休むと言うよりも疲れた思い出の方が大きかったオーレの夏旅行も終わり、俺は再びカントー地方の大地を踏み締めた。離れていたのは僅か一週間ほどでしかなかったが、飛行機を降りた時には「戻ってきた」という安心感に包まれた。
その後は旅の疲れが取れ次第、何日か調整を挟んだ上で、6つ目のジムバッジ獲得を目指してヤマブキジムに挑む…ハズだったのだが、覚えているだろうか?オーレ地方旅行中、シャドーの研究所でサカキさんから言われたことを。
『…ああ、そうそう。進化させてもらうなら、カントーに帰ってからしばらく預からせてもらいたい。こちらでも技術の研究・検証をしたいが、現物が手元にあるのとないのとでは進み具合が違うのでな』
ちょっと公にするのは憚られるような何やかんやを経てオーレ地方で進化したハッサムだが、帰国後すぐに、言っていた予定通りに「しばらく預かる」とサカキさんは宣ったのである。
今回の相手となるヤマブキジム、及びジムリーダー・ナツメの専門はエスパータイプ。当然、抜群取れて半減まで出来るハッサムは、攻略の切り札になり得る重要戦力。それ抜きでの挑戦は…と言うわけで、帰国早々のハッサム戦線離脱に伴い、挑戦も延期と相成りました。
ただ、単純に悪い話ってワケでもない。悪い言い方をすれば、
パーティの中軸からサポートまで、トレーナー次第で幅広い役割を期待出来る存在なので、今後のことも考えて、何かしらの致命的な問題が生じてないかはちゃんと調べておいた方が良い。事情が事情だけにここは素直に従う方が良いと判断し、俺はハッサムをサカキさんに託したのだった。何か良からぬことをされてないことを願うばかりである。
これが今から約3週間ほど前のことになる。そこから2週間ほどの調査期間を経て『異常なし』との診断を受けたハッサムが無事手元に戻り、さらに1週間ほどかけて再調整。都合、約1カ月近い不必要なまでの休養・調整期間を経た、世間一般的な夏休みも終わりかけな時期になって、ようやく俺はヤマブキジムの門を潜ったのだった。
ヤマブキジムは、現状エスパータイプのジムと、隣接する格闘道場との2枚看板体勢。挑むのはモチロン、エスパータイプの方のヤマブキジムだ。ジムリーダーの強さが知れ渡り、2枚看板となった最近は敬遠されがちなようだが、それでも都会なだけあって、挑戦者の数はトキワ・グレン・セキチクジム辺りとは比べ物にならない。
当然、それだけ集まった挑戦者全員をジムリーダーが相手するなんてことはない。物理的に不可能だ。なので、俺を含む多くの挑戦者たちは、まずジムリーダーへの挑戦権を賭けた
「それでは、これより本日のヤマブキジム挑戦者選定会を始めます!順番は挑戦受付番号順になりますので、まず受付番号1番から10番までの方は私に着いて来て下さい!」
順番は受付番号順で、俺の受付番号はもうしばらく先…なんてことはなく、今回は早めに来て受付したから辛うじて1桁の番号を貰うことが出来た。おかげで待たされることなく、サッサと挑める。いつもより早起きした甲斐があったってもんだ。
そうしてジム職員に挑戦者選定の会場として案内されたのは、ヤマブキジムの裏手にある別棟。一見、ポケモンバトルには全く適していないと言うか、ただの一軒家のようにしか見えない。
一応、挑戦者選定の段階でヤマブキ名物のギミック…ワープパネルがあるっていうのは色々話聞いて分かってるけど、それにしたってただの一軒家だぞ?ワープパネルの意味あるの?
疑問を抱えたまま、俺は言われるがままに他9名の挑戦者と一緒に、別棟の中へと足を踏み入れる。内部はやはりまんま何の変哲もない一軒家の内装そのものであり、小さなポケモンならともかく、ポケモンバトルなんてとても出来そうにない。
「…さて、皆さん。まずはこちらをご覧下さい」
ジム職員に連れて来られた先は別棟のリビング。そこで示されたのは、床に設置された白く円形の装置。間違いない、ワープパネルだ。
「これはエスパータイプのポケモンが使う技、"テレポート"の力を利用した物でして、ワープパネルと言うものです。その名の通り、このパネルの上に乗ることで対応した別のパネルの上へとワープすることが出来ます。そして、こちらのワープパネルが繋がっているのは、この別棟の地下…我々が『ヤマブキ大迷宮』と呼んでいる、巨大迷路です」
…この一軒家とワープパネルがどう繋がるのか疑問だったが、なるほど、地下か。しかし地下迷宮とか、ちょっと厨二心をくすぐられる響きじゃないか。
「1人ずつ、順番にこのパネルの上に乗ってください」
促されるまま、最初の1人がワープパネルの上に立つ。
『ブゥン…』
「おお…!」
一瞬その姿がブレたかと思うと、次の瞬間にはすでにパネルの上に人の姿はなかった。これがワープパネル…ゲームじゃなんかクルクル回って跳んでたけど、これは中々に格好いい…科学の力もとい、ポケモンの力ってスゲー。
「次の方、どうぞ」
あっという間に俺の順番。心躍らせながらパネルの上に立つと、一瞬の浮遊感。そして、大スクリーンで映画でも見ているように、パッと景色が切り替わる。視界に広がるのは、四方を全く同じような壁で囲まれている、だだっ広い無機質な空間だ。それ以外の唯一の特徴は、壁に『1』の数字が書かれていることぐらい。これがヤマブキ大迷宮ってワケか。それにしても、何とも不思議な感覚だった。
「皆さん、無事に全員来ることが出来ましたね?」
ちょっとした感動と緊張感を感じている間に、残りの挑戦者たちもワープ完了。最後に案内役がワープして、再び挑戦に関する説明が始まる。
「内部は約50部屋の区画があり、その全てがこのように四方を壁で区切られていて、ワープパネルを使用して区画間を移動します。各区画には移動元のパネルを含めて、3~4のワープパネルが設置されており、皆さんにはそのワープパネルを乗り継ぎ、このヤマブキ大迷宮から制限時間内の脱出を目指していただきます」
課された課題は地下迷宮からの脱出。それも制限時間付き。まあ、制限時間でも設けないとあの人数は捌き切れんわな。
「途中には当ジム所属のトレーナーが待ち構えている区画があり、勝負をしてこれに負ければ当然失格です。逆に勝利すれば、脱出のためのヒントを得ることが出来ます。制限時間は60分。バトル中の時間もこれに含みます。挑戦中のアイテムの使用は3回まで。それ以上使えばその時点で失格と見做します。持ち物として使用するアイテムは対象外とします。もしも途中で棄権する場合は、各区画の区画番号の下にあるボタンを押した上でワープパネルに乗って下さい」
バトルに掛かった時間も制限時間の内に計算するのか…そうなると、悠長なことをしている時間的余裕はなさそうだ。そもそも、50区画からして原作よりも遥かに広い。ジムトレーナーもどれだけの人数待ち構えているのやら。ジムトレーナーの実力が以前見た通りなら、催眠祭りにだけは気を付けたい。と言うか、以前通りと信じて対策したんだから、そのままであって欲しい。
「それでは、皆さんの健闘を祈ります。挑戦開始ですッ!」
説明が終わると同時に開始の合図がなされ、挑戦者たちは我先にと四隅に設置されているワープパネルに乗って、次の区画へと跳んで行く。
…ああ、そうそう。遅まきながら、ヤマブキジムに挑む現在の手持ちはこんな感じになっている。
・スピアー ♂ Lv51
どくづき ミサイルばり
みがわり こうそくいどう
・サンドパン ♂ Lv45
あなをほる どくづき
いわなだれ つるぎのまい
・サナギラス ♂ Lv44
いわなだれ かみくだく
すなあらし じしん
・ハッサム ♂ Lv42
れんぞくぎり つばさでうつ
こうそくいどう ???(バレットパンチ?)
・レアコイル ? Lv44
10まんボルト トライアタック
ひかりのかべ でんじは
・ラッタ ♀ Lv39
いかりのまえば かみくだく
すてみタックル つるぎのまい
エスパー技が弱点のドガース・ラフレシアに、育成途上のヤドン・コイキングを抜いて、今の手持ちで出来る限り対エスパー仕様に調整してみたのがこれ。パイラコロシアム準優勝の賞金もあって、技構成も余裕をもって弄ることが出来た。結局世の中金よ、金。
もっとも、レベルは元から高かった上3体とレアコイルはそこまで上がらず、実質的に底上げしか出来なかった感じだ。ハッサムは2週間離脱していたとは言え、オーレ地方で散々戦ったのでその分上がってる。なお、最後の恐らく"バレットパンチ"と思われる枠は、図鑑の上では???となっていた。
最後の6体目の枠にはラッタをチョイス。いつの間にか"つるぎのまい"を覚えてたので、1回舞えれば"かみくだく"の突破力がイイ感じ~になるはず。舞う余裕があるかはともかくとして、序盤ノーマルタイプの意地を見せて欲しい。
ラッタの所はキュウコンと迷ったんだが、"シャドーボール"の技マシンが手に入らなかったことと、カントー地方のエスパータイプには物理方面が脆いポケモンが多いこと、最近活躍の場が少ないことを踏まえての選出となった。とりあえず、タマムシデパートでも手に入らないものがあることを思い知らされた。あと、持ち物は全員カゴのみガン積みで催眠対策も完璧だ。
「…さーってと」
程無くしてちょっとしたトレーナーの渋滞は解消され、一足遅れて俺もワープパネルの1つに乗って次の区画へ飛び込んだ。
ワープパネルの上に立つとすぐ、先程同様の一瞬の浮遊感が身体を襲う。それがなくなると、部屋の景色はワープ前と何も変化なし。区画の内装も変化がないので本当にワープ出来たのか不安になるが、唯一、四方の壁の1つに書かれている数字が『1』から『23』となっていたので、問題なくワープは出来ているようだ。
この独特の浮遊感は慣れないが、この調子でガンガンパネルを乗り継いで、さっさとクリアと行きたいところ。しかし、相手はクチバジムと並んで面倒臭いことで有名な、トレーナー泣かせの悪名高きヤマブキ名物ワープパネル。一筋縄ではいかない難敵だ。
最悪、いつまで経ってもゴールに辿り着けず、時間切れまで延々とワープし続けるハメになる事はあり得る。内装も多分、壁の数字以外は全く同じ光景が続く感じだろうから、そんなことが続けば自分が今どこにいるのかすら曖昧になったりして。うーん…考えただけでも発狂しそう。
まあ、進まなくちゃ何も始まりゃしない。気張って行こう。
「うっし!そんじゃ、一丁頑張るとしますか…!」
一度気合を付けて、次のワープパネルの上に立つ。
『ブゥン…』
「よっと…」
次の区画の番号は『31』。ワープパネルは今俺が立っているものを含めて変わらず4つ。人の姿は…ない。
さっさと次の区画へ。
『ブゥン…』
区画番号『10』、ワープパネルは4つ。そして…
「おっと、ようこそヤマブキジムへ!」
…ジムトレーナー2名、床にはモンスターボールを模したラインが入っており、壁には大きなモニター、周囲には観客席と観客たち…なるほど、前に俺が観戦した場所か。こういう風に繋がってるのな。
んー、取り敢えずは当たりってことで良さそうかな?
「随分と可愛らしい挑戦者ですが、見た所私が初戦のようですね。改めて説明しましょう。貴方にはジムリーダー・ナツメへの挑戦権を賭けて、今から私とバトルしていただきます。ルールは単純明快。負ければ即失格、勝てば迷宮攻略のヒントを得られます。簡単でしょう?さあ、バトルです!」
それだけ言って、相手はさっさと戦闘態勢に入ってしまった。1人はフィールドの端の方に、もう1人は中央の壁際に。対戦相手1人、審判1人の組み合わせってことか。ちょっといきなりのことでびっくりしたが、制限時間もあるので何も言わずに戦闘配置に立つ。
「両者、準備はよろしいですね?では、バトル開始!」
「行きなさい、スリープ!」
「ラッタ、頼んだ」
相手のポケモンはスリープ、こっちはラッタ。悪くない対面だ。
モニターにはお互いのポケモンの数が、ゲームと同じようにモンスターボールの数と色で表示されている。こちらは6体フルで、相手は2体。挑戦者に勝つと言うよりは、時間を掛けさせる、ポケモンを消耗させることに主眼を置いてるのかもしれない。スリープからして、眠らせる気満々だろ。
何にせよ、あまり時間は掛けたくない。上から噛み抜くのみ。
「"かみくだく"だ!」
「ラァッ!」
俺の指示を受け、ラッタがスリープ目指して走り出す。
「エスパータイプの強さを御覧に入れて進ぜましょう!スリープ、"さいみんじゅつ"です!」
「りぃーぷ!」
相手は案の定"さいみんじゅつ"を選択。迫りくるラッタに向けて、スリープが技の発動態勢に入った。
…でもな。
「遅い!ラッタ!」
「ラァッタァ!」
「りぃ…!?」
そんな悠長に構えてちゃ、ラッタの牙がスリープに届く方が早い。加速の乗った強烈な一撃が、無防備なスリープを抉る。
「りぃ…ぷ」
「スリープ!?そんな…」
「ス、スリープ、戦闘不能ッ!」
『オオォォーー…‼』
スリープ、一撃KO。結構脂肪厚そうに見えて、実はそこまででもないんだよな、確か。厚かったのは特防方面だったっけ。
それはさておき、まずは1体。朝早い時間帯もあってか、観客の方は幾分か控えめかな?
「く…だったら、これはどうです!?行きなさい、ゴースト!」
「ゴーッス!」
お相手の2体目はゴースト。いやお前さん、ゴーストタイプじゃん。エスパータイプの強さ見せてくれるんじゃなかったのかよ。エスパータイプなら他にも選択肢あっただろ。
…と、つい口から出そうになったツッコミを抑え込む。まあ、ゴースト使うのは原作通りみたいなところはあるから良しとしとこう。
「ゴースト、"のろい"です!」
「ゴォーッス!」
「らぁ…ッ」
ゴーストの技を受けたラッタが、一瞬苦しそうに身を捩った。
"のろい"ね…ゴーストタイプ以外が使えば素早さが1段階下がる代わりに、攻撃防御が1段階ずつ上がる積み技になり、ゴーストタイプが使えば自らのHPを最大値の半分減らして、毎ターン相手にHP最大値の1/4のダメージを与え続けるのろい状態にする。そして、ゴーストはその名の通りゴーストタイプ…厄介な技だ。
でも、やることは一緒さ。やられる前に、噛み抜くのみ。
「ラッタ、"かみくだく"!」
「ラァッタァ!」
ラッタ、ゴースト目掛けて一直線。"のろい"を使っているから、他の技を出せる余裕なんてないはず。そして、その自傷行為は命取りだ。
「く…ゴースト、躱すのです!」
「ゴーッス!」
"のろい"を決めたゴーストが、突っ込んでくるラッタの攻撃を避けようと、フワフワと上昇していく。
「逃がすな!突っ込め!」
「ラァアーッタァ!」
「ゴ…ォッ」
しかし、それよりもラッタの方が速い。茶色の弾丸が、上空に浮かぶゴーストへと突き刺さる。実体を持たないように思えるゴーストだが、実際はちゃんと実体があるようだ。まあ、そうじゃなきゃインチキにも程があるポケモンになっちまうからな。改造ポケモンだが、第5世代までのふしぎなまもりミカルゲとか、そんな感じの奴。
「…ゴ、ゴースト戦闘不能!よって勝者、挑戦者・マサヒデ!」
『オオォォーー…‼』
かくして思いの外あっさりだったけど、初戦はサクッと勝利することが出来た。
「…お強いですね。子供だからと甘く見てしまったでしょうか?」
まあ、ジムトレーナーで苦戦するようじゃ、ジムリーダー相手の勝利はとてもじゃないが覚束ない。未被弾、持ち物消費なしと順当な滑り出しだが、これぐらいは出来ないと…って言うのが正直なところ。
「自分の力不足を反省する限りですが、負けた以上は攻略のヒントを差し上げましょう。実は、貴方たち挑戦者が行ける区画の数は制限されておりまして、このままではいくらワープを重ねても、ゴールに辿り着くことは出来ません。行ける区画を増やすには、我々ジムトレーナーと戦って勝利する必要があります」
…あー、ジムトレーナーに勝つと少しずつゴールへのルートが開放されるって寸法か。要するに「ジムトレーナーしばき倒してジムリーダーを目指せ」っていう、いつも通りのことなんだな?
「そして、先程私に勝利したことで、貴方が行くことの出来る区画が増えました。貴方がこれまでワープに利用したパネルの中に、ワープ先が解放された区画へ切り替わったものもあるかもしれません。頑張って探してみることです。では、健闘を祈ります」
そう言い残して、ジムトレーナーは一瞬で陰も無く消え失せた。審判役のトレーナーも同様だ。
驚き、どういう原理なのか少し考えて、行き着いたのは"テレポート"という答え。エスパータイプ…と言うよりケーシィの専売特許という印象がある。野生ポケモンとして出会う度、一発捕獲か眠らせないと即座に"テレポート"で逃げていくのは序盤でよく見た光景だ。さらに、第2世代にはポケモンリーグから家まで送ってくれるケーシィがいた。仕様のせいで、地方を跨いでの"そらをとぶ"が出来なかったから。ちょっとだけ懐かしい。
それにしても、ワープ先が解放された区画へ切り替わったものがあるかもしれない…ねぇ。たった1戦勝ったぐらいで全開放とは思えないから、それはつまり、ジムトレーナーに勝つ度に1からワープパネル踏みまくり直せってことだよな?1回の勝利でどの程度解放されるかは分からんけど、大雑把に計算して50区画×4だから、ワープポイント200ヵ所。それを1時間の時間制限内に複数回。
ヒントから辿り着いた事実に、クチバジムでの終わらないゴミ漁りの記憶が蘇る。ナツメさん、ちょいと鬼畜すぎやしませんかねぇ?ジム側としては、そうやって上手く挑戦者の数を調整しているんだろうけど、やらされる側としてはたまったもんじゃない。事実、あの後精魂尽き果てた俺は、体力的にも体調的にもダウンしてしまったのだから。
制限時間があるのであの時のようなことにはならないと思うが、何にせよ立ち止まっている時間はない。当面の目標は『ゴールを目指す』から『ジムトレーナーを倒す』に変化。嫌な予感に苛まれながらも、観客の歓声に送られて次の区画へとワープしていった。
しかし、そうポンポンとジムトレーナーに出会えるはずもなく、しばらくひたすらにワープし続ける時間が続く。しかもこの区画、1つ1つが微妙に大きいので、1区画内のパネルからパネルへの移動にも多少の時間がかかってたり。
「3番、失格です!」
「9番、失格!」
「5番、失格だ!」
そうしている間に、ポツポツと聞こえ始める挑戦失敗を告げるアナウンス。1桁番号の人は俺と一緒に挑んだ人たちなので、時間切れではない。ジムトレーナーに負けたか、棄権したか…
何もなく過ぎていく時間に焦燥に駆られながらも黙々とワープを続ける。そして続けていれば、いつかは当たりを引けるもの。2人目、3人目のジムトレーナーを立て続けに撃破。これで波に乗れたのか、3人目撃破から程なくして4人目のジムトレーナーとも遭遇。クチバジムを想起させるような事態は、終ぞ幻となって消えた。
-----
「お見事…です。迷宮攻略4つ目のヒント、貴方に授けましょう」
そんなこんなで挑戦開始から30分。時間経過と共にポツポツと脱落のアナウンスが聞こえ始める中で、俺はとりあえず順調にジムトレーナーと遭遇し、順調に勝ち星を重ねることが出来ていた。
ここまで勝ち取った攻略ヒントを繋ぎ合わせていくと…
1.ゴールを目指すには複数人のジムトレーナーに勝つことが絶対条件で、
2.ゴールは『50番』の区画にあるパネルと直接繋がっていて、
3.『50番』の区画へは『40』番台の区画のどこかから行くことが出来る。
…という感じ。
そして、たった今4つ目のヒントがもたらされる。
「4つ目のヒント、そしてこれが貴方に与えられる最後のヒントです。私に勝利したことで、全ての区画が開放されました。私達のリーダーが待っています。攻略まであと一歩、頑張って下さい。では」
そして、本日4人目の対戦相手となったジムトレーナーは姿を消す。与えられたヒントは、ゴールまでの道が完全に開かれたという現実。制限時間の残りはおよそ30分前後。後はもうこの時間内にゴールまで突っ走るだけ…ってワケだ。
ジムリーダーへの挑戦権はほぼ手中に収めたも同然な状況に、観客席も大盛り上がり。徐々に増え始めた観客数も手伝ってか、初戦の時とは比較にならない大歓声と共に、俺はラストスパートをかける。
ワープに次ぐワープで、ヒントに従ってまずは40番台の区画を目指す。40番台の区画に行けたら、そこにあるワープパネル総当たり。ひたすら『50番』の区画を目指す。
どこかでジムトレーナーの横槍が入るんじゃないかと警戒していたが、その様子は一向にない。となると、勝負の相手は時間のみ。
『ブゥン』
「…『50』!」
そのまま40番台の区画のワープパネルの総当たりを続けることしばらく。200ヵ所ものワープパネルに乗りまくるのは骨が折れたが、遂にゴールへ直接通じる『50番』の区画に辿り着く。ここまで来たら、後はもうゴールしたも同然。
そして…
『ブゥン』
「おめでとうございます!」
「おぉっ!?」
変化のない無機質な空間が一転。ワープと同時に祝福の歓迎を受け、俺の挑戦は終わりを告げた。残り時間、10分と少々…かなり余裕を持っての攻略成功だった。正直完全な運ゲー状態ではあった。
これまでジム挑戦って言ったら、グレンにクチバにセキチクと色々イレギュラーなことが起きてばっかりだったけど、偶にはこんな風にすんなりいくことがあってもいいよネ。
…まあ、その結果見所さんは無事お亡くなりになってしまったワケなんだが。迷宮に苦戦したのは最初だけで、進むごとに何故か調子が良くなるギミック攻略に、ほとんど苦戦しなかったジムトレーナー戦。トドメに基本的にただ黙って延々ヒュンヒュンとワープしているだけの絵面…道中何かしらのトラップとか、トラブルすら無いのでは、面白いはずもない。
よって、厳正なる審査の結果、挑戦の様子は大幅にカカカカットさせていただくこととなりました。ご承知おきいただきたい。
いよいよヤマブキジム戦に突入です。ジムトレーナーの皆さんは無事催眠厨となってしまいましたが、ギミック上致し方なし。さいみんじゅつは大事だよね、ケーシィ捕まえるためにも!
そしてふしぎなまもりミカルゲ、実際作者の弟が持ってました。友達から貰ったとか言ってた気がしますが、どこで手に入れたのやら。取り合えず、奇跡ポリ2で完封しておきました。改造、ダメ、絶対。