デジモンアドベンチャー02AS ~呪いのドラゴン~   作:疾風のナイト

2 / 8
 現実世界の日本。日本の山陰地方の地方銀行に勤務している松上愛菜。愛菜は銀行員として勤務している一方、穏やかな日常を過ごしていた。
 そんなある日、愛菜のパソコンから謎の卵が出現する。愛菜が驚いている中、卵から不思議な生物が誕生する。
 この不思議な生物こそ、デジタルワールドの生物、デジタルモンスターことデジモンであった。
 こうして、愛菜とデジモンによる新しい日常生活が始まったのであった。

 一方、デジタルワールドでは事件が起こっていた。それは罪人として処分されるデジモンのデジコアが行方不明になるというものであった。

 現実世界とデジタルワールド。2つの世界を結ぶ物語が始動するのであった。


第2章 ~日常と裏で蠢く陰謀~

 深かった夜の闇が徐々に白んでいき、朝日が地平線より上がってくる。それは夜の時間が終わりを告げ、同時に朝が訪れたことを意味していた。

 夜から朝への変遷。この時間のサイクルは誰にでも等しく訪れるものである。それは愛菜の暮らしているアパートでも変わらない。

 そしてまた、愛菜自身、既に寝室から起床しており、現在は台所で朝食と昼食の弁当を作っていた。

 やがて、朝食の準備が完了した後、リビングで朝食を食べることにする愛菜。今日の朝食の献立であるが、トースト、コンソメスープ、トマトとフレッシュ野菜のサラダ、目玉焼きである。

「いただきます」

 そのような言葉と共に両手を合わせた後、自身で作った朝食を食べ始める愛菜。なお、愛菜の足元ではププモンが同じように食事を食べている。ププモンの献立もまた、愛菜と同じものである。

 朝食の後片付けを済ませると、今度はすぐに職場に行く準備を整えて、玄関に向かう愛菜。同じように愛菜の後を追いかけているププモン。まるで愛菜の出勤を見送っているかのようである。

「それじゃ、行ってくるから、いい子でいるのよ」

 目の前にいるププモンにそう言った後、頭を優しく撫でている愛菜。そのような愛菜の表情はとても柔らしいものである。

「~~♪」

 一方、愛菜に撫でられて満足そうな表情を浮かべているププモン。その様子はまるで主人に従順なペットであるかのようだ。

 そして、ププモンに見送られている中、アパートの玄関を出る愛菜。今から松上愛菜の1日が本格的に始動しようとしていた。

 

 職場である銀行に出勤する愛菜。職場に到着した愛菜は準備を整えると、定例的に実施される朝礼の後、すぐに仕事場の窓口に着席してみせる。

 やがて、銀行の営業の開始時間になる。業務が始まって間もないうちに様々な利用客が銀行を訪れる。

 地元の貨幣流通を担っているだけのことはあり、地域の金融機関として、この銀行に対する地元住民のニーズは高い。

 そういった状況の中、着実に業務を遂行していく愛菜。業務の性質上、すぐに終わる案件もあれば、時間を要する案件も少なくない。

 そうこうしていると、愛菜の昼食の時間が訪れる。愛菜は自身の窓口を他の職員と交代した後、朝に作った弁当が保管されているロッカーに向かう。

 弁当を回収した後、休憩室の中に入る愛菜。普段、愛菜はこの休憩室内で弁当を食べることが多かった。

 弁当持参の愛菜が休憩室に訪れると、そこには先客である同僚達が同じように昼食を食べていた。

 早速、適当な席を見つけて着席した後、自作の弁当の包みと箱を開ける愛菜。弁当の中身についてであるが、白御飯、梅干し、野菜の煮物、焼き魚等で成り立っている。

 すると、誰かが愛菜の座っている席に近寄ってくる。愛菜が視線を向けると、そこには同じ制服に身を包んだ同年代の女性の姿があった。

 この女性は愛菜と同期の銀行員であり、職場で担当している業務は異なるが、愛菜とは親しい間柄であった。

「あら、愛菜さんは今日も弁当?」

 そのように言った後、愛菜の目の前に座っている同期の銀行員。昼食時は2人で一緒に食べることが多かったのだ。

「ええ、と言っても、余り物の詰め合わせですけど」

「それでも、凄いことよ。愛菜さん、1人暮らしなのに弁当までちゃんと作ってくるなんて」

「健康管理のためですよ」

 同期の銀行員からの称賛の言葉に対して、恥ずかしそうに答えている愛菜。ただ、1人暮らしをしている以上、愛菜には色々な制約が常にあった。

 真っ先に挙げられる点として、衣食住の問題が挙げられるだろう。確かに1人暮らしは自由な面もあるが、その分、衣食住は自身で管理しなければならなかった。

 次に挙げられる点として、健康管理の問題が挙げられる。1人暮らしをするとなれば、健康の問題は常に付きまとってくる問題であった。

「それにしても、愛菜さん、最近は随分と変わったわよね」

「?どこがですか?」

「何て言うか……今まで以上に芯が強くなったと言うか……口では上手く伝えられないけど、子供を持った母親のようになった感じかな」

 理由が分からない愛菜に向かって、そのように語っている同期の銀行員。ただ、同期の銀行員からしてみれば、愛菜は見違えるように変わっていたことは確かであった。

 その後、昼食と休憩を終えると、自身の担当窓口に戻る愛菜。それから、愛菜は今日の営業終了時間までの間、銀行員としての職務を無事に遂行するのであった。

 

 銀行での仕事を終えた後、今日の買い物を済ませて、アパートに帰宅する愛菜。すぐに玄関の施錠を解除して扉を開ける。

「ただいま」

 玄関の扉を開けた途端、帰宅の挨拶をしている愛菜。今までであれば、誰の返事もなかったであろうが、今は状況が違っていた。

「~~♪」

 愛菜の帰宅の挨拶に反応するようにして、留守番をしていたププモンが目の前に現れる。そのようなププモンの表情であるが、とても嬉しそうな表情をしている。

「ただいま。良い子にしていてくれたわね~」

 そのように言った後、目の前にいるププモンの頭を撫でる愛菜。それと同時に愛菜に撫でられたププモンはご満悦の様子であった。

 帰宅した愛菜であるが、夕食を食べ終わった後、テレビを視聴している。これもいつもと変わらない日常の光景であるが、いつもと違っている点がある。

 それは愛菜の傍にププモンがいることであった。ププモンと一緒に生活するようになって以来、今までの生活にさらなる彩りが加わったような気がしていた。

 今、ププモンと同じ時間を過ごしている。最初こそ、戸惑いを感じていた愛菜であるが、そうした戸惑いも自然と消えていった。

 間違いなく今、幸せな時間を過ごしている。愛菜がそのように感じた時、思いもしないことが起こる。

 次の瞬間、ププモンの身体が発光を始めたのだ。当然のことであるが、目の前の出来事に驚いている愛菜。

「き、急にどうしたの!?」

 目の前のププモンに向かって、そう呼びかける愛菜であるが、ププモンの発光は一向に終わらない。

 それだけではない。眩い光を発している中において、ププモンの形状が徐々に変化していく。まるで生物が現状に適した姿に進化しているかのようであった。

 やがて、原因不明の発光が収まるものの、そこにはププモンの姿は既になく、全く見たこともないデジモンがそこにいた。

 光と共に消えたププモンの代わりに現れたデジモン、それはトゲのような3本角と葉のような尻尾が特徴的なデジモンであった。このデジモンの名前はバドモン、幼年期の植物型デジモンである。

 そしてまた、目の前に現れたバドモンこそ、先程までいたププモンが進化した姿であることは言うまでもないことであった。

「愛菜お姉ちゃん~」

 呆然としている愛菜に向かって、そのように呼びかけているバドモン。そのようなバドモンの姿であるが、以前のププモンの時と変わることがなかった。

「っ!貴方、喋れるの?」

 目の前で甘えてくるバドモンに対して、驚きを隠せないでいる愛菜。まさか、人間の言葉を喋ることができるとは思わなかったからだ。

「うん、そうだよ~」

 驚いたままでいる愛菜からの質問に対して、ごく自然な様子で答えているバドモン。デジモンは一定の成長段階に至ると、人間の言語を理解することができるのだ。

「私に教えて欲しいことがあるの?貴方は誰?そして何者なの?」

「僕?僕はデジタルワールドのデジモンのバドモンだよ」

 愛菜からの質問にそう答えた後、デジタルワールドとデジモンのことについて、詳しい説明を始めるバドモン。

 バドモンからの説明によれば、デジタルワールドとは全てが電子情報で構築されている世界であると言う。同時にデジモンはデジタルワールドで生活する生物とのことであった。

「つまり、貴方は別の世界から来たってこと?」

「そうだよ~」

 愛菜の質問に満面の笑みで答えているバドモン。これでバドモンの正体は判明したが、愛菜の中では別の疑問が浮かび上がっていた。

「どうして、バドモンはここにいるの?」

「分からない。気がつけば、ここにいたんだ」

 真剣な表情で質問してくる愛菜に対して、残念そうな表情で答えているバドモン。そもそも、バドモン自身、卵の状態で愛菜の家に現れたのだ。まだ生まれてもいない状態で現実世界に現れた理由など、知らなくても仕方のないことであった。

「それでデジタルワールドには帰れそう?」

「う~ん、帰れるかどうか、僕にも分からない」

 再度の愛菜からの問い合わせに対して、悩ましげな表情で答えているバドモン。バドモン自身、まだ生まれたての状態であり、元の世界に戻れるかどうか、その方法も分からない状態であった。

 バドモンから聞くことを聞いた後、それまでの張り詰めた表情から一転、いつもの物静かで穏やかな表情に戻る愛菜。

「色々と聞いてごめんなさいね。今日はゆっくりしましょう」

「うん」

 バドモンに謝罪した後、そのように呼びかけている愛菜。一方のバドモンも満面の笑みで返事をしてみせる。

 団欒の時間を再開する愛菜とバドモン。現実世界の人間とデジタルワールドのデジモンの日常はまだまだ続きそうであった。

 

 日本の首都の東京。東京は日本の首都であることは勿論のこと、人口も国内最大であり、日本の政治や経済の中枢でもあった。

 当然、外国人も多く滞在しているため、東京は日本の東京であり、同時に世界の東京と言っても過言ではなかった。

 そうした東京の一角に建っている建物内。建物内部は照明が灯されていないためか、まるで闇の中のように暗い状態にあった。

 そのような暗い建物の中、机に置かれたパソコンと向かい合っている1人の男の姿があった。肌は病人のように白く、長く伸びた髪、狂気の宿った眼、その男はまるで何かが取り憑かれているかのようであった。

 机の上に置かれたパソコンが暗い部屋の唯一の光源になっている。そのようなパソコンの画面に表示されているもの、それは男が住んでいる日本列島の地図であった。

 男はパソコンを操作することにより、日本列島の地図をズームする。地図をズームすることにより、パソコンの画面に表示されている地域、それは山陰地方であった。

「ここにいるのか……」

 そんな言葉と共に不気味な笑みを浮かべている男。この男が今、何を考えているのかは不明である。

 ただ1つだけ確実に言えることがある。それは男が秘密裏に企んでいる陰謀、それは邪な陰謀であることだけは確かなことであった。

 

 デジタルワールドの冥界とも呼べるダークエリア出入口の手前。そこにアヌビモンの姿があった。

 ある方向をじっと眺めているアヌビモン。視界に広がっている景色を眺めている訳ではない。

 むしろ、アヌビモンは視界で見ているのではなく、全感覚を総動員することにより、遠く離れた位置に存在するある者を感知していた。

「まさか、あのような場所にいるとは……」

 このダークエリアから遠く離れた地において、ある者の存在を感知する一方、意味深長な言葉を口にしているアヌビモン。

 これから、どうするべきなのだろうか。アヌビモンはデジモン達の生死を司る立場上、自らが迂闊に介入することはできない立場にある。

 あくまでも可能な限り、デジタルワールドに干渉することは避けなければならない。だからこそ、アヌビモンはさらにどうするべきか、その思考を深めるのであった。

 

 日常を続けている愛菜とバドモン、邪な陰謀を企んでいる謎の男、慎重な姿勢を保持するアヌビモン、それぞれの想いや思惑が交錯する中、現実世界とデジタルワールドを結ぶ物語は進行していくのであった。

 

                                    つづく

 

補足

 

名前:バドモン

種族:植物型デジモン

属性:なし

進化レベル:幼年期

必殺技:毒トゲトゲ

植物の蕾のような姿をしている幼年期の植物型デジモン。毒を宿した植物のデータを取り込んでいる。普段は葉っぱに乗って宙を漂っており、自らは攻撃を仕掛けてくることはない。但し、怒らせた場合には毒による攻撃を仕掛けてくる。必殺技は身体の毒で敵を攻撃する「毒トゲトゲ」




皆様、お疲れ様です。
今回は主人公の松上愛菜とププモンの日常を描いた話でした。
私は趣味の一環として、デジモンを題材とした小説を創作していますが、①主人公の年齢は高校生まで、②何かしらの事情でデジタルワールドに召喚されるというパターンが大半でした。
また、物語の流れも旅と戦闘が基本的な流れとなっていました。
本作品では新しい試みとして、①主人公が成人、②デジモンが現実世界に現れる、③日常描写を取り入れるといったことをしています。

但し、デジモンを題材にする以上、戦闘シーンは必須だと思っています。
次回からは戦闘シーンを積極的に取り入れるつもりです。

皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。