成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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閑話:これまで、これから

 

 

 

 

「ベトベトン、"ほのおのパンチ"!」

 

「ハァ…ハァ…モルフォン、"サイコキネシス"で吹き飛ばして…!」

「フォ、フォ…ォォーー…ッ!」

 

 

 マサヒデの現在地・ハナダシティから南に遠く離れ、セキチクシティはセキチクジム。その屋内に設けられた幾つかのバトル用のフィールドの内の1つに、ジムリーダーが調整等の私的な目的に使用するフィールドがある。

 

生温い海風では何の足しにもならないような熱気が籠るこのフィールドでは、セキチクジムの主であるジムリーダー・キョウが個人的な指導を行っていた。

 

以前はマスターズリーグを主戦場に活躍するトップトレーナーで、頂点を目指して激しい争いに身を投じ続け、ポケモントレーナーとしてはかなりの位置に立っていたキョウ。しかし、あと一歩で頂点にも手が届こうかという時にセキチク忍者の棟梁であった父が死去。家族や父に師事していた弟子たちのことを考え、目指した頂点に立つことなく故郷・セキチクシティへと戻り、後を継ぐこととなった。その際に協会からの要請を引き受けてジムリーダーに就任。以降、10年近くに渡ってジムリーダーと忍の棟梁、二足の草鞋を履く月日を過ごしている。

 

しかし、舞台を降りた今でも強さへの希求は変わらない。現状に満足することなく、1人のポケモントレーナーとして高みを目指し続けるべく、強者たる条件の答えを探し続けていた。そして今、彼の目の前で息も絶え絶えとなりながら指導を受ける少女もまた、いずれは自らの手で自らの答えを見つけ出し、自らの道を選び進まなくてはならない宿命を背負っていた。その少女の名はアンズ。キョウの愛娘である。

 

 

 

「ベェ~トォ~!」

 

「フォッ…」

「モルフォン…ッ!」

 

「どうしたアンズ!もう仕舞いかッ!?」

 

 

息吐く暇もないほどの激しいトレーニング直後の実戦指導。トップトレーナーの主力によるレベル差を思い知らせる無慈悲な一撃が、懸命に押し返そうとするモルフォンの足掻きを嘲笑い、アンズの期待を打ち砕く。

 

 

「ワシの跡を継ぐ?立派なジムリーダーになる?笑止!この程度でへばっておるようでは、100年早いわ!」

 

 

傍目には容赦が無いとしか思えない攻撃に晒され、ズタボロの1人と1体に向かってキョウから飛ぶのは、一歩間違えれば心を圧し折りかねないほどの厳しい檄。

 

 

「それどころか、あの小僧にも届かぬぞ!」

 

「…ッ!…ま、まだ……まだ、アタイはやれる…ッ!」

「フォ…ォー…」

 

 

その檄に反応して、アンズは何とか立ち上がる。「まだやれる」とは言うが、肩を大きく上下させ、目は据わり、足腰は疲労困憊で震えている。最早キョウに答えると言うよりも、自らを奮い立たせるために口に出しているようにしか思えない状態だ。モルフォンもそんな主人の意志に応えるべく、ふらつきながらも再び宙に浮かび上がる。

 

 

「そうだ、それでよい。ゆくぞッ!」

 

「く、ぅっ…ッ!」

 

 

そうして、キョウの指導は続いていく。

 

 

 

…結局、この日の指導が終ったのは、この時から1時間ほど後の事。キョウの妻が風呂の用意が出来たことを伝えに来たためであった。

 

 

 

 

 

 

これは、マサヒデが財布を犠牲にハナダジム攻略に力を注いでいた頃の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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~同日・夜~

 

 

 

 この世には、簡単には答えに辿り着けぬ難題がいくつもある。考え、悩み抜いた先が正解とも分からず、数学のように公式に当てはめて答えを導き出すことなども出来ない難題である。

 

『最強のポケモントレーナーたるに最も必要な条件とは何か?』という問も、その最たるものの1つだろう。全てのトレーナーに等しく課せられる至上命題の1つと言ってもいいかもしれない。考え、迷い、悩み、また考え、生涯を掛けて解を求め続ける難題だ。すでに数多の先人たちがそれぞれの答えを世に残している一方で、未だに長きにわたる喧々諤々の議論が続いている。

 

ある者は「それはポケモンを育てる育成力だ」と言う。バトルに使用するポケモンの実力が高くなければ、頂点までは上り詰めることは出来ない。そのポケモンを育て上げ、最良の状態に仕上げる能力を持つ者こそ、最強のトレーナーと呼べるのではないか、と。なるほど、至言である。

 

またある者は「それはポケモンへの深い知識・理解を持つことだ」と言う。故事に曰く、彼を知り己を知れば百戦(あやう)からず。自分のポケモンは何タイプで、どういう技を覚えていて、どういった戦い方を得意とするのか。そして相手のポケモンはどうか?それが分かれば、どういう風に試合運びを組み立てれば良いかが見えて来る。知識を基に、安定した試合運びが出来る者こそ、最強のトレーナーではないか、と。なるほど、これもまた至言である。

 

またある者は「それは勝負所を逃がさない直感だ」と言う。直感は経験則と言い換えてもいい。勝負とは水物、技が外れることもあれば急所に当たることもある。怯んでしまったり、状態異常の追加効果を貰ったりすることだってある。とかく想定外、確率の低い事態が起こり得るもの。そういった咄嗟の事態に、隙を見せず素早く状況を立て直せる、乃至は出来た隙を突いて勝ちを手繰り寄せられる。そんな勝負師こそが、最強のトレーナーではないか、と。なるほど、これもやはり至言であろう。

 

これら意見を述べた人物たちは皆、マスターズリーグ等、最高位の舞台で活躍した往年の名トレーナー。彼ら自身が上を目指し続けて結果を残し、最高位の舞台に上り詰め、そこでも結果を残し続けたその長き旅路の中で導き出し辿り着いた境地。数々の苦難と成長、挫折と栄光の果てに手に入れた強さ、彼らなりの答え。その答えに賛否はあれど、彼らが重視する点はそのいずれもが、ポケモンバトルにおいて勝敗を決定付ける重要な要素の1つであることだけは疑う余地はない。

 

古くよりこの地に生きてきたセキチク忍者一族の末裔であり、現代に生きる忍、どくタイプのエキスパート等々…わしも幾つかの異名で呼ばれ、ある程度の実力者としての名声を得てはいるが、道を究めたとは到底思っておらぬ。ポケモンバトルの道はまだまだ長く、険しく、そして奥深い。この問は、わしにとっても生涯の至上命題であった。

 

 

 

 トレーナーとしての至上命題は強さの追求…では、父親としての至上命題は?と問われれば、それはもう家族を養うことと子の育て方に尽きる。娘…アンズは今、人生の大きな岐路に立っていた。

 

その元凶は、1カ月前まで約1カ月半、自身の仕事場であり自宅でもあるセキチクジムで寝泊まりさせていた1人の少年に他ならぬ。遥々トキワシティからやって来たと言った少年…マサヒデが、ジム攻略のためにセキチクシティを訪れたことを知ったわしは、紆余曲折の末に彼をポケモンセンターではなくセキチクジムに案内。そのまま自らの膝下で世話をすることになった。

 

通常ならまずやらないことではあったが、そうしたのは偏に彼の実力と、わしとの戦いの中で使って見せた“どくづき”に寄るところが大きい。恐らくトキワシティジムリーダーから伝授されたのであろうが、ワシもどくタイプのエキスパートとして名を馳せる身。世に発表されて間もない新技"どくづき"の情報を得るまたとない機会、逃すつもりはなかった。そして、思っていたよりもすんなりと話がまとまったことで、“どくづき”について情報を得る代わりに彼の指導を請け負う生活が始まる。

 

ジムリーダーという職務の関係上、今までも才能ある若者というのは幾人も見てきたが、彼の才能と実力は大人顔負けのもの。与えた課題はほぼ難無くこなし、知識面も子供とは思えぬほど豊富。自身の手解きを受けた若者たち10人を相手に事も無げに連勝し、采配は時に場数を踏んだベテラントレーナーの如き風格を感じるほどに安定的。今思い返してみても、とてもアンズの1つ下とは思えぬな。

 

 

 

 対して、我が娘よ。まだまだ未熟で直情径行、落ち着きを欠きそそっかしい所は多分にあるが、ジムリーダーの娘として恥ずかしくないよう指導はしていたつもりであったし、実際トレーナーズスクールでの成績でも上位10人には常に入っておるし、実技に関しては文句なしの最上位。世間一般から見ても、十分に『逸材』と呼ばれるだけの才能の片鱗は見せていると思っておった。

 

しかしいざ2人が戦うと、その戦績は連戦連敗。時々アンズが手にしていた勝利も、その実は彼奴がポケモンの調整として手を抜いていたり、試験と称して新しいことに挑戦したり、捕獲したばかりのポケモンの慣らしとしてバトルしていた時ぐらいなもの。ある程度は予想出来ていたとは言え、ここまで完膚無きまでに叩きのめされると、流石に父としても師としても、思うところはあった。

 

負けや失敗が込むと、やる気を失い、集中が削がれ、また負ける…そのような悪循環に陥りやすく、一度嵌ると抜け出すのは容易ではない。同年代の強敵を相手に積み重ねる敗北の中で、娘の心が折れはしないかと密かに気に掛けていたが、同じ屋根の下で過ごすこととなった時点で、負けず嫌いの娘が彼奴と幾度となく鎬を削ることになるのは必然だったのだろう。それでも危惧するようなことがついに起きなかったことは幸いで、むしろ彼奴が見せたその強さは逆に、娘を1段上の領域へと引き上げる追い風となっていた。

 

それでも結局、1カ月の間に繰り広げられた2人の戦いは、いくつかの会心の勝利を除いてマサヒデが勝ち続けた。強風吹き荒ぶ中で乾坤一擲を賭して挑んだであろう最後の一戦も、アンズが利用した状況を使用し返されて敗れた。勝負の後、1人隠れて悔し涙を流している娘の姿も久しぶりに見たように思う。

 

 

 

「…本格的な稽古をつけ始めて、そろそろ1カ月になるか」

 

 

 縁側に腰掛け、夜風に当たりながら今日1日を振り返って独り言ちる。アンズがいつになく畏まった様子で「稽古をつけて下さい」と言ってきたのは、件の少年が旅立った翌日のことだったか。今まで見たことがなかった様子にちと戸惑いはしたが、真剣で真っ直ぐ見据えて来る娘の様子にその本気度合いを見て取り、「いいだろう」と二つ返事をしたことで修練の日々は幕を開けた。

 

努力は決して裏切らない…その言葉を証明するように、ポケモンの実力も、トレーナーとしての実力も、目に見えてしっかりと花開き始めていた。いつも一緒に行動している同年代の子供たちも、その熱に中てられて彼女の修練に毎日のように付き合っており、その成長に引っ張られてか実力が伸び始めている。良い傾向だ。

 

ワシも仕事がある故、流石にいつも傍に付いて指導を行うことは出来なかったが、その熱の入り様は今までの比ではない。娘の成長を一番近くで見守ってきたからこそ、そこは断言出来る。

 

それでも始めた当初は様子見しつつの内容であったが、次々と与えた課題を身に付け、乗り越え、逆に次の課題をまだかまだかと催促されるほどの娘の真剣度合いに、一段、また一段と修練に熱が入っていく。内容が厳しさを増し、それでも止めることなく修練を課していく。

 

そうしてはたと気が付いた頃、アンズへの指導の内容は、ジム所属のトレーナーに課すものと同じかそれ以上のものになっておったわ。ある程度の実力が求められるジムトレーナーと同等以上の修練に食らい付ける10代前半の少女…身内故に多少厳しく見ている面はあるやもしれぬが、それでも優秀と評価してよいだろう。

 

 

「それならば、わしが今してやれるのは、いずれ来る巣立ちの日まで自身の持つ全てを教え支えてやることなのだろうな」

 

 

ポケモントレーナーの世界は厳しい。トップトレーナー…ポケモンマスターを目指す者は星の数いれど、そこまで上り詰めることが出来る者はその内のほんの一握りでしかない。年齢制限こそないとは言え、マスターズリーグへの登竜門と言われるカントーポケモンリーグ・セキエイ大会予選への出場者数が例年だと200人弱、多い年でも300人に届くかどうか。ポケモンジムの攻略に挑戦する者が年間何千、何万人といる中での200人だ。そう考えれば、その難しさは一目瞭然であろう。

 

中にはトキワシティジムリーダーのように、ポケモンリーグに参加経験が無くともトップトレーナーの地位を掴む者もいないことはないが、そんな者はそれこそ希少なケースだ。

 

わしがこれまでに稽古をつけてきた子供たちもまた、漏れなく壁にぶつかり、その壁を越えようと挑み、もがき続け、それでも壁を越えられずに心を折られ、最終的に道を諦めてしまった者が少なくない。少数ながら壁を越えて一皮剥けて巣立って行った者も、また次の壁に当たって伸び悩み、進む方向を変えるなどして、トレーナーとして大成したと言える者など全体の半分にも満たぬ。

 

一般的に、8つのジムバッジを集めてポケモンリーグ予選まで出場出来れば、ポケモントレーナーとしてはある程度成功したと見做される。自身の後を継ぐと言うアンズの意志を嬉しく思い、大成して欲しいと思うのは父として当然の事。しかし、トレーナーとして成功出来るか、ましてやそのさらに上に行こうとするのならなおのこと、道は長く険しいものになる。

 

 

「良い素質を持っておる。良い環境もある。なれば、あとはあ奴のやる気次第よな」

 

 

これまでのアンズであれば、大成するなどとは確信を持っては言えなかった。しかし、今はどうだ。この一月ほどの間、周囲の心配を他所にアンズは挫けず、諦めず、前を向いて走り続けた。様子を見に来た妻から、あまりの惨状に『これ以上はアンズが可哀想だから止めてやって欲しい』と懇願されることもあったほどに手酷く打ちのめそうとも、どれだけ厳しい言葉を投げ掛けようとも、それでも娘は立ち上がることを止めなかった。

 

実の娘をここまで追い込んでいることに父親として心苦しさを覚えるが、その一方で、挫けることなく更なる高みへと昇ることを望み、自身の教えを懸命に、それこそ死に物狂いで吸収しようとしてくれていることには、そして過酷な修練に根を上げることなく立ち向かって来る姿には、確かな成長が見て取れる。

 

実力面でも戦術面でも、そして内面的にも伸長は著しい。身内故の依怙贔屓などしているつもりはないが、希望を抱かせてくれるには十分だ。父親として、トレーナーとして、忍として、ジムリーダーとして、これ以上ない喜びを感じている。

 

 

「夏季休業が明けた時、どこまでのものになっておるか…楽しみよな」

 

 

トレーナーズスクールの夏休みも重なったこともあって、この1カ月ほどの間、勉強と料理をする以外のほとんど全ての時間をこの修練に注ぎ込んでいた娘。そのやる気と力の入り様が今までとは比べ物にならないほどなのは疑うべくもない。

 

これまで娘が稽古に不真面目であったとは全く思わない。しかし、3カ月ほど前のアンズと今のアンズ、比べて見たらどうであろうな?わしが見ても、娘の皮を被った全くの別人と思うやもしれぬ。今振り返ると、トレーナーズスクールでの成績に高を括って天狗になっておったのやも、とは思う。

 

そう考えれば、同年代には相手がいないなどと持て囃されていたところに突如として現れ、天狗の鼻を徹底的に圧し折り、ついぞ決定的な金星を許さぬまま去って行った、年の近い強敵…アンズにとって、さぞ衝撃だったろう。

 

わしの指導に食らいつくアンズの見据える先には、自身のさらに先を進む少年の姿があるだろうことは想像に難くない。その幻影に追いつき、追い越し、そしていつかリベンジを果たす…それこそが、今のアンズを支える大きな原動力になっている。そう確信しておる。自身の目的のために引き留めた少年が、娘の急激な成長の切っ掛けになるとは…世の中、何がどう転ぶか分からないものだ。

 

 

「ファファファ…マサヒデには感謝せねばならぬかな?」

 

 

思い返せば、わしがマスターズリーグで頂点を目指しておった頃もそうであった。数多の強敵たちと頂点を目指して互いに争い、鍛え、高め合ったもの。全ては勝ちたい強敵、負けたくない好敵手の存在あればこそ。強さへの欲求、勝利への渇望と喜び、敗北の悔しさ、不屈の闘争心…その全てが、自らを更なる高みへ押し上げる力となる。

 

わしが競った相手も、強敵・難敵揃いであった。ゴースト使い・キクコの(おうな)、格闘家・シバ…力、技術、知識、経験、いずれもその全てを振り絞り、幾度となく死闘を繰り広げた強敵たちだ。今も最上位に君臨し続けておる者も少なくない。

 

しかし、最近では若い世代からも頭角を現す者が出始めておる。氷使いのカンナやドラゴン使いのワタルなどはその筆頭格。見た限りでは、そう遠くない内にカントー最強のトレーナーの一角に名前が挙がる様になろう。そして、いずれはアンズもマサヒデも、他の子供たちも、激戦の渦中に飛び込み、熾烈な競争社会の大波に揉まれていくことになる。

 

その来る時のため、わしは娘を、子供たちを信じ、明日も心を鬼にして鞭を振るうのよ。

 

 

「わしも負けてはおれぬ」

 

 

だが、ポケモントレーナーに下限も無ければ上限も無い。歳を重ねて老いるのではなく、積み重ねた経験と磨き上げた力で強敵を打ち破り、追い縋る若人たちを蹴散らし、頂点を奪う…マスターズリーグを離れたとはいえ、その野望は今もなお我が胸の内で燻っておる。

 

もし、アンズがものになる日が来たのならば、その時は…今一度、あの舞台に返り咲くのも良いかもしれぬ。ファファファ…この歳になっても楽しみが尽きぬ。ポケモンの道の、なんと奥深きことか。キクコの嫗も常々言っておったな、「いつまでも戦い続けろ」と。願わくば、それこそ死ぬその時までそうありたいものよ。

 

 

 

 

 

 

「…それにしても、マサヒデは如何にしてあの強さと知識を身に付けたのであろうな?」

 

 

 マサヒデはトキワシティ出身で、故あって3年間トキワジムリーダー・サカキの世話になっておったと言う。

 

トキワシティジムリーダー・サカキと言えば、カントー地方の現職ジムリーダー最強、ともすればマスターズリーグに出ても頂点に立てると評されるほどの実力者。わしも何度か戦ったことはあるが、わしが仕掛けた細工を物ともせず、時にはその細工毎まとめて圧し潰してくるパワー、如何なる事態にも動じないあの胆力は脅威的。タイプ相性の関係もあってか、苦戦を強いられている強敵だった。また、そのジムトレーナーたちも一筋縄ではいかない強者揃い、修練も過酷と聞く。

 

そんな環境下において、彼奴は他のジムトレーナーと一緒になって鍛えられたのだとか。生まれ持った天賦の才もあるやもしれぬ…が、彼奴はどちらかと言えば後天的な努力と知識、経験で試合を組み立てておるようなきらいがある。とすれば、ジムでの生活に余程水が合ったか、或いはジムリーダーの指導がこれ以上なく優れていたか…

 

どちらにせよ、彼奴の実力の源流がそこにあるのは間違いないだろう。彼奴にとってわしが課した課題など、自身がこれまで挑み続けた、そして今も挑み続けている壁の前では些細なもの…そう考えれば、自然と納得出来る。

 

同時に、その能力を引き出すトキワシティジムリーダーの指導方針・指導方法にも、1指導者、1トレーナーとして興味が湧く。

 

 

「機会があれば、その秘訣を聞いてみたいものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 かくして、セキチクシティのある夏の1日は暮れて行った。

 

 

 

 

後日、しばらくしてキョウは件の少年の保護者と同席する機会があり、その席で尋ねてみた。どのような指導を行ってあれほどの逸材に育て上げたのか…年甲斐もなく興味津々な様子の忍者の棟梁に対して、その保護者は問に対して考え込む素振りを見せ、しばし答えに窮した後、悩まし気にこう返したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれを参考にされても困る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いやあ、気付いたら前回の投稿から1カ月ですか…早いものですなぁ(ゴメンナサイ)

というワケで、今回は主人公が去った後のキョウ(&アンズ)のお話。キョウさんは元トップトレーナーだったものの、家庭の都合で今の立場になった設定が付与されました。アンズさんに無事強化フラグが建ちました。そんでもって、さしものサカキ様も答えようがないでしょうなぁ…

主人公が選んだのは?

  • レアコイル
  • マルマイン
  • エレブー
  • 男なら豪快に全部逝っとけ!
  • でんきタイプのような軟弱者は不要だ!

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