成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第48話:発電所大掃除

 

 

 

 

 日記帳の返却というシオンタウンでの重要任務を終えた直後、狙い済ましたかのようにかかってきた1本の電話。『監視か盗聴でもされてんじゃないか』って気がしてくるようなタイミングでの電話の向こうにいたのは、トキワジムリーダー兼トキワコーポレーション社長兼ロケット団首領にして、俺の書類上の保護者サカキさん…の秘書・セドナさん。電話越しに伝えられた、条件反射で強烈な圧力を感じるサカキさんからの要望という体の事実上の命令は、ものの見事に俺の予定を狂わせた。

 

電話の翌日、俺はシオンタウンを離れ、その郊外にてサカキさんからの迎えと合流。乗り込んだ車はそのままヤマブキシティのある西ではなく、北の10番道路方面へと進路をとった。ヤマブキシティ、2度目のお預けである。俺にとって、ヤマブキシティとは足を踏み入れてはいけない禁忌の地なのかもしれない。ロケット団的には当たらずとも遠からずな感じがまた…ね。

 

シオンタウン北側の道、10番道路は峻険な山岳地帯となっており、それを抜けると9番道路-ハナダシティと繋がっている。そして、この10番道路を南北に分断する形で、『イワヤマトンネル』というダンジョンが存在する。

 

ゲームではハナダシティからシオンタウンを目指して、このイワヤマトンネルを抜けるルートを通ることになるのだが、このイワヤマトンネルが中々の難所なのである。

 

難所とは言っても、出現ポケモン自体は大したことはない。問題なのは、内部が真っ暗で視界がほとんどないため秘伝技"フラッシュ"が必須なこと。これがないと踏破はおろか、最悪脱出すら出来なくなり、データリセットの憂き目を見るハメになったりする恐るべき場所なのだ…(体験談)

 

…え?「そんなアホはお前だけだ」って?…返す言葉もねぇ。いや、RTA勢なら或いは…

 

とまあ、必須とは言ったものの、仕様上"フラッシュ"の秘伝マシンが無くても気合(もしくはマップを丸暗記する記憶力)さえあれば踏破自体は可能なこと、そして"フラッシュ"の秘伝マシンを入手出来るポイントまで行くために『ディグダのあな』を越える必要があるのだが、これが面倒臭くて「多少慣れてるし大丈夫っしょ!」とか高を括って横着した結果が、このバカの哀れな末路である。

 

俺のようなアホな事態を回避するためにも、皆もいざと言う時のため"あなぬけのヒモ"はいくつか常備しておこう。

 

そんなことを考えながら、俺は流れゆく車窓の景色をただ眺めていた。

 

 

 

 

 とまあ俺のアホな昔話はさておき、徒歩では難所のこの山岳地帯も、車を使えば待っているのは専用道。クネクネと左右に振られながらもあっという間に山を越え、車に揺られること2時間ほどで、10番道路北側のポケモンセンターに無事到着。イワヤマトンネル?そんなものはなかった()

 

予定では、ここでサカキさんと合流する手筈になっていた。

 

 

「…来たか、待っていたぞマサヒデ」

 

「ぅ…お、お久し振りです、サカキさん」

 

 

そして、何だかんだで結構久し振りな気のするサカキさん。周囲にはトキワジムトレーナーの皆さんがズラリ。いやあ、相変わらず威圧感パネェっす。

 

 

「ヘイ、マサヒデボーイ!クチバジム以来ネ!」

 

「あ、マチスさんもお久し振りです。その節はお世話になりました」

 

「まさかこんなところで再会することになるとは思わなかったヨ!」

 

 

そのサカキさんと一緒に、クチバジムリーダーのマチスさんの姿もある。御存じの方ならポケスペシリーズを彷彿としそうなこの組み合わせだが、2人が一緒にいるのはジムリーダーとしての仕事のため。そして、何故俺が呼び出されたかと言うと、その仕事のオマケ…身も蓋もない言い方をすれば、サカキさんの『行きがけの駄賃』として付き合わされてる。

 

「は?」とか思った人、ちょっと挙手してみようか。

 

 

 

 さて、それで終わるとバレた時にサカキさんから威圧的なお叱りが『本当に』飛んできそうなので説明しよう。現在地の10番道路は、隣接する9番道路と合わせてハナダシティからシオンタウンを結び、途中に道路を分断して存在するダンジョン『イワヤマトンネル』がこの上なく面倒な存在として立ちはだかる道路。ゲームでは序盤ロケット団のせいでヤマブキシティへ、カビゴンのせいでセキチクシティへと向かうことが不可能になっている関係で、正直通りたくもないのに通らざるを得ない道となっている。

 

そんな難所で有名…と言うか、それ以外にあまり見るべき場所が無いようなこの10番道路だが、もう1つ重要な施設として『無人発電所』というダンジョンが存在する。辿り着くためには秘伝技"なみのり"が必要で、初めて10番道路を通った際には行くことが出来ず、ゲーム後半になってようやく行くことが出来る施設だ。

 

本編のストーリーに直接関わっては来ないものの、その内部はでんきタイプのポケモンの巣窟であり、カントー地方に生息する全てのでんきタイプのポケモンは1体(サンダース)を除いてここで全て揃えることが出来る、でんきタイプ好きにはたまらない楽園。そして何よりも、最深部には伝説のポケモン・サンダーが待ち構えており、手に入れるためには必ず訪れなければならない場所となっている…のだが、行けるようになる時期と場所的に、気付かないor忘れてる人も多いような気がする…そんな施設。自分も最初、タウンマップ見てここの存在に気付いた口だったり。

 

…と、ここまでがゲームでの話。

 

この世界における無人発電所は、【電力とポケモンの共生】をテーマに掲げ、発電装置を遠隔操作可能にすることでほぼ完全に無人化することに成功。内部を電気ポケモンの生息域とすることで、その力を利用して半永久的に電力を生み出し続けている…とのこと。『生物発電』とでも言うべき発電方式だろうか?

 

原理は詳しくは分からんけど、とにかくカントー地方の電力需要の実に過半を単独で賄っている超々重要な施設だったりする。

 

ただ、基本無人で人の気配が無く膨大な電力を生み出し続けるこの施設は、でんきタイプのポケモンにとっては楽園そのものであり、結果として想定を越える電気ポケモンを呼び寄せることになったそうな。

 

元々のテーマの関係上、ある程度はポケモンに摘まみ食いされても問題は無いらしいのだが、それでも流石に数が増え過ぎると『発電量<ポケモンの摘まみ食い』となって急な電力不足を招いたり、逆に異常かつ過剰な発電で設備の急激な劣化・故障・破損を引き起こし、深刻なシステム障害を誘発することも。実際、現在この世界で時たま生じる停電の主な原因は上記のどれかであることがほとんどであり、過去には一時期ポケモンに内部をほぼ占領された結果、中々手を入れられなくなった末に設備の故障とシステムトラブルを山の数ほどまとめて引き起こし、カントーの広範囲に数日間もの大規模な停電を発生させ、ついでに下から上まで結構な数の発電所及び管轄機関の人間の社会的立場をキレイサッパリ消し飛ばしたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 で、話は戻ってこの発電所の抱える問題が、サカキさんに呼び出された理由へと繋がる。度重なる発電所のトラブルを受けて、カントーポケモン協会は発電所側から対応への協力要請を受ける。そこで協会側が提案したのが、ジムリーダーを中心に定期的な巡回を行いポケモンの生息数をコントロールし、同時に設備の定期メンテナンスも合わせて実施することで電力供給を安定させるという計画だった。

 

過去5回行われたそれはここまでで一定の成功を収めており、6回目の実施が今日この日になる。

 

つまり、早い話が今回の発電所巡回当番のジムリーダーがサカキさんで、俺はその戦力として急遽駆り出された…

 

 

 

 

 

 

…ワケではなく、この発電所に巣食うでんきポケモン一掃作戦の監督をしている間の時間に、俺がどれほど成長したか確認したいと言うことで呼び出された。サカキさんは今回の作戦を統括する立場にあるのだが、大抵のことは現場がどうにか出来る上、問題の大部分は一緒に全体の指揮を執るマチスさん以下クチバジム側とメカニックたちが何とかしてくれちゃうそうなので、ぶっちゃけかなり暇らしい。その間の手慰みに、俺はお呼ばれしたのである。つまりは紛う事無き"暇潰し"。

 

再度「は?」とか思った人は、素直に挙手しよう。

 

 

(´・ω・`)ノ

 

 

 

 

…ちなみに、マチスさんはでんきタイプの専門家と言うことで、毎回この巡回を中心となって取り仕切っている。なので「クチバジム+他のジム1つ」がこの巡回の基本体制とのこと。

 

 

「…これで全員揃ったな。ではMr.マチス、本日はよろしく頼む」

 

「OK!ミーの方こそ頼りにさせてもらうネ、Mr.サカキ!」

 

 

2人が握手を交すと、そこから先は今回の状況と、それぞれの役割及び作業の進行方針について説明があった。両ジムのトレーナーが先行して突入し、内部のポケモンの捕獲・追い出しを行い、ある程度安全が確保され次第電気作業員が発電所設備の点検・補修を行う。また、TCP社・シルフカンパニー等の企業や大学等の研究機関からも調査員が派遣されており、捕獲されたポケモンたちの調査や内部の生息状況の確認を同時進行で行う手筈のようだ。

 

また、外から内部へ指示を伝える司令部も設置され、マチスさんとサカキさんはこの司令部で監督&待機。随時指示を出しつつ、何かあれば即応する態勢だ。つっても、クチバジムの方はどうか分からないがトキワジムから参加しているのはサカキさん門下の優秀なトレーナーばかりなので、実際問題出番無さそう。それこそサンダーでも襲来しない限りは。

 

そしてその間サカキさんの玩具になるのが俺の役目、と…帰りてぇ。

 

 

「Let's go boys!」

 

 

そんな俺の心の声など届くはずもなく、状況説明は恙なく終了。全員が車両に乗り込み、集団を乗せた車列が無人発電所を目指して動き出す。ゲームでは"なみのり"で川を越えて行かないといけない場所だったが、こっちの世界では普通に陸路が整備されていた。まあ、インフラを司る重要な施設に通じる道がないってのもおかしな話だもんな。

 

 

 

そうして山間を流れるそこそこ大きな川に沿って造られた道を行くこと約1時間。車列が駐車場に到着し、参加者が次々と降車。それぞれが荷物や機材を持って、続々と再集合場所近くにはそこそこ大きな建物があるが、あれが無人発電所?大きいことは大きいんだけど、発電所と言われると…何かみみっちい。

 

 

「Attention!ここから先は、ポケモンたちのterritoryネ!surprise attack、奇襲を警戒して進軍するヨ!」

「「「Yes sir!」」」

 

 

…違ったらしい。能力は器に比例するもの。能力は凄いのに建物はショボいどこぞの航空事故調査局のように、中身と外面が一致しないなんてことは流石になかったようだ。

 

 

 

 その後、先導するマチスさん以下クチバジム勢の後に着いて、全員が一塊となって徒歩で移動再開。発電所はさらに2~30分ほど歩いた場所にあり、そこまでは電気ポケモンを含めた周囲のポケモンたちの生活圏であり、不用意に車で移動するとターゲットのポケモンたちに気付かれて逃げられる恐れもあるため、そこまでは歩きで行くと伝えられた。

 

移動する中で聞いたところ、車を降りた駐車場は監視施設兼即応要員の詰め所の駐車場だったようだ。"無人"と冠に付くように発電所には基本的に人は常駐しておらず、何らかのトラブルがあった時、必要に応じて専門の作業員が出向いて対応に当たる形を取っている。あの施設では発電所の様子を24時間監視し、トラブル対応要員が即応で出来るように寝泊まりして待機しているとのこと。

 

道中、時折現れるポケモンをやり過ごしたり撃退したりしながら慎重に進む。30分ほど歩いたところで、今度こそ今日の目的地である無人発電所を山裾の向こうに捉えた。遠くからでも分かるぐらいに大きな施設で、四方へと送電線のケーブルが伸び、送電塔が立ち並ぶ様は中々壮観だ。

 

なおも数分歩いて、ようやくその入口を目視出来る地点に到着。少し離れた広いスペースに機材を設置し、即席の司令部の出来上がり。その後、再度全体の指揮を執るマチスさんから最終確認と注意が入り、それが終ればいよいよ作戦開始。次々と発電所内部へと踏み込んでいくジムトレーナーの皆さんをお見送り。

 

 

 

「…さて、マサヒデ。君がタマムシを旅立ってからの1カ月半、どこまで腕を上げたか見せてもらおうか」

 

「ぅ…は、はいっ…!」

 

 

そして見送りが終れば、俺の身を待つのはサカキさんによる実力テストと言う名の死刑宣告(てあわせ)。分かっていても、その声を聴き、その姿を前にするととつい声が上擦ってしまう。これが、圧倒的強者の風格…っ!

 

…いや、俺だってこの1カ月半の大半をキョウさんの下で研鑽を積んで来たんだ。俺もポケモンも、以前よりもレベルアップはしていることは間違いないんだ。今回こそ、今回こそはサカキさんに土を…やってやる、やってやるぞおぉぉぉーーッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ところで話は変わるけど、もしサンダーと鉢合わせる様な事態になったらどうしよう?手持ちのボール(モンスターボールonly)で捕まえられる自信ないんだけど?サナギラス投げとけば追い払うぐらいなら何とかなるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ダグトリオ、“トライアタック”でトドメだ」

「ダァァグゥゥーッ!」

 

「ビ、ィ……ッ」

 

「…スピアー戦闘不能!よって勝者、サカキ!」

 

「うぐぅ…っ」

 

 

ああ、やっぱり今回もダメだったよ(33-4)

 

 

 

ハイライトで振り返る。サカキさんはダグトリオ、俺はスピアーを選択して始まったこの1on1。互いに『やられる前にやれ!』な高速紙耐久の種族値をしているポケモン同士。片や地中、片や空中が主戦場と言う対照的な部分もありながらも、開戦直後から中~近距離での激しい技の応酬に。

 

"あなをほる"を多用して地中を高速で動き回り、神出鬼没な攻めを見せるダグトリオに対して、こちらは"こうそくいどう"でスピード強化し、キョウさんの下で培ったトリッキーな忍者っぽい動きを組み入れつつ、あえて“ミサイルばり”を極力使わず、これまでよりも積極的に前へ前へと出るスタイルで応戦。サカキさんのダグトリオを相手に、一進一退の攻防を展開した。

 

…はずだったんだが、それが出来たのも中盤まで。悲しいかな、徐々にスピードに優るダグトリオに振り回されるようになり、不意の一発を受けて消耗したところに怒涛の猛ラッシュをくらって均衡は崩壊。途中で立て直しこそ出来たものの、そのまま主導権を握り返すことは出来ず、押し負けてThe End。

 

途中までは着いていけてたのに、あの一発が余計だった。あれさえなければ…ぐぬぬ。

 

 

「ふむ…まあ、こんなものか」

 

 

そしてこちらが終了直後にサカキさんが呟いた感想になります。

 

地力(レベル)の差か種族値の差か…セキチクシティでの日々でまた一回り強くなれた自信はあるのに、これでも届かないことに軽くショック。と言うか、ゴローニャとかサイドン、ニド夫妻辺りを使われるよりかはスピアーでもやりようのある相手だっただけに、それで勝てないとあってはダメなのではなかろうか?レベルも50越えてることだし。

 

いや、そもそもスピアーはダグトリオにあまり相性が良くないと考えれば、よくやった方なのではないか?でも、その不利を撥ね退けてこそ強さの証明であるという思いも…

 

何にせよ、俺が越えるべき壁はまだ高く、進む道はまだ険しい…それだけは確実だ。いずれ来るジムリーダーとしての対サカキさん用のポケモン、そろそろ見繕って育て始めることも考えないと。今の手持ちで考えれば、サンドパン・サナギラス・クサイハナ・ヤドン・コイキング…この辺りが有力か?ゲームみたいにパパッと出来れば楽なんだけど、そうも言っていられない。やるべき課題はまだ山ほどある。

 

 

『ざわ…ざわ…』

 

 

涙が出るほど悔しい…ワケではないが、力負けを痛感していたところに、ふと気付けば観衆が何やら騒がしい。俺とサカキさんの試合を見て何か色々言っているのは場の空気で分かるが、ここまでは聞こえないので何を言っているかまでは分からない。何か変なところでもあっただろうか?

 

 

「Nice fightだったヨ、マサヒデボーイ!」

 

「あ、マチスさん…」

 

 

周囲の空気に疑問を感じていると、マチスさん登場。

 

「やるじゃないカ!1on1とは言え、Mr.サカキを相手にここまでやれるTrainerは初めて見たヨ!周りの奴らも驚いてるゼ!」

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言って観衆たちを指差すマチスさん。なるほど、あれは驚きの騒めきだったか。ところで、監督役が2人揃ってこんなとこに居ていいんスかね?そして観衆の皆さんは観戦してる余裕なんてあるのか?

 

 

「クク…まだまだ大手を振って送り出せるような奴ではないさ、Mr.マチス。まあ、成長は認めよう。まだ負けてやるほどではないがな」

 

 

負けたけど、とりあえず及第点は貰えた…感じでいいのか、コレ?

 

 

「では、軽く反省会と行こうか?強くなるためにはまず己の現状(いま)を知らねば、進むべき道も分からなくなる」

 

「ぅ…」

 

 

お手柔らかにお願いします。口には出せないので心の中でそう願う他ない。

 

 

 

 結局、サカキさんの指導と言う名のダメ出しは、20分ほど続いた。その間、俺は縮こまってサカキさんのダメ出しを聞き続けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『リーダー、発電所内の安全確保が完了しました!これより警戒態勢に移行します!』

 

「戦果はどうダ?」

 

『現在、ボールの運び出しを行っております!』

 

「OK!確認は本部要員にて行う!何かトラブルがあればまた報告しナ!」

 

『Yes sir!』

 

 

 サカキさんの指導終了から程なくして本部に入った連絡。それは、この作戦におけるサカキさんたちの役割の半分が終了し、任務も折り返し地点に来たことを告げるもの。さらに少しして、大量のモンスターボールが大きめのカゴ4つ分、発電所内から運び出された。

 

サカキさんたちの役割は、生息するポケモンの追い出しを主とする発電所内の安全確保、及びメンテナンス中の安全保持。先ほどの連絡は、この内の追い出し・安全確保が完了したという報告だったのだが、一口に追い出しと言っても、その手法は2つある。1つは単純に中から外へと追い払うもので、2つ目は、ポケモンを捕獲して完全に発電所から排除してしまうというもの。

 

追い払われたポケモンはメンテナンスが終って人間が引き上げると、しばらくしてまた発電所内部に戻って来るので、基本方針としては生態系を崩さないよう追い払うのみに止めるのが最善。しかし、ポケモンが増えすぎることで生じる問題を予防する観点から、毎回一定数を捕獲して完全に発電所と切り離す必要があった。捕獲されたポケモンは一部が調査のために企業や研究機関で飼育されたりするが、半数以上はクチバジムが引き取ってジムのポケモンとして育成したり、希望する人に譲渡したりしているという。

 

で、クチバジムの皆さんが捕獲したポケモンの確認をしている様子を見ていて、俺はふと思ってしまったワケです。そして、そのふとした思いをポロッと口からこぼしてしまったワケなんです。

 

 

「でんきタイプ…欲しいなぁ…」

 

 

…と。

 

俺の捕まえているポケモンにはいないタイプであると同時に、若干タイプが偏り気味な主力たちへの一貫性が高いみずタイプへの対策として有効な存在。それがでんきタイプのポケモン。一応くさタイプのクサイハナがいるものの、みずタイプって割と氷技持ってる奴が多く、くさタイプ1体に全部任せるのも無理がある印象。みずタイプを専門とするハナダジム対策にもちょうどいいし以上、2枚目、3枚目の選択肢として持っておきたいと思った次第。

 

 

「…なんだ?オマエはでんきタイプのポケモンが欲しいのか?」

 

 

そして、うっかり口にしたその言葉を、これまたうっかり近くに来ていたサカキさんにバッチリ聞かれてしまった結果…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…まあ、いいだろう。Mr.マチス、良ければコレに1体、ポケモンを融通しては貰えないか?」

 

「OK!マサヒデボーイならNo problem!ちょっと待ってナ!」

 

 

…何か貰えることになってしまった。

 

 

 

 

 

 

「待たせたナ、マサヒデボーイ!GETした奴らの中からPotential abilitiesのありそうなのをMeが厳選して来たヨ!好きなヤツを選びナ!」

 

 

その後、少しして俺のところまで戻って来たマチスさんの手にはボールが4つ。中のポケモンはピカチュウ・レアコイル・マルマイン・エレブー。どれでも好きなのをくれるという。ちょっと急な展開で頭追い付いてないところがあるけど、とりあえずマチスさん、そしてサカキさん、ありがとうごぜーます。

 

さて、ここは遠慮がちなそぶりを見せつつ有難く厚意に甘えることにして、問題はどれを貰うか。ポケモン界のアイドルにして世界2番目に有名なネズミ・ピカチュウか、後に進化形が登場する電気のとくこうオバケ・レアコイルか、、初代最速のバクダンボール・マルマインか初代では誰一人として使うNPCがいなかったレアポケモン・エレブーか…

 

まずピカチュウは却下だな。主人公のポケモンというイメージが強すぎて俺には似合わん。レッド君の相棒として頑張ってくれたまへ。

 

そんで、残りの3体から1体…それぞれのセールスポイントを上げるすると、レアコイルは希少なはがねタイプとアタッカーとしては十分なとくこう種族値、マルマインは初代最速のすばやさ種族値と有用な補助技、エレブーは多彩な攻撃技とこの中で唯一実用範囲内のこうげき種族値…こんなところか。

 

将来的なことを見据えるなら進化を残すレアコイルかエレブーだが、種族値的に中速域以下のポケモンばかりな手持ちを考えると、マルマインのスピードは捨て難い…むむむ、実に悩ましいな。

 

 

 

 そんな感じであーでもないこーでもないと優柔不断っぷりを遺憾無く発揮し、悩み抜くこと数分。

 

 

「…マサヒデボーイ、そんなに何を悩んでいるんダ?」

「…早く決めろ、マサヒデ」

 

「うぐっ…す、すぐ選びますっ!」

 

 

マチスさん&サカキさんから時間が掛かり過ぎだとクレームが入る。仕方無いじゃないですか、いきなり目の前にお宝をぶら下げられて「好きな物を1つやろう」とか言われたら、明確な目的がないとこうなりますよ!

 

…ええい、分かりましたよ!そんなに言うんなら決めてやる!男に二言はねえ!

 

 

「コイツを下さい!」

 

 

そう吐き捨てた俺は、選んだポケモンの入ったボールを掴み取り、思いっ切り地面に叩きつける勢いでブン投げた。

 

 

 

 

 




寄り道して無人発電所のお話でした。あなぬけのヒモは第8世代で大切なものと化したので、作者のようなマヌケを晒す少年少女は存在しなくなることでしょう。

そして、お試しも兼ねてですが、アンケートをしてみようかと。電気ポケモン1体は欲しいと思っていたのですが、作者が迷いまくって選べそうにないので、皆さんに丸投げしようという素晴らしい作戦です。マチスから提示された4体の電気ポケモン。ピカチュウは無しとして、残り3体から主人公はどのポケモンを選んだのか…投票が多かったポケモンを新しく主人公の仲間にします。期限は1週間後を目途にしようかな?





…投票無かったら?その時は…ホラ、アレだよ()

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