成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第12話:スタートライン前夜のお話

 

 

 

~トキワジム~

 

 

 

『バキィッ!』

 

「スピッ!?」

 

「スピアー!?」

 

 

 

 室内につくられたトレーニング用のバトルフィールド。普段はジム所属のトレーナーたちによる自己研鑽と切磋琢磨が行われているその場所に鋭い打撃音が響き渡り、戦闘を行っていたスピアーが吹き飛ばされてフィールドの壁に叩きつけられる。

 

 

 

「相変わらず動きは良い。が、狙いがまだ甘い。何をしたいのか、何を狙っているのか、相手に絞らせないようにしなければ今のように簡単に迎撃されるぞ」

 

「くっ…はい!」

 

 

 

反対側のフィールドには、指導者であるトキワジムリーダー・サカキさんが悠然と構えてプレッシャーを放ち、更に前にはスピアーを殴り飛ばしたニドキングが仁王立ち。考えるだけでも腹が痛くなるような状況だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…2年前までならな。

 

 

 

そう、俺がポケモン世界に飛ばされて早くも2年と半分が経とうとしていた。今の季節は寒さ吹き荒ぶ冬。トレーナーズスクールでの学年も最上級生となり、これまで長々と世話になってきたトレーナーズスクール初等部での生活も残りわずかとなっていた。

 

今でも忘れることはない。あの2年前の夏合宿で盛大にやらかした俺は、合宿から帰った翌々日、いきなり旧社屋管理人のルートさんに連れ出された。半ば強引に連れていかれた先は他ならぬトキワジム。今いるこのトレーニングフィールドで待ち構えていたのは、凶悪な笑顔を浮かべたサカキさん。どうやら完全にサカキさんに目を付けられてしまったようで、唐突に告げられたのは週1回の特訓の開始。

 

…後は現在まで続く、地獄のようなトレーニングの日々だ。最初こそ戦々恐々としながらも軽い動きの確認とか、ある特定の状況下において使用する技の取捨選択など、半ば知識の確認のようなこともやっていたが、時が経つにつれて実践の割合が多くなり、週1回だった特訓が週2回になり、3回になり、今では1週間の半分をサカキさんの一軍メンバーとプレッシャーを相手にスピアーと立ち向かう日々。

 

いつしか俺の生活はトレーナーズスクールでの学生生活で良い成績を残すことよりも、サカキさんにボロ雑巾のように絞られる特訓を如何にして乗り越えるかが基準となるようになり、今では完全に俺の生活の中心へと変化していた。

 

問題の特訓の内容と言うのが、ニドクインの『かえんほうしゃ』やら『れいとうビーム』やらをひたすら躱す弾幕シューティングゲームとか、『あなをほる』で地中を動き回るディグダ・ダグドリオの攻撃を避けながら、頭を出したところを撃ち抜くなりブッ叩くなりするポケモン版もぐら叩きとか、サイホーン・サイドンの『みだれづき』を『みだれづき』で迎え撃つみだれづき合戦とか。

 

大体痛い目を見るのはスピアーだったが、俺も一緒に辛い思いを耐えてきた。ひたすら迫りくるサイホーンから逃げる持久走とか、イシツブテ抱えてダッシュとか。酷い時はバトル形式の特訓でブッ飛ばされたスピアーに巻き込まれ、一緒に壁と熱いキッスを交わしたこともあった。これが人、それも子供に対してやることかよ…あの人絶対人間じゃねぇ…

 

…で、今日の特訓はニドキング相手により実践的なバトル形式での訓練…という名のいじめだった。今まで教えられてきた知識や培ってきた経験やこれまでの恨み辛みや何やかんやを全部乗っけて『今日こそはそのイカした顔をぶち抜いてやる』と攻め掛かったら、さも当然のように『いわなだれ』を撃たれ、弾幕ゲーさながらに避けまくった末に逃げ場を失くして『メガトンパンチ』でキレイにど真ん中をぶち抜かれましたとさ。ド畜生が。

 

 

 

 そんなわけでほぼほぼ特訓に日々を費やした結果、他の子供たちと遊ぶような時間はあまりなかったが…まあ、特訓そのものは確かにきつかったし、殴り飛ばされ弾き飛ばされ撃ち抜かれの繰り返しでスピアーには辛い思いをさせてしまったけど、同時にスピアーが強くなってる、俺が上達しているという実感もあった。それが楽しかったから遊ぶ時間がなくとも言うほど苦にはならなかった。そもそも、精神年齢は20代越えてるのに何やって遊べと…いや、まあたぶん実際に遊んだら楽しいんだろうけどさ。

 

トレーナーズスクールも成績はあれからずっと学年トップを維持し続けることは出来ている。実技でも、筆記でも。自惚れではないが、特に実技の方は同年代で抜きん出ていると言われて久しい。筆記の方も、もう残されているのは3学期のテストだけだから、ここまで来たなら最後までトップをキープして卒業してみたいね。主席卒業…向こうじゃ全く縁のない話だったから、ちょっと憧れてる部分はある。

 

…あ、あの時勢いでぶっ放してしまった『マグニチュード』は、『ころがる』共々後日無事学会とやらに取り上げられ、新しい技として認定されました。これで大手を振って使えるということにはなった。研究者の皆さんが五月蝿いかと思ったけど、サカキさん経由での報告となったらしく俺に実害らしい実害はないです。これは正直有難かった。怖いけど。

 

他にも攻撃技を中心に第2世代以降の新しい技がちらほらと発見され認められ始めており、少しずつだけど俺にも動きやすい世界に変わりつつある。まだまだではあるが、この傾向そのものは喜ばしいことだ。

 

 

 

…え?『何か他にもやらかしてるんじゃないのか』だって?HAHAHAHA、ソンナコトアルワケナイジャナイデスカーヤダナー(棒)

 

 

 

…ええ、やらかしましたよ、やらかしましたとも。スピアーの技が貧弱すぎたので血涙を流しながら「『どくづき』寄越せやオラァ!」と気持ちを込めて、天にも届けとばかりに祈りつつジムトレーナーさん相手にオラオラしてたら何か打てた。サカキさんには「またお前か…」的な顔で苦笑されつつ尋問されました、はい。サカキさんの呆れ顔とか少し珍しいものを見た気分になりました。

 

 

 

…だって仕方ないじゃない!覚えてる技が『ダブルニードル・どくばり・きあいだめ・みだれづき』って、この後どうしろって言うんだよぉ!技構成だけならタケシすら突破できるか怪しいレベルの低威力技のオンパレードだぞ!?それぐらい腕前でどうにかしろって言われるかもしれないけど、ちょっとぐらい高望みしたっていいじゃないか!それに、サカキさんがこれまた鬼畜なんだよ!あの手この手で俺を崖っぷちに追い込んできやがる。むしろ、追い込んだ状態で何をするのかを楽しんでる節すら感じる始末。だからついカッとなってやった、反省も後悔も…結構している。

 

せめてもの救いはスピアーが自力で覚える技で、本当に必要そうな第2世代以降の技が『どくづき』ぐらいだったことか。次点で『がむしゃら・おいうち・とどめばり』と言ったところだが、使う状況を選ぶ技ばかりなのが幸いしそれ以外にはやらかすことなく2年間をやり過ごせた。

 

 

 

…で、現状この技のことは俺とサカキさんに、その時相手していたトレーナーさんに観戦していたトレーナーさんと、トキワジム内部のメンツしか知らない秘中の技と化しており、まだ世間には出していない。どくタイプのポケモンならたぶん使えると思うとは伝えてあるので、サカキさんのニドキングが習得することが出来ればサカキさん経由で学会に上げるそうな。やったねスピアー、少しずつお前さんの時代の風が吹いてるぜ。

 

 

 

 

 

「…頃合いだな、今日はここまでとする。スピアーは回復に回して、オマエはそのまま筋トレだ。それが終わったらランニングにいけ」

 

「は、はい!」

 

 

 

なお、俺がボロ雑巾にされる最大の要因はバトルトレーニングの後に課される各種基礎体力トレーニングにある模様。分かってはいたけど鬼や、この人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

「…今日はここまでだ。しっかりと体を休めるように」

 

「ハァ…ハァ…はい、ありがとうございました」

 

 

 

 

バトルでの実践訓練が一通り終わったら、特訓の最後にジムの周りを何周か走らされて1日のスケジュールは終わる。冬場の外回りは寒さがホント身に染みる。何でも「強いポケモントレーナーに必要なモノは豊富な知識と戦いの才、そして何事にも折れぬ強い意志。強固な意志は強靭な肉体にこそ宿る」ということらしいが…何だろうね、このスーパーマサラ人的な匂いを感じる考え方。ポケモン世界のトレーナーたちってみんなこんな考えしてんの?と言うか、身体能力ってポケモントレーナーに必須なのか?いや、身体鍛えるのは別に良いし、ジムトレーナーの皆さんもサカキさん自身も鍛えているから表立って反対する理由も特にないんだけどさ…

 

 

 

「…ああ、それと先日のトレ選の件だが、残念だったな」

 

「…ご期待に沿えず、すいません」

 

「フッ…心にもないことを」

 

 

 

サカキさんの発言に対し、反射的に謝罪の言葉を返す俺。確かにそのとおりなんだけど、結果を残すことが出来なかったことは事実だからなぁ。

 

 

サカキさんの言うトレ選とは、正式名称を『カントートレーナーズスクール選抜大会』と言い、カントー各地にあるトレーナーズスクール各校の初等部5年生~高等部2年生までの学年別に選ばれた生徒たちによるポケモンバトル大会のこと。大会は年齢別にトーナメント方式で行われ、各校から選りすぐりの未来のポケモンマスターの卵たちが、自身の持つ才能とそれまで学んできた技術を披露する、学生生活の集大成とも言える大会だ。俺はトキワトレーナーズスクール初等部5年の代表の一人として、1週間前にタマムシシティで行われたこの大会に参加していた。

 

 

 

…で、結果は善戦空しく初戦敗退。というのも、正直言って運が悪かったとしか言いようがない。まず、いきなり当たったタマムシ代表の相手の手持ちがフシギダネで、こちらのサンドとは元からタイプ相性が悪かった。結構なハンデではあったが、それでも試合運びは完全に俺のペースだったし、あと一歩のところまで追い詰めてはいた。そのままなら勝利も手に出来ていたはずだったんだ…最後の最後で特性『しんりょく』で火力の跳ね上がった『はっぱカッター』を急所にもらわなければ。

 

運には見放された形になったが、それでもこれまでの特訓の成果は十分に発揮出来たと思うし、実際タイプ相性が不利な相手に優勢に試合を運ぶことは出来てたしで、言うほど悲観的な結果ではなかったと思っている。

 

 

 

…そもそもの話、この大会自体を俺があまり重視してなかったってのもあるけどな。確かに身に着けてきたことを実践する場としてはこれ以上ないぐらいの舞台ではあるんだけど…何と言うか、その時は大きな目標であっても、歳をとって後年見返すと「そんなに全力投球するほどのことでもなかったよね」ってなった記憶はないだろうか?上から目線と言うか、歳上目線と言うか、そんな感じだったもんで、結果については「目に見えて無様でなければそれでいい」というぐらいの意識で臨んでいた。

 

早い話が、他の参加者の皆さんほどやる気が無かった。むしろタマムシシティ観光の方がゲフンゲフン。

 

 

 

「『運が無かった』とでも思っているのだろうが、確かに運が悪かったのは事実でも、同時にこの世界は結果が全てでもある。オマエはもっと貪欲になるべきだな…いつもここで戦っている時のように」

 

「…ハイ、精進します」

 

 

 

…ホント、この人には隠し事が無駄なように思える今日この頃。その鋭い目で睨まれると、俺のありとあらゆることが筒抜けな気がしてならない。いや、サカキさんの影響下にある場所に住んでて世話してもらってれば当然なんだけど、秘中の秘である俺の素性についても、ある程度察しててもおかしくはない気すら持っている。

 

 

それにしても、「結果が全て」か…概ね正しいとは俺も思う。スポーツにおいてどれだけ練習を積み重ねたとしても、競技の途中でリタイアしたら記録にはならない。どんなに頑張ったとしても、最終的な結果が伴わなければ社会的に評価してもらえないことがあるのは確かだ。けど、俺の場合全力を尽くして出した最高の結果は、必ずしも良い方に転がるわけじゃあない。

 

サカキさん…貴方の存在そのものが、今の俺が結果を追い求める上での明確な目標であると同時に、重く大きな足枷となっている。俺が貴方の持つ裏の顔を知っていることを、貴方は気付いて……たら、こんな悠長な事やってる余裕なんぞなかったんだろうなぁ、きっと。

 

 

 

…もしや「貪欲になれ=もっとやらかせ」ってことですか?俺、煽られてる?

 

 

 

「それと、明日少し話がある。時間を空けておくように」

 

「…?はい、わかりました」

 

 

 

それだけ告げると、サカキさんは息を整えている俺を残して去って行った。普段はほぼ一方的に決めて無理やり有無も言わせずやらせる無茶振りのサカキさんが、一体何の話だろうか。

 

気になりながらもそれ以上はどうにも出来ず、結局今日はそのまま終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

~翌日夜・旧社屋応接室~

 

 

「失礼します」

 

「入れ」

 

 

 

 前日に言われたとおりに予定を空けて部屋で待機していると、ルートさんから「ボスがお呼びだよ、応接室ね」と声が掛かり、言われたとおりに応接室に向かう。部屋の中にいたのはサカキさん…ともう一人、サカキさんの秘書を務めている女性がいた。秘書さんは何人かいるようだが、この人はセドナさんと言い、例の副社長兼愛人さんとは別の人だ。

 

 

 

「まあ、座れ」

 

「はい」

 

 

 

入ってすぐに促され、机を挟んでサカキさんの対面に着席する。話とは一体何なのか、考える暇もなくサカキさんの話は始まった。

 

 

 

「今日こうしてオマエを呼んだのは、オマエの今後のことについて話がしたかったからだ」

 

「今後のこと、ですか…?」

 

「ああ、来年にはトレーナーズスクールも卒業だろう?その後どうするか、だ」

 

「どうするって…そのまま中等部にエスカレーターするのでは?」

 

「それも一つの選択肢ではあるな。だが、私が示したいのはこういう道もある…ということだ」

 

「これを」

 

 

 

その言葉に合わせて、秘書さんが机の上に置いたのは…

 

 

 

「…トレーナーカード?」

 

「オマエの…な。どうだ?卒業した後、各地のジムを巡る武者修行の旅に出るというのは」

 

「ジム巡り…」

 

「今のオマエなら、机に向かっているよりもよほど有意義な結果を得られると思うがな」

 

 

 

机の上に置かれた、まだ何も情報が入っていないまっさらなトレーナーカード。卒業と同時に俺の物になるというそれを前にして、サカキさんはジム巡りに出ろと言う。卒業後はそのまま中等部に進んで…っていう自然な流れだと思っていたんだが…さて、これはどうしたものだろうか。

 

制度的には11歳の子供が一人旅をするのは何も問題がない。そもそも原作の主人公たちもそれぐらいで旅に出ているわけだし、そうでなければむしろ困る。手持ちはスピアー1匹だが、サカキさんの特訓を経て『どくづき』が打てる程度には育っている。戦力として十分に当てに出来るはずだ。知識面もまあ問題なし、サカキさん及びジムトレーナーの皆さんに捻られ続ける形だったが戦闘経験もそれなりに積んだ。実力面には問題ないとサカキさんのお墨付きも出た…状況は整っているってワケか。

 

それに、初等部の授業は比較的…いや、かなり退屈だったのも事実。何度か授業を見学したことはあったが、中等部に上がったところで、サカキさんの特訓やジムトレーナーの皆さんを相手にする以上の成果は得られない可能性の方が高いかもしれない。一般常識?真っ当に生きれる程度の良心・良識はとうの昔に身に着けているので問題ない。具体的には10年以上前に。

 

 

 

問題があるとすれば、資金面。ゲームではトレーナーをしばき倒して賞金を巻き上げたり、拾ったアイテムを売り払って稼いでいたわけだが、現実ではそんなことがまず出来ない。各地のポケモンセンターは無料で利用出来ても、野宿になった場合に必要な物、モンスターボールやきずぐすりなどのトレーナー必需品の購入・補充にはどうしても金がかかる。

 

それは詰まるところ、サカキさんの援助を受けなければいけないということで…

 

 

 

「それは…でも、それではお金の事で余計にサカキさんに負担をかけることになるのでは?」

 

「相変わらず子供らしくない心配をする。進学するにしても負担がかかるのは同じことだろうに」

 

「…おっしゃるとおりで」

 

「安心しろ、金のことは気にしなくていい」

 

「ですけど…」

 

「それとも何か?今の実力では不安か?私が今まで付けてやった稽古ではまだ不足だと?」

 

「え…い、いや、そういうわけでは…」

 

 

 

いきなり真正面から威圧されてたじろいでしまう。これだからこの人と面と向かい合うのは嫌なんだ、寿命が縮む思いがする。バトルや特訓の時はまだ大丈夫なんだけど…

 

…と言うか、その提案を受け入れなかったら俺どうなるんですかね?処されたりしませんかね?

 

 

 

「…フッ」

 

 

 

いやいやいや、そんな意味ありげに笑わないで下さいよ!?今以上の内容の特訓とか、死刑に等しい嫌な予感がビンビンするんですけどぉ!?

 

 

 

…あまりサカキさんから借りを作り続けるのは嫌だったんだが、こうも真っ向から脅h…ゲフンゲフン、説得されるとどうにも断れない。それに、折角のポケモン世界だ。旅をして強くなるのがゲームの本筋。俺自身その流れに乗ってみたいという思いは常日頃から持っていたし、これまでの学生生活に飽きが来ているのも事実。ならば、その提案を受け入れることにそこまで迷いはない。

 

 

…あと、サカキさんの影響を出来る限り受けないようにするためにも強さはたぶん必要だと思うから。切実に。

 

 

 

「…わかりました、御厚意に甘えてそうさせてもらいます」

 

「そうか、では手続き等はこちらでやっておく。必要な品も最低限は用意しよう。リストはまた渡すが、それ以外に必要な物があれば管理人に伝えるように」

 

「ありがとうございます」

 

「それと…わが社で作った試作品のテスターを、オマエにやってもらいたい」

 

「試作品…ですか?」

 

 

 

試作品?テスター?一体何だ?

 

 

 

「セドナ、見せてやれ」

 

「はい、こちらになります」

 

 

 

秘書さんが鞄から取り出したのは、黄色の細長い布地にモンスターボールのマークが描かれたハチマキ、それよりも幾分か薄い白い布、鋭そうな爪の3つ。これは…もしや…

 

 

 

「これは…?」

 

「最近の研究によりポケモンにアイテムを持たせると、持たせた物に応じて特殊な効果を発揮することが分かってきました。その特性を利用して、我が社の開発班が作った試作品になります。それぞれ『きあいのハチマキ・シルクのスカーフ・せんせいのつめ』と開発班は呼んでいます」

 

 

 

…これは驚いた。秘書さんに説明を受けずともどこかで見た記憶がある気はしていたが、実際にゲームにあったアイテムじゃないか。

 

『きあいのハチマキ』は持たせるとひんし状態になる攻撃を受けた際、確率で残り体力1で耐えることがあるアイテム。『シルクのスカーフ』は持たせたポケモンが使うノーマルタイプの技の威力が上がるアイテム。『せんせいのつめ』は持たせたポケモンが確率で先制攻撃を行うというアイテム。運が絡む部分はあるが、状況次第では大きなアドバンテージになり得るバトル用アイテムが3つ…中々に有用な贈り物じゃないか。

 

 

 

「それぞれポケモンに持たせることで、追い込まれた状況で相手の攻撃を持ちこたえる効果、技の威力が上がる効果、動きが素早くなる効果があることが確認されています」

 

「それは凄いですね…」

 

「ですが、それらの効果は必ずしも発揮されるわけではなく、発動条件が未だによく分かっていない部分があるの」

 

「そこで、オマエにはジム巡りの旅の中で実際のバトルの際にこれらの道具を使い、効果の検証をしてもらいたい…と言うわけだ」

 

 

 

なるほど、旅のついでに会社が作ったポケモンに持たせる道具のテストをしろ…ってわけか。オーケーオーケー、そういうことなら望むところだ。変な代物というわけでもなさそうだし、時代の進歩のために俺も一肌脱ごうじゃないか。

 

 

 

「わかりました…あ、でも報告はどうすれば?」

 

「安心して、こちらも渡しておきますね」

 

 

 

秘書さんから渡されたのは、今となっては懐かしさすら感じる携帯電話のような機械。これも何か見たことあるシルエットだぞ。

 

 

 

「これは『ポケギア』。最新の通信機器です。我が社の開発部の事務所の連絡先がすでに登録してあるから、何かあればそちらに連絡してもらうことになるわ」

 

「わかりました」

 

「操作方法は…」

 

 

 

秘書さんから電話やボタン、機能等の操作説明を受ける。それにしても、やはりポケギアだったか…この世界では最新機器なようだが、俺からすればだいぶ懐かしい存在だな。通話が出来て、時計機能があって…機能的には俺の記憶にあるポケギアと大差はなさそうな感じだ。

 

 

 

「操作方法はわかった?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「では、私からは以上です」

 

「…話した通り手続き等必要な準備はこちらで前以ってやっておく。詳しいことはまた色々と決まり次第、セドナを通して連絡する。オマエは残りの学生生活を楽しんでおくことだ」

 

「はい」

 

「では、今日の話はこれで終わりだ。私はオフィスに戻る。オマエも明日に備えてゆっくり休め」

 

「はい」

 

 

そうしてサカキさんと秘書さんが部屋を去り、俺も自室に戻った。

 

 

 

部屋に戻り、改めて冷静になって考えると、何かサカキさんのいい様に流されているような気がしないでもないが…まあ、それも今だけの話だ。旅に出て、手持ち増やして、強くなって、サカキさんと真っ向から勝負出来るぐらいの実力をつける。そうすれば、いつかサカキさんの視線に怯えなくても済む日が来る…はず。

 

 

 

何と言ったって、オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな、このはてしなく遠いポケモン坂をよ…そう、俺たちの戦いはこれからだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…まだ終わらないヨ?

 

 

 

 




お願いします!スピアーに、スピアーにメインウェポンを恵んでやってください!普通に活躍させてやりたいんです!…そんな第12話でした。

話の進め方に悩んで2回ほど書き直したら遅くなってしまいました。結局トレーナーズスクールでの話は前話の後書きの通り『はかいこうせん』することに…書いてたら話進まなくなりそうでしたし()

この世界でのトレーナーカードは、各地のジムリーダーと認可を受けた人物(オーキド博士等)や団体が発行している設定です。そして『もちもの』の概念が登場し始めました。彼がやらかさずとも世界は進んでいるようです。

次回、いよいよゲーム通りに各地のジム巡りを開始する主人公。が、サカキ様の思惑に流された結果、旅は開始早々思ってもいなかったまさかの方向に。サカキ様の思惑とは一体何か?そして流された先に待つ者とは?次回もポケモン、ゲットじゃぞ(ネタバレ)
 
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