成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

19 / 84
第18話:仕事が終わればまた仕事

 

 

グレンジムリーダー・カツラさんとの激闘から一夜明け、グレンタウン滞在3日目の朝。あの後街まで戻った俺は、サンドとヨーギラスをポケセンに預け、フレンドリィショップでモンスターボール等のアイテムを大人買い。さらにプレミアム感満載のお高いポケモンフーズを3匹分購入し、ポケセンにてポケモンたちと細やかな祝勝会を楽しんだ。

 

スピアーもサンドも喜んでいたし、ヨーギラスも…まあ相変わらず素っ気ない感じではあったが、手は出なかったし、心なしか距離も縮まったように感じた。実に満足のいく素晴らしい時間を過ごせたと思う。

 

…で、肝心な今日の予定なんだが、まずは昨日出来なかったサカキさん案件の遂行だ。預かった荷物の受取人が帰って来たとの連絡は、昨日の時点ですでにもらっている。その後はまだ決めてはいないが、フェリーで次の街に向かうか、それとももう少しグレンタウンに留まって色々と散策でもするか。或いは海岸で水タイプのポケモンを狙ってみるのも良いかもしれない。

 

んー…まあ別に急ぎの用があるわけでもないし、終わった時の気分次第でいいか。ともかく、まずは何よりもお使いの完遂だ。あんまり遅くなると後が怖い。

 

 

 

かくして俺は、グレンタウン最後の任務を遂行すべく、再びポケモン研究所を訪ねた。

 

件の研究者さんは朝一で外せない用があるということで、街中で少し時間を潰してからの訪問となった。昨日対応してくれた職員さんに教えられた研究室へと向かい、ドアをノックする。

 

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

 

中からの返事を確認して、ドアノブを回し中へと足を踏み入れる。研究室に入ってまず目に入ったのは、壁の本棚に所狭しと詰め込まれた書籍の数々。オーキド博士の時もそうだったけど、やはり研究者とか博士とか教授という職業は、大量の本が必要というか、あって当然なんだな。俺の大学時代の教授の部屋もこんな感じだったし。読んだ本の数=知識の量=研究者としての格、みたいな。

 

 

「お待ちしていました。ポケモン研究所第三研究室長のアサマです」

 

「トキワシティから来ました、マサヒデです」

 

「ようこそポケモン研究所へ。お茶でも用意しますので、どうぞお掛け下さい」

 

 

中で待っていたのは、件の研究者・アサマさん。白衣を来て眼鏡を掛けた、少し痩せぎみな如何にも研究者然とした男性だ。差し出された手を握り返し、促されるままにソファに腰を下ろす。

 

 

「さて、何よりもまず、昨日はすいませんでしたね。遠路遥々来てくれたというのに」

 

 

俺とアサマさんのやり取りは、開口一番の謝罪から始まった。

 

 

「いえ、流石に船のトラブルはどうしようもないですよ。それに、僕にとってはグレンジムに挑む良い機会になりましたから」

 

「ありがとうございます。しかし、グレンジムに挑まれたのですね。結果はどうでしたか?」

 

「一応何とかバッジはもらえましたが、流石はジムリーダーです。苦しい戦いでした」

 

「おお、それはおめでとう!その若さでカツラさんに勝利するとは、流石はあのトキワジムリーダー・サカキさんが見込んだトレーナーだ」

 

「いえ、そんな大したもんじゃないですよ。ホント、今回は運が良かっただけです」

 

「『運も実力の内』なんて言葉もあるし、相応の実力がなければ拾える幸運も拾えないものです。トレーナーとしてはからっきしだった私からすれば、素直に凄いと思いますよ」

 

 

やっぱりここでもサカキさんなのか…まあ、そのことに対して思うところは別にない。俺がサカキさんの薫陶を受けてトレーナーとなっている以上、サカキさんの名は付いて回る定なんだろう。良いことあればサカキさん、凄いことやればサカキさん、困った時にはサカキさん。俺も何言ってるのかわからなくなってきたが、何かあればとりあえずサカキさんのせいにしとけば大体解決するような気がする。

 

それと、この人も最初はトレーナーだったんだな。話を聞く限りではトレーナーとして行き詰まった末にその道を諦め、研究者として一定の成功を手にした…と。俺の想像に過ぎないけど、この世界ってそういう人多いのかね?…多いんだろうなぁ、きっと。ポケモンマスターって才能と努力がモノを言う、プロのスポーツ選手と似たようなものみたいだし。

 

 

「じゃあ、早速で悪いですが、預かっている書類を見せていただけますか?」

 

「…ああ、はい。こちらです」

 

「はい、確かに。では、拝見します」

 

 

鞄の中から預かった封筒を取り出し、アサマさんに渡す。彼はその場で封を切り、内容を確認し始める。しばしの静寂が訪れ、時計の針がチクタクと時を刻む音だけが部屋に響く。

 

時間にして2分かそこらで、アサマさんは全てを読み終わり顔を上げた。

 

 

「…なるほど、わかりました。内容については検討した上で、こちらから後日サカキさんに御連絡しましょう」

 

 

俺は封筒の中身を確認していないので、アサマさんの発言に対しては「はいそうですか」としか答えようがない。

 

 

「こちらからも一報は入れておきますが、もしサカキさんか、トキワコーポレーションの担当の方と連絡を取るようなことがあるのなら、そのようにお伝えしてもらえますか?」

 

「わかりました。僕も一度連絡は取らないといけないので、こちらからも伝えておきます」

 

 

自分からも報告を上げることを伝え、これでOK。後はこのことをサカキさんに連絡すれば、無事にミッションコンプリート。

 

そんな時のことだった。

 

 

「うん、ありがとうございます。では、確かに書類は受け取りm『ブーブーブー!ブーブーブー!』…ちょっと失礼」

 

 

突然、アサマさんの白衣のポケットから何かが震える音がした。席を外した彼が取り出したのはポケギア。どうやら着信が入ったようだ。

 

 

「もしもし……うん、うん…何だって?壊された?予備はどうした?……むぅ…わかった。こちらでも何とかならないか手は打ってみる。追って指示を出すので、それまで拠点で待機してくれ」

 

 

通話の途中から、アサマさんの顔が険しくなるのが見ていてわかった。漏れ聞こえた話からして何かの機材トラブルだとは思うが、何だろう?

 

 

「何かトラブルでも?」

 

「ああ、すいませんね。フィールドワークに出ているチームからの連絡で、野生ポケモンの攻撃で観察用機材のパーツが予備ごとダメにされてしまったらしいんです。このままじゃ観測が出来ないので、急いで替えのパーツを用意して届けないと…」

 

 

ありゃ、野生のポケモンに機材をぶっ壊されたのか。モノにもよるだろうけど、研究用とか専門的な機械って、修理とかにどれだけ金かかるんだろうね?俺、気になります。

 

そんなどうでもいいことは置いといて、大変そうだし、この様子だと俺はお邪魔になりそうだ。そうならない内に失礼するとしようか。

 

 

「お忙しそうですので、僕はこれで失礼します。お茶ありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそわざわざありがとうございました。サカキさんによろしくお伝え下さい」

 

 

ポケセンに帰ったらサカキさんに報告の電話しとかないと。無事にやり遂げたという細やかな達成感を胸に、俺はポケモン研究所を後にした。

 

 

 

さて、これで言われていた仕事も無事完了したので、次の街へ向かうことが出来る。目的地の選定も俺の自由だ。余程の場所でもない限り、どこに行こうがサカキさん横槍が入ることはないと思う。まあ、グレンタウンから出るフェリーの関係で目的地は3か所に絞られるんだけど。その内の1カ所はマサラタウンなので、新しい街を目指すのなら実質的には2カ所だな。

 

サファリパークで有名な『セキチクシティ』か、カントー最大の港町『クチバシティ』か…フェリーが出るのがこの2カ所だ。どっちの街にもジムがあり、セキチクのジムはどくタイプ、クチバのジムはでんきタイプを専門としている。タイプ相性的にはどちらも今の手持ちでやれないことはないが、攻撃を完全に無効化出来るという点ではクチバの方がやりやすいか?ただ、サファリゾーンも捨て難い。

 

…電話の時にサカキさんに相談でも…いやいや、こういうのはやっぱり自分で決めないと。何でもかんでもサカキさんに頼るのは良くない。悪の首領だし。後が怖いし。

 

 

 

そんなことを考えながら、ポケセンで少し早い昼飯を食べていた時の事。

 

 

『ブーブー!ブーブー!』

 

「んぁ?」

 

 

俺のリュックの中から着信音が鳴り響いた。慌てて口の中の物を喉の奥へ押し込み、ポケギアを取り出す。俺のポケギアの番号を知っている人…サカキさん?それともルートさん?

 

 

「もしもし?」

 

『あ、もしもし、マサヒデ君ですか?』

 

「はい、そうですが…」

 

 

聞こえてきたのは少し焦ったような男性の声。サカキさんでもルートさんでもない。

 

 

『先程はどうも。ポケモン研究所のアサマです』

 

 

ポケギアの向こうにいた声の主は、午前中に会ったばかりのアサマさんだった。何で俺の番号を知って…ああ、そういえば不在の件で研究所の受付の人に連絡先を伝えてたわ。

 

でも、俺に電話してくるって何かあったんだろうか?もしや、荷物の件で何か問題でもあったか?

 

 

「アサマさん…ですか?どうされたんです?荷物に何か問題でもありましたか?」

 

 

『いえ、そうではないんですが…マサヒデ君、今はどちらにおられますか?』

 

「…?ポケモンセンターですが」

 

『この後何か予定があったりしますか?』

 

「いえ、特には…」

 

『ああよかった!でしたら急なことで申し訳ないのですが、1つお願いしたいことがあるのです』

 

「お願い?」

 

『ええ、午前の機材トラブルの件についてです』

 

 

 

アサマさんの話によると、替えのパーツは準備出来たものの、届け先の観測拠点までの道中には野生のポケモンが出現する。万が一何かあったら困るので、トレーナーとして戦える俺にパーツ輸送の手伝い…護衛を頼みたい、ということだった。戦うことの出来る職員が揃って不在だったり、別件で離れられなかったりと人手が足りないらしい。

 

 

「自分なんかで大丈夫なんですか?もっとちゃんとした方にお願いした方が…」

 

『私たちが今必要としているのは、すぐにでも動ける戦力です。それに、サカキさんの見込んだトレーナーなら実力の方も問題ないと判断しました』

 

 

いや、問題ないって…その『サカキさんが見込んでるから』っていう無駄な信頼感はいらなかった。出来ないことなんていくらでもあるぞ。というか、出来ないことの方が圧倒的に多いぞ。と言うか、はたしてそれはこんな子供に頼んでいい仕事なんですか?

 

 

『もし受けて下さるなら、僅かですがお礼も用意させてもらいます。そうですね、例えば…次の街へ向かうフェリーのチケット、なんて如何でしょう?』

 

「それは…」

 

 

…正直、魅力的です。サカキさんはグレンタウンに渡る分のチケットは用意してくれたが、グレンタウンから出るためのチケットは用意してくれなかったから。

 

何度でも言うが、俺の懐事情はお小遣い頼り。財布の紐をサカキさんに握られての武者修行の旅だ。そんな中でのフェリーのチケット代の出費は結構バカにならない。その分を消費アイテムなり、他のところに好きなように回せるというのはとても大きい。

 

 

『今日一杯はお時間を頂戴することになりますが、どうでしょう。グレンジムリーダーに勝利した実力を見込んで、お願い出来ないでしょうか?』

 

「…わかりました、その条件でお受けします」

 

『ありがとうございます!すぐに車を手配しますので、詳しい話は移動しながらでも話します』

 

 

少し考えて、依頼を受けることに。昼飯を急いで片付け、いつでも出れるように準備を整えその時を待った。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「マサヒデ君、急なお願いを聞いていただきありがとうございます」

 

「いえ、お役に立てるかはわかりませんが、受けた以上出来る限りのことはやらせてもらいます」

 

 

あのまま待つこと30分ほどで、迎えの車はポケモンセンター前までやって来た。無事に合流し車に乗り込むと、車はそのまま目的地へと向かって走り出した。

 

 

「申し訳ないのですが、私はこの後すぐに研究所に戻らなくてはなりません。代わりにコチラの『アズマ』がパーツの運搬を担います。改めて、マサヒデ君にはこのパーツを観測拠点まで運搬する手伝いをお願いします」

 

「アズマです。よろしく」

 

「マサヒデです。よろしくお願いします」

 

 

中にいたのはアサマさんと、ハンドルを握るもう1人の職員・アズマさん。アサマさんは別件ですぐ戻らなくてはならず、パーツの運搬はこのアズマさんと俺の2人で行うようだ。服装も白衣のアサマさんとは対照的に、動きやすそうな格好だ。

 

 

「早速ですがアサマさん、詳しい話を聞かせていただけますか?」

 

「はい。マサヒデ君は、島の北西の山の中腹に大きな屋敷があるのはご存知ですか?」

 

 

北西にある大きな屋敷…ポケモン屋敷のことか?

 

 

「北港から見える屋敷のことですか?島に来た際にチラッと見えましたが…」

 

「ええ、その屋敷です。以前は高名な研究者である『フジ』さん…私たちが籍を置くポケモン研究所創設者の方の住居兼研究室だったのですが、だいぶ昔に島を去られ、今は無人の廃墟となっています」

 

 

ああ、やっぱり。そしてフジ老人か…ゲームではロケット団絡みのイベントで登場する人物だ。『シオンタウン』で捨てられたポケモンを保護する『ポケモンハウス』を運営し、『ポケモンタワー』でロケット団に軟禁されてしまう人物。ロケット団を追い払い解放すると、道を塞いでいるカビゴンを起こすのに必要なアイテム・ポケモンの笛をくれる。

 

元々は研究者で、ミュウの研究にガッツリ関わってたんだっけ?んでもって、ミュウツーをこの世に生み出した元凶。それが原因で研究を止め、グレンタウンを離れた…という感じだったと記憶しているんだが、だとするとこっちではもうポケモンハウスを運営してるのかな?

 

 

「無人となってからかなりの年月が経っていまして、管理も全く行われておらず、人の出入りもほぼありません。人が足を踏み入れることなく長年放置された結果、今では野生ポケモンの巣窟と化してしまい、誰が言ったかわかりませんが、何時の間にか『ポケモン屋敷』という呼び名まで定着してしまったほどです」

 

 

あ~…確かに結構色んなポケモンが出たよな、あそこ。記憶にあるだけでもコラッタ・ガーディ・ロコン・ドガース・ベトベター・メタモン…なるほど、野生ポケモンの楽園、故にポケモン屋敷…か。オマケに火事場泥棒が大量にうろついてたっけなあ。幻のポケモン・ミュウと伝説のポケモン・ミュウツーに関する記録が散乱してたりもするし。

 

 

「住み着いた野生ポケモンが人里まで下りてきて悪さをすることもあり、行政やジムリーダーもその対処に頭を悩ませていまして、対策を練るためにも現状把握が必要ということで、依頼を受けて観測・記録を我々の研究所で行っているのです」

 

「で、その観測・記録に使う機材がポケモンの攻撃で壊れてしまったワケですね?」

 

「はい。以前はちゃんと屋敷までの道も整備されていたのですが、度重なる火山の噴火や地震の影響で今はあちこちで寸断されています。こちらの整備も長年手付かずのため、車では途中までしか進めません。観測拠点は屋敷の近くに設置されていますが、そこまでは野生ポケモンの生息域を突っ切る必要があります。個体にもよるのですが、平然と人間に襲い掛かるポケモンもいるのでそこはご注意を。目的地の場所はアズマが把握していますので、マサヒデ君にはその道中、もしも襲ってくる野生ポケモンがいた場合にその撃退をお願いします」

 

「わかりました。お任せください」

 

「頼もしいことです。何事もなければ良いとは思うのですが、備えあれば憂いなし…です」

 

「アサマ主任、間もなく目的地です」

 

 

話をしているうちに、気付けば車は山道を上り、右手に海を見渡せるような場所まで来ていた。あそこは…北港かな?少し向こうにはグレンジムも見える。

 

それから数分と経たず、車が止まった。

 

 

「車で来れるのはここまでです。この先は崖が崩落していて、獣道を進まなくてはなりません」

 

 

アサマさん、アズマさんに続いて車を降りる。どことなく、火山特有の匂いが鼻を衝く。研究者2人はトランクを開け、アタッシュケースを2つ取り出した。考えるまでもなく、この中にパーツが収められているのだろう。

 

 

「アズマ、マサヒデ君、すいませんが後はよろしく頼みます」

 

「「はい」」

 

 

荷物を下ろした後、帰るために運転席に乗り込んだアサマさんは、俺たちが激励に応えたのを確認すると一度大きく頷き、来た道を戻って行った。アサマさんの車が見えなくなるまで見送り、アズマさんと出発に向けての最終確認を行う。

 

 

「ではアズマさん、よろしくお願いします」

 

「よろしく。観測拠点までは片道1時間とちょっとといったところだから、何も問題が無ければ日が高いうちに到着出来るはずだ。荷物は私が運ぶから、君は周囲の警戒と何かあった際の対応を頼む」

 

「了解です。道中で何か注意する点はありますか?」

 

「整備された道ではないから足元にも要注意だ。あと火山の火口が近いからか、野生ポケモンはほのおタイプやどくタイプのポケモンが多い。状態異常にも注意が必要だと思う」

 

「わかりました」

 

「それと…」

 

 

そこでアズマさんが手を腰のベルトに回す。何だろうと思ったら、その手に握られていたのはモンスターボールで、それを宙に放り投げる。程なく、まばゆい光と共にボールの中からポケモンが現れた。

 

 

「ガウ!」

 

「…先導は私のガーディが担当する。上手く協力してくれ」

 

 

アズマさんのポケモンはガーディか。鼻が利くガーディなら、野生ポケモンの事前察知には大いに役に立ちそうだ。心強い。

 

 

「それはそうと、私は機材のパーツ交換・調整を行うから観測拠点で一泊することになるけど、君はどうするんだ?」

 

「あ~…」

 

 

…しまった、目の前のことに意識が行き過ぎて帰りの足のことを完全に失念していた。片道1時間強ということだから、行ってここまで戻って来る頃には日が傾いてしまう。何かトラブルがあれば、それこそ夜の山道を歩くハメになりかねん。こんなことならアサマさんに聞いとくんだった。

 

 

「…何だったら、主任に連絡して帰りの車を手配してもらうが?」

 

 

アズマさんから救いの一手が差し伸べられる。が…

 

 

「…いえ、大丈夫だったらで構わないのですが、僕も観測拠点にお邪魔させてください。時間が厳しいことになりそうですし、元よりお礼貰わないとフェリーに乗れませんから」

 

「む、そうか、わかった。子供1人分くらいなら食事も寝床も何とかなるだろう。観測拠点の方へ連絡を入れるから、少し待っていてくれ」

 

「お手数ですが、よろしくお願いします」

 

 

アズマさんの厚意を断り、観測拠点での一泊を志願する。流石に今日初めて通る山道を、夜間に単独での下山は今の俺には遭難コースだ。特に急ぎの用はないし、強いて挙げるならサカキさんへの報告がまだ出来ていないことぐらいだ。無理をする理由もない。のんびり構えよう。

 

 

 

 

 

その後、アズマさんが観測拠点と通信を行い、拠点側からは問題ないとの返事があったことを確認し、俺たちはいよいよポケモン屋敷へと向かって獣道に足を踏み入れた。どうか何もありませんように。すぐに対応出来るようにスピアーをボールから出して待機させながら、そう願った。

 

 

 




 
 前回の後書きでの予告が『あの屋敷に突入します(突入するとは言ってない)』になってしまった18話でした。ポケモンも原作キャラもほぼ登場しないという完全に繋ぎの回です。

最近、書き進めるごとに話の持って行き方が強引・ゴリ押し・ご都合主義満載になってしまいつつあるように思えてならない今日この頃…もっと自然に話を繋げられるようになりたいものです。

それはさておき、次回こそグレンタウンのダンジョン『ポケモン屋敷』内部に突入です。部品輸送後、余った時間を利用して屋敷内部に足を踏み入れた主人公。襲い掛かるポケモンたちを撃退しつつ、内部の探索を行う中で彼が手にしたのは、1人の科学者の夢と狂気、そして後悔に満ちた記録であった。次回へ続く。

 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。