成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第20話:夢の跡地(2)

 

 

 

 当初の予定から外れ、ポケモン屋敷の2階まで探索に手を広げることにした俺。先程のドガースのように野生ポケモンから不意打ちをくらわないよう周囲に気を配りつつ、足元がいきなり抜け落ちたりしないか、一歩一歩確かめながら階段を上る。手摺の部分はしっかりした造りをしているようなので、いきなり『ポキッ』なんていうことはなさそうだ。

 

じっくり時間をかけて階段を上り、上り切る直前で土竜が穴から顔を出すかのように、頭だけを2階の床より高い位置に出して周りの様子を伺う。

 

2階の出口は右手の方が少し広いフロアのようになっており、前の方にはさらに上へと続く階段がある。左側と後ろは壁。フロアにはスイッチと一体になった石像も1つある。見取り図の方にも、確かにそれらしき印がつけてあった。野生のポケモンは…今のところ姿は見えず…っと。

 

背後を気にしなくて済むのは心持ちがかなり楽になる。有名な漫画シリーズの某狙撃手が背後取られるのを嫌うのも、今の俺にならよくわかる。主にドガースのおかげで。とにかく、退路はしっかり確保しつつ探索を行うこと。これ重要。

 

 

 

安全をしっかり確認した後、2階に足を踏み入れた。階段周りは床の崩落などはなく、ボロくなっているところはあるかもしれないが、比較的安全そうではある。埃やら何やらは凄いが。

 

とりあえずスイッチはスルーして、まず近くにあった部屋の探索を行う。この部屋は一部の床が抜けており、残りの面積も割れたガラス片や倒れた本棚と散乱したその中身で足の踏み場にも困る有り様。

 

散乱した本やファイルを無造作に拾い上げ、中身を確認してみる。内容はずいぶんと古い学術書だったり、何かの研究のレポートばかりだ。長期間放置されていたためか、湿気やら虫食いやらにやられてボロボロになっているものが多く、辛うじて読めた内容も専門的かつ科学的なものがほとんど。研究者の皆さんには価値があるのかもしれないが、俺にとってはただの紙屑、もしくは怪文書だな。もっとも、すでに調査済みなのに放置されてるってことは、研究者的にもあまり価値がないものなのかもしれないけど。

 

あと、好奇心に駆られて探索してるけど、過去形とは言え他人様の家だからね。あまり内部の物を持ち出すのは感心できない。常識的に考えてみれば、某RPGゲームなんかの主人公って結構イケナイことやってるよねって言う。あと、こういうところに落ちてる消耗品って色々と危なそう。消費期限とか。

 

 

 

文書以外の目ぼしい発見は特に無かったので、さらに奥へと探索の手を広げる。右手にあるのは長い通路で、奥の方に部屋が2つあるようだ。一方の左手には近いところに部屋が3つ。ただし、そのうちの1つはシャッターで閉じられている。

 

安全面を考慮して、階段から近い方から探索するのが良いだろうということで、左手の開いている部屋へ。その前に…

 

 

「キュイ!」

 

「通路の監視を頼む。何かこっちに来るようなことがあれば教えてくれ」

 

「キュイッ!」

 

 

サンドを呼び出し、右手の通路を見張らせる。さっきのようなことはもう御免だから、出来る限りの手は打っておく。サンドは元気良く小さな右手を上げて応えてくれる。ビシッと直立不動だけど、それは敬礼のつもりか?

 

…まあ、頼もしいことには違いない。

 

どっしりと構えて退路を守るサンドを残し、向かい合う2つの部屋を入口から覗き込む。気配に気付いたか、物音で察知されたか、複数の小さな影が部屋中の隙間・穴へと逃げ去って行く。それらが雲散霧消した後に残るのは、不気味な静寂。

 

2つの部屋を確認し、まず1つ目の部屋に進入。こちらの部屋にも本棚が残されているが、その並びはスカスカ。床に散乱した紙も少なく、その内容も相変わらず俺にはサッパリ。しかも入ってすぐのところで大きな崩落が発生していて、そこから先…部屋の過半は調べるのが難しい状態だった。

 

結局1つ目の部屋の探索は、時間も限られているということで早々に切り上げ2つ目の部屋へ。こちらの部屋でも大きな崩落が発生しているが、そのおかげで部屋と通路を仕切る壁が無くなっており、外からでも中の様子がすぐにわかる。

 

とは言っても、中に見えるのは大きめのテーブルに椅子が2つ、そしてスッカスカの本棚が2つだけ。あとはなーんにも見当たらない。割れた窓から差し込む日差しで他の部屋よりも明るい分、1つ目の部屋よりもさらに簡単に探索は終わってしまった。

 

 

 

何の成果も得られなかった部屋を離れ、サンドが守る階段付近の通路まで戻る。こちらを見つけたサンドが駆け寄って来る。特段変わったことはなかったようだ。

 

さて、野生ポケモンを求めて屋敷の探索に乗り出したは良いものの、ここまで見掛けたのは捕まえたロコンとドガースの他は、多数のコラッタと経験値となったラッタのみ。もうちょっと何か成果が欲しいところ。そう思って、サンドに今度は今さっき探索を終えた部屋に繋がる通路を見張るよう命令。配置に着いたのを確認して、残っていた長い通路を崩落個所に注意しながら進んでいく。

 

進んだ先には、先程のように2つの入口が向かい合うように設けられていた。覗いてみると、片方はどうやら通路のようだが、半ばで床が崩落していて先には進めない。ポケモンが隠れているような様子もなければ、特に目ぼしい物があるワケでもなさそうだ。

 

残るもう一方の部屋は、書斎…と言うには少し広いような気もするが、部屋の中央には机と椅子、壁際に沿って金属製の棚が並んでいる。棚の中身は例によってやはり本やファイルのようだ。

 

 

「キーッ!」

 

 

そして、その本棚の前にはこちらを威嚇する1匹のネズミがいた。

 

ラッタ。ねずみポケモン。ノーマル単タイプ。ポケモンシリーズ恒例の序盤ノーマルの魁、コラッタの進化系。初代ではライバルの手持ちポケモンの1匹だったものの、途中で外されてしまった不遇のポケモン。ポケモンタワーで対戦する際に外されていることから死亡説まで流れ、公式からも半ば認めるようなコメントを出されてしまっている。哀れ、ラッタ。最近ではあくタイプ追加で体形も合わせてドブネズミ化が進行してたネ。個人的には通常のラッタの方が好みかな?

 

しかし、ポケモンっていうのは進化したら好戦的になるものなんかね?能力が上がるって意味では、力を持った存在であることは間違いないんだけど…いや、この場合はただ単にラッタがそういう気性なだけか?それはともかくとして、この部屋を探索するにはあのラッタをどうにかしなくてはならない。威嚇してきてる以上、退いてはくれないだろうなぁ。

 

 

「ラーッ!」

 

 

そんなことを考えていた傍からラッタが突っ込んで来る。

 

 

「スピアー!」

「スピッ!」

 

 

素早くスピアーが対応して、ラッタの攻撃を受け止める。元々こうげき・すばやさのステータスが高めなポケモンだが、やはり狭い室内でこの瞬発力と小回りの良さは脅威だ。幸い耐久は高くないので、素早く一気に押し切るが上策。ついでにさっき失敗したゲットのリベンジと行こう。

 

 

「スピアー、"どくづき"!」

「スピィッ!」

 

「ラッ‼」

 

 

いつでもどこでも安定した火力を発揮する、使い勝手抜群、信頼と実績のメインウェポン。如何に瞬発力に優れるラッタと言えども…と思ったが、寸でのところで飛び退かれ、鋭い突きは空を切る。

 

 

「"ミサイルばり"!」

「スピャ!」

 

 

しかし、スピアーとて能力値的には攻めが信条のポケモン。一発外したならもう一発、一撃で無理ならもう一撃の精神で、追撃の"ミサイルばり"を指示。ミサイルと言うよりは機関銃の連射を思わせる銃弾のような針の雨がラッタを襲う。

 

 

「ラッ…!」

 

 

流石のラッタも、動きが止まった直後の面制圧は避け切れない。ミサイルばりの多段ヒットにラッタが仰け反る。その隙を逃さず、スピアーは机を飛び越えて一気に距離を詰め、必殺の一撃を見舞う。

 

 

「決めろ!"どくづき"ッ!」

「スピィッ!」

 

「ラァッ…!」

 

 

今度はきっちりと突き刺さり、後ろの金属製の棚に叩きつけられる。『ガシャン‼』と大きな音を立てて、ラッタが崩れ落ちる。

 

 

「そらっ!」

 

 

ここで俺の右腕の出番だ。最速160キロの剛腕が火を…あ、はい、例によって嘘です。へなちょこです、スミマセン。

 

とにかく、投げたモンスターボールがラッタを取り込んで床に落ち、カタカタと揺れる様子を注視する。さっきのドガースほどの緊迫感はないから心に余裕を持って見てられるネ。

 

そしてラッタは飛び出すこともなく、ボールの揺れが止まった。

 

 

「うし、ラッタGETだぜ…っと。スピアー、御苦労!」

「スピッ!」

 

 

スピアーを労いつつ、本日3匹目の成果を手中に収める。これでとりあえずは手持ち6匹が全て埋まった形になる。スピアー・サンド・ヨーギラス・ロコン・ドガース・ラッタ…うむ、実にアンバランスな構成だな。特にみず・エスパータイプ辺りの技が気持ちいいぐらいにぶっ刺さってる。スターミー使って来るハナダジムリーダー・カスミとかが凄くキツそうだ。

 

まあ、ここは今後もたくさん捕まえて、目的に合わせてとっかえひっかえしていく感じで頑張ろう。ただ、そうなると育成がキツいかな?

 

 

 

今後の事で悩んでいたところに、ふとラッタをブッ飛ばした際に叩きつけた棚が目についた。叩きつけた際の衝撃で残っていた蔵書が幾つか床に落ち、下の引戸の部分が大きくひしゃげて内側に押し込まれていた。

 

うーむ、他人様の家の家具を壊してしまった。廃墟とは言え、少しの罪悪感と言うか、申し訳ない気持ちが心の内で凝りとなる。

 

何とか元に戻せないか…と無駄な足掻きをしようとしたところで、引戸の中、収納スペースのさらに奥に、隠された空間があることに気付いた。さっきの衝撃でか仕切りの鉄板が外れていた。気になって調べてみると、そこから手帳のような物が出て来た。ここまで見てきたのが専門書や論文、レポートのようなものばかりだったため、新鮮な印象を持った俺はその手帳を取り出し、徐に最初の頁を開いた。

 

 

 

 

 

《6月1…》

……に到着する。半日を越える空の旅は、思っていた以上に…だった。夕方には……のジャングル地帯に設けられたベースキャンプに到着。明…ら本格的…査が始まる。…地域特有の…病には気を付…いところだ。

 

 

 

…どうやら、研究者と見られる人物の日記のようだ。所々汚損で文字の解読が出来ないが、この日記の主は飛行機で半日以上掛かるような場所のジャングルに現地調査をしに行き、その時にこの日記を書いたようだ。

 

それよりも下の部分は破ってあったため、次の頁をめくる。

 

 

 

《7月5日》

ジャングルの奥地で、新種のポケモンを発見する。この……毛を持つポケモンは非常……懐っこく、我々を警戒す……が無い。逃げる様子も見…ないため、しばらく観……続けてみることとする。

 

 

 

…あれ?新種のポケモン?これってもしかしてあれか?ゲームにもあったミュウとミュウツーに関する記述のある日記か?と言うことは、この日記の主は…フジ老人?

 

沸き上がる疑念と興味に駆られ、読み進めていく。

 

 

 

《7月10日》

新発見のポケモンを、私は『ミュウ』と名付けた。……フワフワと宙に浮き、ジャングルの木…隙間を縫うように自……び回る。また、私は……のポケモンにも手を出す様子は見ら…いことから、優しき心……ポケモンなのだろ……

 

《7月……》

新……モン・ミュウ…1ヶ月近く彼女を観察してきた………きな可能性を秘めた存在だ。人の言……解する知能を有し、体の……変化させる…、…筆すべき要素がいく…見られる。彼女の……知ることが出来れ……ンの謎の解明に大きく近づくのではないか。より詳しい研………は、やはりしっか…た設備が必要だが、ここでは出来ない。彼女は私と共に来てく……うか…

 

《8月3日》

調査に来て……大の成果だ。大きな喜びの中で、私は今…記を記してい…。…女…ミュウが私と共に来………承して…た。これでポケ……隠された秘……た1つ…いや、2…も3つでも……かになる。彼女…う存…は、ポケモンの謎……明かす大きな…な一歩となると、私…う確信……る。明…はこ…ースキャンプを引き…、グレ……の帰路…く。帰ったら…、環境を整える…………なくては…

 

 

 

…やはり、ゲームにもあったミュウ・ミュウツー関連の日記だ。記述の一部に見覚えがある。間違いない。

 

あっちでは屋敷の各所にバラバラな日付で置かれていたが、この手帳にはゲームでは書かれていなかった部分まで、日付に沿ってまとまった状態で残されている。その後の頁を読むに、ミュウと一緒に無事にグレンタウンまで帰って来れたようだ。

 

さらに読み進めていくと、屋敷に帰ってからのミュウと日記の主の生活と研究の日々が延々と綴られている。ミュウが何を食べた、こんなことをやった、こういう研究を行いこんな結果が出たetc。実に楽しそうな毎日だったのだろうことが伺える。ミュウとの関係も良好だったようだ。この日記の主…たぶんフジ老人は、元来心優しい人物だったのだろう。

 

しかし、そんな楽しげな日々は、読み進めていくに連れて徐々にその様相を変えていった。その発端となったのは、おそらくこの日だ。

 

 

 

《2月6日》

ミュウが子供を生む。生まれたばかりのジュニアを、私は『ミュウツー』と呼ぶことに……。

 

 

 

ミュウツー誕生。この出来事は、研究者であった日記の主の狂気と言えるほどの探求心に火を着けた。そうでなければ、後に続く内容の説明がつかない。それはたぶん、研究者という人種の本能、性とでも言うべきものなのだろう。俺にはまったく理解出来るものではないが。

 

以降、日記にはミュウやミュウツー…特にミュウツーに対する数々の調査・実験に関する記述がズラズラと書き連ねられていた。中には遺伝子操作や過度な負荷を与える等、仮にもしその手の団体に情報が渡れば、猛批判に晒されること間違いなしな実験もチラホラ。日付が進むごとに心が痛むような、素人目にも判断出来る倫理的にアウトな実験の割合が目に見えて増えている。

 

文体もかなり興奮気味で、その内容も欲望に正直。自己陶酔に浸っているとでも言えばいいのだろうか、実験結果以外何も見えていない狂信的マッドサイエンティスト。少なくとも、ミュウツー誕生以降の記述から読み取れる日記の主の為人は、完全に道を踏み外した悪の研究者だった。

 

それらの実験を繰り返して日記の主が成果を得ると共に、その成果はミュウツーを苦しめ、同時に力を与えていった。倫理的にアウトな点に目を瞑ってさらに読み進めていくと、ミュウツーが得てしまった膨大な力とその気性の制御に苦慮するようになっていった過程と様子がよくわかる。主への攻撃、機材の破壊・破損、エネルギーの暴走…しまいには拘束具まで用意され、それすらも引き千切ってしまった。

 

 

 

 

 

…そして、そんな非倫理的な実験の数々と、暴走を無理矢理抑え付ける日々の繰り返しは、当然のように限界を迎え、破綻した。

 

 

 

《9月1日》

ポケモン『ミュウツー』は強過ぎる。ダメだ……これ以上はもう、私の手には負えない!

 

 

 

日記の主が研究者の本能のままに突き進み、行き着いた果ては、9月1日のこの一言に全て凝縮されていた。幾度となく施された実験によって、先天的なモノか後天的なモノかはわからないが、凶暴な性格と比類なき力を与えられた、与えられてしまったミュウツーは、この頃既に日記の主の制御可能な範囲を大きく逸脱してしまっていた。

 

この記述から数日後、ミュウツーは拘束を自力で引き千切り、屋敷の一部を破壊して何処かへと飛び去ってしまったと記されていた。ゲームのとおりなら、ミュウツーはハナダの洞窟に身を潜めていることになる。

 

しかしこれ、何年前のことなのかはわからないが、これだけのことになっても表沙汰にはならなかったんだろうか?『動物園のライオンが逃げ出した』っていうレベルをはるかに超える非常事態だと思うんだが…まあ、特に騒がれた形跡が無いのなら、問題なかったということなんだろうな。

 

 

 

その後、日記には研究結果に関する記述は一切なくなり、代わりにそれまでとは人が変わったように研究に対する後悔と反省、自身の行いに対する叱責、良心の呵責、残ったミュウに対する申し訳なさ等が数日にわたり綴られていた。

 

研究者の懺悔がびっしりと詰めて書き込まれた頁を捲ると、次の頁はその半ばまでで文章が途切れ、その過半を空白が占めていた。途切れた文章の最後には、次のような内容が綴られていた。

 

 

 

《…月6日》

……に到着…る。私は、彼女をこの島……そうと思う。…海を越えた果…ある…無人の…らば、私…うな穢れ…望に染まっ……人…の手に掛かるよ……とはないは…。しかしもし、ここに立ち入る人…が再び……れるとするならば、心優し………であらんことを。………こにその願いを記し、この……を後にする。

 

 

 

 

 

この記述を最後に、後は空白が続くのみ。残りの頁もパラパラと捲っていくが、何かが書かれた頁は無かった。

 

 

 

…さて、この手帳、どうしたものかな。このままここに置いておけば、いずれ探索者によって見つけ出され、ミュウとミュウツーのことも明るみに出るだろう。その時どうなるか…たぶん、欲しがる業突く張りが出てくるはずだ。そうなれば、彼らは常に追い回されることになり、もしも誰かの手に落ちるようなことがあれば、それこそ世界中を恐怖に陥れるような大惨事を招きかねない。具体的には俺の保護者とか。実際手中に収めてた前科アリ。

 

しかし、他人の物を勝手に持ち去るのも何だかなぁ…そもそも、露見したら一番ヤバそうな人に近い俺が持ってること自体、いつ爆発するかわからない不発弾を持ち歩いてるようなもんだし。かと言って、燃やすとか、何処か…例えば海なんかに捨てるとか、処分してしまうというのも、勿体無いと言うか、日記の主に申し訳ないような気が…

 

 

 

悩んでいる内に、窓から差し込む日差しが赤みを帯びてきていることにふと気付く。窓際から外を覗けば、太陽が眼下に見える海の水平線の向こうへと沈もうとしていた。日没が近い。少しばかり、この手帳に集中し過ぎていたようだ。これ以上、ここに留まることは出来ない。タイムアップだ。

 

 

「…仕方ない」

 

 

時間に押され、心の中で「申し訳ない」と謝りながら、俺はこの手帳を拝借することにした。だいぶ年季が入っているので、破れたりしないように丁寧にリュックに押し込む。

 

リュックを担ぎ直し、スピアーと共に足早に部屋を出る。言いつけ通り通路を守っていたサンドを回収し、足元にだけ気を付けながら屋敷を脱出。観測拠点へと戻った。

 

 

 

 

 

その後、観測拠点で出された夕飯を食べ、野生ポケモンの観察に当たる研究者の皆さんの邪魔にならないよう、静かに星空を眺めながら寝るまで過ごし、この旅に出て初めて寝袋を使って夜を明かした。翌日、アズマさんが迎えの車を手配した上で、観測拠点を離れ下山を開始。幸い事前に想定された野生ポケモンの襲撃などは上り同様特になく、他に変わったこともなく昨日登山を開始した地点まで下りることが出来た。

 

下山後は既に待機していた車に乗り込み、ポケモン研究所へ。アサマさんに依頼を完了した旨をアズマさんから報告し、俺は報酬のフェリーのチケットを…受け取る前に、アサマさんから通話中のポケギアを渡された。

 

受け取った電話の向こう側にいたのは、俺も知っている人物で、その人からの指示で俺の次の目的地は決められてしまったのである。

 

 

 

通話後に渡されたフェリーのチケット。記された行先は、カントー最大の港町・クチバシティ。ここでお使いに続いて、一体何をやらせるつもりなのか…やり遂げた達成感と、小さな心配と懸念、罪悪感。そして指示に対する僅かな疑念を抱きながら、俺のグレンタウンでの冒険は終わりを迎えた。

 

 

 

 




 
気づけば前回の投稿から2週間…お舟のゲームに気合が入って1週間をオーバーしちゃいましたが、ポケモン屋敷探索後編です。フジ博士の日記はゲームどおりだとだいぶ物足りなかったので、独自に内容の想像加筆をしてみました。実験の内容は思いつかなかったので…まあ、皆さんの想像の中にと言うことで。

そして、前話に引き続き今回はラッタをゲット。これで手持ち6匹が(一応)埋まりましたが…物理偏重が酷い。そして感想でも指摘を受けてましたが、ハイペースでロケット団員化していく手持ち…さあどうしよう。

グレンタウンでの話は今回で終わり、次の舞台は本文のとおりクチバシティ。真っ先に思ったんですが、マチスさんの口調どうしよう。あの一時期流行った芸人のような感じにすりゃいいんですかね?自信がない。

んで、最後に感想で皆さんから擁護の声多数だったドガース君の紹介をば。


《ドガース》

・レベル:26
・性別:♂
・特性:ふゆう
・ワザ:ヘドロこうげき
    じばく
    くろいきり
    えんまく

ずぶとい性格。
LV26の時、グレンタウンで出会った。
イタズラが好き。


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