「あ~…いい天気だー…」
パイラコロシアムでの雨下のダンスパーティーから一夜。色々と闇が深くて疲れる旅程ではあったが昨日パイラタウンに到着したのと同じ頃合いに、本来の最終目的地だったアゲトビレッジに到着。車両トラブルなく先着していた他の皆さんとも合流し、どんちゃん騒ぎの大宴会を経て、予定より1日遅れで迎えるオーレ地方・アゲトビレッジの朝である。
朝食を終えて外に出れば、オーレ地方らしからぬ砂を含まない爽やかな風に、聞いてるだけでも心地良い川のせせらぎ、どこからか漏れ聞こえてくるポケモンたちの鳴き声…五感で感じる田舎の夏って感じだ。これで「ラジオ体操第一~!」なんて聞こえてきた日には、紛うことなき夏休みの朝。喜びに胸を開き、大空仰ぐ希望の朝だ。もう一度子供に戻ってみたくなるね。実際戻ってはいるんだが。
…まあ、大人の皆さんの中には大宴会の後遺症に苦しんでる、希望の朝とは程遠い夜明けを迎えた人が結構な数いたようだが、それはまあ自業自得と言うか必要経費と言うか何と言うか…とりあえずご愁傷様ですと言っておこう。わざわざオーレにまでやって来て、貴重な休みを二日酔いで潰す…俺も経験がなくはないから言えるけど、空しいよな。
死屍累々、地獄の朝に苦しむ皆さんの姿を横目に、宴会の後遺症とは無縁な俺はそそくさとホテルを離れ、丸1日の自由時間という名の休暇を謳歌するべく繰り出した。そして冒頭の発言へと繋がる。
今はホテルからほど近い小川の川縁に腰掛け、のんびりと川に足を浸けて涼んでいる。浸けた瞬間反射的に足を揚げたくなるような冷たさは、シャドー研究所訪問に始まり、
それでも、ロケット団とシャドーの繋がりやら大会参戦やら、精神的に連打をくらっている気がする俺には、今この時が何よりの休息だ。
明日から、延いては折り返し地点を過ぎたジム制覇の旅の後半戦に向けて、今日は今までの諸々で疲れた心身をしっかりとリフレッシュ。もちろん、ここまで苦楽を共にしてきたスピアー以下頼れる仲間たちも一緒であり、彼らにも今日は思う存分羽を伸ばしてもらって、人ポケ共に英気を養うつもりだ
「にーちゃん、年寄りみてーだな!」
「うるさい。こっちに来てからロクに心休まる日が無いのが悪いんだよ」
…そしてオマケで着いてきたシルバー少年もいる。出掛けようとしたところをサカキさん…ではなく、副社長さんに見つかってお願いされてしまったので、止む無く一緒にいる。なんでも午前中だけだが仕事絡みでサカキさん共々どこかに出掛けるらしい。
サカキさんっていつ休んでんだろうね。こんな時ぐらい、仕事のことは忘れて休めばいいのに。と言うか、そもそも俺をこの旅行に誘った時、「羽を伸ばすのも悪くは無かろう」とか言っておきながら、自分は仕事なのな。言動不一致はよろしくありませんなぁ。
…まあ、社長なんて立場になるとそうも言ってられないのかもしれないが。
そしてシルバー少年。言うに事欠いて年寄り呼ばわり…何と失礼なガキンチョだろうか。未来のクソ生意気でアウトローを気取っている姿が今からでも想像出来るぞ。まあ、中身は年齢的にオッサンなので否定し辛い部分ではあるけども。
「うひゃぁ、冷てー!」
「…やぁ~ん」
川の中に入ってはしゃぎ回るシルバー少年。見ていて親戚か、近所の子供を見ているような微笑ましい気持ちになる。透き通るような綺麗な水は、この季節ならさぞ心地良いことだろう。
因みに、水難事故防止の観点から念のために彼にはヤドン(と一応コイキング)を付けてます。仮にシルバー少年の身に何かあれば、その責任を真っ先に問われるのは俺だからネ。これでもしものことがあっても安心だ。良い子のみんなは、海や川に遊びに行くときは必ずお父さんお母さんと一緒に行くんだよ?
…こんなことを真っ先に考えちゃう辺り、歳ってことなんかなぁ。
まあ、そんなことはどうだっていいんだ、重要なことじゃない。今の俺は誰が何と言おうとも、一応トキワシティ出身の公称11歳男子だ。決して自分をポケモントレーナーだと思い込んでいる一般人などではない。一般人ではあるけども。とりあえず、現在地・アゲトビレッジについて解説でもしようか。
アゲトビレッジはオーレ地方においてほぼ唯一と言っていい、豊かな自然が残る長閑な村である。山の麓に広がる集落は、往年の名トレーナーたちが引退生活を送る場所としても知られる。村の北には聖なる森と呼ばれる森林地帯が広がり、幻のポケモンでもあるときわたりポケモン・セレビィが生息している。森の中にある聖なる祠にはそのセレビィの力が僅かながら宿っており、その力を利用してダークポケモンを通常のポケモンに戻す【リライブ】の最終段階、ダークポケモンの閉ざされた心の最後の扉を開くことが出来る。【リライブセレモニー】だったかな?あんまり自信ない。
ストーリー的には、主人公の相棒となる生体ダークポケモン判別マシンことミレイの祖父母が居住しており、彼女を祖父母宅に送り届けた際に、森の祠及びセレビィが目的の障害になると判断したシャドーによる襲撃が発生。祖父・ローガンはアゲトビレッジの村長であり、かつて伝説のトレーナーと呼ばれるぐらい名を馳せた名トレーナーだったらしいが、ストーリー上ではその面影はほとんど感じられないぐらいに衰えていて、敢え無くシャドー戦闘員に敗北。そこへ主人公が颯爽と現れてシャドーを撃退する…と言うのが大まかな物語の流れになる。
ローガンさん…いくらピカチュウLV50でも、"でんこうせっか"しか撃たないんじゃそりゃ勝てませんわ。
【リライブ】のシステム上、ゲームでは必要に応じて繰り返し訪れることになる重要な街だが、貴重な自然が多く残るということもあって、こちらの世界でも第一線を引退したトレーナーたちが、ポケモンと余生を過ごすための移住地として人気なのと同時に、観光地としての一面も持っている。
聖なる森は国立公園として自然保護区のような扱いがなされており、内部に立ち入るには許可が必要となっている。聖なる祠もその立ち入り禁止区域の中にあるようで、残念ながら見ることは出来ない。野生のポケモンも生息しているみたいだが、自然保護区なので捕獲は当然禁止である。
ついでと言ってはなんだけど、聖なる祠のBGMが良い。コロシアムでも上位五指に入るぐらいには好きだった。
「あ~…平和だなぁ…平和って良いなぁ…そうは思わねえか、お前たち?」
「スピィ~…」
「キュィ~…」
「クォン…」
川遊びではしゃぎ回るシルバー少年の姿を確認して、俺はそのまま川岸の草地に背中から倒れ込んで空を仰ぐ。青い空、白い雲、頬撫でる風、川のせせらぎ…そして傍らには3年来の相棒であるスピアーにサンドパン、飼い犬ならぬ飼い狐キュウコン。ああ、平和って素晴らしい。何たって、オーレ地方に来てからの数日間、心が休まった日がないんだから。マシントラブルもあったとは言え、夏休みとはいったい…ウゴゴ。
「シャアァラアァァァァイッ!」
…穏やかな夏の空気を切り裂くように、遠くから聞こえてきた聞き覚えのある鳴き声…もとい、雄叫びが、俺を思考と安息の世界から呼び戻す。あんな特徴的な鳴き声、どこをどう聞いても俺のハッサムのもので間違いない。せっかくの休暇であり、昨日の激闘を労う意味も込めてボールから出してやったら、アッという間に大空の彼方へと消えていったバカ野郎である。その後は…まあ、進化してもアイツはアイツだったとしか言いようがない。ちょっとでも親心を出してあのバカを野に放ったのは完全に失敗だった。
アゲトビレッジの皆様、うちのバカが大変ご迷惑をおかけしまして申し訳ございません。騒音以外は特に問題行動はしないとは思いますので、何卒ご容赦を…
ハッサムは御覧のあり様だが、俺が連れて来たポケモンたちは全員ボールから出してやっている。スピアー・サンドパン・キュウコンは俺の近くにいて、ヤドンとコイキングのみずコンビはシルバー少年の御守りをしてもらっているワケだが、それ以外のメンツはどうかと言うと…
「らっふぅ~!」
「ラッタッタ~」
ラフレシアはこの天気が最高らしく、頭部のでっかい花を揺らしながらトテトテと日向を散歩して、時々ゴキゲンな鳴き声を上げている。昨日もそうだが、彼女には貴重な対みずタイプ要員として頻繁に頑張ってもらっていたので、今日は心行くまで夏の日差しを浴びてリフレッシュしてもらいたい。
ラッタは草地を走り回ったり、川に飛び込んで水浴びしたり、穴を掘って遊んだりしてる。今ここにいる面子の中で一番元気かつ真っ当にオーレ地方の夏を満喫してるのは彼女だろう。
取り敢えず、掘った穴は埋め戻しておくように。
「ど、ど、どがぁ~」
「ビー、ビー、ビー」
ドガースとレアコイルは何をするでもなく、別々に空中をフヨフヨと漂っている。一番の新参となるレアコイルはともかくとして、ドガースは悪戯好きってこと以外、未だに何がしたいのか、何を考えてるのかよく分からん。
案外、シルバー少年を気にかけてくれていたりして…そうでなければ悪戯を仕掛けるタイミングを探ってるに違いない。
「……ギィ」
で、最後にうちの元祖問題児ことサナギラス。ヨーギラス時代の暴れん坊っぷりは鳴りを潜め、出会った当初のようにあからさまな敵意を向けられることもなくなったが、誰かと馴れあうようなことはなく、その近付き難い雰囲気を察してか、例外はいるが他のメンツも基本的には自分からは近づこうとしない。今も俺からも他の仲間からも、ついでに川からもだいぶ離れた場所で1人ジッとしている。
まあ、サナギラスというポケモン自体がその名の通り蛹、バンギラスに進化する前の移行期間みたいなもの。トランセルやコクーンなんかと同じ状態だから、意図的に動きを抑えて力を溜め込んでるってのが正解なんだろう。そして、その気性は種族由来か個体の個性か。
「らふらっふぅ~!」
「ギィッ!?」
…なんて思ってたら、ラフレシアが絡みに行った。タイプ相性か、はたまた捕まえた時の経緯もあってか、サナギラスを恐れず絡みにいく例外、それがラフレシア。サナギラスの方もラフレシアには苦手意識があるようで、ラフレシアが近付くのに気が付くと、慌ててピョンピョン跳ねて逃げ出した。
サナギラスがラフレシアに追っかけ回されてる絵面は、孤高の一匹狼な普段のイメージとはかけ離れていてどこか滑稽で微笑ましい気持ちになれる。何にしても、ラフレシアはGJだ。そのままその意地っ張りの相手をしてやってくれ。
「らっふ~♪」
「ギッ…ギィ…ッ」
追っ掛けてくるラフレシアから逃げ惑うサナギラス。蛹らしくない素早さでピョンピョン跳ね回っているが、所詮は蛹。晴天下のラフレシアに適うはずもないが、ラフレシアはラフレシアで遊んでいるようで、適度に距離を保って着かず離れず。この鬼ごっこのように見せかけた狩りを楽しんでいるらしい。
それと、サナギラスも必死に逃げはしていても攻撃しないあたり、一応仲間意識みたいなのはちゃんと持ってくれているのかもな。
それにしても、振り返ってみればトキワシティを旅立ちすでに4か月か…手持ちもスピアーと、一応サンドがいた頃から7体も増え、ゲームにあった街や施設を巡り、ジムバッジも5つが俺の手元にある。そして今はカントー地方を飛び出してオーレ地方だ。これ以上ないくらいポケモン世界を満喫してるよ、サカキさんの保護下にあるという点も含めて。
いきなりポケモン世界に放り出されたのが約3年前。スピアーと出会い、サカキさんに保護され、そこから抜け出すためにとにかく強くなろうともがき続けてきた。今後起きる、起こすであろうロケット団関係の事件の数々から離れるために。
口ではロクに心が休まった日はないと言ったが、サカキさん、ロケット団、そして今回のシャドーと、これらの存在が常に身近にあるというのは、原作を知っている俺からすれば精神的に大きな負担。反社会的要素満載な環境の近くに置かれ、常に良心の呵責、未来への焦燥感に身を焦がし、その横槍を気にしながら過ごす毎日では、中々そういう頭と心の安息日を作る余裕はなかった。
まあ、全く心休まる日がなかったかと言われれば嘘になるが。最近だと…セキチクジムに居候してた時期はサカキさんから解放された気がして、色々と気楽だった。やはりサカキさんの下で世話になってると言うか飼われてると言うか、今後のことを考えるとその現状がまず色んな意味でリスクであることは違いない。
とすれば、やはり早期の自立は必須。自立を考えるなら、まず飯を食えるだけの安定した収入を得られるようになることが第一。手っ取り早いのはトレーナーとしての実力を備えることであり、出来ればサカキさんと肩を並べられる程度の実力が最低限必要に…って、これじゃただの現状追認だな。
で、サカキさんに肩を並べられる程度まで実力がついたら…実力がついたら……
「…どうしようか?」
むむむ…サカキさんの下から抜け出すことを目標に今まで突っ走って来たけど、強くなることに夢中でその先どうするか、思い返せばまともに考えたこと無かったな…
うーん……安直に考えるなら、他の地方でも目指してみるのが一番か?カントー地方に隣接するジョウト地方を始め、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラ…シリーズ本筋だけでもこれだけある。あと、今いるオーレのような外伝作品の地方が他にもあるかもしれない。うん、世界は広いな。
他地方へ行くなら、カントー同様にジムを回るのもいいが、バトル施設に挑むのもありだろう。年代的にあるかどうか怪しいという問題はあるが、バトルフロンティア、バトルシャトレーヌ、バトルツリー…夢が広がるな。ワクワクが止まらないぜ。
あと、バトル施設繋がりで育成に注力するのも一手。個体値厳選に努力値稼ぎ、覚える技、パーティ構築…勝負の世界における実力の基礎だし、腰を据えてやってみるのも面白い。廃人の道に片脚突っ込むことになるけど。
或いはいっそのこと、一度バトルを離れてみるというのも一考か?コンテストにポケスロン、秘密基地に地下探索と、バトル以外の要素も充実しているのがポケモンシリーズ。新しい発見があるかもしれない。
と言うか、どうせなら色んな原作キャラに会ってみたいね。アカネ・ミカン・ツツジ・アスナ・フヨウ・ナタネ・シロナ・フウロ・カミツレ・ホミカ・コルニ…え?女キャラばっかりだって?俺も健全な男の子だからね、仕方ないネ。
男キャラなら大誤算…もとい、ダイゴさんとかヤナギの爺ちゃんとか、クチナシのおっさんとかかな。悪の組織のトップだけど、OR・ASのマツブサ・アオギリも人間味あると言うか、何となく好きなんだよね。ゲーチスは関わりたくないけど、怖いもの見たさで一度面拝んでみたくはある。ゲーチスより話は通じそうだがフラダリも同様。何より、この世界でも彼らはネット民の玩具と化してしまうのかどうか…私、気になります!逆にNとかヒガナ辺りは話が通じるようで微妙に噛み合わなさそう。
もっとも、後の世代の主人公&ライバルズみたいに、まだ無名だったり子供だったり、最悪生まれてすらいないキャラも多いんだろうなぁ。
…まあ、あれこれと夢みたいなもんを語ってみたけど、今から焦ったところですぐにどうこう出来るようなことでもないんだよな。人の一生は重き荷を背負うて遠き道を行くが如し、急ぐべからず。ポケモンの道、トレーナーの道もまた同じ。目指すべき所、歩むべき道は、たぶん余程のことがない限りは今後も変わらないんだ。急がず、焦らず、一歩ずつステップアップしていこう。
当面の目標はカントー地方のジム完全制覇、そしてサナギラスが進化した時にそれを御し切れるトレーナーになること。今はそんなもんでいいでしょう。その先はその時が来たら…だ。
「…よっし、スピアー、サンドパン、キュウコン、一緒にサナギラス捕まえに行くぞ」
「キュイッ!」
「クォンッ!」
と言うことで、俺も傍にいた3体を引き連れて2体の鬼ごっこに参戦。スピアー、サンドパン、キュウコンをそれぞれ
サナギラスでも分かるとおり、この世界だとポケモンと信頼関係がないと言うこと聞いてくれないことがあるし。言ってしまえば、捕まえたポケモンは全員通信交換したポケモンみたいなもんだと思えばいい。
「キュイッ!」
「ギ…」
サンドパンはノリノリでラフレシアと連携し、サナギラスの行く手を阻む。
「クォーン!」
「スピィ~」
「ギ、ギィ…!」
スピアーとキュウコンもその後を追って展開、サナギラスを閉じ込める包囲網を形成した。
「いいぞお前ら!」
「ギィィ…ッ!」
「おま、ちょ…退避、退避ぃ-ッ!」
「キュィー♪」
「クォン!」
そしたらブチ切れたらしいサナギラスから反撃されたでござる。目に付く追跡者に向かって岩の塊を撃ち出してくる。"いわなだれ"の応用だろうか。だいぶ抑え目にしてくれてはいるようだが、流石に生身で受けたくはないので全速後退。狙われた他の面々も思い思いの方向に逃げ出し、呆気なく包囲網は崩壊した。実に楽しそうな鳴き声である。
で、包囲網を崩したサナギラスは、そのまま俺に向かって突っ込んで来やがった。ありゃ多分多少頭に来てるな。そして、色々考えてちょーっとだけ気が大きくなってしまっていた俺は、何を思ったかこれを正面から受け止めようとした。
「ギィィーーッ!」
「ぐふぉ…ッ」
無論、それはただのアホの選択でしかなかったのはお察しの通り。弾丸のような勢いでの突撃は、さながら"ロケットずつき"。しかも、ヨーギラスの時点で体重は成人男性並にある。その進化系であるサナギラスは…まあ、アレだよ()
スーパーマサラ人でも何でもない俺に、当然そんなものを受け止められるはずもなく、強烈な衝撃と共に俺の身体が宙を舞い、一緒に意識も飛びかける。
「んげェ…ッ」
「スピィ!」
で、背中から地面に叩きつけられた衝撃で、身体を抜け出しかけた意識が引き戻された。しばらく痛みを堪えてから目を開けば、快晴の空をバックにスピアーたちが心配そうな様子で俺を覗き込んでいる。
「にーちゃーん!だいじょーぶか!」
「…おー、大丈夫だ、問題ない」
俺が吹っ飛ぶ様子はシルバー少年も見ていたようで、急ぎ川から上がってこっちにやって来た。流石に4つ5つも年下の子に心配されるわけにはいかない。結構痛いが、意地を張りたいのが男ってものさー。
いてて…しっかし、油断してしまったなぁ。身体の痛みは…腹と背中に鈍痛が残るが、サナギラスの突撃をまともに受けた割には軽症で済んだ…と思う。
「…お?」
「らっふ~!」
「ギ、ギィィィ~~…」
そして、サナギラスは俺が打ちのめされている間に、少し離れた位置でラフレシアに捕まっていた。どうやら"しびれごな"で動きを止めて、加減した"ギガドレイン"でジワジワ苦しめる、お仕置きの真っ最中のようだ。
ラフレシアは性格が歪んでないので普通に懐いてくれていることもあり、たまーに行き過ぎたバカをこうやって止めてくれている。大変助かっております。ただ、やってることは技の効果も考えると、お仕置きと言うよりは拷問なのは…まあ、突っ込まないでおこう。
「ラフレシア、そこまでにしといてやってくれ」
「らふ?」
それはそれとして、ラフレシアを止めてサナギラスを開放させる。今回ばかりは俺もちょっと悪乗りが過ぎた部分はあるし。
「あー、悪かったなサナギラス。俺もちょっと調子に乗りすぎたわ」
「……ギィ」
そう言って、優しくサナギラスを撫でてやる。麻痺させられて大人しくなっている今ならお触りし放題だ。
「でも、人に向かって攻撃すんのは止めろ下さい。マジで状況次第じゃシャレにならんから」
具体的には俺がサカキさんに怒られる。「ポケモンを制御出来ないようではトレーナー落第」とか言われて。あと状況次第では本当にトレーナーが法的な責任を取らされる場合もあるから。
「……ギィーギッギギィ!」
「…お前今笑ったろ?」
だと言うのにコイツは…今のは流石に俺でも分かるわ。
「……ギィ」
「目ぇ逸らすなおい。またラフレシア嗾けんぞ」
「ギィッ!」
「うわっ…いてぇ!?」
そして、サナギラスは俺の手を跳ね飛ばして離れてしまった。いつの間にか特性で麻痺も治っていたらしい。結構痛かったぞ。
くっそ、折角ちょっとイイ感じにでもまとめられるとか思ったのに…ああもう、身体は腹も背中も痛いし、シルバーには心配されるし、オマケにサナギラスには鼻で笑われるわ、腹も背中も痛いわで、夏休みだってのに散々だ。体当たりぐらいなら…とか、軽い気持ちで甘く見た結果がこの様だから、自業自得とか言われたら反論しようもないけど。
ポケモンの技、突進を真正面から受け止めるのはもう二度としないことを、俺は強く心に誓った。そしてサナギラス、俺はお前を自在に操縦出来るようなトレーナーになってやるから、覚悟してろよ!打倒サカキ!征服サナギラス!そんでもって、満喫ポケモンワールド!やってやる、やってやるぞぉ!
「…ところで、コイキングはどこ?」
「え?コイキングならずっと川の中に…」
「こいき~ん…こいき~ん…」
「コ、コイキングー!?」
そして、河童の川流れならぬ、コイの川流れという一幕があったことも付け加えておく。なんでみずタイプなのに流されてるんだ…って思ったけど、そういや流れ強いと流されるだけって図鑑の記述があったような記憶が。
ような記憶が。
そんなことを思い出しながら、流されかけていたコイキングは素早く救出されたのだった。
コイキング、君には君をコケにしたあの
この後、昼までシルバー少年に付き合って遊び回り、午後からはようやく夏休みモードに突入したサカキさん一家に混ぜ込まれて一緒に自然保護区内を観光。オーレ地方に来てから最ものんびりとした時間の中で、オーレ地方5日目は過ぎていった。
「ビィ~♪」
「……ん?」
今のポケモンの声は……?
たまにはポケモンたちとの交流シーンも書いとかねば…と言うことで、主人公がこれまでの振り返りと今後についての独白をする、特に意味のないのほほん回となりました。そして、オーレ地方夏休み編実質的最終話になります。次回閑話挟んでカントー地方に戻る予定です。
そして最後、鳴き声だけ出てきた謎のポケモンは…まあ、アゲトビレッジだしオマケ程度に。