成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第59話:超知識(チート)vs超能力(エスパー)(1)

 

 

 

 

 ヤマブキ大迷宮と称するワープパネル地獄を突破し、ジムリーダー・ナツメへの挑戦権を無事獲得出来た。しかし、この世界のジムはゲームのようにそこから即リーダー戦とはならないのが普通だ。

 

攻略だけでも満身創痍でパーティがガタガタになっている、あるいはギミックそのものに苦しめられて心身ともに疲弊するトレーナーは少なくない。そういったトレーナーたちのため、ジムリーダー戦までにはある程度のインターバルが設けられている。この時間を使って、ポケモンや自身の回復等、決戦に向けた準備をすることになる。それはヤマブキジムとて例外ではない。

 

まあ、今回の俺の場合はラッタとスピアーだけで粉砕☆玉砕☆大喝采!して来たもんだから、そこまででもなかったんだが。2体の回復と、あとは持ち物の再調整ぐらいしかやることがない。ただ、順当な措置ではある。

 

そういうワケで、あまりに暇なので何か時間の潰せるものがないかと探していたら、ジム内に迷宮に挑むトレーナーたちの様子を中継している巨大モニターを発見。これ幸いと、他の挑戦者たちが大迷宮に挑む様子を見てたんだが…ジムトレーナーと制限時間の前に散っていく人の何と多いことか。

 

催眠対策が不十分だとあっさり嵌められて負け、レベルがある程度無いとあっさり嵌められて負け、負けずともパーティをガタガタにされて次のトレーナーに負け、もしくはバトルに持ち時間を多く盗られてタイムアップ。失格を告げるアナウンスと同時に、脱落者が続々と「お帰りはあちらです」とばかりに容赦無くテレポートさせられていく。

 

その様は、ポケモントレーナーという職業が弱肉強食の世界であることを改めて思い出させ、何とも諸行無常の響きを感じる。まあ、それもこれもクリア出来たからこその感想なんだがネ。

 

てゆーか、俺以外にクリアする人がいないんですが、ヤマブキジムの攻略難易度どうなってんの?これじゃジムバッジ1つ2つ程度のトレーナーじゃ、永久に攻略不可能だろ。ジムはトレーナーを篩い落とすのが役目みたいな部分はあるにしても、ある程度は調整が必要なのでは?

 

まあ、ここら辺は正式な単独の公認ジムになれれば、追々改善していくのかもしれない。それはそれとして、並行してナツメ戦に向けての編成考えないとな。

 

 

 

ヤマブキジムのバトルは、これまで同様スタンダードなジム戦のルールだ。使用するポケモンは前回のセキチクジム戦と同じく4対4。だから、今の手持ち6体から4体を選出して戦う形になる。

 

そうなると、重要なのは相手の編成がどうなっているか。以前観戦した際にナツメさんが使ってたのは、バリヤード・スリーパー・ナッシーの3体。これにエースのフーディンが控えているはず。他にエスパータイプとなると、ヤドラン・ルージュラもいる。もしかしたらゴースト・ゲンガーのどちらかもいるかもしれない。

 

使っていた技の方は、定番中の定番技"サイコキネシス"に、ジムトレーナーも多用していた"さいみんじゅつ"+"ゆめくい"コンボ。"みらいよち"も要所要所で有効に機能していたので、よく印象に残っている。

 

火力面を考えてスピアー・ハッサムは当確、サポート面を考えるとレアコイルも入れておくと安定すると思う。だから、実質サンドパン・サナギラス・ラッタからラス1を選ぶことになる。

 

諸々考慮すればサンドパンかサナギラスの2択なんだが…うん、ここは初志貫徹だ。活躍させると決めたのだから、今日は最後までラッタで行こう。何かあってもスピアーが何とかしてくれるさ。そして技構成についてはジム挑戦の冒頭(前話)を参照で。

 

 

 

そうして後続勢の奮闘を高見の見物してたんだが、ようやく2人目の合格者が出たところで、ついにその時は来た。

 

 

『お呼び出しします。挑戦者受付番号8番、トキワシティのマサヒデ様。ジムリーダー戦を行いますので、受付までお越し下さい。繰り返します…』

 

 

呼び出しのアナウンスが流れ、俺は大きく一つ息を吐き、モニターの前を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

『お待たせ致しました!これより、ジムリーダー戦を行います!』

 

 

 そのアナウンスと同時に、大歓声がスタジアムに響き渡る。ヤマブキジムリーダー戦の幕開けだ。と言っても、俺自身はまだフィールドに入っていなくて、モニター越しでそれを眺めているだけなんだが。

 

 

『まずは、挑戦者の入場です!チャレンジャー、トキワシティのマサヒデ!』

 

 

その言葉と同時に、俺は控室のワープパネルの上に立つ。ジムリーダーへの挑戦権を賭けたギミックがワープパネルなら、本戦入場もワープパネル。それでこそヤマブキジム。僅かな浮遊感の後、一瞬のうちに俺の身体はフィールドへ。

 

 

『オオオォォーーーーー!!!!』

 

 

視界が切り替わった先に待っていたのは、地鳴りのような大歓声。モニターを見渡せば観覧席を埋め尽くす、人、人、人。見た所、ほぼ満席になっているのではないだろうか。今日は平日なんだが…暇な人間のなんと多いことか。

 

 

『続きまして、ジムリーダー・ナツメの入場です!』

 

 

アナウンスと同時に、フィールド反対側を真っ白な煙が包み込み、鳴り止まぬ歓声がさらにもう一段大きくなる。

 

そして、煙が晴れればそこに彼女はいる。

 

 

『オオオォォォォーーーーーッ!!!!!!』

 

 

観衆の大本命にして、本日の俺の主目標、ジムリーダー・ナツメの登場だ。ゲームとよく似た衣装に身を包んだ彼女は、そのままフィールド中央へ向かって歩き出す。それに合わせて俺も中央へ。

 

 

「…ようこそ、小さな挑戦者さん…私がヤマブキジムのリーダー、ナツメよ」

 

「マサヒデです。よろしくお願いします」

 

 

しっかりとした挨拶は全ての始まりにして基本。よって大事。古事記にもそう書いてある。たぶん。

 

 

「…貴方と戦える日が来ること、楽しみにしていたわ」

 

「…?どういうことでしょう?」

 

 

ナツメさん、貴女とは今日が初対面かつ、名前を知られるようなことは何もしてないと思うんですけど。

 

 

「貴方がここまで来ることは、前から分かっていたのよ…そう、貴方がこのジムを初めて訪れた時からね」

 

 

…ああ、なーる。

 

 

「未来予知ってヤツですか?」

 

「…そう。私は超能力者(エスパー)…それぐらいのこと、簡単に出来るわ。全てを完全に見通せるわけではないのだけども」

 

 

現実世界だったら胡散臭さがもう北欧名物シュールストレミングのレベルでプンプン醸し出されてるところ。しかも決められた運命だなんて…ナツメさんに言われると、ちょっとだけ気分良くなっちゃう。流石はエスパー少女。

 

まあ、ポケモン世界じゃ笑い飛ばすこともスルーも出来ないんですが。と言うか、1カ月前に観戦してたこと把握されてるとか、マサヒデさん怖い。そういや、何か意味あり気な不気味な笑顔見せられたこともありましたねぇ。あの時もちょっとだけ怖かったんですよ。それに、ナツメさんは喋り方と言うか、声も若干陰気臭い感じなんで、そこが余計にミステリアスな怖さを助長している…ような気がする。

 

とりあえず結論、ナツメさんは普通に怖い。なお、シュールストレミングの実物は食ったことは勿論、開けたことすらないので悪しからず。

 

 

 

しかし、大人びて見えると言うか、表情が乏しく、整っているという表現を通り越して、薄ら寒さも感じるような顔付き。氷の女王、とでも表現すればそれっぽいだろうか。前述の話し方も相まって、原作で後に女優になってたのも納得出来るだけの美貌をお持ちではある。

 

ただ、原作よりも前の時代ということもあってか、思っていたよりも若い…と言うより、幼い。至近距離で面と向かい合うのは初めてだが、まだ若干の垢抜けなさがあるようにも感じる。まあ、それ以外は原作初期の印象そのままなんだけどな。物静かで冷静、そしてミステリアスなオーラ。なお、流石にムチは持ってない模様。何だったんだろうね、初代のあのムチ。誰か叩きたかったんだろうか?ドSかな?

 

なお、雑誌に乗ってたプロフィールによれば、現在ナツメさんじゅうきゅうさい。間違っても『ナツメ、さんじゅうきゅうさい』ではない。エスパー“少女”の異名は伊達ではないのだ。“少女”が“レディ”になるのは…少なくとも5年ぐらいは先の話かな。

 

 

「……貴方、ジムリーダー戦を前に随分と余裕ね?」

 

「え、そうでしょうか?」

 

「…そうでしょう?だって、初対面の女性相手に思いきり失礼なことを考えてるぐらいだもの。人は見た目によらないものね…」

 

「…!?」

 

 

馬鹿な、コイツ心の中を…!?

 

 

「超能力者ですもの。この距離なら、貴方の考えてる事なんて手に取るように分かるのよ?と言うより、何なの?私、ムチなんて持ったことないわよ。それに、原作?女優…?何の事かしら?」

 

 

あ、さいですか、超能力者凄いっすね…じゃなくて、まずいマズいマズイ。これはアカン。ガチのマジで考えてること筒抜けになってやがる。本当に心を読めるとか…妖怪覚か何か?

 

 

「……妖怪でも化物でもないわ。今までも色々失礼なこと考えられてたことはあるけれど、貴方みたいなタイプは初めてね…」

 

 

アッハイ、スンマセン…じゃなくて、このままじゃ色々と洒落にならんレベルでヤバいことになっちゃう。具体的には戦術とか技構成とか原作知識とか原作知識とか、もひとつオマケに原作知識とかあれやこれや。何とかしないと…と言うか、この思考も筒抜け…

 

 

「…原作知識とやらはともかく、そんなことまで私に知られてしまってもいいのかしら?」

 

 

…やっぱりダメだこれ。これはもう余計なことは考えちゃいけない、勝負に集中するしかない。でもそうなると戦法が筒抜けに…なら、無心になるしかない?でもそんなこと絶対に無理だよな?

 

 

 

 

…あーもう、どうにでもなーあれ。

 

 

「…まあ、それは試合が終わってからでもゆっくり聞かせてもらうとしましょう。今はバトルが先ね。知ってるでしょうけど、私が使うのはエスパータイプのポケモン。私、貴方の存在に気付いた時から、貴方がどんな戦いを見せてくれるのかとても興味があるの。ジムリーダーとして、エスパータイプのポケモンが持つ強さ…存分に見せてあげる。かかっていらっしゃいな」

 

 

そうしてナツメさんは踵を返した。とりあえず命拾い出来た…で、いいのかこれ?勝負前からして怖いし、勝つにせよ負けるにせよ、終わった後も怖いんですが。39歳云々はとりあえずお約束みたいなものなので、勘弁していただけませんかね?

 

 

 

…はぁ、これはどう誤魔化したものやら。こんなんでこうなるとか、予想外もいいところ。自業自得な面がないとは思わんけど、理不尽が過ぎやしませんか。サカキさんかよ。

 

ああ、腹痛ぇなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「これよりジムリーダー・ナツメvs挑戦者・マサヒデのバトルを行います。改めてルールを確認します。この試合は、ポケモンリーグ公認のジムリーダー戦となります。使用ポケモンは互いに4体、アイテムの使用は禁止、持ち物は可です。試合途中のポケモンの交代は挑戦者にのみ認められます」

 

 

審判によるバトルに向けた最後の確認が行われる。まあ、この辺は最初に言った通りでこれまでと変わりはない。

 

今後のことを考えると頭と腹が痛くなる一方だが、本番を目前にして弱気になってるわけにもいかない。勝つ。勝った上で全てを誤魔化す。誤魔化した上で逃げる、逃げ切って見せる。全開だターボエンジン。

 

全ては勝ってから。さあ、勝負だ超能力者。

 

 

「よろしいですね?それでは…バトルスタートッ‼」

 

「いけ、ラッタ!」

「ラーッタァ!」

 

「バリヤード、行きなさい」

「ばりばり~」

 

 

俺の先発はラッタ、向こうはバリヤード。エスパーの他にフェアリータイプも持ってるから、"かみくだく"が等倍になることだけは注意だな。そして、バリヤードと言えばリフレクター・ひかりのかべの両壁張り技だろう。

 

 

「………」

「ばりばり~」

 

 

考えてた傍からバリヤードが若干青っぽい透明な壁を創り始める。初めて見る技だが、ひかりのかべはレアコイルでよく使っているので、こっちはリフレクターだな。声はないが、ナツメさんからテレパシーでの指示が出ているのだろうか。

 

 

「ラッタ、つるぎのまい!」

「ラタァー!」

 

 

まあ、向こうが壁を張るなら、こっちはこうするだけ。1回舞えば、壁の上からでも無理矢理しばき倒せるだけの火力になる。この機会を逃さずしっかり積んでおくべき。

 

 

「………」

「ば~り~!」

 

 

壁を張り終わったバリヤードは、続けて次の動きを見せる。両手を前に突き出すあの動きは、攻撃の構え。直後、空間が歪ませながら衝撃がラッタへ迫る。エスパーお決まりの"サイコキネシス"か?

 

 

「ラッタ、いかりのまえば!」

「シャァーッ!」

 

 

なら、こっちは"いかりのまえば"で応戦だ。バリヤードの攻撃は距離もあって、ラッタは回避に成功。そのまま駆け出し、一気に加速してバリヤードへ一直線。

 

対するバリヤードは壁を盾に迎え撃つ構えだが、"いかりのまえば"は相手のHPを半分にする定数ダメージ技で、壁張られようが関係ない。その体力、無理矢理半分持ってってやるぜ。

 

 

「…ばり?ばり~!」

 

 

ところが、ここで急に方針を変えたか、受ける構えだったバリヤードが横っ飛び。一直線に迫るラッタは、寸でのところで躱された。惜しい。

 

 

「ラッタ、もう一回だ!」

「シャァッ!」

 

 

ラッタには諦めず噛み切りチャレンジを指示。それを見たバリヤードは、ラッタから逃れようと走り出した。絶対に嚙まれたくないバリヤードと、絶対に噛みたいラッタによる、噛まれたが最後、倒れるまでヒマワリの種のようにガジガジされる鬼ごっこの始まりである。つるぎのまいもあるし、物理耐久のないバリヤードならいかりのまえば込みで確定2発に出来るはず…

 

…なのだが、肝心なそのバリヤードが捕まらない。ああ見えて意外と速いからなぁ、バリヤード。そして必死の戦いではあるんだが、バリヤードの走り方がコミカルな動きなせいで、見ていてどこか締まらない。

 

まあ、それならそれで別にいい。リフレクターが消えるまで追い掛け回すだけだ。せいぜい逃げ回ってもらおう。むしろ、そうしてもらった方がありがたい。壁張られたら時間稼ぎも重要だから。

 

 

「ばり~ッ!」

「らぁッ!?」

 

 

なんてことを考えていたら、それがバレたかバリヤードが反転。振り向きざまに、迫っていたラッタにそのまま至近距離攻撃をかましてきた。

 

 

「ラァッタァー!」

「ばり…ぃ!」

 

 

幸い、当たりはしたがクリーンヒットではなかったため、そのままラッタはバリヤードに突っ込んだ。

 

壁の上から、ラッタの強烈な一撃がバリヤードを抉る。定数ダメージだから倒れることはないが、完全に決まった。つるぎのまいも積めているし、これでバリヤードには壁など関係なしにそのまま押し切れる。

 

 

「そのまますてみタックル!」

「シャァーッ!」

 

 

勢いに乗って追撃のすてみタックル。

 

 

「……」

「…ばりぃッ!」

 

 

バリヤードはそれを迎え撃つ構え…は取らず、今度は黄色く光る壁を創り出した。"リフレクター"に続いて"ひかりのかべ"も張るつもりらしい。だが、それは同時にバリヤードをほぼ捨てる選択でもある。

 

 

「ラタァーッ!」

「ばり……」

 

 

その壁が完成するかどうかというタイミングで、ラッタの小さな身体がバリヤードに弾丸となって突き刺さった。バリヤードが吹っ飛び、反動で壁に当たったボールのようにラッタも大きく跳ね返る。

 

 

「バリヤード、戦闘不能ッ!」

 

 

倒れたバリヤードは立ち上がることなく、戦闘不能の判定。まずは一本先取だ。

 

 

「……やっぱりね」

 

 

何が「やっぱり」なんでしょうかねぇ?

 

 

「…私の予知していた通りよ。貴方、やっぱり良い腕してるわ。戻って、バリヤード」

 

「…それはどうも」

 

「でも、私の勝利は揺るぎない、決められた運命(みらい)。だから…ジムリーダーとして、39歳呼ばわりのお礼も兼ねて、全力で捩じ伏せてあげる……行きなさい、フーディン」

 

「ディン…ッ!」

 

 

おいおい、2体目で早くもエースの登場かよ。いくらなんでも早過ぎやしないか?あと、貴女「ナツメさんじゅうきゅうさい」をかなり根に持っていらっしゃる?

 

 

「…別に、エースを2番目に持ってきちゃいけないなんて決まり、どこにもないわ。どのポケモンをどこで使うかもトレーナーの腕でしょう…?それと、オバサン呼ばわりされて、怒らない女はいないわ」

 

「アッハイ。スンマセン。その件につきましては深く反省しておりますです、ハイ」

 

 

それはごもっともで。それと、あれはほんの出来心だったんです、許してください。何でも(ry

 

 

「…ダメ。そんなふざけた気持ちの謝罪なんて、受け入れられるワケないわ…」

 

 

ちょっとだけ茶目っ気出したら、マジレスの無慈悲な死刑宣告をくらってしまったでござる。それもその容貌で言われると、凄味も感じて気後れしちまいそうになる。やっぱり謝る時は誠心誠意、鉄板焼き土下座も辞さない覚悟でやらないとダメだね。

 

 

「……今の私、結構暴れたい気分なの。だから、大人しくやられてちょうだい」

 

 

でも、謝罪はしても「はい、そうですか」と降参する理由はないので、その命令は全力で拒否します。

 

 

 

…それはさておき、どうすっかなこの状況。まさかの2体目でのエース登場は、予想外だったもんで流石に驚かされた。冷静に考え直せば十分ありな選択肢ではあるけど。

 

そのフーディンはバリヤードよりもさらに物理耐久は紙だが、その代わりに初代屈指の高速高火力のアタッカー。その一撃は並大抵のポケモンでは軽く吹き飛ばされる。ラッタもその例外ではなく、受け切ることは難しい。しかも場にはリフレクターとひかりのかべの両壁欲張りハッピーセット。向こうにとっては理想的な展開だ。

 

仮に引くとしたら、引き先はレアコイルかハッサムか…ただ、相手がフーディンとなると出来れば万全の状態でぶつけたい。

 

小回りの利くラッタの機動性なら、フーディンの攻撃を避け切って攻撃を叩き込める可能性はあるが…結局、ラッタを捨て気味にそのまま攻めるしかない…か。

 

 

「……」

「ディインッ!」

「避けていかりのまえば!」

「シャァッ!」

 

 

バトル再開と同時に双方が動き出す。フーディンの攻撃はほぼ間違いなく"サイコキネシス"。しかし、バリヤードのそれよりも明らかに速い。

 

 

「ラ…ッ!?」

 

 

避け切れなかったラッタ。まともに直撃したわけでもないのに、一発でフィールド中央付近から俺の目と鼻の先まで吹き飛ばされた。

 

 

「ラッタ、立てるか…?」

「ラァ…!」

 

 

しかも速いだけでなく、威力もある。立ち上がりはしたが、若干足元が震えているようにも思える。それほどに、フーディンの一撃は重い。

 

 

「狙いを絞らせるな!いかりのまえば!」

「…シャッ!」

 

 

とは言え、それでも出来るのは愚直に立ち向かうだけ。現状、ラッタにそれ以外の選択肢は取らせてやることが出来ない。

 

立ち上がったラッタは、再びフーディンに向かって行く。今度は左右にジグザグに動きながらの突進だ。狙いをつけるのは幾分か難しいはず。

 

そして、それを見たフーディンは…動かない。ラッタが射程圏に入っても、ただラッタをにらみつけているだけで、攻撃の素振りは見せなかった。

 

そのままの状況で、逆にラッタがフーディンを攻撃圏内に捉える。回避不可能な距離にまで飛び込んで、一気に加速。起死回生の一発がフーディンに届く…

 

 

「……」

「ディン」

「…!?」

「ラァッ!?」

 

 

…ことは無かった。突然、フーディンの姿がぶれたかと思った次の瞬間には、直撃コース上にフーディンの姿は無く、ぶつける対象を失った突進のエネルギーそのままに、ラッタは盛大なヘッドスライディングを披露する結果に。

 

 

「ディインッ!」

「ら…ッ」

 

 

そして、消えたフーディンは少し離れた位置に瞬間移動。滑るラッタを狙いすました、真横からの一撃。大きく吹っ飛んだラッタが、フィールドと観客席を隔てる壁に叩き付けられた。

 

そして、そのまま立ち上がることは出来なかった。

 

 

「ラッタ戦闘不能!」

 

 

ラッタに戦闘不能の判定が下り、戦況は互いに3-3のイーブンとなる。

 

それとフーディンの瞬間移動は、サイドチェンジ?…いや、んなワケねえ。あれはもっと先の世代の技だ。だったら…テレポートか。

 

ゲームでは野生ポケモンとの戦闘を終了させるだけで、ケーシィがプレイヤーをイラつかせる追加効果があるぐらいの技だが、入れ替わるポケモンがいないだけの"サイドチェンジ"みたいな使い方だ。

 

単語の瞬間移動(テレポート)の意味としては正しいとも思うが。

 

 

「…さあ、どうするのかしら?小さくて失礼な挑戦者さん…?」

 

 

ふと顔を上げれば、ナツメさんが不敵に不気味に笑っている。その笑顔、超怖いです。

 

しかしそうも言っていられない。相手は無傷のエース・フーディン。さらにリフレクターとひかりのかべの両壁も健在…加えてあのテレポート。最悪、このまま4タテもあり得るこの状況。どうすれば打破出来る?

 

ハッサムで壁の上から殴り倒すことを期待するか?バレパンならあの瞬間移動にも対応出来るかもしれない。それとも、火力面が若干不安だが、耐性を盾にレアコイルで壁張りつつ削りに行くか?でんじはも撒けばハッサムもスピアーも一気に動きやすくなるか。或いは、目には目を、歯には歯を、エースにはエースをってことでスピアーぶち込むか?

 

 

 

ヤマブキジム戦はお互い2体目にして、早くも最大の山場を迎えた。

 

 

 




ナツメ戦開幕。なお、テレポートは第8世代では手持ちポケモンと入れ替わる効果になっていますが、主人公は第7世代までの知識を元に話していますので、お間違いないよう。
…え?それなら「他のポケモンと入れ替りになるだろ」だって?細けぇこたぁ気にしない()

それはさておき、ダイパリメイク発売も秒読みとなってきました。皆さんはどっちを買うか、或いは両方買うか、もうお決まりでしょうか?作者は…やはり思い出補正でシャイニングパールですね。プレイ時間で言えば、一番やったかもしれません。ポケモンホームで眠っているパール産の色違いムクホークが「出番はまだか」と疼いているぜ…
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