成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

56 / 104
第52話:科学の力ってすげー!

 

 

 

 

 オーレ地方…ポケモンシリーズの外伝的な作品である【ポケモンコロシアム】及びその続編【ポケモンXD〜闇の旋風ダークルギア〜】にて物語の舞台となる地方だ。アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックスがモデルと言われ、西部劇のような荒涼とした風景が広がり、ダークでアダルティな雰囲気が漂う歴代ポケモンシリーズの中でも異質な作品であり、同時にこの作品特有の仕様なども相まって、発売から20年近く経過した今なおシリーズ最高クラスの難易度を誇ると言われる。

 

オーレ地方はその大半を広大な砂漠が占める不毛の大地であり、その過酷な自然環境のせいか、野生のポケモンがほとんど生息していないという他の地方にはない特徴がある。このことから分かるように、オーレ地方での新戦力調達はほぼ絶望的と言っていい。原作主人公たちは後述する特殊な方法で仲間を増やしていたが、物理的にも倫理的にも俺には不可能だ。

 

また、ポケモンジムやポケモンリーグについて作品内で言及がなかった辺り、そういった施設は存在しないものと見える。代わりに各地にコロシアムが存在し、ここを勝ち抜くことで賞金を稼ぐことが出来るようになっている。

 

ポケモンシリーズに登場する地方の中でも治安は最悪レベルで、アローラ地方のポータウンなど比較にもならない怪しげな連中が跳梁跋扈するパイラタウンという街や、その地下に広がるアンダーのように悪の組織が全てを取り仕切っている街も存在する。

 

その悪の組織というのが【シャドー】と呼ばれる秘密結社。【ダークポケモン】と呼ばれる人工的に心を閉ざさせることで凶暴な戦闘マシーンへと改造したポケモンを生み出し、その力を利用して世界征服を企む組織だ。正体を隠して公職に就いている者もいたりと、オーレ地方への浸食度合いは高い。個人的な認識としては、行動理念はロケット団、地方浸食率はカロス地方のフレア団に近い印象。

 

コロシアムシリーズ本編では、このシャドーを壊滅させることと、全てのダークポケモンをスナッチ…強奪し、閉ざされた心を取り戻し解放することが大きな目標となる。

 

また、もう1つ別に【スナッチ団】と呼ばれる悪の組織も存在する。スナッチマシンと呼ばれる特殊な装置を用いて、相手のポケモンを強奪してしまうポケモン窃盗団だ。そしてこのスナッチ団の、そして物語の根幹を成す重要な装置が【スナッチマシン】だ。これ、実はシャドーが開発・提供したものであり、スナッチ団はシャドー傘下の実働部隊という一面も持っている。なので、スナッチ団が奪ったポケモンはシャドーに流されているものと考えられる。

 

なお、続編のXDではシャドーから手を切られてしまい、逆に主人公サイドに協力する味方になっているらしい。未プレイ故によく分からないけど。こちらはアローラ地方のスカル団のような立ち位置が近いだろうか。やってることは完全に犯罪だが。

 

コロシアムの主人公はこのスナッチ団の団員で、ゲーム開始冒頭で組織を裏切り、腕に装着可能な小型スナッチマシンを奪って逃走するところから物語は始まる。元々は凄腕のスナッチャーだったとのことだが、何故スナッチ団を裏切ったのか、ついでに過去の経歴とか、どこでパートナーのエーフィ・ブラッキーと出会ったかなど、謎の多い人物である。なお、歴代主人公の中で唯一の青年と呼ばれるような年齢であることが分かっている。あとイケメン。そして、スナッチマシンを搔っ攫った後にアジトを爆破しており、やらかした内容はブッチギリのヤベー奴である。

 

 

 

…以上が、オーレ地方の簡単な解説になる。大雑把にまとめると…

 

・治安最悪

・環境過酷

・戦力調達ほぼ不可能

・ヤベー奴らしかいない

 

…俺が行きたくないと思う理由、御理解いただけただろうか?正直行くメリットが全くと言っていいほどないのである。

 

 

 

 そんなオーレ地方最大の都市であるフェナスシティ近郊のフェナス国際空港に、ついに俺たちが乗る飛行機は降り立った。日暮れの迫る夕方にヤマブキシティを発ち、ライモンシティでの乗り継ぎを合わせて、片道半日以上を掛けてのフライト。機内で一眠りしたとはいえ、疲れが抜けきっていない気怠さを覚えながら、案内に従ってシートベルトを外し、席を立って機外へと向かう。

 

外に出ると、待っていたのはカラッカラに乾いた空気と照り付ける太陽、砂塵を巻き上げ吹き付ける熱風の出迎え。遠く離れた異国の地にやって来たことを実感させてくれる。

 

そのままタラップを下りると、他の皆さんと集まり、一緒にターミナルへ。荷物を受け取った後、手配されていたバスに乗り込み、今日の宿泊先へ直行となった。

 

 

 

 宿泊先のフェナスグランドホテルに荷物を預けたら、その後は自由にフェナスシティ観光の時間。色々と出鼻を挫かれるような事実が浮かび上がったりしたが、折角の旅行に変わりはない。フェナスシティと言えば、砂漠の中に広がる水の都として有名なようで、実際とても美しい街並みが広がっている。異国情緒も十分で、暑さは気になるところではあるが、十分に楽しませてもらえそうだ。

 

さあ、見せてもらおうか、オーレ地方の実力とやらを…っと、冗談はほどほどにして、のんびり楽しませてもらうとしよう。

 

しかし、右も左も分からない異国の地を子供が1人でウロチョロするなど自殺行為。ましてやここはオーレ地方。いくらフェナスシティが比較的安全な街とは言っても、そんなことをすれば危険極まりない。

 

 

「というワケで、今回坊主の面倒を見ることになったラムダだ。よろしくな」

 

「アッハイ、よろしくお願いします…」

 

 

…と言うワケで、サカキさんからお目付け役として付けられたのが、まさかのHG・SSでロケット団幹部として登場したラムダのおっさん。ヒョロ長垂れ目で紫色の髪と顎髭がトレードマークの変装の達人だ。ゲームだとドガース系統6体使って来るので印象によく残っている。

 

これでゲーム絡みのロケット団関係者で会ったことないのはランスだけだな。ロケット団ビンゴにリーチだ。やったぜ()…一応例の2人組もゲームにいた事あるけど、どうなんだろうね?

 

とまあ、正直あんまり嬉しくない新たな出会いもありつつ、長旅の疲労を癒しながらのんびりとフェナスシティを回っていく。

 

 

「ほぇー、ラムダさんって普段はあちこち飛び回っていらっしゃるんですか」

 

「おう。おかげで中々家に帰れなくてな、今の坊主みたいに街から街への根無し草だぜ」

 

 

とは言え、何か目的があって回るわけでもないので、ラムダのおっさんと無駄口を叩きながらの観光となった。聞くところによると、各地の取引先への挨拶や交渉、調整何かに駆け回っている敏腕ネゴシエーターなんだとか。自分で言ってる辺り、どこまで信用していいかは微妙なところだけど。幹部にまでなってるんだから相応の実績・能力があるってことだよな…

 

実際、話してみたラムダのおっさんは気さくで陽気で親切そうなおっちゃんって感じだった。喋り口も軽妙でアポロさんとかと比べると非常に取っ付き易い。そういう意味では、優秀なネゴシエーターらしさの片鱗は垣間見える。

 

 

「そりゃ大変っすね。奥さんなんかも心配されてるんじゃ?」

 

「はっはっは…おう坊主、その話題は二度と口にするんじゃねーぞ」

 

「アッ、ハイ…」

 

 

あと、女性の話題はNGっと。女に縁が無いのか、それとも逃げられたか…とりあえず、ラムダのおっさんが同士ということは分かった。ロケット団員なので信用は出来んけど。

 

 

 

 日が暮れた後はホテルに戻り、全員集まって大広間での賑やかな会食が待っていた。そして、この時初めてシルバー少年と顔を合わせることに。

 

 

「マサヒデ、私の息子のシルバーだ」

 

「あ!あの時のちっさい人!」

 

「…はい?」

 

 

どう声を掛けたものかと悩んだのも束の間。どうも、以前タマムシシティに滞在していた時期にシルバー少年は俺を見ていたことがあったらしく、思いの外あっさりと話は弾んだ。

 

 

「にーちゃん、これ美味ぇな!」

 

「ああ、うん、せやね…」

 

 

そして、気付けばいつの間にか隣の席でお子様ランチを食べているシルバー少年。その近くにはサカキさんと副社長も控えて目を光らせているので、色々と気が気でない。早く終わってくれ…

 

とりあえず、現在のシルバー少年は原作の捻くれっぷりは微塵も感じない、天真爛漫な腕白少年。まあ、こんな歳からあんなに捻くれられてても、サカキさんも困るわな。

 

この穢れを知らぬような少年も、いずれはあーんなことになってしまうのか…まあ、ロケット団解散後は父親が目の前で蒸発。原作での描写はないが、恐らく社会的にも苦しい生活だったであろうことは想像がつく。あそこまで性格が歪んでしまうのも無理はないのかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

勝手にシルバー少年の行く末を案じつつ、宴会は終了。その後、彼が眠くなるまで遊びに付き合って、旅行初日は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

~オーレ地方2日目~

 

 

 

「それでは参りましょう!本日の第一試合、ガイラー選手vsセクスビー選手!」

『ワアァァァーーーーー‼‼』

 

 

 オーレ地方2日目。この日は朝からフェナスコロシアムでオーレ地方のポケモンバトルを観戦。

 

 

「試合開始ッ!」

 

 

審判の合図とともに、両トレーナーがボールを2つずつフィールドに投げ入れ、4体のポケモンが向かい合う。第3世代で初めて登場した戦闘方式・ダブルバトルだ。

 

 

「「「おお…ッ」」」

 

 

その様子を見た一緒に観戦している皆さんから、驚きの混じった歓声が上がる。

 

カントー地方では全く広まっていないが、ここオーレ地方ではダブルバトルが主流。シングルバトルでは活躍の難しいポケモンが幅を利かせていたり、シングルバトルの戦術が通用しなかったりと、シングルバトルとはまた違う戦略が求められる。

 

そして、コロシアムシリーズに出て来るユニークNPCは、"あまごい+すいすい・あめうけざら"、"ふゆう+じしん"、"まもる+だいばくはつ"、"スキルスワップ+ケッキング"、"いかくサイクル"などなど、何らかのコンセプトに沿ったパーティ構築・技構成が為されている。その多くは3世代当時の第一線、ものによっては現在でも通用するレベルの戦術であり、コロシアムがシリーズ最難関と呼ばれる要因の1つとなっている。

 

 

「おおー、2体同時か!すげー、すげーぜ父ちゃん、母ちゃん!」

 

「ああ、そうだな…ふむ」

 

 

近くに陣取っているサカキさん一家も、シルバー少年は(多分)初めてのダブルバトルに大興奮。サカキさんも副社長も興味深そうに試合を見つめている。俺もダブルバトルを実際に見るのは初めてなので、周りの熱気にも充てられて若干興奮気味だ。

 

実際にダブルバトルをすることになったとしたら、戦術構築は勿論のこと、2体同時かつより広い範囲を見る視野が求められるのだろうか。やっぱ勝負事だから、1体でも神経使うんだよね。それに俺自身元々はシングルバトル一本だったこともあって、中々慣れられない…かも。

 

まあ、こればっかりはやってみないと分からないかな。案ずるより何とやら…って言葉もあるし。

 

 

「行ってこい、グラエナ!」

「グァルルル…バウッ!」

 

 

そして、トレーナーの片方が出してきたポケモンを見て、周りの皆さんが再び小さく歓声を上げる中、俺は1人感激していた。

 

 

「おお、グラエナ…ホウエン地方のポケモンじゃあないですか…!」

 

 

ポケモンコロシアムは第3世代の作品。当然、登場するポケモンにはカントー・ジョウトのポケモンは勿論、まだ見たことのないホウエン地方のポケモンも含まれている。

 

グラエナはR・Sにおいて最序盤から捕獲出来るポチエナの進化形。旅パで使っていたことも多々あり、見た瞬間に感動と懐かしさが込み上げてきた。オーレ地方じゃ捕まえられないのが惜しい。

 

 

 

…ところで、野生ポケモンがほとんどいないのに、オーレ地方の人たちってどうやってポケモン捕まえてるんだろうね?他地方からの輸入か?それとも、貴重なはずの野生ポケモンを捕まえてる?オーレ地方のポケモン事情は少し気になるところ。

 

 

 

 

 

 

 

 コロシアム観戦終了後、昼食を取ってから次の予定に向けて移動が始まる。今日はこの後、取引先の施設を見学し、そのままアゲトビレッジへ向かう予定との説明があった。

 

アゲトビレッジは出発前にもサカキさんが言っていた通り、オーレ地方においては珍しい緑が残る山裾の村。コロシアム主人公の旅のパートナーの祖父で、かつてオーレ地方で伝説のトレーナーとして名を残したローガンを始め、若い頃はトレーナーとして第一線で活躍した人々が、のんびりとした隠居生活を送っている。

 

また、このアゲトビレッジの奥に広がる聖なる森には幻のポケモン・セレビィが住んでおり、聖なる森に繋がる洞窟を抜けた先にある祠では、ダークポケモンをリライブ…通常のポケモンに戻すことが出来るという、とても重要な役割がある。

 

それはさておき、山・川・森とあるので、確かに夏休みを過ごすには最適な場所かもしれない。

 

 

 

しばらく砂の黄色と空の青色しかない風景の中、砂塵を巻き上げて走るバスに揺られていると、もうすぐ目的の取引先の施設に到着するというアナウンスがあった。

 

事前の説明ではポケモンに関する様々な研究を行っている施設ということで、どこの世界、どこの地方でもやっぱりポケモン研究は盛んなんだなぁ…とか、何となしに思っていたんですよ。出発前は。

 

しかし、この何もない延々と続く砂漠の中を走っていて、いきなり「もうすぐ到着です」とか言われると、原作をプレイした経験のある身としましては一抹の不安が過るワケですよ。「そういや、ゲームに砂漠の中にポツンとある研究施設があったなぁ…」って。

 

そして、得てしてこういう時の嫌な予感ってやつは結構当たってたりするもので…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそオーレ地方、そして我がシャドーポケモン研究所へ。職員を代表して歓迎します、Mr.サカキ」

 

「こちらこそお招きいただき感謝する、Mr.ジャキラ」

 

 

 

…おうおうおう、初っ端からブッ込んで来てくれるじゃないですか、ねえちょっと、サカキさぁぁぁぁーーーん‼やぁっぱり取引先ってシャドーじゃねぇッスかああぁぁぁぁーーーッ!?

 

そんな心の叫びを何とか抑え込んで、サカキさんとにこやかに挨拶を交わす相手の姿を確認する。特徴的な紫色のボディスーツ、白髪長身で赤い目をした偉丈夫…うん、ボディスーツの上からスーツを着込んでこそいるけど、どこからどう見てもジャキラです。本当にありがとうございました。

 

このジャキラという人物、何を隠そう件の悪の組織シャドーの幹部であり、他の4人の幹部を束ね指揮する司令塔、幹部の中の幹部なのである。ゲームではストーリー序盤に一度、ただならぬ雰囲気を匂わせて主人公の前に現れ、その後ストーリー最終盤、シャドー本拠地であるラルガタワーに乗り込んだ主人公の前に、ラスボスのような風格を漂わせて立ちはだかる。なお、ラスボスではない模様。

 

 

 

「こちらは当研究所の所長、ボルグ」

 

「お会い出来て光栄です、Mr.サカキ。本日は私が皆様の案内をさせていただきます」

 

「うむ、よろしくお願いする。Dr.ボルグ」

 

 

 

そして、今日の案内役として紹介された白衣っぽい服装にサングラス、オールバックで…サイドテール?な長身の研究者風の男・ボルグ。こちらもシャドー幹部の1人であり、ダークポケモンに改造された準伝説ポケモン、ジョウト三犬が一角・ライコウを使って来る。と言うか、シャドーの幹部は皆さんエンテイ・スイクン・ライコウ・メタグロス・バンギラスと、ダークポケモン化された強力なポケモンを手持ちにしている。

 

 

 

 

 

…ウソッキー?あれはトレーナーの方が準伝説相当だから…

 

…唯一神?嫌な…事件だったね…

 

そしてよくよく見てみればこの研究所、ゲームに出て来たシャドーのダークポケモン研究所とそっくりな気がしますねぇ…気付きたくなかったなぁ…

 

 

 

 

 

…何にせよ、サカキさんの言っていたオーレ地方の取引相手っていうのが、シャドーであることはこれではっきりした。関わりたくねぇ…でも、たかが子供にはどうしようもないのが現実。早く強くなって、何者にも縛られることのない自由を我が手に…!

 

そんな何度したかも分からない決意を胸に、ボルグの案内に従って、俺たち一団は研究所内へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

 シャドーの研究所とは言え、ダークポケモンのことさえ知らなければ、一見普通の研究所との差は大してない。そして、そんな超重要機密であろうダークポケモンのことについて、そんなベラベラと喋るはずもなし。

 

時折ダークポケモン絡みともとれる内容が所々に見え隠れする解説に心中穏やかではなかったが、それ以外は特に取り留めて気にするような解説もなく、研究所内部の施設や実験について、ボルグや研究所員の解説を聞きながら見学は進む。

 

 

 

「…以上のように、当研究所ではポケモンの生態やDNA…遺伝子情報などから、ポケモンが持ちうるあらゆる可能性について、日夜研究を続けているのです」

 

 

 

今はガラスで仕切られた実験室と、そこに設置されている何かの実験装置を前に、ボルグの解説を聞いているところ。何か、進化の可能性がどうとか言っていた。

 

 

 

「では、ここで我々が発見したポケモンの可能性についての成果を1つご覧いただきたいのですが…時にMr.サカキ、ポケモンの中には特殊な条件…特定の道具を使うことで進化するポケモンがいることはご存知でしょうか?」

 

「それは、進化の石のことか?当然知っている」

 

「では、交換マシンを使用した他者との交換を経て進化するポケモンのことは?」

 

「無論だ。カントー地方のポケモンで言えば、ユンゲラーにゴーリキー、ゴーストにゴローン…だったか」

 

「流石です。そして、ここからが本題なのですが…我々は研究の結果、その2つを組み合わせたような、さらに特殊な条件で進化するポケモンがいることを突き止めたのです」

 

「ほう…?」

 

「これは実際にご覧いただいた方が良いかと思います…オイ、用意は出来ているな?」

 

「はっ、いつでもいけます」

 

「よろしい。では皆様、あちらをご覧ください」

 

 

 

そう言って示された先、ガラスの向こうの実験室を見ると、研究員に連れられて1体のポケモンが実験室へと入ってきていた。

 

 

 

「ラァイ!」

 

「…ストライク?」

 

 

 

そのポケモンは、俺もよく知るストライク。研究員の指示に従って、室内で素直に待機している。とても大人しいその姿には違和感が…いや、俺が普段見てるアレが酷いだけか。何故俺のストライクはああなのか…

 

従順なストライクの姿に正体不明の感動のようなものを覚えていると、研究員たちはストライクの身体に慣れた手付きで金属で出来た何かを装着させていく。

 

今までの話から察して、これはもしや…

 

 

 

「今、このストライクに装備させたのは"メタルコート"という特殊な金属です。そして、後ろにあります装置を起動することで、疑似的にこの実験室内に交換マシン内の環境を再現します」

 

 

 

おおお…!通信交換進化、それもハッサムか!?

 

 

 

「では、起動しろ」

「はっ」

 

 

 

研究員がレバーを引くと、「ブゥゥゥ…ン」と重い音とともに機会が作動。

 

 

 

「ラァイ…!」

 

「「「おおっ!」」」

 

 

 

そのまま固唾を飲んで様子を見守っていると、予定通りにストライクが光りを放ち始める。進化時特有の現象だ。周囲からは小さく歓声が上がる。

 

その間にも光に包まれたストライクの輪郭が徐々に変化していくが、その変化も10秒足らずで完了。

 

 

 

「…ッサム…!」

 

 

 

光が霧散すると、そこにはストライクよりも幾分かスマートで、くすんだ赤いボディが特徴のハッサムの姿が。ストライクは無事進化を遂げていた。

 

 

 

「すげー!すげー!すげーよにーちゃん!ポケモンが進化するの、オレ初めて見た!」

 

「ああ、そうだねぇ…」

 

 

 

実験結果にどよめきや拍手が沸く観衆たち。俺の隣にいたシルバー少年もまたその1人。ポケモンの進化を間近で見ること自体が初めてだったようで、すげーbotと化している。

 

そしてかく言う俺自身、今目の前で起きた現実に感動を覚えている。ハッサムに進化したことよりも、通信交換することなくそれを実現して見せたあのマシンの性能に。何だよあれ、完全にボッチ御用達の一品だろ。神か。

 

 

 

「…これがストライクの新たな姿、ハッサムというポケモンになります。如何だったでしょう、Mr.サカキ」

 

「人の手を介して進化するポケモンか…素晴らしいものを見せていただいた。感謝する、Mr.ジャキラ」

 

「いえ、これも御社の協力あればこその成果。今後とも良い関係でありたいものです」

 

 

 

そんな中で、サカキさんとジャキラは何やら大人のお話をしているのが聞こえた。子供だからということと、シルバーの話し相手ってことで、結構近い所にいたが故に否が応でも耳に入って来る。横目でチラリと見れば、そこにはがっしりと握手を交わしている2人の姿。

 

ロケット団とシャドー…俺は今、2つの悪の巨頭が手を結ぶという、とんでもない悪行の歴史的シーンを目撃してしまったのかもしれない。

 

 

 

「なあなあにーちゃん!」

 

「ん?」

 

 

 

目の前で行われた歴史的一幕に内心冷や汗ダラダラな俺だが、シルバー少年には知る由もないこと。目の前で人為的に起こされたポケモンの神秘に興奮冷めやらぬ彼の話は止まらない。

 

 

 

「にーちゃんも確かストライク持ってたよな!」

 

「あ、うん。持ってるけど…?」

 

「だったらさ、にーちゃんのストライクも進化させてみてよ!」

 

「え、えぇ…」

 

 

 

進化のお代わりとばかりに、俺のストライクも進化させてもらえという無茶振りがシルバー少年から発せられる。そんな無茶な…

 

 

 

「そう言えばそうだったな」

 

「おや、そちらの少年もストライクを持っておられるので?」

 

「ええ」

 

「…そうですね。もしよろしければ、対応はさせていただきますが?」

 

「ふむ、どうしたものか」

 

 

 

…とか思ってる間に、シルバー少年の話を聞いていたらしい上の人たちの間で何故かトントン拍子で話が進んでいるという。流石は悪の組織の面々、他人のポケモンを何だと思ってるんだ。まあ、元々はサカキさんのポケモンみたいなところはある奴だけど。

 

 

 

「…マサヒデ、オマエはどうしたい?」

 

「っ…どうしたいと言われましても…」

 

 

 

サカキさんから意向を聞かれるが、そりゃあ…正直Goサイン出したいです。ヤマブキジム戦がとっても楽になるじゃないっすか。

 

 

 

「でも、その…本当に色々と大丈夫なんですか?」

 

 

 

ほら、安全性とか、お値段的なものとか。悪の組織的に考えて。「科学ノ発展ニ犠牲ハ付キ物デース」って残酷な現実を突き付けられたり、強面のお兄さん方に囲まれて「金払え」って後から言われたりしませんか?

 

と言うか、そもそもの話いくら実績があるって言っても、自分のポケモンを悪の組織の被験体として差し出せって言われると全力で拒否したくなるんですがそれは…

 

 

 

「我々の技術は完璧だ、安心するといい少年」

 

「…と言うことだそうだ。後はオマエ次第だ」

 

「にーちゃん!」

 

 

 

しかし、そんな俺の思いはぶちまけられるはずもなく、逆にサカキさん、ボルグ、ついでにシルバー少年の3人から色々な思惑を込めた視線でジッと見据えられているのが現状。しかもその後ろの方にはジャキラも控えていて、その他周囲の皆さんからの視線も一身に受けてるっていう。何なのこの地獄?

 

各地でポケモンバトルを繰り返してる関係上、何百人程度の観衆の中で戦うのはある程度慣れてはいるが、こんな至近距離でそれをやられると、ましてやそれがこの面子となってはもうダメだろ。

 

 

 

「…じ、じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

 

 

こうして視線という名のプレッシャーに耐えられなくなった俺は、抵抗する気力もなく早々に白旗を上げて膝を屈したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ああ、そうそう。進化させてもらうなら、カントーに帰ってからしばらく預からせてもらいたい。こちらでも技術の研究・検証をしたいが、現物が手元にあるのとないのとでは進み具合が違うのでな」

 

「アッ、ハイ…」

 

 

ついでに、ストライクは帰国後しばらくの戦線離脱が決定した。ヤマブキジム戦までに返してもらえるのだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

「ラアァァァァァァァイッ‼」

 

「くそ!何とか抑え込め!」

「うわ、このストライク強いぞッ!?」

「実験機器には近寄らせるなッ!」

 

「ラアァァァァァァァイッ‼」

 

 

 

なお進化前、ボールから出した後に一悶着あった模様。大音響を響かせて、広い研究室内を縦横無尽に飛び回るストライク。周りの目を気にするあまり、コイツの性格完全に頭から抜け落ちてたわ。

 

 

 

「…相も変わらず喧しいな」

 

「…すんません」

 

 

 

呆れたような声でそう言うサカキさんの横で、俺は頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

結局、暴走ストライクは10分近い総力戦のような捕獲劇の末、スタミナ切れを起こしたところで御用となり、大人しく実験室内へと連行されていった。

 

…とりあえず皆さん、うちの問題児2号がご迷惑をおかけしまして大変申し訳ございませんでした。そして断ることの出来ない非力な俺を許してくれ、ストライク…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…でも正直な話、ハッサムが手に入るなら美味しい()

 

 

 

 

 

『テーテーテー テテテテッテテー♪』

おめでとう? ストライク は ハッサム に 進化した!

 

 

 

 

 




というワケで、夏休みINオーレ地方編開幕。そして(悪の組織の)科学の力ってすげー!という名のご都合主義炸裂回でした。ほら、通信交換マシンを通した際に発生する特殊な磁場が云々…的な?どうしても主人公が正規のルートでハッサムを入手出来る気がしなかったので()

そして、オーレ地方と言えばやはりシャドーの存在は外せませんねぇ。まずはジャキラとボルグが登場です。ロケット団とは良い取引相手といったところでしょうか。ロケット団はポケモンをシャドーに、シャドーは研究成果や技術をロケット団に提供…これ、その内ロケット団が作者の手にも負えなくなりそうな気ががが…
さらに、ここでロケット団幹部の一角・ラムダも登場。彼は地下倉庫の鍵もくれるしそこへの行き方も教えてくれるから何となく良い人そう。そして、変装が得意=サカキ様の代理として暗躍みたいなイメージが湧いた結果、あちこちを飛び回って陰に日向に活躍する敏腕ネゴシエーターな気のいいおっちゃんになりました。きっと語学も堪能。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。