成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

55 / 84
第51話:灼熱の夏休み

 

 

 

 

 ヤマブキジムでジムリーダー・ナツメの試合を観戦してから一週間。俺は本格的にヤマブキジム攻略に向けて動き出した。

 

あの後もう何試合かナツメの試合を観戦したが、残念ながら挑戦者のバッジ数が少なかったためか、初回程のレベルのポケモンは出て来ず、得るものは少なく終わった。しかし、ナツメ攻略に向けて必要なピースは大体分かっている。"さいみんじゅつ"を撃たせないことと、如何にエスパー技を耐えるかということ。

 

1つ目に関しては、タマムシジム戦での対策と、キョウさんの時同様にキュウコンの"しんぴのまもり"でほぼ対処出来ると踏んでいるので恐らくは大丈夫。問題は2つ目。エスパータイプに耐性のあるポケモン、弱点を突けるポケモンがカントー地方は多くないため、シンプルながら悩ましい問題だ。

 

耐久面は同じエスパータイプで耐性のあるヤドンを戦力に組み込めれば、多少は改善出来るだろうか?あとはレアコイルで壁を貼るのもいいな。攻撃面ではスピアーに寄せる期待大。一度受け身になったら厳しいかもしれんが、エースとしての働きを期待している。

 

それと…もしもだがサナギラスをバンギラスにまで進化させることが出来れば、攻防両面で決定的な一手になり得る。以前から考えとしてはあったが、ナツメ戦においてあくタイプの存在は、試合前からこれ以上ないアドバンテージであることに変わりはなさそうだ。

 

…仮に進化まで持っていけても、制御出来るか分からんのが最大の不安要素な上、そもそも進化レベルの55まで、集中的に鍛えたとしてもどれくらいかかるのかが不透明なんだけども。

 

 

 

 

 

とまあ、いくら愚痴を零しても無い袖は振れない。なので、地道に鍛えてジム戦に備えるのが確実にして一番の近道…なんだけど、こっちもこっちで実は問題があったり。

 

俺は現在、ヤマブキシティ近郊にある大規模な総合運動場を特訓の地と定め、ジム攻略に向けて一週間ほどバトルに明け暮れている。ここは休日になればポケモンバトルを楽しむ多くのトレーナーで賑わう場所で、ヤマブキジム攻略を目指すトレーナーたちも特訓・調整の場所としてよく使っていることも事前に把握しており、レベルアップに丁度いい場所だと思っていた。

 

そして実際、ここに通ったこの一週間の間、確かに対戦相手がいなくて困りはしなかったし、安定して勝ちを手にすることも出来ている。しかし、こなした戦闘数に比べてレベルが思うように上がらないという問題に直面することになった。

 

どういうことかと言えば、俺の手持ちのポケモンたちは、現状その大半が30代後半~40代にレベルが乗ってきている。しかし、それぐらいのレベル域に到達出来るポケモンってのはそう多くないようで、そのレベル域に釣り合う丁度いい相手は中々いなかった。

 

詰まる話、相手トレーナーの実力不足と言うか、俺のポケモンと他のトレーナーとの実力差が明確になり始めてしまっている。そして、原作だとちょっと前…と言っても、2、3世代ぐらい昔になるが、その辺りから自分と相手のポケモンのレベルに応じて入手できる経験値が増減する仕様に変更になっていた。恐らくその原理がこっちでも働いているものと考えられる。

 

とりあえず、レベルが低めでヤマブキジム戦で中核戦力になり得るストライクを中心に戦いを繰り返してはいるが、とりあえずの目標としてぶち上げたレベル45前後に届くまで、1カ月掛かっても届くかどうか…

 

 

 

…まあ、それでも今は最初に言ったとおり地道にコツコツ積み上げる他ない。千里の道も一歩から。焦らずやって行こう。諦めなければいつかは届くさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 サカキさんから呼び出しが掛かったのは、強くなることに行き詰まりつつあったその矢先のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

 

 

 夜になって投宿先のホテルに戻ってすぐ、久方振りにポケギアに連絡が入った。電話に出ると、相手はサカキさんの秘書・セドナさん。用件はサカキさんからの伝言で、『話がある。明日支社ビルまで来るように』とのこと。何を言われるか恐々としつつも、断わる理由もないので大人しく了解し、翌朝俺は支社ビルへと向かった。

 

支社ビルではセドナさんが待ち構えており、着くなり早々とサカキさんの下まで連行されることに。

 

 

『コンコンコン』

「社長、マサヒデ君をお連れしました」

 

『分かった、入れ』

 

「失礼致します」

「…失礼します」

 

 

そうしてサカキさんが待つ応接室に通され、今に至る。話があるということだったけど、一体何だろう?また何か無茶振りを言われるのか?

 

 

「よく来たなマサヒデ。発電所での一件以来、1月近くになるか。ハナダジムを攻略したと聞いた。まずはおめでとう…と、言っておこう」

 

「ありがとうございます」

 

「今はヤマブキジムに挑んでいるのだろう?どうだ、進捗は。順調か?」

 

「えっと…ちょっと行き詰まっています」

 

「…ほう?」

 

 

最近どうだ?から始まったサカキさんとのお話。何言われるか分からない恐怖はあるが、同時にトップトレーナーに現状についてアドバイスを貰えるかもしれない好機でもある。ジム戦に向けてもう少しポケモンのレベルを上げたいが、中々思うように上がらず悩んでいることを包み隠さず話してみる。

 

 

「…なるほどな。レベルが上がり辛くなってきている…と」

 

「はい」

 

 

俺の話を聞いたサカキさんは、少し考え込むような素振りを見せる。

 

 

「…一つ聞こう。マサヒデ、今のポケモンたちのレベルは?」

 

「40に近いか、超えているメンバーがほとんどです」

 

「フッ…ハハハ…!そうか、既にそんなところまでいったのか…!」

 

 

一部例外の奴もいるが、俺が手持ちポケモンの大まかなレベルを答えた所、サカキさんは急に笑い出した。

 

 

「それはレベルも上がり辛くて当然だ。ほとんどが40にもなれば、市井のトレーナーやそこらの野生ポケモンでは相手になるまい。ハハハ」

 

「…ですよねー」

 

 

…まあ、ゲームでの仕様から何となく察しは付いていたが、やっぱりそうだよなぁ。

 

 

「だが、言い換えれば順調に実力をつけていることに他ならん。発電所の時にも感じてはいたが、トキワシティを旅立って半年ほどでそこまで辿り着いているか。オマエを見ていると退屈しないな、良い意味で予想を外されるばかりだ」

「あ、ありがとうございます…」

 

 

いやあ、褒められるっていうのはいくつになっても良いものだ。相手がサカキさんでなければの話だけども。

 

 

「まあ、話は分かった。もしヤマブキジム、そしてニビジムと制覇してトキワシティまで帰って来れたのなら、鍛える場所については何とかしてやる。それまでは自分であれこれと悩み、挑戦してみることだ。人間、何事もやってみるのが上達の近道だ。若い内はなおの事…な」

 

「…分かりました、ガンバリマス」

 

「フッ…さて、それで今日オマエをここに呼んだ本題に入ろうか」

 

「…!」

 

 

…来た。今まで圧倒的な力の暴力で俺を扱き倒すのみならず、やれ調査の手伝いしろだの、やれ使い走りしろだの、やれ暇潰しに付き合えだの、あれこれとやってきた実績を持つサカキさんの今日のお願いという名の命令だ。毎回毎回何言われるか気が気じゃないんだよな…ホント。

 

さあ、何を言って来るんだ、この悪の首魁は。あ、でも強化について何か考えてくれるみたいなのは有難…いや、もしや真っ当な方法じゃない可能性も…?

 

 

「そんなに身構えなくてもいい。単に夏休みの誘いだ」

 

「…夏休み、ですか?」

 

「ああ。会社の福利厚生…会社で働く部下たちへの日頃の労いも兼ねて、旅行を計画した。わたしも参加するが、ちょうどいい時期に近くにいたので、オマエもどうかと思ってな。ポケモンバトルに明け暮れるのもいいが、たまには羽を伸ばすのも悪くは無かろう」

 

 

…身構えていたら、夏休みのお誘いでした。拍子抜けした。

 

そうか、こうやって旅していると気にすることもないけど、世間一般的には夏休みの時期だもんなぁ。セキチクシティでも、滞在の最後の方はアンズ以下のセキチク忍軍の皆さんと毎日何かやってたけど、そうか、アレもアンズたちが夏休みだったからこそ出来たのか。

 

それにしても、旅行ねぇ…俺としては毎日が旅行してるみたいなもんだけど、気分転換には丁度いい…かな?

 

 

「そうですね…誘ってもらえるのは嬉しいのですが、自分が参加してもホントに良いのですか?」

 

「世の子供たちはちょうど夏休みの真っ只中。保護者として、オマエに休みを取らせることも必要だろう。子供の1人や2人、連れて行くことぐらい何の問題もない。それに、旅行中に頼みたいこともある」

 

 

頼みたいこと…あ、拍子抜けさせといてのまさかこっちが本命か!?

 

 

「えっと…その頼みたいことっていうのは一体…?」

 

「難しいことではない。今回の旅行は部下たちの休暇を兼ねるものだが、同時にビジネス絡みのスケジュールも一緒に組み込んでいる。その関係で、旅行中に私が離れる時間がある。その間、息子の相手を頼みたい」

 

「息子さんの相手ですか…」

 

「ああ。名前はシルバーと言う」

 

 

息子の相手…サカキさんの息子………シルバー、ね。これはゲームのデフォルト通りか。まあ、レッドさんとグリーンさんの事も考えれば、自然なことか。とりあえず思ってたよりはまともなお願いだったので、ちょっと胸を撫で下ろす。が、シルバーの相手…どうしたもんかな。

 

 

 

 シルバーと言えば、第2世代におけるライバルであり、ゲームではロケット団解散に絡む父親への失望から、世界最強のトレーナーを目指すようになったという。

 

平然と主人公を突き飛ばす等暴力を振るい、ウツギ研究所やタンバシティなどで他人のポケモンを奪い、ポケモンに対してもかなりキツく当たっている節が窺える等、強くなるためなら手段は選ばない面がある。挙句の果てにはロケット団を嫌うあまり、女主人公であろうと容赦無く服を剥いてしまうという、かなりヤンチャな少年である。イイゾモットヤレ。

 

思えば、ウツギ研究所の件では警察に通報されてたはずなのに、よくもまあ最後まで捕まらなかったもんだわ。

 

 

「年齢も少し年の離れた兄弟ぐらいだ。弟でも出来たと思って、相手してやってくれ」

 

 

日本でもこっちでも一人っ子な俺にいきなりそんなこと言われても、ねぇ?

 

まあ、受けるしかないんだけど。年齢的には多分、小学校1年生ぐらいか?流石に今はまだそこまで拗らせてはいないだろうし、適当に遊びに付き合ってやってれば何とかなるっしょ。

 

 

「…分かりました。ところで、その旅行の出発と日程はどうなっているんです?」

 

「出発は明後日の夕方6時、5泊7日を予定している」

 

「5泊7日…」

 

 

5泊7日ってことは、移動にめっちゃ時間が掛かるってことですよね。それってつまり…

 

 

「行先は海外だ。故に…セドナ、用意はしてあるな?」

 

「はい、社長。…マサヒデ君、これを」

 

 

そう言ってセドナさんが俺の前に置いたのは…パスポートか?日本の頃も含めて海外未経験だから、よく分からん。

 

 

「…そういうワケだ。明後日の夕方4時に頃に迎えを寄越すので、準備しておくように」

 

「いや、あの…準備と言われても、何を準備すれば…」

 

「ほとんど会社の方で準備はしている。オマエは遊び道具と着替え、あとは機内で時間を潰せる物でも用意しておけばいいだろう…ああ、それと向こうに滞在する間、手持ちポケモンの入れ替えは出来ん。連れて行くポケモンは選抜しておけ」

 

「わ、分かりました」

 

 

幸い、そこまで準備は必要なさそうだ。ただ、ポケモンの入れ替えが出来ない、ね…どうしようか?スピアー・サンドパン・サナギラスは確定として、弱点を補うならラフレシア・キュウコン・レアコイルってところかな?或いはキュウコンに変えてストライクってのもあるか?それか、育成も兼ねてヤドン・コイキングを連れて行くのも…でも、それだとドガースとラッタが可哀想な気も…むむむ。

 

 

「…社長、お時間が」

 

「む、少しゆっくりし過ぎたか。ではマサヒデ、私は次の予定があるのでこれで行く。まあ、連れて行くポケモンはのんびり決めるといい。2日後にまた会おう」

 

「え…あ、はい」

 

 

そうして俺が悩んでいる間に、サカキさんは何処かへ行ってしまった。まあ、サカキさんの言う通り時間はあるんだから、ゆっくり決めようそうしよう。

 

こうして、サカキさんの後を追うように俺はTCPヤマブキ支社を後にした。

 

 

 

 

 

…そう言えば、何だかんだで行先を聞きそびれていたな。海外って言ってたから、ジョウト・ホウエン・シンオウではないと思う、日本的に考えて。モチーフが近畿・九州・北海道だし。

 

となると、イッシュかカロスか…夏の旅行って考えれば、最有力はハワイがモチーフのアローラか?常夏のリゾートで至福の一時をってね。アローラなら海、海と言えば海水浴。海パンを用意した方が良いかな?

 

あ、それにもしかしたら現地のポケモンも捕まえられるかもしれない。アローラならベトベターかミミッキュ、イッシュならコマタナ、カロスならヒトツキ辺りを捕まえられればヤマブキジム攻略に繋がる可能性大だ。それに、まだ知られてない技を使っても「別地方のポケモンですから」で押し通せるかも。夢が広がるぜ、うはははは。

 

…今挙げた奴ら、ミミッキュ以外サカキさん相手にする時は全員お荷物になりかねないのは気にしない方向で。いや、ヤマブキジム対策に拘らないで、好きなポケモンを捕まえていけばいいんだ。俄然やる気が出るぞー。

 

 

 

…ところで、シーズン真っ只中にジムリーダーが1週間もジムを空にして問題無いのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、ホテルに戻った俺は早速連れて行くポケモンについてあれこれと考えた。そうして悩みに悩んだ挙句、「別に全員連れて行きゃいいじゃん」というハーレム理論に行き着いた。バトルに使えるのは6体までで、ポケセンだと7体以上いっぺんに預けると余計な金取られるけど、持ち歩き・連れ歩きはNGじゃないもんね。そも、仲間外れは可哀想だぜ。

 

連れて行くポケモンについて脳内論争に終止符を打った後、来たる旅行に向けた準備に動き出した。トレーナー必需品セット(ボール・傷薬・状態異常回復アイテム)は勿論の事、シルバーの相手をすると言うことで簡単な遊び道具を幾つかと、飛行機内での時間潰し用に本と雑誌を幾つか、アローラを想定して安物の海パンとゴーグルを一丁。

 

何にせよ、サカキさん案件であることを差し引いても旅行は楽しみだ。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿保なら踊らにゃ損損。どうせ逃げられないんだから、楽しめるだけ楽しまなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…しかし、現実は俺が考えるより甘くないということを、旅行当日になって叩き付けられることになろうとは、この時はまだ夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

----

 

---

 

--

 

 

 

 

~2日後・ヤマブキシティ国際空港~

 

 

 

 

「お疲れ様です、サカキさん」

 

「ああ、御苦労」

 

 

 言われた通りの時間に迎えに来た社員の人に連れられてやって来たのは、ヤマブキシティ郊外にある国際空港。ゲームでは影も形もなかったが、"国際"の名前を付けられるだけのことはある、とても大きな空港だ。

 

この後いよいよ、旅行先に向けて俺は機上の人となるのだ。

 

 

「どうだ、昨日はよく眠れたか?」

 

「その…楽しみで中々寝れませんでした…」

 

「フッ…まあ、シルバーもそうだったようであるし、子供は皆そういうものなのかもな。オマエにもそういう子供らしいところがちゃんとあって安心している」

 

「あはは…」

 

 

既に多くの社員さんたちと一緒に時間が来るのを待っていたサカキさんに挨拶し、俺もその一群に加わる。

 

実は日本にいる頃も含めて、子供の頃には何度か飛行機を利用した記憶はあるのだが、大人になってからの飛行機はこれが初めて。旅行と合わせてテンション上がりっぱなしだ。やっぱり男の子ってのは乗り物が好きなんだよ。

 

 

「…そう言えば、すっかり聞きそびれていたんですが、旅行先ってどこなんです?」

 

「旅行先?ああ、伝えてなかったか?この後、私たちはイッシュ地方のライモンシティ国際空港へ向かう」

 

「イッシュですか…!」

 

 

おっと、アローラが大本命だったんだが、外してしまったか。ライモンシティと言えば、遊園地やら超巨大なスタジアムなんかがあったな。ジョインアベニューっていうトレーナーの手で育つ大型商業施設もあったが、あれは確か続編になって完成した場所だったはず。今は流石にないだろう。何にせよ、思いっきり遊ぶならうってつけの都市ってことだけは間違いない。

 

 

 

 

…ん?ライモンシティの遊園地?……遊園地と言えば、観覧車……夏…やまおとこ……うっ、頭が…()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その後、飛行機を乗り継いでオーレ地方のフェナス空港へ向かう」

 

 

思い出すべきではない何かを思い出しそうになって急な頭痛に襲われた所に、サカキさんはさらっと追加で何か言った。おかしいなぁ…予想もしてなかった地名が聞こえたような気がしたんだが、俺の耳がバグったのかな?

 

 

「……え?あ、あの、ちょっとよく聞き取れなかったのでもう一度お願いします」

 

「ライモンシティ国際空港到着後、乗り継いでオーレ地方のフェナス空港へ向かう、と言った」

 

 

この人は今何と言った?ライモンで乗り換えて…フェナス?……フェナス!?オーレ地方のフェナスシティか!?ちょっと待って、イッシュで夏休みじゃないのかよ!?折角の夏休みだろ!?もっといい場所あったろ!?何で…何で……

 

 

 

 

何でよりによってオーレ(そこ)なんだよおおぉぉぉーーーーッ!?

 

 

 

 

そんな絶望感を凝縮した俺の魂の叫びは、どこまでも青く澄んだ果ての無い大空に吸い込まれるように、ただ空しく溶けていった。いやまあ、心の中での話であって、口にはしてないんだけども。

 

とまあ、まさかまさかの大どんでん返し。イッシュ地方で楽しい夏休みかと思ったら、オーレ地方で地獄の夏休みだったでござるの巻。

 

いや、まあ、確かにオーレ地方ってアメリカのどっかの州がモデルって言われてたのは覚えてるから、海外ではあるんだろうけどさ…オーレと言えば、ポケモン世界でも異質な超絶治安が悪い地域だぞ。もうこの時点で不安しかないんですが。悪の組織もロケット団以上に蔓延ってたはずだし。と言うか、下手したらスナッチ団にポケモン盗られるんじゃ…?やべぇ、一気に行きたくなくなってきた。

 

急な腹痛で断って帰ろうかという考えが一瞬脳裏を過ったが、そんなことを言える勇気は俺にはなかった。

 

 

「あの、何故オーレ地方を…?」

 

「仕事絡みだ。向こうの取引相手に招待を受けてな。砂漠の中にある水の都で、中々美しい街だそうだ。ちょうどいいと思い、社員旅行も一緒に組み込ませてもらった」

 

 

なるほどなるほど…おのれオーレの取引相手とやら。余計なことを…

 

…ところでサカキさん、その取引相手というのはスナッチ団、もしくはシャドーという名称の集団だったりはしませんでしょうか?聞けるワケもないし、聞いたところでどうにもならないけど。

 

 

「フェナスシティで1泊、翌日北に離れたアゲトビレッジという街に移動して3泊。その後フェナスシティに戻って帰国の流れだ。アゲトビレッジはオーレ地方では貴重な自然の多い、避暑には最適な場所だそうだ。まあ、オーレ地方自体が夏休みで行くには少々熱いかもしれんが」

 

 

あ、アゲトビレッジか。なら安心……出来るのか?出来ないよねぇ…パイラタウンって言われるよりはずっといいけど、オーレ地方ってだけでもう…

 

それとサカキさん、少し熱いって言うか、灼熱の間違いでは?あの地方、ほとんど砂漠だったような記憶が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…何はともあれ、既に決まってしまったことをひっくり返す時間は残されていない。かくして俺の【地獄の夏休みINオーレ地方】は幕を開けた。

 

そして一時的ではあるが、またしても俺は目的を達することなくヤマブキシティに別れを告げることになった。ああ、さらば近くて遠い街・ヤマブキシティ…

 

 

 

 




はい、というワケで次回から数話、夏休みと称してオーレ地方灼熱のバカンスに1名様ごあんな~い。なお「オーレってどこだよ?」って方は【ポケモンコロシアム】で検索だ。歴代ポケモンシリーズでもトップクラスの攻略難易度を誇る地方ですぜ()ちなみに作者は無印はプレイしてますが、XDは未プレイですので、無印に出て来る人物、街しか出しません。御了承を。
そしてサラリとBWのトレーナー諸氏のトラウマを添えつつ、またしてもお預けのヤマブキシティェ…作者、そろそろナツメさんにサイコキネシス撃たれそうな気がする()

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。