成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

39 / 104
改稿(R4/2/26)


第36話:忍者の取引

 

 

 

 

「ははは!父上の実力、思い知ったか!」

 

「…うるせーやい」

 

 

 俺の完敗で幕を閉じたキョウさんとの戦い。物見遊山の気分で自転車止めたら忍者に襲われて、返り討ちにしたら何故かジムリーダーが出て来て、セキチクジムに連行されて、飯を奢ってもらったと思ったらボコボコにされて…何かもう色々と疲れた。時計を見ればまだだと言うのに、何で1日頑張ったぐらいに疲れてんだろうね、俺。

 

この戦いは思いがけない…本当に奇襲同然の戦いだったが、セキチク忍軍の皆さんはともかく、その親玉たるキョウさんの実力は確かに本物。ジムリーダーの肩書は伊達ではないことをまざまざと見せつけられる格好になった。おのれ忍者。

 

そんな状態でセキチク忍軍の皆さんと、それに囲まれているキョウさんをぼんやりと眺めていると、何故かキョウさんの娘、アンズに煽られた。親父さんが強いからって、自分が負けた相手に何でそこまで強気に出れるのか…コレガワカラナイ。

 

 

「あたいの父上は世界最強のどくポケモン使いだからね!あんたが父上に勝とうだなんて、10000光年早いのよ!」

 

「…光年は時間じゃなくて距離だぞ」

 

「…え?それホント?」

 

 

ニッコニコで元気よく煽りを入れてくるアンズ…もうファザコン忍者娘でいいや。原作的にも間違っちゃおらんだろ。そしてその台詞はニビジムのキャンプボーイ君の台詞だぞ。盗ってやるなよ。これで彼の、延いてはニビジムのアイデンティティが半分消滅してしまったじゃないか。

 

 

「と言うか、なんで君が威張ってんだよ。ジムリーダーが強いのなんて、分かり切ってることじゃないか」

 

「そりゃあもちろん、あたいの父上だからさ!あんたなんかに負けるワケないじゃない!」

 

「ああ、そう…」

 

 

でも、お前さん俺に負けたじゃねーか。そこんところはどうなんですかねぇ?

 

 

「ファファファ…だが、確かに強かった。人は見掛けだけで判断するのはそうそう出来るものではない、ということだな。娘らを寄せ付けなかったのも納得した。柄にもなく、小童相手に少々熱くなってしまったわ」

 

「あ、父上!」

 

 

ファザコン忍者娘を適当にあしらっているところにキョウさん登場。どこぞのロケット団首領(サカキさん)よろしく音もなく現れるのやめていただけませんかね?足音が全くしなかったもんで、近付いてくるのが分からなかった。心臓に悪い。

 

 

「対戦ありがとうございました。流石ジムリーダーですね、手も足も出ませんでした」

 

「いや、むしろ無理にバトルを迫るような形になってしまったこと、わしの方から詫びねばならんな。ポケモンの方も、回復薬は渡したとはいえ万全ではなかった様子」

 

「ああ、いえ…まあ、俺が事前に気付けていれば良かったことなんで。それに、こういうことは何度か経験あるんで大丈夫っす」

 

 

具体的にはサカキさんとかサカキさんとかサカキさんとか、も一つオマケにサカキさんとか。それにクチバジムでもそうだったけど、ゲームじゃジムのギミックを突破してリーダーに挑む直前の回復は、薬使うなりポケセンに一度帰るなり、トレーナー側が任意でしなくてはならなかった。そうじゃなくても、モブトレーナーとのバトルも視線に入り込んだ時点で強制なんで、個人的にそこまで問題だったとは思わない。

 

あと、これまではPPが少ない技をここまで多用することがなかったから、PP管理の意識が希薄になってたのと、調子に乗っていわなだれを撃ちすぎたのも事実。あなたのお弟子さん方に岩技の通りが良すぎるのが悪い。(責任転嫁)

 

 

「…ふむ?まあ、ともかくまずはポケモンたちを回復させてやるのが先決よな」

 

 

そう言って、キョウさんは先程同様にスピアーたちに薬を飲ませ、傷には軟膏を塗っていく。薬の効果は抜群で、見る見るうちに元気を取り戻していくスピアー・サンドパン・サナギラス。うーん、さっきも飲ませたから分かるけど、忍者の秘伝のお薬ヤバいネ。副作用とかないのかホントに疑いたくなるわ。ちなみに、全部自作だそう。

 

 

「…うむ、これでよい。それにしても、トキワシティだったか。随分遠くから来たのだな。その様子だと、各地のジムに挑戦しておるようだが?」

 

「ええ、まあ」

 

「やはりな。ちなみに、歳は?」

 

「えっと…一応11になります。2ヶ月ほど前にトレーナーズスクールの初等部を卒業したばかり、です」

 

「…これは驚いた。娘と同年代とは思ったが、まさかトレーナーに成り立てとは…」

 

 

 

嘘は言ってない。中身はいい歳した大人だけど、外面は10歳前後の少年なのでね。

 

 

「え、あたいよりも下!?嘘でしょ!?」

 

「ええ、そうですよ。年下にボロ負けした気分は如何?」

 

 

俺の年齢を聞いてファザコン忍者娘が衝撃を受けているようだったので、さっきまでの意趣返しに煽り返してみる。ヘイヘイ、ピッチャービビってるぅ。

 

 

「うぐぅ…っ、こ、今回はたまたま!偶然よ!まだ勝負が着いたワケじゃないわ!次はお前なんかに負けないんだから!覚悟してなさい!」

 

「あーはいはい、ガンバレガンバレ」

 

「むっきぃぃぃぃっ!ムカつく!」

 

 

いやあんた、言った傍から自分で負けてるの認めてるやんけ。もう勝負ついてるから。

 

 

「ファファファ…アンズよ、忍びたる者何時如何なる時も沈着冷静であるべし…と教えたはずだが?それと、確かに今回はわしが勝ったが、そもそもの話こ奴は戦い通しであった。いくら薬を渡したとは言え、完全に連戦の疲れが抜け切る訳ではない」

 

「うっ…」

 

「加えて、逃げ場を潰して完全包囲して甚振ること自体、あまり感心出来るものではない。その上で全員まとめて容易く蹴散らされる体たらく…ちと付け上がっておるのではあるまいな?」

 

「ううっ…」

 

「ファファファ…これは一つ、厳しく鍛えてやらねばならぬな。小休止の後修練を再開する故、今日の負けを糧に精進せよ、アンズ」

 

「は、はいっ、父上!…あんた、マサヒデって言ったね?」

 

「え?ええ」

 

「次は絶対、絶ぇーっっっ対に負けないからね!覚悟しときなさいよ!」

 

 

…あーはいはい、頑張って下さいな。覚悟もしておきますよ…次があればだけど。今後しばらく俺も鍛えて、キョウさん対策組んでからまたジムの方に挑戦しに行きますわ。その時対戦があるかどうかってところカナー?

 

それはそうと、色々と手厳しいと言うか、理不尽な負けではあったけど、当面の目標となる相手の実力や戦い方を直に体験できたのは大きい。これで大体の目星と言うか、目標ラインが見えた…と思いたい。

 

今回の面子がそのままジム戦に出てくるかは分からないけど、今日の様子だとまずはどく状態と能力変化への対策を本格的にしておかないとな。さっきみたいに嵌められると、ラッキーヒットを期待する以外もうどうにもならん。

 

では、ここらへんで失礼をば。

 

 

「では、お昼ご飯もご馳走様でした。また挑戦しに来ます。ではこれで…」

 

 

オタッシャデー。

 

 

「小童、ちと待てぃ」

 

「…?なんでしょうか?」

 

 

一区切りつきそうだったので挨拶して素早く去ろうとしたら、キョウさんに呼び止められた。一々話し方が古風でこっちを見る視線も鋭いせいか、凄い殺気を感じる

 

 

「流石に斯様な形で勝負して大した持て成しもせぬまま帰すというのは、人として如何なものかと思ってな。聞けば今日セキチクシティに着いたばかりであろう。宿もまだ取っておるまい。それに、お主もポケモンたちも、連戦の疲れが溜まっておろう。今日は我が家に泊って、ゆるりと疲れを癒すが良い」

 

「え…いや、昼飯いただきましたし、そこまでお世話になるのは…」

 

「それに、お主にはちと聞きたいことが出来た。遠慮せず」

 

「え…あ、はい……お、お世話になります…」

 

 

その眼力に押し通され、何故かそのままセキチクジムに一晩お世話になることが決定したのであった。何故こうなったし。そもそも、聞きたいことって…何ぞ?

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

----

 

---

 

--

 

 

 

 

 

 

 

 

 セキチク忍軍&ジムリーダー・キョウさんによるきたない連戦で無事敗北を喫した俺は、あの後ひんし状態のポケモンたちを戦闘前と同じようにキョウさんのお薬によって回復させてもらい、宿泊させてもらう部屋に案内された。

 

しばらく落ち着かない心地の中で過ごしていたが、ファザコン忍者娘に「ポケモンバトルは負けたけど、忍術でなら負けないわ!さあ勝負よ!」と抵抗する間もなく、ジムの裏手にあるに修行場らしき場所に連行されるハメに。「忍術なんて使えるワケねーじゃん」と思いながらも、サカキさんに鍛えられた健康的でこの歳ではちょっとだけ自慢の身体能力で抗ってやるぜ、なんて勇んで受けて立ったが…完敗であった。サルみたいにあっという間に木に登ったり、高い塀を軽々飛び越えて見せたり、この娘の身体能力どうなってんの?バカなの?忍者なの?そう、忍者なら仕方がないね。

 

なお、50m走もやったが普通に見どころもなく負けた。ファザコン忍者娘は身体能力オバケと言うことが分かった。そして、勝った後のドヤ顔にイラッとした。

 

 

 

忍者の修行らしきあれやこれやに付き合わされた後は、息も絶え絶えの俺に対して、「さあ、さっきのリベンジよ!」とバトルを仕掛けられた。鬼か、おのれは。

 

こうしてもう対戦することはない、あっても相当先の話だと思っていたリベンジの機会が早々にやってきてしまった。結果はもちろん勝った。身体能力はオバケでも、ポケモンの実力は俺の方が上だったな。(ドヤァ)

 

実際、試合内容を振り返ると、キョウさんの薫陶を受けた忍者の卵らしく嫌らしい戦法ではあったが、根本的なレベル差が大きく、ファザコン忍者娘のモルフォンでもやっと俺のナゾノクサと同じくらいのレベルでしかない。今の俺の手持ちならその戦術を上から力で叩き潰してどうにでも対処出来てしまった。レベルを上げて物理で殴る、これ基本。

 

 

 

 

 

 ファザコン忍者娘に完勝を収めた後は、セキチク忍軍の皆さんが引き続き修練に励む風景を眺めつつ、途中でジムの人からお茶とお菓子をいただいたりしながら過ごしていた。

 

そこに修練の監督をしていたキョウさんが、一旦指導から離れてこちらにやってきた。

 

 

「あ、キョウさん。お茶とお菓子、ごちそうさまでした。美味しかったです」

 

「なに、せめてもの詫びと労いだ。これしきの事、気にするでない。我が娘とのバトル、今見ても子供らしからぬ見事な腕前だった」

 

「あれはポケモンたちが頑張っただけです。自分は大したことはしてませんよ。キョウさん相手にした時なんて、ほとんど有効な手を打てませんでしたし…」

 

「人間誰しも、著しく追い詰められた状況では中々に正常な判断は難しいもの。その点、お主はよくやっていたと思うがな。それに、お主が相手したのはわしの主戦力とも言えるポケモンたちよ。よもやマタドガスを突破されようとは思わなんだ。誇ってもらわねば困る」

 

 

さっき相手させられていたキョウさんのポケモンたちは、実はキョウさんの主力だったらしい。どおりで強いワケだ。

 

 

「はは…恐縮です」

 

「ところで、実はお主に1つ聞きたいことがあってな。しばし時間を貰いたい」

 

「聞きたいこと?それは構いませんが…何でしょう?」

 

「おぬしのスピアーが最後に使った技…アレについて、少し話を聞きたい」

 

「スピアーが最後に使った技?あの時最後に指示した技と言うと…どくづき、ですか?」

 

「うむ、それよ」

 

「それがどうかしましたか?」

 

「わしの記憶が確かであれば、あの技はつい最近見つかったばかりの技のはずだ。発見したのはトキワジムリーダー。わしのポケモンたちにも覚えさせようと交渉しようかと考えておるところだが、その技を何故おぬしのスピアーは使える?それも、見た限り自家薬籠中の如く十全に使えておる様子。どこで覚えた?」

 

「あー…」

 

 

あー、そこに目を着けられてたか…毒タイプのエキスパートとしては、未知の毒タイプの技は気になる、ってことなんだろうな。

 

さて、どう答えたものか…うん、ここはやっぱりサカキさんに押し付けておくのが安全だろう。

 

 

「トキワジムリーダーのサカキさんから教えてもらって使えるようになりました。学校出るまではサカキさんに指導を受けていましたので」

 

「…むぅ、やはりトキワジムリーダー、か……マサヒデ、と申したな?1つ頼みがある」

 

「…?はい、何でしょう?」

 

 

ジムリーダーからの頼み事…サカキさんのせいか、ついつい身構えてしまう。

 

 

「うむ。お主のスピアーが放つ技を学ばせて欲しい。道なき道を行くよりは、他者が歩んだ跡を行く方が易い。手本となるべきものがあるのならば、それを使うに越したことはないと思うのでな。それに、毒ポケモンの専門家として、門外漢のはずのジムリーダーに後れを取るわけにはいかぬ」

 

 

うっ、そう来ましたか。どくづきの伝授…それ自体は別に構わないとは思うんだけど、ちゃんと出来るかどうかが問題だ。如何せん、人に指導した経験などほぼ皆無だし。

 

 

「それはよいのですが、人に教えた経験がないので、上手く伝えられるかどうか…」

 

「そこは構わん。使っているところを(つぶさ)に見させてもらえればそれでよい。それに、タダでとは言わん。我が一族に伝わる忍びの極意…その一部をお主とお主のポケモンたちにも伝授しよう。無論、無理強いはせぬがな」

 

「…では、しばらくお世話になります」

 

「うむ、それはこちらとしても、だ。その間、我が屋敷に逗留していくと良い」

 

 

と言うことで、スピアーのメインウェポン"どくづき"の伝授と引き換えに、泊まり込みでキョウさんから指導を受けることになりました。どくタイプの技だし、よくよく考えてみればどくタイプの専門家キョウさんとしては気になるのも当然の話。なるべくして目を着けられてしまった…と。

 

この技、本来は第4世代から登場した技なんだが、こちらの世界ではスピアーの火力不足に悩んだ俺が思い付きとその場の勢いで2~3世代時代を先取りした結果、無事サカキさんにバレて世に出ることになったやらかしの産物。そして、この世界における最初の発見者は俺自身な訳なんだが、対外的には発見したのはサカキさんと言うことになっている。その方がお互いにとって利益が大きかったから。サカキさんは新たな発見と言う名誉と実績を、俺は面倒事の回避とちょっとばかりの小遣いを。オマケでサカキさんからの疑いの眼差しも

 

…え?割に合ってない?いいんだよ、面倒なのは嫌だし、何に価値を見いだすかは人それぞれだ。サカキさんにとっても俺にとっても、俺が前面に出るよりも色々と都合が良かっただけの話さ。

 

…あと、サカキさんに変に口答えすると後が怖い()

 

ともかく、キョウさんとしては"どくづき"が気になる様子なのは分かったと思う。そして、俺としてはキョウさんを今後再度相手にするなら、現状では準備不足・能力不足な感が否めない。特に、現状弱点を突けず物理方面に硬いマタドガスが思いの外厄介だった。うちのサンドパン(ナンバー2)サナギラス(ナンバー3)の2匹掛かりでやっとだったし、何かしら作戦や対応策は必要だ。そう言う意味では、近くでその戦術を学べるのは意義があると思う。

 

それに、新しいポケモンが必要かもっていう思いもある。ここにはサファリゾーンもあるし、海や山もあり、カントー地方でも屈指の野生ポケモンの宝庫。現状の手持ちはバランスが良いとは言えない。単純な対策は相手に有利なポケモンを用意することだし、切れる手札は多いに越したことはない。この環境を有効に活用していきたいところ。

 

1歩進んでは1日止まり、また1歩進んでは1日止まる。旅らしくない旅。そんな感じの旅になってしまっているが、急ぐ旅じゃないし問題ないだろ?のんびりじっくり、だ。

 

 

 

 そんな訳で、セキチクシティに俺が到着してからすでに一週間。俺はセキチク忍軍の皆さんやセキチクジム所属トレーナーの皆さんの修練に混ざってキョウさんの指導を受けつつ、キョウさんに伝授する日々をスタートさせていた。

 

教えるとは言っても、実際どんな感じで教えればいいのか分からなかったので、とりあえずセキチク忍軍の皆さんやセキチクジム所属トレーナーの皆さん、時々キョウさん本人のポケモンを相手にどくづきをひたすら打ち込んでいくスタイルになった。キョウさん曰く「これが一番分かりやすい」とのこと。

 

そして彼らの修練は非常に過酷だ。俺もトキワシティでの3年間にサカキさんに色々やらされたが、トキワジムでのサカキさんに課せられたトレーニングのさらに上を行っている。何よりもまずトレーナーが肉体的に搾り上げられるので、サカキさんのトレーニングとはまた違ったベクトルでキツい。

 

比較すると、トキワジムがとにかくまずポケモンを鍛えることに主眼を置き、併せてトレーナーの成長を目指すポケモン中心な育成方針であるのに対し、セキチクジムはトレーナー自身が成長すること…と言うよりは、優れた忍者?になることがまず主目的にあり、そのトレーナーと一体となって動けるようにポケモンを鍛えるのが基本的な育成方針になる。第一に人、第二にポケモンということらしい。流石は忍者。身体能力オバケどもが誕生した理由がよく分かる。

 

その過酷さは、キョウさんに世話になり出してからほぼ毎日一緒に修練を受けているセキチク忍軍の皆さんのへたり具合でよく分かる。傍から見ているだけでも大変よく分かる。

 

 

「………無理、吐きそう」

 

 

そして、今はその過酷さを身を以て現在進行形で味わっている最中なワケでして。「あんたも一緒にやるのよ!」などと宣ったファザコン忍者娘によって、セキチク忍軍の皆さんの修練に強制的に参加。流されるままに付き合った結果、見事に撃沈判定をくらった。これが泊まり込み2日目の話。

 

そんな具合でも毎回ボロボロになりながら付いて行き、1週間で辛うじて修練を完走出来るまでにはなった。が、今回は昼食が俺の奮闘と最悪最低なコラボレーションで絶大な不快感を醸成した結果、胃袋が被害甚大。敢えなく途中棄権(リタイア)である。

 

 

「…10分の小休止後、次の修練を…と行きたいが、その様子では難しかろうな。しばし休んでおれ、小童」

 

「…う、うっす」

 

「へへん!今度はあたいの勝ちね!男の癖に情けないわね!」

 

「………」

 

 

キョウさんに休んでいるように言われ倒れたところに、この間の仕返しとばかりに煽りを入れてくるファザコン忍者娘。色々と言いたいことが浮かんでは頭の中に渦を巻くが、残念ながらそれを口にする気力もない。敗北…敗北?の悔しさとか、ファザコン忍者娘への恨み辛みと一緒に、出てはいけないモノまで胸の奥から込み上げて来る。気持ち悪い。

 

でも、流石は忍者として日常的に修練を受けているだけのことはある。あの鬼のような修練の数々を越えてなおピンピンしてるとは。もう君たちポケモンバトルするより、自分で戦った方が早くない?

 

 

「行くわよ!モルフォン!」

「ふぉーっ!」

 

「頼んだでござる!ズバット!」

「ズバッ!」

 

 

木陰で死んだように横になっている間に、他の面々は次の修練へ。疲れている様子を見せながらも、広大な敷地でポケモンバトルを繰り広げていく。

 

 

「ズバット、"かげぶんしん"でござる!」

「ズバッ!」

 

「まだまだ甘いわね!"サイケこうせん"よ!」

「ふぉーん!」

 

 

始まるまでの間に少し気分がよくなったので、ファザコン忍者娘…もとい、アンズとござる少年のバトルを観戦する。ござる少年のズバットがかげぶんしんを張ってモルフォンを翻弄しに出るが、技を繰り出すまでのスピードなど、全体的に動きが甘いように見える。アンズにもそのように見えたらしく、ズバットはあっさりと本体を見破られ、サイケこうせんで撃ち抜かれた。

 

 

「ズ…バァッ!」

「くぅっ…ならば、"あやしいひかり"でござる!」

 

「"かげぶんしん"!」

「ふぉーん!」

 

 

早々に劣勢に置かれたござる少年はあやしいひかりで挽回を図るが、アンズはかげぶんしんで狙いを絞らせない。ござる少年のズバットと比べると、確かに技の展開が幾分か早い。あっという間に分身をバラ撒き、結果ズバットの反撃を不発に終わらせた。

 

そうして有利な態勢を整えたモルフォンが攻勢を仕掛ける。

 

 

「さあ、一気に決めるわよ!サイケこうせん!」

「ふぉーっ!」

 

「むむ、これはピンチ!ですが…そこでござる!ズバット、あやしいひかり!」

「ズバッ!」

 

 

が、ござる少年は何故か本体を見破り、あやしいひかりを直撃させてモルフォンは混乱状態に。同時に分身も全て消え去ってしまった。今の攻撃の動作に何かヒントでもあったのか?俺には分からなかったけど…まあ、彼もまた忍者の卵っていうことなのかな?

 

 

「形勢逆転でござるぞ、アンズどの!つばさでうつでござる!」

「ズババッ!」

 

「なんのこれしき!モルフォン、ねむりごなよ!」

「ふぉ、ふぉー…?」

 

 

モルフォンが混乱したことでズバットが持ち直し、ござる少年が反撃に転じる。が、アンズは焦ることなくねむりごなを指示。混乱しながらの指示なので完全に2分の1の博打になってしまうが、モルフォンは何とかこの指示に応え、"ねむりごな"が前方にバラ撒かれる。

 

 

「むむ!…ですがここが勝負時!そのまま突っ切るでござる!」

「ズバッ!」

 

 

これに対し、ござる少年は一瞬悩む素振りを見せたが、そのまま攻撃を続行。少しでもねむりごなに当たるまいと、地面スレスレを高速で掻い潜るようにズバットがモルフォンへと突撃する。

 

 

「ズバッ…」

「…ズバット!?これはやってしまったでござるっ!?」

 

 

しかし、ズバットは"ねむりごな"の雨を掻い潜ることは出来ず、その翼をモルフォンに届かせる前に墜落。勢いよくヘッドスライディングをかましてモルフォンのほぼ目の前で停止。完全に据え膳状態となってしまった。

 

結局それが決め手となり、混乱状態が解けたモルフォンがそのままズバットを戦闘不能に追い込んで試合終了。アンズの勝利となった。

 

改めてよく観察してみると、彼らが使うポケモンはファザコン忍者娘のモルフォンを筆頭に、ズバット・ニドラン♂♀・ドガースetc…やはりどくタイプのポケモンばかりだな。セキチクジムだし当然なのかもだが。そして「ござる」なんて語尾に付けるヤツホントにいるんだな…最初聞いた時は割と衝撃でござった。

 

 

 

この後、体調も良くなったところで俺も参加。セキチク忍軍の皆さんをボコったりキョウさんにボコられたりしながら、この日の修練は終わった。とりあえず、当面の目標はキョウさんの撃破。キョウさんに"どくづき"の伝授と言うお仕事もあるのでタダ飯食らいじゃあない。お世話になりながら、腰を据えてじっくりやるとしましょうか。

 

 

 




主人公、やらかしのせいで巡り巡ってキョウに目を付けられるの図。今後何話かはセキチクジムの面々との絡みが中心になりそう。手持ち的にもどくタイプが多いので、キョウに気に入られる要素は結構あると思います。

それと、前話の感想で『汚いな流石忍者きたない(ガチ)』な感想が多すぎたので、主にキョウのキャラ付けに関してちょっとこの後どうしようか迷ってましたが、もうこのまま(表向きは)汚い…汚い?路線で行くことにしました。一つだけ、この作品にはキャラクターを貶すような意図はないことだけは予め断っておきたいと思います。キョウが不意打ち同然の戦いを仕掛けて来たのにも、一応彼なりの理由というか、信念があるのです。と言うか、無理矢理くっつけました()次回でこの作品における彼の設定を書けたらな…と思っています。
まあ、一番の問題は前話の切り方が悪かったことだと思いますが。つまり作者が悪い。よって有罪。打ち首獄門に処す。

追伸(R4/2/26)ちょっとキョウさんの所業をマイルドにしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。