成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第19話:夢の跡地(1)

 

 

 

「よし、それはこっちだ!」

「レンチだ、レンチを持ってきてくれ!」

「くそっ、ここの配線もやられてる」

 

 

アズマさんのガーディを先頭に、草木の生い茂る獣道を歩くこと1時間と少し。俺たちはトラブルに見舞われることもなく、無事観測拠点まで荷物を届けることに成功していた。アズマさんは荷物を運び込んですぐに機材の修理に加わったため、俺は山登りで疲れた体を休めつつ、バタバタと慌ただしく動き回る観測班の様子を眺めて過ごしている。

 

まず何よりも、ここまでの道中で野生のポケモンに襲われるようなことも、その他一切のトラブルもなくここまで来れたことにはホッと一安心だ。時折野生ポケモンの鳴声や、草木を揺らして移動する音を聞くことはあったが、それだけだった。

 

拠点では届けたパーツによって、中途半端なところで止まっていたという機材の修理が本格化。結構派手にやられたのか、拠点テント内に組み立てられている機材の修理が観測班総動員の急ピッチで行われている。怒号のような勢いで飛び交う指示・要求の数々は、聞いているだけなら戦場さながらだ。修理の様子を眺めているだけでは何が何やらサッパリの木偶の坊だが、修理に当たっている観測班の皆さんにとっては戦場そのもの。

 

まあ、ガチガチの文系だった俺が仮に関わったとしても、1ミリ足りとも役に立たないのはわかりきっているから大人しくしてましょーか。

 

ともかく、アズマさんたちが機材の修理を終えてくれないことには何も始まらない。修理が終わって一晩キャンプしたら、翌日アズマさんと下山してお仕事完了。アサマさんからフェリーのチケットを貰って、明日の夜、遅くとも明後日の午前中には船の上だ。

 

そう言うワケで、アズマさんたちがひーこら言いながら修理をしている横で、俺はシートの上をのんびりゴロゴロ。あの獣道を子供1人で帰るには心許無く時間も微妙ということで、このまま拠点で一泊させてもらうことにはしているんだが、正直やることが無さ過ぎて暇でしかない。

 

 

 

そんな中でふと目に入ったのは、拠点のある木立ちの向こうに佇む大きな屋敷。野生ポケモンの巣窟と化した観測対象地域、ゲームでもこっちでも人呼んで『ポケモン屋敷』だ。あの中って今どうなってるんだろう?聞いてみたいんだけど、今の観測班の人たちの作業を邪魔するのは…と言うか、鬼気迫るオーラを纏っている人たちに話しかけたくない。あの人たち、たぶん今全部の能力が1段階上がってるな。ポケモンか。

 

 

 

空気を読んで、大人しくスピアー・サンドと戯れて待つことさらに1時間。機材の修理は滞りなく完了した。観測班の人たちは今までの緊迫感はどこへやら、多くの人たちが燃え尽きたかの如くへたっている。元気に動いて観測の準備にかかっている人たちも、どこか気力を振り絞っているような感じで限界が見え隠れ。

 

…ん?ヨーギラスはどうしたって?一緒に戯れようとしたら拒否されました。ぷいって。道のりはまだまだ険しいようだ…ぐぬぬ。

 

それはそうと、今の時刻が3時半を少し回ったところ。微妙な時間だが、このままなにもしないで夜を待つには長すぎる。と言うワケで…

 

 

 

「…屋敷の中に入ってみたい?」

「はい、どういうポケモンがいるのか興味が湧きまして」

 

 

これより、ポケモン屋敷の探索を敢行したいと思う次第であります。ゲームでは部屋の開閉ギミックの装置だけは生きている野生ポケモンの巣窟。グレンジムに挑むためには、ここの地下に置いてある『ひみつのカギ』を入手する必要があり、事前に必ずクリアしなくてはならないダンジョンだった。

 

ストーリー後半のダンジョンなだけあり、内部に出現するポケモンはほのおタイプとどくタイプを中心に30レベル代と中々強かった。サンド・ヨーギラスは勿論、スピアーにとっても良い訓練場所になると思う。

 

そうでなくとも、特にほのおタイプのポケモンは今の俺の手持ち構成だと苦戦が予想出来るくさタイプに強く、ここで出現するほのおタイプポケモンのガーディ・ロコン・ブーバー…出来ることならどれか1匹でも捕まえられれば…なんてことも考えてたり。

 

 

「…建物内は探索済みだが、思いの外広いぞ?地上3階と地下1階の4フロアあり、内部は野生ポケモンが跋扈している。好戦的なポケモンも多く、高レベルの手強いほのおポケモンや、ドガース・ベトベターがばらまく状態異常にやられて、探索途中で何度も撤退に追い込まれたことがある。病院送りにされた奴も片手では足りないな」

 

 

ゲーム通りなら、スピアーであればレベル的には問題ないはず。一応毒対策にはなるし。

 

 

「そして、それ以上に厄介なのがこの屋敷の仕掛けだ。屋敷内はシャッターが降りている場所が至るところにあって、それを開けるには石像と一体になった開閉装置を作動させなければならん。だがこの装置、どこかのシャッターが開く代わりにどこか別の場所のシャッターが閉まる仕組みになっている。何も考えず奥に進むと、最悪閉じ込められるぞ」

 

 

そして、ゲーム内にもあったギミックはこっちでも健在…と。どこを操作したらどこが開くとか、もうずいぶんと昔のことだから覚えてないぞ…忠告どおり、あまり奥まで行くのは止めた方が良いか。

 

 

「それなら、入口周辺の探索だけに留めましょう。大丈夫です、ご迷惑はお掛けしません」

「…わかった、良いだろう。君の実力を信じよう。屋敷内部の見取図があったはずだから、コピーを1枚持ってくる。少し待っていろ」

「ありがとうございます」

「それと、日没までには戻るように」

 

 

俺は子供か…と言いたくなったが、実際子供だった。

 

 

「勿論です。では、行ってきます」

「ああ」

 

 

アズマさんから許可とついでに内部のマップも貰い、ついさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返った拠点を離れ、ポケモン屋敷へと歩を進め玄関前で一度立ち止まる。

 

屋敷と呼ばれるだけあって、流石の大きさだ。まさしく豪邸。しかし、主人を失ってどれだけの月日が経つのか、外壁はその大部分を蔦に覆われ、辛うじて建材が見える部分もひびが入ったり欠けたりとかなりボロボロ。崩れて内部に入れそうなぐらいの大穴が空いている個所もある。

 

2階部分を見上げれば、窓ガラスは全て割れ、外壁は1階部分から続く緑一色。テラスは手摺が錆びて根元からポッキリと無くなっていたり、一部崩落するなどしており、かなりの長期間に渡って人の手が入っていないことは一目瞭然。3階部分も以下同文。

 

眼前にある玄関の扉も、取っ手の金属が錆び、扉そのものも腐食・経年劣化が至る所に見られ、崩れ落ちるのではと開けるのを躊躇してしまうほどの有り様だ。意を決して手を掛ければ、『ギギギ…』と耳障りな音を立てながら、かつての英明なる探究者の屋敷は俺を迎え入れた。

 

 

「おおぅ…」

 

 

玄関を潜った俺を最初に待つのは、広大なエントランス。当然灯りはなく、窓から差し込む日差しを頼りに見回せば、積もり積もった一面の埃に、薄っすらと残る靴の跡。一部分は床が崩落している。四足歩行のポケモンのものらしき足跡もあちらこちらにある。足跡の様子を見るに、人よりもポケモンの活動の跡が圧倒的に多い。これは心して掛かった方が良さそうだ。

 

 

「スピアー、頼む」

「スピァ!」

 

 

念の為にスピアーをボールから出し、周囲の警戒に当たらせる。観測拠点までの道中から働き詰めだが、技が豪快なサンド、未だ不安の残るヨーギラスよりも、空を飛べて小回りの利くスピアーがこの屋内では適任だろう。頑張ってくれ。

 

床には主がいた頃からずっと敷いてあったのだろう色褪せた赤の絨毯。それを真っ直ぐ行ったところには、2階へと続く階段がある。造りがしっかりしていたからか、見た感じでは特に危険そうには見えない。が、まずは1階の探索だ。

 

階段の右手には奥へと続く通路がある。若干薄暗い通路を、周囲・足元・頭上に気を配りながら慎重に進んでいくと…

 

 

 

「!」

「…!コォン!」

 

 

 

…通路の途中、大きく崩落している部分を避けたところで早速、右側から飛び出してきたロコンと鉢合わせた。

 

 

「スピアー、どくづき!」

「スピィッ!」

「コンッ!?」

 

 

半ば脊髄反射でスピアーにどくづきを指示、スピアーも即時寸分の狂いなくロコンに攻撃を叩き込んだ。反応出来ずにクリーンヒットしたロコンが突き飛ばされ、壁に当たってからグッタリと床に蹲る。動物虐待をしているみたいで気分が悪いが、これはもうサカキさんに骨の髄まで叩き込まれたことだから、そうしないと生き残れなかったから…許せ、ロコン。そして、今俺がするべきは…

 

 

「いけッ!」

 

 

…ロコン目掛けて、新品のモンスターボールを投げつけること。無事に当たったモンスターボールは跳ね返ってから空中で開き、赤い光となったロコンを吸い込んで床に落ちる。そのまま様子を見守り、ボールが『カタカタ』と左右に揺れること数回、待つこと数秒。

 

 

『カチッ!』

 

 

カギが閉まったような軽い音を立てて、ボールの動きが治まった…ポケモンゲットだ。

 

 

「ロコン、GETだぜ…なーんてな」

「スピァー!」

 

 

ロコンの入ったボールを拾い上げ、お決まりの台詞を呟いてみる。俺の傍らでは、スピアーが誇らしげに雄叫び?を上げる。なんだかんだで自分の力でポケモンを捕まえるのは初めてのこと。上手くゲット出来たことで、少し気分が良くなった。この調子でこの後もガンガン探索していきたいところ。

 

そう思いながら、何の気なしにふと入口の方を振り返ると…

 

 

 

 

 

「………」

「どがぁ~」

 

 

 

…何か紫色の浮かんでいる丸っこい物体と至近距離で目が合った。ニヤケ面が無性にムカつく野郎だ。

 

ソイツの名はドガース。どくガスポケモン。初代から登場するどく単タイプのポケモン。どく状態にしてきたり、いきなり『じばく』『だいばくはつ』をぶちかましてきたりする厄介な奴。物理防御能力が高く、特性『ふゆう』のせいで弱点が実質的にエスパー技だけ、オマケに意外と補助技が充実してて器用だったりする厄介な奴。登場する作品では悪の組織の連中が割と多用する印象がある厄介な奴。厄介な奴。大事な事なので4回言いました。

 

 

 

…ってか、コイツいつの間に背後を!?こんなことしてる場合じゃねぇ!スピアー、どくd

 

「どぉ~がぁ~」

「うわっ!」

 

 

指示を出すよりも早く、ドガースから黒いモヤが噴き出し通路に充満、俺の視界を奪う。これは『えんまく』…いや、『くろいきり』か!?

 

どっちでも構わない…いや、構うけど!どうあってもこの状況はいただけない。通路はドガースに塞がれている。俺のポケモンが覚えている技に視界を確保出来そうな技は…ないか。だったら…

 

 

「スピアー、こっちだ!着いてこい!」

「スピャ!」

 

 

奥に逃げて視界が確保出来る場所で体勢を立て直す。迂闊に動くのは危ないし不本意だが、目の前の脅威を無視するワケにもいかん。

 

 

『バンッ!』

「ぐっ!」

 

 

スピアーに向けて声を張り上げたからか、居場所を察知され、撃ち込まれた粘液の塊らしきものが近くで炸裂。衝撃と粘液の飛沫が俺に降りかかり、強烈な異臭が鼻を衝く。何の攻撃かわからんが、当たるとロクなことにはならないのだけは確かだ。今はとにかく気にする暇があったら走るしかない。

 

ドガースからの攻撃を掻い潜りながら少し走って通路の突き当りを左に曲がると、行き止まりだったがそこそこ広い空間に出た。立ち止まることなく奥の角まで走る。これで追い詰められた形だが、少なくとも背後からの攻撃はなくなった。黒いモヤもここまでは辛うじて届いておらず、スピアーも無事だ。ある程度の視界を確保した上で前方に集中出来る。

 

いつ、どの位置からドガースが襲ってくるか、今か今かと待ち構える。前方に集中出来るとは言っても、モヤは部屋の半分近くを占拠。真っ直ぐ来るのか、それとも少し横の方から?緊迫の時間が流れる。視界の隅では戦闘に驚いたのか、数匹のコラッタが壁に空いた小さな穴から逃げ出していく。

 

 

「スピアー、準備しておけ。『きあいだめ』だ」

「スピ!」

 

 

今のうちに、スピアーには攻撃技が急所に当たりやすくなる『きあいだめ』を指示。こういう緊迫した状況の中での待ち時間は、無性に長く感じる。そして待つこと数分…いや、数十秒程度だったかもしれない。ついに野郎が現れた。

 

 

「どぉ~がぁ~」

 

 

モヤの中からニヤケ面を浮かべ、真正面から堂々ふよふよと向かって来る。さっきはよくもやってくれたな、こっちも真正面からそのムカつく顔を吹っ飛ばしてやるぜ!

 

 

「やれ、スピアー!」

「スピャァァ!」

 

 

俺の指示を待ってましたとばかりに、勢いよくスピアーが飛び出していく。

 

 

「どがぁ~!」

 

 

対するドガースも、毒々しい紫色の粘液の塊を吐き出して迎え撃つ。この臭いといい、さっき俺を襲った攻撃だろう。『ヘドロこうげき』か?

 

しかし、スピアーはそれを真正面から切り払い、なおもドガースへ迫る。どくタイプの攻撃は同じどくタイプには効果今一つ。スピアーにはダメージは半減だし、どく状態になることもない。やっちまえ、スピアー!

 

 

「スピァッ!」

「どがぁ~…」

 

 

スピアーの鋭い一撃を受け、ドガースがやけに間延びする腑抜けたような声を残してモヤの中へと逆戻り。綺麗に入ったように見えるが、どうだろう?

 

 

「…どぉ~がぁ~…」

 

 

ふよふよと、相変わらずのニヤケ面でドガースが戻って来た。ダメージは…あまりなさそうだ。まあ、スピアーが持つ攻撃技は『どくづき』の他はむしタイプの『ミサイルばり』『ダブルニードル』。ドガースの攻撃が効果今一つってことは、スピアーの攻撃も…お察しと言うことだ。

 

 

 

これは長期戦になるか…と覚悟し、俺は気を引き締める。そして、モヤの中から出て来たドガースは、急にプルプルと小刻みに震えだした。次いで、何らかのエネルギー的なモノがドガースへと収束し始める。

 

何だ?と疑念の目で眺めている内に、エネルギーの収束を受け続けるドガースが俄かに光り始める。本能的な俺の中の何かが、『コレはマズい!』と警鐘をガンガン打ち鳴らし出した。

 

…そう、ここでドガースはまさかの行動…いや、『ドガースと言えばコレ!』なお約束の行動に出やがったのである。ズバリ…

 

 

「『じばく』ッ!?」

 

 

…ノーマルタイプの攻撃技『じばく』。自身のHPすらも糧に爆発を引き起こして相手を攻撃する、初代ではビリリダマ系統・イシツブテ系統と並ぶドガース系統の十八番だ。当然、使用したポケモンはひんし状態になるのは言わずもがな。威力もさることながら、当初じばくには相手の防御能力を半減させた上でダメージ計算を行うという特別な仕様があった。近年の作品ではこの仕様は無くなっているが、こっちではどうだろうか。

 

と言うか、そうでなくてもヤバい!俺もスピアーもヤバいが、それ以上にこの屋敷がヤバい!こんな何年も放置されてるようなボロ屋敷だ、下手したら爆発の衝撃で崩壊しかねん!落ちてきた上の階層に圧し潰されるのも、鉄骨にぶち抜かれるのも、生き埋めになるのも嫌だ!この年で死ぬとかゴメン被る!

 

何とか阻止したいが、スピアーの攻撃では相性の関係もあって威力不足。スピアーが無理ならレベル差から他の連中も正直怪しい。そもそも、出してる猶予すら最早ない。ならスピアーでどうにかするしか…でもそれでは火力が…いや、この手があるか!

 

即座に俺が取り出したのは、いつでもすぐに取り出せるように準備していた空のモンスターボール。そう、ゲットしてしまえばいいんだ。ゲットしてしまえば、俺の命の危険は即座に無くなる。ポケモンをゲットすることも、この屋敷に入った理由の一つ。最初からしっかりと準備はしてあるんだ。

 

絶対に外せないこの一投、元野球少年な俺のコントロールを見せる時だ!某メジャーリーガーも真っ青なレーザービームだぜ!…ゴメンサナイ、嘘です。平々凡々です、ハイ。

 

 

「いっけぇぇぇ!」

 

 

それでも腕を振り、手首のスナップを効かせ、身体全体を使って素早く投じた渾身の一投は、爆発の態勢に入って動かないドガースを捉えた。

 

ドガースがモンスターボールに吸い込まれ、床に落ちる。カタカタと揺れる音を聞きながら、もし失敗した場合にすぐ二投目を投げられるように、追加で予備のモンスターボールを握り締めた。次が投げられるかはわからないが、何もしないよりよっぽど良い。が、捕まってくれないと俺が物理的に終わる。

 

…頼む、捕まれ。捕まってくれ…!

 

 

 

そして、俺の望みは叶えられ、悲観的な懸念は杞憂に終わった。ロコンを捕まえた時のように、カチッという音を最後に、屋敷内には静寂が戻った。

 

…ドガース、ゲットだぜ。

 

 

 

「ふぃ~…」

「スピィ~」

 

 

いきなり襲ってきた命の危機が去り、身体を覆っていた緊張が解け、俺は大きなため息とともに床へと座り込んだ。スピアーも俺の近くまで来て、両手の針を力なくだらんと下している。サカキさんの地獄の特訓に匹敵するレベルの危機だった。

 

まだバクバクと音を立てる胸の鼓動を鎮めるように大きく深呼吸。落ち着いたところでドガースの入ったボールの所まで行き、拾い上げる。まったく、突入早々コイツ1匹のせいで散々だ。けど、俺に捕まったのが運の尽きよ。精々こき使ってやるぜ、覚悟しろドガース。ロコンはサンド共々愛でてあげよう。

 

 

 

そんなことを考えながら1人ニヤケていると、俺が逃げたのとは別の隅の方に、石像があるのに気付いた。何かのポケモンを象ったもののように見えるが、周りが薄暗いのと一部が欠けていたりでよくわからない。しかし、これが何かはゲームの知識で覚えている。例のシャッター開閉装置だ。

 

間近で調べてみれば、土台の石柱部分にボタンを見つけた。これを押せば、1階のどこかのシャッターが開き、別のどこかのシャッターが閉まる。んで、適当に押してると屋敷内に閉じ込められる危険あり。

 

…まあ、何かあってからでは遅いので、とりあえず行けるところまで行ってみるの精神で特に弄らず探索を続行しよう。

 

 

 

アズマさんから預かった見取り図によれば、右側…今俺がいる場所とは逆の方が奥へと続いているようだ。ドガースに追い詰められて逃げ込んだ部屋は行き止まりだったので、地図を見ながら逆の方向へ慎重に探索を進めていく。

 

途中でコラッタ・ロコン・ドガース・ベトベターと言ったポケモンたちを見かけたが、いずれも俺の姿を見るとさっさと逃げて行ってしまい、唯一立ち向かってきたコラッタの進化系・ラッタは、スピアーによってあっさりと撃退された。捕まえてやろうかと思ったが、ボールを構えるよりも先に逃げてしまい、スピアーの経験値になっただけで終わり、以降の探索はかなり楽に進められた。

 

とは言え、屋敷内は床が抜け落ちて大穴が空いていたり、上の階が崩落して塞いでいたりで進める場所は思った以上に狭く、早々に探索は終了してしまった。確か、この崩落している部分の向こう側に、ミュウ・ミュウツーの実験が行われていた地下室へ繋がる階段があった。で、そのためには2階か3階の崩落部分から飛び降りる必要があったはず…なんだ、結構覚えてるじゃないか、俺。

 

ポケギアで確認してみれば、時間は屋敷に入ってからまだ30分強しか経っていない。日暮れまではまだまだ時間がある。ドガースには驚かされたが、体力の方も問題ない……当初の予定では行く気の無かった2階、行ってみるか。

 

 

 

ここまで不意を打たれたドガース以外何の問題もなかったが、油断は禁物。俺は元来た道をエントランスまで戻り、階段に足を掛けた。

 

 

 

 




 
はい、例によってもうちょっとだけ続くんじゃ。そんな19話でした。おのれドガース、お前のせいで半分ぐらい使っちまったぞ。

そのドガースと一緒に新しくロコンをゲットした主人公。さらっと捕まえてたけど、今後出番はあるのか?特にスピアーとタイプモロ被りなドガース。

次回はポケモン屋敷探索後編、そしてグレンタウン編のラストです。


 

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