成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第50話:言葉は無くとも

 

 

 

 

 ヤマブキシティ…それは、カントー地方の中心に位置するカントー地方最大の都市。中心部は高層ビルやらタワーマンションやらが群れをなして聳えるビジネスの街であると同時に、道路は小さな路地一本に至るまでキッチリ整備され、その道の両脇にはポケモン関連商品の店、今時な喫茶店、高級ブランドっぽいブティック等がびっしりと埋め尽くし、行き交う人と車と活気と喧騒で満ち溢れている光輝く大都会。

 

…この件以前にもやったような気がするが、腰を据えるのは初めてだしまあノーカンってことで。一度は足を踏み入れながら、なんやかんや縁がスルリと逃げていく街だったが、今回は流石に逃げようがなかろう。俺にも逃げる理由はないしな。ハナダジム攻略から5日。シオンタウンで行き先が捻じ曲がってから1カ月近くになるが、回り道に回り道を重ねて、俺はようやくこの街に再び戻って来た。

 

今回の宿泊先はポケセンではなく、サカキさんが無料で提供してくれたTCP社系列ホテルの一室。ポケセンの宿泊施設とは異なる高級感溢れる内装にフカフカのベッド、ネット環境…は流石にまだないが、テレビは見放題の上、なんと課金すれば大人なビデオも見れるぞ!まあ、見ないが。

 

で、ここに朝食と夕食まで無料で付くという、充実した素晴らしいサービス。平凡一般人な俺には身に余る過剰な部屋だ。うーん…何というセレブリティ。これが無料ってんだから、ありがたいものだ。やはり持つべきは金持ちの親か…

 

…いやいやいや、何を考えている俺。そもそも、あの人金持ちではあるけど悪の組織の親玉だからな。騙されてはいかん、いかんぞ俺。サカキさんはロケット団、サカキさんはロケット団、サッカーキーイズポケモンマッフィーア…

 

とまあ、とっても快適な部屋を堪能すると同時に、背後で悪巧みしてそうなサカキさんの存在に恐々としつつ、ヤマブキ到着初日は暮れていった。

 

 

 

 そして翌朝、ベッドが快適過ぎてついつい二度寝を決め込んだせいで、眠りから目覚めたのはいつもより幾分か遅めの時間。カーテンを開けば、部屋の中が一瞬で明るくなる。

 

窓の外に広がるのは高層から見下ろす大都市の街並みと、それでも見上げる格好になるビルの数々。大都市・ヤマブキシティを象徴するような光景だ。

 

夜景も迫力があったが、ビル群と行き交う人の波という風景も、ここ3カ月ほど長閑な田舎街に滞在してたってこともあってか新鮮な感じだ。何と言うかこう…社ちkゲフンゲフン…会社勤めの皆さんの、命の輝きを感じるネ。リーマンの皆さん、お勤め御苦労様です。

 

…あれ?そう考えると、バトルの賞金でその日を繋いでいるポケモントレーナーって、ギャンブラーとあんまり変わらない気が…うん、深く考えないことにしよう。なに、勝てば食い逸れることはない。勝てばよかろうなのだ。

 

 

 

 時間を確認して、手早く着替えて顔洗って寝癖直して、すぐに朝食に向かう。ここのレストランはビュッフェ方式で、現在時刻は8時過ぎ…もうちょっと寝過ごすと、朝飯で自腹を切ることになるところだった。危ない危ない。まあ、朝からそんなガッツリ食べる人間ではないので、仮に間に合わなくてもそこまでの出費では…ないこともない。稼ぐ手段はあると言っても、俺は身体的にはまだ子供。ゲームみたいにホイホイ稼げるワケでもない以上、数百円と言えど馬鹿に出来ない。『1円を笑う者は1円に泣く』のだ。

 

…あ、これは亡くなった祖母ちゃんの受け売りな。

 

パンとスープにキンキンに冷えたモーモーミルクで軽めの朝食を済ませると、少し腹を休めた後、サカキさんからの横槍が無いことを確認してからヤマブキシティへと繰り出す。何か言って来るんじゃないかと少し身構えていたんだが、今回はそういうことはなかった。今日の天気は曇り。天気予報を見る限り、後々雨が多少パラつくかもしれないが、大きく崩れることは無いとのこと。気温もあまり下がらなさそう。

 

大都会と言うだけあって、バスに地下鉄と公共交通機関は充実しているので移動はラクチンだな。行く行くはここにリニアモーターも加わることになる。元の世界じゃまだテスト中だったから、ポケモン世界の技術が如何に凄いかを感じるね。

 

まあ、このクソ暑い中を徒歩で行く今の俺には関係ない話なんだけども。都市部ほど気温が高くなるってのは、ヒートアイランド現象って言うんだったっけか?これで俺の懐もホクホクならいいんだが、残念ながら現状は氷河期目前。運賃をケチることで締めれるところは締めていかねば。暑さも出費も今は耐え忍ぶ時。緊縮財政だ。

 

…それもこれも全部、自力で“10まんボルト”を覚えないレアコイルが悪いんや。しかも“かみなり”も自力じゃ覚えないんだぞコイツ。でんきタイプとしての自覚はないのか!と問い詰めたくなるレベル…ではあるが、トレーナーにあるまじき暴言は心の奥にしまい込んでドロドロに煮込んだ上で下水にでも流しておこう。言ったところでどうにもならんし。

 

せめて“ほうでん”が使えればやり様は十分あったんだが…いや、やろうと思えばやれるんだよな。やった後の問題が多すぎて怖いってだけで。練習だけはしておくってのもありかな?

 

 

 

 ともかく、俺の金欠具合を嘆くのはここまで。折角の都市観光、初っ端から辛気臭い話は無し…と行きたいところだったのだが、ここは光り輝く大都会・ヤマブキシティ。規模も人口も大都会なら、物の値段も大都会。場所によっちゃ相応の物を相応の値段で売ってる店もあるけど、そういうのって大体どこの街でも売ってるんだよなぁ。しかも微妙に高い。折角見ず知らずの街に来たんだから、その街ならではの物、これまで見たことのない新しいものを見てみたい。そんな気分だった。

 

で、その思いの先に待ち構えていたのは3~4つ、物によっては5つの0が連なる値札の山。気になったアイテムがあれば手に取ってはみるのだが、手に取るもののほとんどは、金額的にただの子供が手を出せるものではなかった。

 

その後もフラッと店に立ち寄るものの、突き付けられる高額の値札という体の門前払いを前に、無言の撤退を余儀なくされることを繰り返す。そう、大都会の商業施設はお子様には敷居が高く、ここに俺の居場所はなかったのさ。まあ、元から何か買うつもりもなかったけど。ないったらない。

 

純粋なる札束の暴力で追い出されるように外へと出れば、曇り空でも関係ない蒸し暑さが全身を吹き抜ける。とにかく暑い。クーラーがガンガンに効いてた施設内にいたせいで余計そう感じるが、不快感がこの暑さじゃ長いこと屋外にいるというワケにもいかないな。さっさと今日の本命に向かうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

…はい、というワケで、買う物も買える物もない商業施設をブラブラとハシゴして、予定よりも早めにやって来たのは本日の本命ヤマブキジム。市街地からは北側にやや離れた場所にあるが、左隣には格闘道場…こちらも今はまだヤマブキジム、以降格闘道場で統一…がゲーム通りに並び立つ。

 

営業再開してからしばらく経つはずだが、周囲には挑戦者や観戦者と見られる人々が、ジムへと向かう大きな潮流を目に見える形で作り出していた。1カ月程度では捌けないほど多くのトレーナーを待たせていたのか、はたまた大都会であるが故か…

 

そんなことをぼんやりと考えながら、俺もその流れに乗ってジムへと乗り込む。今日は下見と情報収集が目的なので、挑戦する予定はない。ゲーム意識で目標はヤマブキジムだ。

 

 

 

ここで、この世界におけるヤマブキジムと格闘道場の因縁について、分かった範囲で解説を。

 

前提として、元々ヤマブキシティでポケモン協会の公認を受けていたジムは、ヤマブキジムではなくお隣の格闘道場の方だった。指導を受けるトレーナーも多く、設立された時期も格闘道場は100年近くの歴史があるとか何とかで、最早名門って言ってもいいぐらいの由緒正しきジムだ。対するヤマブキジムは設立時期が30年ほど前で、指導を受けるトレーナーも多くて20人に届くかどうかというレベル。格闘道場を有名私立校とすれば、ヤマブキジムは細々とやっている私塾みたいなものだった。

 

そんな感じで天と地、月と鼈ぐらいに差のあった両者だが、ここ10年程でヤマブキジム側がメキメキと力をつけ、トレーナーの数も増やしてその背後に迫りつつあった。そこに、ヤマブキジム・格闘道場双方の代替わりが発生する。

 

格闘道場では先代師範(ジムリーダー)が病と高齢を理由に第一線を退き、新たな師範が就任することとなったのだが、新たな師範の実力・経験は先代と比べて1段格落ちするものであったという。一方のヤマブキジムの新たなリーダーとなったのは、自身も超能力を使えるために【エスパー少女】…後に【エスパーレディ】と呼ばれるナツメ。実力は…まあ、御存じの通りの超一流だ。つか、本当に超能力使えるっぽいのが怖い。

 

ここで完全に両者の実力が横一線に並ぶ事態となり、その状態で行われた前回の公認を巡る両者の戦いでは一進一退のシーソーゲームを展開。仕舞いには最後の1体同士が相打ちとなってしまったことで、文字通りの引き分けという結果に終わった。

 

不利なタイプ相性の中、それもナツメを相手に引き分けまで持ち込んだ格闘道場師範の実力は褒めるべきとは思うが、この結果を受けたポケモン協会側は大いに対応に困った。困った末に、本来勝利した側に与えられるはずだった5年間のポケモン協会公認ジムとしての立場を両者に与え、次の公認選出試合までの5年間、1年置きに交代でその職務を務めさせるというどっちつかずの中途半端な裁定を下した。

 

「再戦させればいいじゃん」とは思ったが、両者ともに主力ポケモンの疲労が激しく、特に格闘道場側は主力ポケモンに負傷による離脱があったため、万全の状態で再戦させようとしたらシーズン開幕までに体制が整わないと言うことで、すったもんだの末にこのような裁定になったらしい。

 

そんなこんなで、両者が持ち回りでの公認ジムを務めて今年で5年目。すでに今年の末に公認ジム選出の大一番が迫っている中で、気が立っていたのか、ひょんなことからヒートアップした両ジム所属のトレーナー複数人が場外乱闘騒ぎを起こし、ごく軽微ながら街に被害を出すというとんでもない事態に発展する。これがほんの3カ月ほど前の話。

 

報告を受けたポケモン協会は両ジムの業務等を一旦停止させ、関係者の処分を進めた。そして、その決定に時間が掛かったことで、挑戦するはずだったトレーナーたちが被った被害…即ち、業務停止に伴う挑戦機会の損失を最小限にするため、本来格闘道場が与えられていた今年の公認ジムの権限を臨時でヤマブキジム側にも与え、どちらか一方を攻略出来ればOKとする救済策も決定された。

 

かくしてしばしの準備期間の後、双方が同時に業務を再開して今に至る…と。

 

 

 

 今日は挑戦者ではないので入場料を子供料金で支払い、俺はヤマブキジムへと乗り込んだ。途中に自販機でサイコソーダを、売店で大盛り焼きそばをそれぞれ購入し、そのまま幾つかあるスタジアムの1つの観客席へと向かう。平日故か、挑戦するトレーナーも少なければ観客も思っていたより入っていなかったので、余裕を持ってその一角に陣取ることが出来た。

 

俺が確保したのは、比較的上段の席。フィールドからは若干遠いため、バトルの細かいところまでは見えないこともあるが、代わりに全体を見渡すことが出来る。ヤマブキジムがどういう感じなのか観察するには最適なポジションだと思う。

 

それと、原作におけるヤマブキジムと言えば、ワープパネルを使ってジムリーダーの部屋を目指すギミックの印象が強い。ポケモン世界のオーバーテクノロジーを楽しみにしていたところ、フィールドの両端にそれらしきものが見えた。どうやら挑戦者を試す施設の方にもそういうギミックがあるらしい。

 

まあ、そこは挑戦する時までの楽しみにしておこう。そう考えて、よく冷えた瓶と炭酸の抜けるポシュッという小気味いい音に誘われるままにキャップを開けたソーダと一緒に、ワープパネルの事は思いっきり喉の奥へと押し流した。

 

 

「かあぁーーっ、たまんねぇなぁ」

 

 

喉を焼くような炭酸の刺激と甘い冷たさが、暑さでやられかけていた体に染み渡る。これだから炭酸は身体に悪くても止められない。子供にとってのビールみたいなもんだネ。

 

 

 

一息吐いてフィールドに視線を移せば、俺のことなどお構いなしにバトルが進行しており、今は挑戦者がジムリーダーへの挑戦権を賭けてジムトレーナーと戦っているところだった。

 

 

「いけ、"ドリルくちばし"だオニドリル!」

「押し返すのです、ユンゲラー!"サイコキネシス"!」

 

 

上空から一気に急降下する挑戦者のオニドリルと、それを撃ち落とそうと迎え撃つジムトレーナーのユンゲラー。降下途中で"サイコキネシス"がオニドリルを襲い、一度その降下が止まる。

 

しかし、その攻撃を耐えたオニドリルは少しして降下を再開。攻撃直後で動きが遅れたユンゲラーに、回転しながら突っ込んで、ユンゲラーを弾き飛ばす。

 

 

「そのまま"おいうち"!」

「ユンゲラー、立て直して"れいとうパンチ"です!」

 

 

オニドリルはそのまま効果抜群の"おいうち"で追撃。対するユンゲラーはやはり効果抜群の"れいとうパンチ"でこれを迎え撃つ。

 

 

「ズズーッ…もぐもぐ……んぐ…ふむ、双方レベルはいい勝負ってところか」

 

 

観客達から上がる歓声の中、焼きそばを頬張りながら試合を観戦。ジムトレーナーたちの偵察を行う。挑戦者とジムトレーナーの実力は互角、やや挑戦者側が上かな。それと、ユンゲラーの"れいとうパンチ"はどこで覚えさせたんだろうね。まあ、ジョウトの技マシンを手に入れて使ったと見るのが自然か。

 

見ていて初代最も上手に三色パンチを扱えるポケモン・フーディンの記憶が甦って懐かしい気持ちになる。昔はタイプごとに物理・特殊判定がされてたから、かくとうタイプを差し置いて物理性能もやしのフーディンが最強パンチャーだったんだよな。バトルフロンティアでは大変お世話になりました。

 

もっとも、この世界では判定は技ごとになってるようなので、効果抜群でもダメージはそこまで見込めない完全な過去の遺物だが。

 

それはさておき、やはりポケモン協会の公認を巡って戦えるジムなだけあって、ジムトレーナーもそれなりの実力があるのは見ていて分かる。が、サカキさんとこ(トキワジム)キョウさんとこ(セキチクジム)ほどの怖さは感じない…かな。公認ジムとしての実績・経験の違いだろうか。

 

それにしても、この焼きそばは濃いソースの味付けが最高だな。出来立てホカホカでとても美味しい。こういう場所で食べるから余計にそう感じる。お代わり欲しい。

 

…ん?緊縮財政?お金は使う時には玉を砕くように思い切りよく使うべきものなのだよ。このマサヒデ、上手い飯と趣味、そしてポケモンたちのためならば散財も辞さない所存である()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も滞りなく試合は進んでいく。1試合、2試合、3試合…どうやらヤマブキジムの挑戦方式はまずギミックをクリアした上で、ジムトレーナーと戦って勝ち抜くスタイルの様子。使用ポケモンはエスパータイプ中心だが、時折ゴース・ゴースト辺りが紛れている。確か、ゲームでもそうだった。

 

難易度自体もやはりそこまででもなさそうで、勝ち抜いてジムリーダーへの挑戦権を入手出来ている挑戦者も、見ていてそれなりの割合でいる。保有バッジ数にもよるかもしれないが、しっかり準備すればジムリーダーまではトントン拍子でいけそうな印象だ。

 

あとはジムリーダー・ナツメがどうなのかってところだが、どうやらもう少ししたらジムリーダー戦があるらしいので、それを見れば大凡の実力は分かる…はず。

 

場所は第1フィールドと言うことで、移動が必要だ。落ち着いて観戦したいので、まだ試合途中だが席を確保しに動こう。

 

さあ、エスパーレディ・ナツメの実力は如何程のものか、然と見極めさせてもらおうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ナァッシィーーーッ!」

「パルシェン戦闘不能!勝者、ジムリーダー・ナツメ!」

『オオォォォーー‼』

 

 

 ジムリーダー戦は、ナツメの勝利で思いの外あっさりと終わった。試合終了の宣言と同時に、観客席から大きな歓声が沸く。試合前に席を確保するために早めに動いて空いた席を確保出来たが、それでも最終的に席はほとんど埋まってしまっていた。表情に乏しくエスパーレディなんて呼ばれて若干畏怖されているような印象を受けるナツメだが、美人なので何だかんだ人気はあるようだ。

 

肝心なポケモンの実力の方も、厄介な相手だと見ていて思うぐらいには強かった。

 

この試合で見れたのは、"リフレクター・ひかりのかべ"を貼り"みらいよち・サイコキネシス"で攻めるバリヤードに、"さいみんじゅつ"+"ゆめくい"で相手を封じつつ回復もしてくるスリーパーとナッシー。壁貼り・状態異常・時間差攻撃と、とにかく相手の好きにさせない戦い方って感じだ。キョウさんの戦法に近いものがあるように思う。エースと予想するフーディンは、その出番が来る前に試合が終わったため見ることが出来なかった。

 

俺もラフレシアがいるのでよく分かるが、ねむり状態はとにかく強い。ゲームで言うところの2ターン以上眠らせることが出来れば、本当に大きなアドバンテージになる。状況次第では、その1ターンが勝敗を決定的にすることも珍しくない。今日の仕合を見てナツメ戦を見据えるのなら、"さいみんじゅつ"への対策は必須になるだろう。

 

それと、"みらいよち"が思っていた以上に厄介かもしれない。ゲームでの性能は2ターン後にタイプ相性を無視してダメージを与えるもので、正直そこまで強い技ではなかった。しかし、この世界では時間経過で発動する攻撃で、問答無用で正確に相手のいる場所を撃ち抜いてくるので、絶妙なタイミングで発動して攻勢を頓挫させたり、立て直しを許さなかったりと、相手はかなり動きを制限されていたように見える。

 

 

 

 しかし、彼女を倒す上で本当に問題なのはそこではない。俺が感じた一番の問題は、ナツメが試合中に一切指示を出す素振りがなかったこと。それなのに、ポケモンたちは非常に戦略的に立ち回っていた。これはつまり…

 

 

「本物のエスパー…か」

 

 

…まあ、そういうことなんだろうね。テレパシーと言うか、言葉にせずともポケモンに指示を出せるという噂は耳にはしていたが、正直この目で見るまでは俺も半信半疑、ほぼ疑って掛かってる部分が強かった。でも、こういうの見せられると流石に信じざるを得ない方向に傾く。

 

そも、ゲームのポケモン世界には歴代エスパー使いのジムリーダー・四天王に、トレーナーとしてのサイキッカーと、割とエスパーな方々がいたので珍しいことではないのかもしれn…いや、んなワケあってたまるか。

 

何にせよ、指示を口にすることなくポケモンを意のままに操るというのは、一見何をやって来るか、何を狙っているのかが分かりづらいので、判断の遅れ・見逃しを招く要因になると感じる。実際、挑戦者も見ているだけで分かるぐらい戦い辛そうだった。

 

 

 

 

 周囲の興奮冷めやらぬ中、俺があれこれと考えている間に挑戦者と何か話をしていたナツメ。だが、話が終わったのか、ふと顔を上げると未だに声援を送る観衆に応えることなくフィールドを後にしようとしていた。

 

 

「………」

 

 

しかし、何故か途中で急に立ち止まると、急に振り返ってこちら、俺の居る辺りをジーッと見つめ、そして…

 

 

「………(ニタァ)」

 

 

…無言で笑顔を見せた後、今度こそフィールドを去って行った。何だったんだろう?ファンサービス?やっぱり美人だから絵になる姿だけど、凄い気味の悪さを感じるような薄ら寒い笑顔だった。『美しい花には棘がある』って言葉がパッと浮かんだ。

 

 

 

 

 

…待てよ?ゲームだと確かプレイヤーに対して「あなたが来るのはずっと前から分かってた」みたいなこと言ってたよな?つまり、彼女は未来予知も出来るってことで…もしかして、さっきの笑顔は本当に俺に向けられたもの?いやいや、流石にそれは自意識過剰…でも、まさかね…

 

と言うか、未来予知が出来るなら、その能力を使って例えば試合展開も予知出来るし、場合によっては相手が何考えてるかも読めるってことだよな?

 

…これは生半可な戦術じゃ簡単に破られたり、最悪逆手に取られてゲームセットなんて可能性もあるのか…エスパーやべぇな。

 

正直、スピアー・ストライク・サナギラスを軸にしてキュウコン辺りで状況整えればいけるって漠然と考えてたけど、思ってたよりずっと難しい戦いになるかもしれない。しばらく戦略の練り直しと特訓だな。ま、いつものことだネ。これらの課題を如何にクリアしてジムバッジを手にするか、トレーナーとしての腕の見せどころよ。

 

 

 

さあ、目指すぜ打倒ナツメ!

 

 

 

 

 




主人公、ついにヤマブキシティへ。そしてチラッとナツメさん。この作品世界ではちゃんとエスパーしてらっしゃいます。

それと、調べてみたらレアコイルって自力で10まんボルトもかみなりも覚えないんですよね…そして第2世代のレアコイルと言えばなロックオン+でんじほうも習得レベル高いっていう。結果、主人公の財布さんには何度目かのお亡くなりになっていただくことになりました。自由に戦力をカスタマイズ出来るようになるのはいつになることやら()

あ、あとこっそりとこの作品投稿し始めてから2年が経過しました。2年も続いたことを凄いと思うか、2年でこれだけしか進んでないことを嘆くべきか…
何はともあれ、読んで下さる皆さん、感想を寄せて下さる皆さん、いつもありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。

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