「マサヒデさんには、このままジムリーダー・カツラと戦っていただきます」
「(え?どゆこと?何でカツラ?ジムトレーナー戦じゃなかったの?あるぇー?)」
俺の前に立つ初老の男性…いきなり現れたジムリーダー・カツラに対し何も言うことが出来ず、係の職員さんからリーダー戦を行うことを告げられてなお動揺を隠せない俺。いや、だってラスボス前の中ボス戦だって思ってたら、ラスボスが不意打ちして来たんだから無理もないでしょ。これは歴戦のベテラントレーナーと言えども予測不能…だと思う。それとも、俺の気が緩み過ぎ?
と言うか、ホントなんでいきなり出て来たし。
「ずいぶんと驚いているようだが…なに、君の一次試験の結果が飛び抜けて優秀だったこと、そして今回のジム戦が初めての挑戦であることを加味した結果だよ」
「そ、そうですか…」
何故いきなりリーダー戦であるのかは、カツラ…さんが自ら語ってくれた。が、事態をよく呑み込めてない俺にはこう返すのが精一杯だった。
「しかし、本当にトレーナーズスクールを出たばかりなのだな。君ぐらいの年齢の挑戦者というのも中々見ないが、それがまさか満点で一次試験を突破してくるとは…長いことジムリーダーを務めてはいるが、こんなことは初めてだ」
あ、やっぱり満点取れてたんだ。ちょっとだけ安心した。ついでに心も落ち着いた。
「基本的な問題とは言ったが、かなり広い範囲から出題したつもりだったんだが、大したものだよ。応用的な記述式の問題も何問か出した。これで満点を取れる者などほんの一握り、そうそうおらんよ」
「あー…まあ、知識には自信ありましたから」
「知識に自信か…記述問題の解答を見て、この結果も確かな知識に裏付けされたものだということはわかった。あとは、その知識を実戦に置いて活かすことが出来るかどうか、実力が伴っているかどうか。それを試すのが二次試験であり、ジムリーダーであるわしの役目だ。
…さあ少年、早速始めようじゃないか」
おっと、早くもバトル開始の流れですか?残念、まだこっちは準備が出来てないんだ。いきなりだったからね。それに、確認しておきたいこともあるし。
「すいません、ちょっと待ってもらっていいですか?」
「む、まだ準備が出来ていなかったかな?」
「はい。それと、1つ確認したいことが。ポケモンに持ち物を持たせることはありですか?」
サカキさんから託されていた、試作品だという3つのアイテム。きあいのハチマキ・シルクのスカーフ・せんせいのつめ…許可が下りるなら、このジム戦で実戦投入してみたいんだが…如何でしょうカツラさん。
…別に忘れてたわけじゃないよ?ホントダヨ?
「む、持ち物か?別に構わんが…わざわざ許可を取るほどのものか?」
「実は、トキワコーポレーションの試作品でして…故あって、実戦での試験運用を社員の方から頼まれたのです。変な効果があるものではない…と聞いているのですが、事前に許可は取っておいた方が良いと思いまして」
「ふーむ…そう言えば、君はトキワジムリーダー・サカキが保護者だったな……なるほど、それでか…いいだろう、使用を許可しよう。如何に強力な持ち物だとしても、それを上手く使いこなせるかどうかはまた別の話。今後は持ち物を活かしたバトルが主流になるとも言われているし、それもまたトレーナーとして必要な知識となるだろう。それに、わしも研究者の1人、トレーナーの1人としてその試作品とやらには興味がある」
「ありがとうございます」
というわけで、テストするように言われてたのに中々使う機会がなかったアイテムたち。使用許可も出たので、大手を振って使わせてもらうとしよう。
てか、俺がサカキさんの保護下にあるのは普通にトレーナーカード見たら分かるんだ。気付かなかったわ。後でまた確認してみよう。
「では、5分待とう。君の所持しているバッジは0個なので、バトルでの使用ポケモンは互いに2匹だ。準備が整ったら声を掛けてくれ」
そう言って、カツラさんはフィールドの奥の方へと離れて行った。ついでにバトルが2-2であることもサラッと判明。すっごい悩ましいパターンになってしまった。事前に確定させていたサンドと相性面で不安はあるが、安定性のあるスピアーでいくか、制御不能かつ能力未知数だけど、相手と相性が良くサンドのサポートにもなるヨーギラスでいくか…
持ち物に関しては技構成的に現状シルクのスカーフを活かせる奴がいないので、ステータス的にサンドにせんせいのつめ、スピアーにきあいのハチマキのパターンか、サンドにきあいのハチマキ、ヨーギラスにせんせいのつめのパターンか、その逆かの3パターンから選ぶ必要がある。
まあ、それを決めるためにも選出する2匹を先に決めないといけないわけで。うーん…個人的にはすごくヨーギラスを使いたい。使ってみたい。けど、やっぱりあのクソ気性は…うぬぬぬ。
考えを一度整理するため、ヨーギラスのデータを確認しようとポケモン図鑑を起動する。
◇◇◇◇◇
ヨーギラス
・レベル:17
・おや:マサヒデ
・性別:♂
・ワザ:かみつく
にらみつける
すなあらし
いやなおと
レベル17のとき、マサラタウンで出会った。
◇◇◇◇◇
…こうして見てみると、目につくのが思っていた以上に技が貧弱な点。以前のサンドよりかは確実にマシだが、ほのおタイプ相手に弱点は突けないし、効果が被っている技もある。
素材そのものはかなり良いのは間違いないのだが…まあ、それも制御出来るようにさえなれば、という但し書きが付く。こればかりは一朝一夕でどうにかなるものではないので、気長に付き合っていきたいとは思う。しかし、同時にほとんど手を入れてない今の状態でどこまでやれるかは見ておきたいという思いもある。
加えて、俺は今回が初のジム戦。そもそも、ジムリーダーという職業は挑戦者の実力を測るための物差しという側面があり、ジムリーダーが定める一定のラインを突破する…即ち実力を証明出来たのなら、ゲームとは違って必ずしもバトルに勝利する必要はなかったりする。勝利するのが一番単純かつ手っ取り早いのは確かだけども。
トキワジム?サカキさん?あれはただのイジメだからノーカウントで。
さっきのカツラさんの話しぶりから察するに、今回使用するのはたぶん対新人用のポケモンなんじゃなかろうか?ゲームで最初のジムリーダー・タケシが使っていたポケモンはたしか10レベル代前半~半ばぐらい。新人用のポケモンならそう大差はないはずで、そこから考えれば単騎でもレベル21のサンドなら十分に勝機はあると思う。
…よし決めた。ヨーギラス使おうそうしよう。どこまでやれるか頑張ってもらって、俺もどこまで言うこと聞かせられるか頑張ってみよう。で、ダメだった時はその時また考えよう。持ち物もサンドにハチマキ、ヨーギラスにつめで決定だ。
と言うワケでサンド、今回はお前が切り札にして最後の砦だからな。頑張ってくれよ。
「キュイ!」
開戦準備のため外に出したサンドにそう声を掛けると、当然だと言わんばかりの返事が返ってきた。うむ、流石は3年間も付き合いのある相棒だ。実に頼もしい。
「ヨーギラス、今回はお前にも頑張ってもらうからな」
「ヨーギィ…ッ」
同じようにヨーギラスにも声を掛けたが、思いっきり睨み付けられた。そんなに凄んでも状況は変わらんぞ。ヨーギラスの反応を見つつ、サンドの短い尻尾にきあいのハチマキを巻き、ヨーギラスの手にせんせいのつめを装着する。反抗されるかと思ったが、大人しく装着されてくれたので良かった。
…あ、スピアー監視・監督お疲れさん。今回はお預けだけど、次のジム戦では切り札を任せるから我慢してくれ。
「すいません、お待たせしました!よろしくお願いします!」
「うむ、始めるとしようか」
準備が整ったことをカツラさんに伝え、フィールドの所定の位置へ。カツラさんは既にスタンバイ完了しており、審判役のジム職員さんが俺がフィールドに立ったことを確認したところで、いよいよバトルスタートだ。
「これよりジムリーダー・カツラと、チャレンジャー・トキワシティのマサヒデによるジム戦を行います!使用するポケモンは互いに2体、アイテムの使用は不可、持ち物は可、ポケモンの交代はチャレンジャーにのみ認められます!」
審判によるバトル前のお決まりのルール確認に続き、カツラさんからもバトル前の熱い口上が放たれる。
「では改めて、わしはグレンジムリーダー・カツラ!知識とほのおタイプを愛する燃える男だ!わしのポケモンは全てを焼いて焦がしまくる強者ばかり!やけど状態になればみるみる内に戦う力を奪われる!とにかく熱いほのおポケモンたちが放つ猛攻を打ち破ることが出来るかな?
うおおーす!さあ少年、やけどなおしの準備はいいか!?」
「それでは、バトル開始!」
さあ、ついに闘いの火蓋が切られた。戦闘中のアイテムは使用不可ってことは『やけどなおし準備してても意味ないだろ』なんて無粋なツッコミはなしだ。今の俺が、俺のポケモンたちがどこまで通用するか…勝負だ!
「ゆけ、ロコン!」
「行ってこい、ヨーギラス!」
「コォーン!」
「ヨ…ギィッ…!」
お互いの先発ポケモンがフィールドに姿を現す。カツラさんのポケモンはロコン。ほのお単タイプのきつねポケモンだ。夢特性で『ひでり』を獲得したり、リージョンフォームでこおり・フェアリーになったりと、近年になって目立つことが多くなっている。そしてカワイイ。
対する俺の先発は予定通りにヨーギラス。モンスターボールからフィールドに出た途端、眼前のロコンに対して威嚇を始めるという有り様だが、その闘争心は評価しよう。あとは、これを俺が御し切れるかどうか…だ。
「見たことのないポケモンだが…まずは挨拶といこう。ロコン、ひのこだ!」
「コォン!」
先手を取ったのはロコン。ヨーギラス目掛けて『ひのこ』が飛んでくる。
「ヨォギィ!」
「ヨーギラス、躱s…って、オイ!」
俺が回避の指示をするよりも先に、ヨーギラスは向かい来る火の粉に真正面から突っ込んでいく。いきなりやってくれたな、あの野郎!
そんな俺の怒号もお構いなしに、ヨーギラスは火の粉の中をロコンへ向かって突き進む。タイプ相性もありそこまでダメージはないはずだが、予想出来たとは言え出だしはよろしくない。先が思いやられる。
でも、動いてしまったことは仕方がない。今はとにかく、アイツが俺の指示をどこまで聞くか、やれるだけやってみる。それで勝てるなら文句なし、負けてもサンドで2枚抜きだ!
「なら、かみつくだ!」
この状況では攻撃させるのがベストのはず。そう判断した俺の指示を聞いたかどうかはわからないが、ヨーギラスはスピードを落とすことなくロコンへ突進、攻撃の態勢に入っている。
「突破してきたか…ならばロコン、あやしいひかり!」
「コォン!」
「まず…見るな、ヨーギラス!」
カツラさんの指示に対して、即座に俺も慌てて指示を飛ばすが、一手遅く攻撃直前だったヨーギラスはまともにこれを見てしまった。その後、勢いのままロコンにヘッドスライディング。突き飛ばした。
『あやしいひかり』は相手をこんらん状態にする技。こんらん状態になると確率で自傷行為に走ってしまう。技も当然出せない。これでゴース・ズバット系統に散々苦しめられた人も多いのではなかろうか。俺もそんな数いるであろうトレーナーの中の1人である。
「YO~、YO~」
ロコンが態勢を立て直している間にヨーギラスも態勢を立て直しはしたが、足取りが何か覚束ないような感じで見るからに混乱しているのがわかる。この世界だと、こんらん状態は自傷行為に走るというよりも、ねむり・こおり状態のような行動不能になるという印象が強い。
んで、このヨーギラス見てると、なんとなく『くろいメガネ』を持たせたらそのままラップでも歌ってそうな気がする。
「うおーす!ロコン、『ほのおのうず』!」
「コォーン!」
「くそっ、動けヨーギラス!」
そんなどうでもいい感想を抱いてる間にも、カツラさんの攻撃の手は緩まない。ゲームでの『ほのおのうず』は数ターンに渡って相手にスリップダメージを与え続け、交代を縛るほのおタイプの技。初代では威力の高い技だったものの、今では見る影もない。
とは言え、レベルが低い現状だと十分に脅威。加えてこの状況でこれは…新人相手に結構えげつないコンボを使われますなぁ、このジジイ。あやしいひかりで混乱させ、ほのおのうずで交代を封じる…見事なまでの心折設計だ。
とりあえずルーキー諸君、ここは絶対に一番最初に挑むべきジムではないぞ。と忠告しておく。
…で、肝心のヨーギラスはというと。
「Y、YO~…ギィッ!?」
俺の指示は勿論効果なし。避けることなくほのおのうずがきっちり直撃。完全に渦の中に閉じ込められた。ダメージ受けた瞬間だけ正気に戻ってたかな?まあ、それは些細なことだ。
「畳みかけろ。ロコン、ひのこだ!」
「コンッ!」
そこへこのチャンスを逃すまいと放たれる追撃のひのこ。
「YO~ギッ!?」
そして当然のように当たる。スリップダメージも加えて、ジわじわとヨーギラスの体力が削られていく。これじゃバトルじゃなくて、ただの射的か何か。お遊びも良いところだ。
「YO~…ヨ?ヨギ!?ギィッ…!」
…あ、今度こそこんらんが解けた。思ったよりも早かったな。でも、渦の中に閉じ込められてダメージをくらい続けている。このままじゃあ一方的にすり潰されるだけ。お試しみたいな面もあるけど、何も得ることなく終わるのは勘弁だ。
だから…
「ヨーギラス、下 が れ ぇ ‼‼」
「!?」
とっとと正気に戻って言うこと聞かんかい!このバカたれが!
「ヨ、ヨギ…」
いきなり怒鳴るように指示したのに驚いたか、はたまた現状がマズいと悟ったか、ヨーギラスは素早い反応で渦の中から抜け出す。その直後に渦も霧散した。こちらもタイムアップだったようだ。とにかく、これで一応はまだ勝機がある。
「…ヨーギラス、闇雲に突っ込んでも勝てる相手じゃないってわかっただろ。とりあえず、今回だけでもいいから、今は俺の言うことを聞いてくれ」
「………」
ヨーギラスは応えない。が、その視線だけは俺を向いており、それだけで如何にも不本意であることを訴えているようだ。しかし、だからといって今の俺に「はいそうですか」と引き下がる気はない。
「…沈黙は肯定と取らせてもらうぜ。『すなあらし』だ」
「…ヨギ」
不承不承といった感じではあったが、指示通りにヨーギラスは『すなあらし』を発動。俄かにフィールドのある室内に風が吹き始め、やがてそこに砂が混じり、技名どおりに砂嵐と化す。窓も開いてないのにどういう原理なのか一瞬疑問にも思ったが、そういうものだと納得することにして意識の外へ追いやった。
「これは…天候を操作する技か。厄介だな」
「コォン…」
風に乗って吹き荒れる砂がロコンを襲い、視界を僅かながらも奪う。『すなあらし』は文字通り、天候を砂嵐にしてしまう技。砂嵐状態になると、いわ・じめん・はがねタイプを持たないポケモンは毎ターンスリップダメージを受ける。ゲームでは、強力な持ち物である『きあいのタスキ』潰しによく利用されていた。さらに、一部の特性が効果を発揮するようになり、いわタイプのポケモンはとくぼうのステータスが砂嵐の間のみ上昇する。
つまり、ほのおタイプのロコンはダメージを受けるが、いわ・じめんタイプのヨーギラスはダメージを受けず、尚且つ特殊耐久が高くなる…すなわち、ロコンが使った『ひのこ・ほのおのうず』といったほのおタイプのポケモンが序盤で覚えている技のダメージを抑えることが出来る。良いこと尽くめだ。
「お次は『いやなおと』!」
「…ヨー…ギィィィィィ‼」
「コォッ!?」
続けてあいてのぼうぎょのステータスを大きく下げる技、『いやなおと』を指示。これで一撃のダメージを稼ぐ作戦だ。ヨーギラスの上げる奇声が耳障りなのか、ロコンはしかめっ面だ。よく効いている証拠だろう。なお、そのロコンよりも近い距離でこれを聞いている俺は…お察しである。
「砂に怯むな!ロコン、ひのこだ!」
「コンッ」
砂嵐の中を、ロコンが撃ち出したひのこが飛ぶ。しかし、その攻撃には風に圧されてか勢いはなく、砂に圧されてか力もない。
「ヨーギラス、ひのこは気にするな。一気に詰めろ!その後は…好きにやれ!」
「…!ヨーギッ!」
攻勢に転じる状況は整った。後はひたすら攻めまくるだけ。満を持してのゴーサインに、ヨーギラスも待ってましたとばかりに突っ込んでいく。攻撃するだけになれば、アイツに任せた方が良いはずだ。
「むう…ロコン、ひのこを撃ち続けろ!近寄らせるな!」
「コンッ!」
ロコンが飛ばす火の粉を物ともせず、ヨーギラスは砂嵐の中を一直線に突き進む。
みるみる内に距離が縮まり、遂にロコンがヨーギラスの射程圏内に捉えられる。攻撃技はかみつくしか持っていないが、元より物理寄りの能力してるんだ。寄せてしまえばこっちのもんさ。
「いかん!ロコン、あやしいひかり!」
この判断は流石ジムリーダーと言ったところか。カツラさんは攻撃の効き目が薄いと見るや搦め手にシフトしたようだ。再度こんらん状態になってしまうと、元よりの素早さはロコンの方が上。またほのおのうずを撃たれて万事休すだ。
勝つためには、ロコンがあやしいひかりを放つよりも先に攻撃を当てる他ない。
「走れヨーギラス!ぶちかませ、かみつく!」
間に合え、と祈りながら勝負の行方を見守る。ヨーギラスも懸命に走っているが、ロコンの態勢が間に合いそうだ。これは、もう無理か…
そう思って諦めかけたその時。
「ヨーギィッ!」
「コッ!?」
ヨーギラスが急加速し、その牙は今にも技を放とうとしていたロコンを一足先に捉えた。ロコンは噛みつかれたダメージでよろめき、ヨーギラスが離れた後も足が震えている。いやなおとを事前に受けているだけあり、ダメージは大きいように見える。
しかし、今のは一体…
「むぅ…あまり素早いポケモンではないと見ていたのだが、まさか防がれてしまうとは…」
素早さ…そうだ、『せんせいのつめ』か!持たせていたのをすっかり忘れていたぜ。この大事な局面で働いてくれるとは、フロンティアクオリティかな?ともかく、まだまだ幸運の神様は俺を見放してはいないらしい。
こうなってしまえば、あとはヨーギラスがロコンを倒すのが先か、ロコンがヨーギラスを削り切るのが先かのどっちかだ。このまま押し込む!
「後一歩だ、ヨーギラス!もう一度かみつく!」
「ギィ!」
「それはこちらも一緒だ!うおおーす!ロコン、でんこうせっか!」
「コ、コォンッ!」
残る力を振り絞って、ヨーギラスとロコンが再度激突する。特殊技主体だったロコンだが、ここに来て物理技『でんこうせっか』で真正面からのぶつかり合いを挑んできた。極至近距離での戦いとなれば、溜めが必要な遠距離技よりも物理技の方が良いという判断か。
先制技なだけあって、先手を取られてヨーギラスが押し返される。が、それはほんの一瞬。元からタイプ相性で効果今一つな上、地力で勝るヨーギラスがすぐに押し返して攻守逆転。
「ヨーギラス、いけぇ!!」
「ロコン!ひのこだ!」
ヨーギラスがロコンを押し倒し噛みついた瞬間、ロコンもひのこを撃ち出した。流石にゼロ距離の攻撃は避けられず、砂嵐の中をヨーギラスがまともに受けたことによる爆煙が巻き起こる。
煙が風に流れ、砂嵐の向こうに見えたのは…
「ヨ~…」
「コン…」
折り重なるようにして倒れた、ヨーギラスとロコンだった。
「ロコン、ヨーギラス、共に戦闘不能!」
両者ノックアウトを告げる、審判の声が響き渡った。
グレンジムリーダー戦…下手くそなりに頑張ってバトルの描写をすると簡単に8000字ぐらいになってしまうんですね…というわけで、再度の分割です。
問題児・ヨーギラスの初戦でしたが…やりすぎましたかね? 普通に言うこと聞かずに負けでも良いとは思ったんですが、まあここはフロンティアクオリティ?のおかげということで1つ。
次回こそグレンジム戦決着です。