成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第60話:超知識(チート)vs超能力(エスパー)(2)

 

 

 

 

 ヤマブキジムリーダー・ナツメさんとのバトルは、互いに1体が倒れて残りポケモン3-3。スコア上ではイーブンな戦況。しかし、ナツメさんは2体目にして早くもエースポケモン・フーディンを投入。無傷な上、バリヤードが残した両壁も残っている。対してこちらは何もないフラットでクリアーな場…単純に不利な環境。気を見るに敏と言うか、中々手厳しい一手だ。

 

タイプ相性は弱点を突けるのがスピアーとハッサム、耐性があるのがハッサムとレアコイル。一見悪くないようには見えるんだが、どうしようか。この段階でスピアー、もしくはハッサムをぶつけるか?それともレアコイルを1回挟む?フーディン以降のことも考えると、スピアーかハッサムのどちらかは無傷で残しておきたいが、それを許してくれるような相手なのか…

 

 

「いってこい、レアコイル!」

「ビ、ビビー!」

 

 

何にせよ、まずはあの両壁による守りとテレポートによる瞬間移動、この2つを何とかしないと、フーディンを突破出来る気がしない。で、あるならば…まあ、こっちから入るのが最適解なのではなかろうか?

 

 

「レアコイル…はがねタイプのポケモンね」

 

「ええ。エスパー相手には、悪くない選択でしょう」

 

「…エスパータイプのポケモンが苦手にしてるのは知っているわ。けれど、手がないとでも?」

 

「いいえ。でも、やることは決まってるんで」

 

 

レアコイルに今して欲しいことは、後ろに控えてるエースたちのための環境を整えること…それが、レアコイルに求める最優先課題。受けるのは最悪ハッサムでも出来るし、逆にレアコイルでもフーディンと撃ち合いもある程度は出来ると思うが、これは現状レアコイルにしか出来ない。

 

バトル再開初手はひかりのかべで安定。壁技はお宅のバリヤードだけの専売特許じゃない。それに相手が必要な技ならともかく、自身単体で完結するような補助技は、いくらフーディンと言えども手の打ちようはないだろ。"ちょうはつ"でも持ってるなら話は別だが。

 

 

「レアコイル、ひかりのか「させない」b…!?」

「ディン…!」

「ビ…!?」

「レアコイル!?」

 

 

レアコイルの真正面にテレポート!?考えが甘かったか!?ひかりのかべを発動するよりも早く、機先を制してフーディンが仕掛けて来た。しかもこれは…

 

 

「ディインッ!」

「ビ…ッ」

「レアコイルッ!?」

 

 

そのまま、フーディンはレアコイルを右手で殴り付け、殴られたレアコイルが仰け反ってわずかに後退。その後すぐ、フーディンはテレポートで再びレアコイルから離れる。そして、フーディンがレアコイルを殴りつけた時、振り抜いた右の拳はメラメラと炎を纏っていた。

 

 

「"ほのおのパンチ"、ですか」

「…正解」

 

 

となれば、もうそれしかない。しかし、まさか伝説の存在、3色パンチャー・フーディンをまた目にする時が来ようとは。とすると、見えていない残りの技は"れいとうパンチ"か"かみなりパンチ"だったり?

 

 

「…それも正解。"かみなりパンチ"の方」

「おおう、マジか…」

「…そう言う割には、あまり驚いてないのね?」

「いや、まあ…」

 

 

そりゃまあ、第3世代までならともかく、今となっては俺からしたら完全に絶滅したと思っていた過去の遺物その物ですし。まあマスターズリーグのトレーナーにも使ってる人いたから、この世界では絶滅はしてない。と言うよりむしろ全盛期だし、ナツメさんが使っても不思議ではないけど。

 

ただ、フーディンの物理技とか、弱点突かれても1発ぐらいなら「別に…」って感じではある。まさか性格補正+努力値Aブッパしてるはずもあるまいし。もしやってたならド変態もいいところだ。

 

…やってないよな?

 

 

「……ほのおタイプの技は特殊技よ?何か勘違いしてない?それに…きあいだま?性格補正?努力値?」

「…あー…」

 

 

今はまだ時代的に、物理・特殊の判定とか、性格による能力補正とか、努力値…ゲーム的には基礎ポイント。この辺りの詳しいメカニズムがまだ解ってはいないのだろう。根本的な知識が間違ってるor足りないってことだな。

 

…つまり、モノによっては超能力で多少心が読まれても問題なかったりする…のか?

 

 

「…レアコイル、どうだ?」

「ビ、ビビービ!」

 

 

何にせよ、まずはレアコイルの状態確認だ。幸いダメージはそこまででもなさそう。当然っちゃ当然か。まさかの奇襲で驚きはしたが、これでやられるようなら著しく育て方が悪いか、著しく耐久方面の個体値が低い、もしくは極端に運が無いかのどれかとしか言えない。

 

ただ、それでも一定のダメージはある。悠長に構えてられなくなった。上下左右どこでも好きな攻撃位置を取れて、尚且つ一瞬で間合い管理も自由に出来るってのはホント厄介だな。

 

 

「なら、今度こそ決めてくれよ。ひかりのかべだ」

「ビー!」

 

 

それでも作戦の大筋は変更なし。心読まれて不発に終わる可能性は大いにあり得るけど、それを考えてたら何も出来ない。ちょっとした小細工は入れさせてもらいつつ、壁を再び張りにかかる。

 

 

「…なんだか、小馬鹿にされてるようで不愉快だわ。何を企んでるかまでは分からないけど…そのやりたいこと、丸ごと捻り潰してあげる…!」

「ディン…ッ!」

 

 

それに対して、相手の選択は正攻法。テレポートからの高火力の特殊技(物理)で以て、レアコイルを殴り飛ばすつもりらしい。殴るのに特殊技とはいったい…

 

ともかく、今はひかりのかべを完成させられれば良し。もっと欲張るなら…

 

 

「…!フーディン戻って!」

「ディンッ!?」

「"でんじは"!」

 

 

…その厄介な足も、奪ってしまえればもっと良い。まあ、次から次へとビュンビュンテレポートされたらまぐれ当たり期待するしか手がなくなるからネ。

 

 

「ビ…ッ!」

 

 

ナツメさんは俺の思考を読み取ったのか、フーディンを下がらせようとし、フーディンはそれに反応して攻撃を中断。テレポートした。

 

 

「ディ、イ…!?」

「…っ」

 

 

しかし、レアコイルはそれよりも早く、真正面で一瞬だが動きを止めたフーディンに、でんじはをまともに浴びせることに成功していた。ナツメさんサイドへとテレポートして現れたフーディンは、見るからに動きがぎこちない。

 

 

「10まんボルトッ!」

「ビビビッ!」

「く…テレポートッ!」

「ディ…!」

 

 

身体が痺れて思うように動かせなくなっているところに、追撃の10まんボルト。しかし、これは寸でのところで"テレポート"によって躱された。それでもそれ以上の余裕はなかったらしく、再度レアコイルから大きく離れた位置にフーディンは現れる。

 

 

「……やられたわ」

「フー…何とか通せたみたいですね。」

 

 

こっちは読まれて失敗するんじゃないかとヒヤヒヤだったんですがネ。まあ、それならそれでもう1回ひかりのかべを張りにかかるだけなんですが。

 

しかし、さっきの発言に今の反応…心の内は完全には読めていないのか?

 

 

「…全てを見通せる万能の力ではない、と言うこと…心を読む力も、未来予知も、ね。悔しいことではあるけど」

「そりゃ良かったです」

 

 

朗報・ナツメさん、まだ人間辞めてなかった。まあ、何でもかんでも分かるってんなら、ポケモン自体の能力さえあれば全戦全勝。もっと上の世界でバリバリやれてるだろうし。

 

そして、そんなナツメさん相手に五分に持ち込んだという格闘道場師範。前師範よりは格落ちと言われ、ゲームではすでに公認ジムの座を(半分)奪われ、挙げ句(たぶん)主人公に敗れて大事なポケモン(エビワラー・サワムラー)を譲渡するだけの存在だったが、実は結構優秀なのでは?俺の中で格闘道場師範の評価がグーンと上がった。

 

 

「また失礼なことを…でも、いいわ。私のフーディンには、他のポケモンにはない特別な能力があるの」

 

「…特別な能力?」

 

「ええ、そう。状態異常になった時、相手も同じ状態に出来るのよ。貴方のレアコイルも、一緒に痺れてもらいましょうか?」

 

 

………

 

……

 

 

あー…そりゃ特性のことか。なら別にいいわ。仮にフーディンの特性が"シンクロ"だったとしても、でんきタイプに麻痺は無効だからレアコイルには関係ない。身構えて損した。

 

それはそれとして、こういう時は相手の意を酌んだ反応を取っておくのが大人ってもの。見た目は子供、頭脳は大人、社会の荒波に揉まれた精神年齢三十路間近の男のコミュニケーションスキルってやつを見せてやる。

 

 

「ナ、ナンダッテー」

「ビ?」

 

 

…自分で言うのもなんだが、某殿下にすら劣る驚きの棒読み表現だったな。自己採点の時点で結果発表を待つことなく赤点落第確定、単位は不可でござる。そしてレアコイルはイマイチ感情が読み取り辛いところはあるが、差し詰め「あんた何言ってんの?」とでも言った、頭上に「?」が浮かんでいるような感じだろうか?

 

なお、そんな全く心の籠ってない反応をされたナツメさんは、若干目を開いて驚いたような不満なような…そんな様子。特殊能力のネタばらしする時ドヤってたような気がするけど、俺にとっちゃ驚く事でもなんでもないので仕方がない。

 

 

「なんでっ…どうして麻痺してないのよ…!」

 

「どうしてって…そりゃあ、でんきタイプが電気でやられてちゃお笑いでしょう?」

 

 

レアコイルが麻痺してないことに、ナツメさんは本日2回目の驚きを見せる。「何で?」と言われても、「それが仕様です」としか答え様がない。

 

考えてみれば第3世代では違ったとは言え、でんきタイプが麻痺しないのはタイプの特性。だから、こっちの世界じゃ当の昔に判ってそうな気もするが…今度、マチスさんに会う機会があれば聞いてみようかな?

 

 

「それはさておきレアコイル、ひかりのかべ」

「ビ!」

 

「っ…ほのおのパンチ」

「ディ、ン…!」

 

 

そして、ナツメさんの諸々を華麗に流して、ひかりのかべ。ナツメさんは阻止しようとするが、麻痺したフーディンの動きは鈍い。しかもその動作の途中でガクリと動きが止まってしまう。結果、レアコイルは攻撃を受けることなく、無事展開に成功した。

 

これでレアコイルの仕事は及第点だ。不発に終わるかとも思ったけど、何とかでんじはを通せた。後はここからどう盤面を詰めていくか…だな。

 

 

「…まだよ。運命の天秤の傾きが元に戻った、それだけの話」

 

「ええ、一息吐くには早いってことぐらい分かってますよ」

 

 

機動力を奪い、壁も創った。でも、勝てなきゃ意味がない。相手フーディンはまだ無傷だし、壁も残っている。それにレアコイルはすでに1発貰っているから、倒れはしないがそれなりにダメージを貰っている。まひを考慮に入れても撃ち合いは若干分が悪いか。

 

 

「だからこうするんです!戻れ、レアコイル!」

 

 

そうして、俺は腰のベルトにセットしてあったモンスターボールを外し、高々と掲げて叫んだ。ポケモン交代である。何気に公式戦で試合中にポケモン交代するのは初めてだったりするな。

 

ボールから伸びる赤い光にレアコイルが包まれ、光と同化してボールへと戻る。

 

 

「頼んだ、スピアー!」

「スピィ!」

 

 

そして、やはり目には目を、歯には歯を、エースにはエースを。ここぞという場面で全てを託せる、それでこそエース。仕事を8割方完遂したレアコイルに代えて、俺はこのバトルの山場をスピアーに託した。

 

 

「…やっぱり、そのスピアーが貴方の切り札なのね」

 

「ええ、自慢の相棒ですよ」

 

「ふぅん…でも、フーディンを相手に悠然とどくタイプのポケモンを出すなんて、甘く見られたものね…不愉快、凄く不愉快だわ…!」

 

「別に、甘く見ちゃいませんよ」

 

 

そう言って、再び不気味に笑うナツメさん。目尻を吊り上げ、眉間に皺を寄せる、これまでのものとは違う怒りの感情を滲ませた攻撃的な笑みだ。こう言うのが所謂、【目が笑ってない状態】っていうんだろうか?美人さんだからこそ、その笑顔は余計に怖さを感じる。

 

でも、言った通り、甘く見てなんていない。フーディンを、そしてこの状況を最大限危険視しているからこそ、間にレアコイルというクッションを挟んだんだ。そしてレアコイルが仕事をしたからこそ、俺は自信をもってスピアーを投げることが出来る。

 

それと、ナツメさんの怒ったような声は初めて聞いた。余程腹に据えかねた?そんなまさか。どくタイプと言っても、むしタイプでもあるんですが。

 

 

「なら、その自信が本物か自惚れか、確かめてあげる……フーディン!」

「…ディ、インッ!」

 

 

その声を合図にバトルは再開。フーディンが攻撃態勢に入った。それを受けてスピアーは…

 

 

 

 

『ジジジジ…』

「スピ、ィ…!」

 

 

…動けない。動かないのではなく、動けないんだ。何故かと言えば、この世界だと公式戦でポケモン交代を行う場合、ペナルティが設定されていて、フィールドに備え付けられた機器によって、一定時間の行動が封じられるようになっている。そのペナルティのせいで、スピアーは現在位置で無理矢理フィールドに縛り付けられているんだ。

 

カードゲームなんかによくある召喚酔いみたいなもんだと思えば分かり易いだろうか。

 

 

 

 試合中にポケモン交代を選択すると、ターンの頭にポケモンが交代し、交代先のポケモンはそのターン相手が選択していた技を無条件で受けることになる…それがゲームでの一般的な流れだった。じゃあこっちの世界ではどうなのかと言うと、『片方が攻撃→もう一方が攻撃』というターン制のバトルの流れなど皆無に等しく、息つく暇もない撃ち合いが続いたり、どちらかが一方的に攻め続けるなんて展開も珍しいものではない。なので、適切な交代のタイミングが得られないこともままあり、基本的に『ポケモン交代は各トレーナーが好きなタイミングで行ってよい』ということになっている。そして、交代を待っている相手はその間、新たに技を指示することは禁止とされている。

 

しかし、任意のタイミングで交代が出来るがための問題点もある。

 

具体例を提示すると、まず相手が"はかいこうせん"を撃ったとする。そのタイミングでこっちがポケモン交代。戦っているポケモンを戻し、代わりのポケモンを出すまでには、若干のタイムラグが出てしまう。結果、その間に"はかいこうせん"は対象を失い空振りに終わる。その後、交代するポケモンを出す。

 

…とまあ、こんな感じに相手の攻撃行動中に交代して、そのまま相手の攻撃をやり過ごしてから後続のポケモンを出す、相手を消耗させた上で有利な対面を作る…なんていうことが出来てしまう。原作プレーヤーとしては噴飯ものな仕様だ。しかも、はかいこうせん等の反動で次ターン行動不能になる技を外してしまった場合、ゲームだとその効果は発揮されない。しかし、この世界では外しても問答無用で一定時間行動出来ない。現実的であると見るべきか、世知辛いと考えるべきか…

 

 

 

 上記は極端な例ではあるが、他にもリフレクターや"あばれる"のような効果持続に時間制限のある技を使っている相手に対して時間稼ぎをしたり、どく・やけど状態の相手に対してスリップダメージを稼ぐ、などと言った、交代にかかる時間を利用し長考する振りをする、グレーゾーンとしか思えない戦術が公式戦でも罷り通っていた時期があった…らしい。

 

しかし、流石にこれはいくらなんでも交代側が有利過ぎて酷い。事実、「フェアではない」「バトルの魅力・面白さを著しく損なっている」と言った指摘が方々から上がっていたらしい。さらに対象を失った攻撃が観客席に飛び込んで負傷者を出す等、危険な事態も度々発生。酷いのになると、交代のタイミングにキレたトレーナーが、その攻撃で相手トレーナーにダイレクトアタック。トレーナー負傷により物理的に試合を終了させた…なんていうトンデモ事件もあったとか。

 

それらの指摘や事案の数々を重く見たポケモン協会が試行錯誤を重ね、幾度かのルール改正・環境の改善を経て出来上がったのが現行のルール。トレーナーの遅延行為の防止、交代に伴う相手側への優遇措置などが定められている。スピアーが行動不能なのも、この相手への優遇措置によるものだ。

 

なお、上記の暴挙(ダイレクトアタック)をかましたというトレーナーは、当然即刻レッドカード叩き付けられて退場。無期限出場停止の処分をくらった上で警察沙汰になり、四方八方から叩かれてそのまま表舞台には戻れなくなったとのこと。相手にも問題あったとは思うけど、流石にこれはアウトだよな。人間、お天道様に顔向けできないようなことはやっちゃダメだネ。

 

 

「ビィ…イィ…ッ!」

 

 

そういうワケで、フーディンの攻撃は動けないスピアーを直撃。不可視の念波がスピアーの身体を蝕み、そのまま弾かれたように吹っ飛んだ。

 

 

「スピアー!」

「…ッ、スピィッ!」

 

 

どくタイプにエスパータイプの攻撃技、加えて相手はフーディンで受けるのはスピアー…普通ならまず耐えられるはずのない、仮に耐えても瀕死寸前であろう組み合わせ。

 

でも、ひかりのかべ込みでなら話は変わる。狙い通り、フーディンの一撃を当然のように耐え切って、スピアーは力強い返事を返してくれた。よく耐えた。なんなら思ってたよりもずっと余裕がありそうな感じだ。

 

 

「ッ…フーディン…!」

「デ、ディン!」

 

 

それを見た向こうは追撃の構え。しかし、麻痺の影響で動きに今までのようなキレ、機敏さはない。逆にスピアーは想定していたよりもダメージを受けていなさそう。

 

ならば、反撃に移る前にレアコイルの頑張りを挟んでなおも残る相手のリフレクター・ひかりのかべ。まずはこれを何とかしたい。すでに行動制限ペナルティは解除され、スピアーを縛る枷はない。

 

 

「みがわりだ!」

「スピッ!」

 

 

痺れて動きの鈍いフーディンよりも早く、スピアーは分身体を創り出す。見立て通り、体力はまだ身代わりを張れるだけの余裕があった。キョウさん仕込みの身代わりの術、とくとご覧あれ…だ。

 

 

「…セキチクジムの…なら、立てなくなるまで、何度でも消し飛ばしてあげる…!」

「ディ、ンッ!」

 

 

スピアーのみがわり展開から幾分か遅れて、フーディンから追撃のサイコキネシスが放たれるが、これは身代わりがその威力の全てを受け止めた。分身体は消し飛ばされたが、スピアー本体には届かない。

 

ただ、経過時間的にはそろそろだとは思うものの、相手のリフレクターはまだ消えていない。

 

 

「スピアー、どうだ!?」

「ビィ…スピィッ!」

 

 

スピアーに声を掛けると、戦意は旺盛ながらも堪えているような様子は窺える。現状サイコキネシス1発に、みがわりで1/4…ゲームみたいに正確な状態確認は出来ないので大凡の感覚で判断するしかないが、残りHPを考えるともう1回みがわりが張れるかは完全に分が悪い博打。ここまでだな。

 

んじゃ、そろそろ行こうか。

 

 

「よく耐えたスピアー!お返しのミサイルばりだ!」

「スピィッ!」

「…!」

 

 

時は来た。スピアーは「待ってました」とばかりに勢いよく飛び立つと、攻撃態勢に入って上空から針の雨を降らせ始めた。これをフーディンはテレポートで回避。しかし動きは鈍く、テレポート直前に数発がフーディンを掠める。

 

 

『パリィィ…ン』

「…!リフレクターが…!」

 

 

攻撃を受けてか、それとも時間切れだったのか、フーディンの前に薄らとあった青色の光の障壁が、攻撃の当たった所から割れて崩落。直後、残った障壁部分が砕け散り、崩落した光の破片と一緒に霧散した。フーディンは完全に丸裸。自慢のテレポートも発動まで時間がかかってるし、髭も生えてるし、老い耄れ爺とでも呼んでやろうかな?

 

ひかりのかべは残っているけど、そちらもそう長くは持たないだろう。それ以前にスピアー、そして後ろに控えるハッサムには関係ない。勝利への道は開けた。

 

 

老い耄れ爺(フーディン)にお返しの時間だ!スピアー、ミサイルばりィッ!」

「スピィーッ!」

 

 

得意ではない守りに回っていた分の鬱憤を晴らすかのような猛烈な攻撃が、フーディンに浴びせられる。着弾した針がフィールドに弾かれることなくそのまま突き刺さり、見る見るうちに一帯を針山地獄へと変貌させていく。こりゃ"むしのしらせ"の補正が乗ってるか?あまり意識してはいなかったが、良いことだ。後は、このままフーディン自体を針山に変えてやれば完璧だ。

 

 

「…!」

「ディ…ッ」

 

 

針の雨を超えて、針の銃撃と言えるような猛攻を前に、フーディンはたまらず回避に動き、さっきと同様直撃寸前で辛うじてテレポートを発動させて回避した。

 

しかし、やはり麻痺が邪魔をしてか、これまでのように鋭敏かつ立て続けのテレポートで跳び回ることが出来ていない。

 

 

「左だスピアー!逃がすなァッ!」

「スピイィッ!」

 

「フーディン!」

「ディイン…ッ」

 

 

即座にテレポート先に向けて追撃のミサイルばり。いくら未来が読めても、フーディンがそれに着いていけない状態ならどうしようもない。

 

テレポートが間に合わないと見たからか、ここでナツメさんとフーディンは方針を変更。フーディンを針山にするはずだったミサイルばりが、あと一歩と言うところでピタリと停止。そのままバラバラとフィールドに落下する。

 

サイコキネシスで(しの)がれたか…いや、まだだ!このまま押し切る、ここで決めるんだ…!

 

 

「撃て、撃て!押し負けるなッ!」

「押し返して…!」

 

 

フーディンが捕捉されたことで、勝負はスピアーとフーディン、ミサイルばりとサイコキネシスによる機動戦から、真正面からの力比べに変わった。

 

絶え間なく撃ち出される針の銃弾が、もう少しでフーディンに届こうかという位置で急激に勢いを失い、甲高い音を立てている。一方のサイコキネシスもミサイルばりを押し止めてはいるが、それが精一杯。

 

 

「ス、ピィ…ッ!」

「ディ、ギィ…ッ」

 

 

壁込みとは言え、サイコキネシス1発にみがわり1回。スピアーにはもうフーディンの攻撃を耐えるだけの余力はない。そして、相手のフーディンも低体力・低物理耐久に加え、タイプ一致特性上乗せの弱点物理技。スピアーの一撃を耐えられる能力はないはず。つまり、先に根負けした方が相手に飲まれる戦いだ。

 

ここまで持ってこれたなら、後はスピアーを信じるだけ…!

 

 

ドオォンッ!!

「ぐっ…」

「ぅっ…!」

 

 

お互いに攻撃を出し続け、ぶつかり続けた技と技が限界を迎えて膠着は破局。衝撃波がフィールドを駆け抜ける。

 

 

「っ…いけ、スピアーッ!」

「スピィ…ッ」

 

 

その爆風の中を、フーディンに向けて突っ込ませる。逆風に煽られて飛び難そうにしていたのも一瞬で、風が吹き抜ければ、後は相手に向かって一直線だ。思うように動かない身体のフーディンに近距離から攻撃をぶち込めれば、テレポートで回避するにせよ、サイコキネシスで迎撃するにせよ、態勢を整える余裕は少ないはず。

 

 

「フーディンッ!!」

「ディ、ン!」

 

 

それを察したナツメさんの選択は…回避か!

 

 

「ディ…ッ!」

「ッ…フーディンッ!?」

 

 

しかし、テレポートしようとしていたフーディンの動きが、その途中でガクンと止まる。レアコイルが、でんじはが決定的な仕事をやってのけた証だった。

 

 

「スッ、ピャアーーッ!!」

「ディ…ギィ…ッ!」

 

 

痺れて行動不能になったフーディンを、ミサイルばりが容赦なく撃ち抜く。その銃撃に真正面から身を晒したフーディンは、微かな断末魔の叫びとともに弾き飛ばされ、勢いのままにフィールドをゴロゴロと転がる。

 

(リフレクター)を失ったフーディンを真正面から撃ち抜いた針の銃撃は、致命傷となるに十分な威力。そのまま、フーディンが立ち上がることはなかった。

 

 

「…フ、フーディン、戦闘不能ッ!」

 

 

 

 




〈ポケモン交代に関する規定〉
1.ポケモン交代は各トレーナーの任意のタイミングで行えるものとする。
2.交代したポケモンには、試合再開後10秒間の行動制限ペナルティを課す。
3.ポケモン交代を行う場合、対象のトレーナーはポケモンを戻してから15秒以内にポケモン交代に関する全ての行動を完了させること。
4.15秒を超過した場合、超過した時間に応じて追加の行動制限ペナルティを課す。
5.相手側のトレーナーはポケモンを所定の位置まで戻し、その他一切の行動を制限する。
6.この時間内にポケモンを所定の位置に戻す以外の行動をとった場合、その度合いに応じて行動制限ペナルティを課すものとする。

「ポケモンの交代をゲームに沿った形でより現実的にするためにはどうしたらいいか?」と足りない脳味噌こねくり回して考えた結果、こんな具合の設定になりました。ジム戦などの公式戦ではゲームで言うところの勝ち抜き方式、ストリートバトルや設備のないスタジアムでは入れ替え方式が採用されているって感じでしょうか。

そして、ナツメさんの描写が難しい。原作よりも強力にした超能力と、それを描き切るだけの作者の能力が…()
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