来たけど、来てよかったよ」

「はい。あの人に、ダルクが感謝していたと伝えておいてください」

「あいよ」

 トウコはダルクに背を向けたまま手を振ると、来た時とは対照的に、誰にも気付かれず学園を去っていった。

 

 

 ダルクのステージは盛況のまま幕を閉じ、響星学園の文化祭もつつがなく終了した。

 夕日も落ちかけ、夜も迫ろうとする中、それに急かされるかのように生徒達が慌ただしく後片付けに奔走していた。

「今日はありがとうございました」

 そんな喧噪を背中で聞きながら、正門の前で、ミオが部員を代表して礼を述べて頭を下げた。レイとサキはグラウンドでステージを撤収しているため、この場にはいない。

「こちらこそ。フレッシュな学生さん達とのファイトは、僕にとってもいい刺激になりました」

 わざわざ補足するまでもないことだが、ダルクは全勝で今日のステージを終えている。

「ですが、あなた達とファイトできなかったのは少し残念です」

「そうですね。それは私もです」

 ミオもダルクに同意する。ひょっとしたら今日この日は、ミオがプロとファイトできるよう、ユキが与えてくれたチャンスだったかも知れないのだ。

 だが、プロのファイトを間近にしたことで、ミオの中にもひとつの指針ができた。

「ですが、数年のうちにあなたとはファイトするつもりですよ」

「……それはどういう意味ですか?」

 ミオから放たれた不敵な言葉に、穏やかな笑みを浮かべていたダルクの表情がすっと引き締まる。

「私もプロを目指していますから」

 それに臆さず、ミオは堂々と答えた。

「……簡単な道ではないですよ?」

 世界ランキング1位のダルクとは、ただプロになるだけではファイトできない。トーナメントの1回戦で運よく(もしくは運悪く)当たるなどの偶然も無くは無いが、プロになって10年以上、トップランカーとファイトしたことのない者もざらにいるのである。

「承知のうえです」

 ミオは迷いなく頷いた。

 その覚悟を見てとったダルクはふっと表情を緩めると、手を差し出した。

「では、その時を楽しみにしています」

「はい。その時はよろしくお願いします」

 短く握手を交わすと、ダルクはコートを翻して待たせていた車に乗り込んだ。

「お疲れ様でした」

 ミオがもう一度頭を下げると、ダルクは窓越しに軽く手を振り返した。

 車が出発する。

 ミオはそれが見えなくなるまで見送ると、踵を返して校門をくぐった。

 グラウンドに向かう途中の自販機で、片付けを進めてくれている後輩達への差し入れにジュースを2本余分に購入する。

(片付けが終わったら、部室で打ち上げでもしましょうか)

 ミオはそんなことを考えながら、ジュースを大切そうに抱え、軽くステップでも踏むように小走りになって仲間達のもとへ向かうのだった。




根絶少女3年生編11月の本編、文化祭回にして、ダクイレ回をお送りさせて頂きました。
ダークイレギュラーズ。
大ボスになってもおかしくない設定と風格を備えながら、アニメではテツ、江西さん、ガスティール猊下と、何故か二番手や前座にされがちなクランですが、この根絶少女においてはブッちぎりの最強キャラクター、ダルク・ヴァーグナーが使用するクランとなっております。
これが書きたかったー!!!
この小説、根絶少女というタイトルながら、ダクイレ使いに是非とも見て欲しい作品だったのですが、まさかこのことをネタバレするわけにもいかず。
2年間出番のなかった鬱憤が晴れるような。ダクイレ使いの方々にとって、そんな回になっていれば幸いです。
ギリギリでレジーも登場してくれてよかったです。
(それまでずっとブルブファスで考えてきていたので、もったいないからブルブも使わせましたが)

そして、今回はもうひとり重要なキャラクターが登場します。
ノヴァグラップラー使いの星見トウコです。
初期は妙齢の女性を想定していたのですが、かっこいいババァが書きたいという欲求が抑えきれず、ババァになりました。
名前が確定するまでの仮ネームはノヴァバァでした。
色々とクセの強いキャラクターですが、こちらもどうぞよろしくお願い致します。

この回をもって、全24クランのうち、23クランの使い手が登場したことになります。
残り1クランがどのクランか、そのクランを愛用している方であればご存じかと思います。
本当にお待たせして申し訳ございません。
ここまで来たらネタバレも何もないので予告させて頂きます。
ペイルムーンは来年1月に登場します!!!
もう少しだけお待ち頂ければ幸いです。

次回は、来週の土曜日あたりにスタートデッキ「御薬袋ミレイ」のえくすとらを予定しております。
本編と被りそうだったので、発売日から1週間ずらしました。
またそちらの方でお会いいたしましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。