成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第63話:ゴールは目の前

 

 

 

『…次のニュースです。今月ニビシティ-ハナダシティの間に跨るオツキミ山にて発生した大規模な崩落事故。事故の影響で通行止めが続いていたオツキミ山トンネルの復旧工事が一部完了し、安全が確保出来たことから、本日自動車道上下線と歩行者用坑道の全てが通行出来るようになりました。自動車道は当面の間片側交互通行となる予定です。

 

この事故は、崩落現場の近くで野生のイワークと見られるポケモンが暴れた痕跡が見つかっており、これが崩落が発生した原因だと見られています。また、崩落が発生する直前にポケモンマフィア・ロケット団と見られる集団が不審な行動を行っていたとの目撃情報も寄せられているとのことで、警察が関連性の調査を…』

 

 

「ふむ…しかし、災難じゃったのぉマサヒデくん」

 

「ははは…コレ知った時は流石にどうしようかと頭抱えましたよ。しかも、わざわざ遠回りしたのに、まさかニビシティに着くよりも先に復旧しちゃうとは…」

 

 

 ヤマブキジムを制し、セキエイ高原ポケモンリーグ出場、と言うよりもトキワジムリーダー・サカキさんに勝利することを目指してカントー地方ジム制覇の旅を続ける俺。ジム戦後にナツメさんに拉致された挙句、企業秘密を洗い浚いガッツリ吐かせられるという、ハプニングと言うか罰ゲームと言うか…なイベントはあったものの、気を取り直して次の一歩を踏み出してから2週間が経った。

 

季節は秋に足を踏み入れつつある時期で、まだまだ夏の香りが抜けきったわけではないが、それでも幾分か暑さも和らぎ、外にいても過ごしやすくなったように感じる。そんな時期に、次なる目的地だったニビシティ…ではなく、そこからは南に離れた始まりの町、マサラタウンはオーキド研究所。そこに俺の姿はあった。

 

ニビシティではなくマサラタウンにいる理由…全ては大体冒頭のニュース絡みのせいである。この世界ではオツキミ山の東側にもポケモンセンターがあったのだが、そこに辿り着いてすぐにこの崩落事故のことを知った。しかも発生したのは俺がポケセンに到着する少し前で、トドメにトンネル内は全面通行止め。復旧の見通しも立たずと来た。

 

当初は数日での復旧を期待して何日かポケセンに逗留して待機していたものの、あまりの規模の大きさに復旧までかなり時間がかかると判断。来た道を戻ってクチバシティから海路でグレンタウンへ。そこから船を乗り継いでマサラタウン−トキワシティと経由してニビシティに向かうルートに舵を切った。つまり、すでにニビジムを突破したワケではないし、なんならニビシティにはまだ一歩たりとも足を踏み入れてすらいないのである。

 

 

 

…で、現在はニュースの通り、わざわざ大回りしたのに先にオツキミ山トンネルが復旧しちゃったでござるの巻。トキワシティとタマムシシティの間は森林地帯かつポケモン生息域保護の名目で未開発域が多いしで、仕方なく海路を選んだ。

 

そこまではまだ良かったのだが、台風2つ立て続けに接近するという不運もあり、クチバシティとグレンタウンで合わせて1週間足止めをくらったせいもあって、高いフェリー代払って遠回りしただけになってしまった。急がば回れ、されど時には忍耐も大事。そんな感じ。ニビシティもトキワシティも、結構陸の孤島だったんだなって、今更ながら思い知った。

 

と言うか、思い返せばそもそも原作からして陸の孤島みたいなもんだったわ。

 

うーん、それにしても何と言う運の無さ…いや、ここは踏破途中じゃなくてラッキーだった、九死に一生を得た…とポジティブにでも考えるべきなのだろうか?あとサカキさん、余計な事せんといて下さい。ゲームでも化石盗掘してたからいても不思議じゃないけどさぁ…

 

 

「まあ、せっかく帰って来たんじゃ。お茶でも飲んでゆっくりいきなさい」

 

「はは…ありがとうございます、オーキド博士…」

 

 

とまあ、そういうワケで、今日の朝一の便でマサラタウンに到着した後、図鑑やら何やらの報告も兼ねてオーキド研究所を訪問。今は博士のお誘いを受けて、机を挟んで優雅に午後のティータイムと洒落込んでいる。

 

 

「それにしても、半年前にトレーナーズスクールを卒業したばかりのキミが、今や一人前のトレーナーか。トキワジムリーダーの人を見る目は確かだったようじゃのぉ。図鑑をキミに託したワシとしても鼻が高い」

 

「…いえ、まだまだ一人前には遠いです。少なくともサカキさんに勝てるようになるまでは…」

 

「ほっほ、目標が高いのは良いことじゃ。じゃがの、ワシも多くのトレーナーを見てきたが、流石に初等部卒業から半年でジムバッジを6つもゲット出来たような者はキミが初めてじゃよ。運もあったかもしれんが、それは決して才能だけではなく、キミが弛まぬ努力を積み重ねた何よりの証拠。十分誇っても良いと思うぞ」

 

 

それに…と続けたところで。博士は湯呑みに一度口を付け、ホゥ…と一息。

 

 

「…あのじゃじゃ馬(ヨーギラス)を上手いこと手懐けるどころか、進化まで持っていくとは思っとらんかった。ワシとしても予想以上じゃよ」

 

 

そう言って、博士は窓の外に目を向ける。外は窓から見える範囲全てがオーキド博士が所有する土地であり、様々なポケモンたちが放し飼いされている。流石はポケモン研究の権威、金持ってんなぁオーキド博士。

 

 

「手懐けただなんて…まだまだ振り回されることが多くて、とてもじゃないですが手懐けたなんて言えませんよ」

 

「それでも、懐こうとも馴れ合おうともせず、ボールから出す度に暴れておった一匹狼と、ある程度信頼関係を築けている。それだけでも、あ奴をキミに託して正解じゃったと思っておるよ」

 

「…そう言っていただけると、有り難いです」

 

 

半年…サナギラスとの付き合いもそんなになるのか。そして、それは俺が旅に出てから経過した時間に等しい。思い返せば、「ここまであっと言う間だったな」という思いと、「まだ半年しか経ってないのか」という思いが混じり合う。

 

 

「時間があればじっくり観察()させて欲しいもんじゃが…リーグ挑戦の期限は大丈夫かな?」

 

 

…全然大丈夫じゃないです、はい。

 

このカントージム挑戦の旅、色々とあったおかげで結構のんびりな行程になってしまっていた。で、そのスケジュール的余裕が今回のオツキミ山崩落事故&大回りのせいでゴッソリ消滅。ポケモンリーグの参加登録に間に合うかどうかがかなり微妙になるという、結構由々しき事態に直面していた。

 

ポケモンリーグセキエイ大会は毎年11月に始まり、そこから約半月掛けてカントーのアマチュアNo.1を決める、カントー地方が1年において最も盛り上がるイベントの1つ。出場するためにはカントー地方の8つのジムでバッジを獲得し、その上で会場となる【セキエイ高原】で参加登録をしなくてはならない。

 

で、その参加登録の締切日が10月末。しかも、大会に参加する者は例外なく【チャンピオンロード】を踏破した上でセキエイ高原に辿り着くことを求められる。なので、その踏破に要する時間も考えると、最短距離を駆け抜けて滑り込めるかギリギリのラインだったり。宿題が半分、それも特大の難題が残っているのに、夏休みは残り日数は1週間しかない…感覚としてはそんなところだろうか。

 

 

「えっと…実は、結構余裕無かったりしまして…」

 

「そうか…では、セキエイ大会が終わってからでも、じっくり観察させてもらうとしよう」

 

「はは…すいません」

 

 

そう言って沸々と湧いてくる焦燥感を抑えるように、淹れたてのお茶をひと口。火傷しそうな熱さと僅かなお茶の渋みが、無理矢理心を落ち着けてくれる。

 

 

「…それでは、本題に入るとしよう。図鑑がどうなっているのか、見せてもらおうか」

 

「はい」

 

 

ここから話はポケモン図鑑絡みのものに変化。ポケモン図鑑の進捗状況、オーレ地方で見たホウエン地方のポケモンたちのこと、ハッサムと特殊な手段で進化するポケモンのこと、特性…ポケモンが持つ特殊な能力のことetc…

 

話のついでに原作知識をぼかして伝えてみたりすると、それだけでも鋭い考察を披露したり、ちょっとした豆知識を教えてくれたりと、話題は尽きることなく話は弾む。ポケモンに関してはこの世界でも有数の知識を持つ、ポケモン研究の第一人者と呼ばれるだけはある。

 

 

「ホウエン地方と言えば、孫のナナミが『ホウエン地方に行きたい』と言っておったのぉ。何でも【ポケモンコンテスト】とか言うものに挑戦してみたい、と」

 

「へぇ…」

 

「ワシも詳しいことは分からんが、調べてみたところポケモンの身体の仕上がりや技の美しさなどを競う競技らしいの」

 

 

そしてタウンマップお姉さん、或いは毛繕いお姉さんこと、グリーンの姉・ナナミさんがポケモンコンテストに挑戦することを決意した模様。

 

 

「あの子は心根の優しい子じゃから、バトルよりもそういうことの方が性にはあっているじゃろうな。それで、来年から学校を休んでホウエン地方に行くことが決まっておるんじゃよ」

 

 

前回会った時にポロッとコンテストのことを話してしまった時から興味がある様子だったが、もうそういう方向の話になってたのか。原作でもコーディネーターだったと言う記述もあったはずだし、不思議じゃない。

 

ただ、そのコンテストの存在を教えたの俺なんだよなぁ。つまり、俺の話を聞いて彼女はコーディネーターとしての道を歩むことを決めたとも言える。これが原作にどんな変化をもたらすのか、未知数なのはちょっと気になるところ。変な影響が出ないと良いが…

 

それはそれとして、10歳そこそこの子供を1人旅に出させるのって、保護者としてはどんな気持ちなんだろう?

 

 

「んー…僕が言うのも変な話ですが、10歳そこそこの子供を遠く離れた土地に旅させるのって、家族として心配になったりしませんか?」

 

「む、中々に難しいことを聞くのぉ。そうじゃな…子供はどんな形であっても、遅かれ早かれいずれは旅に出るものじゃ。旅をして、その中で様々な物事を見て、聞いて、体験し、成長して大人になっていく。心配は心配じゃが、夢を持って新たな一歩を踏み出そうと言うのなら、その決意を信じ、尊重し、背中を押して見守ってやるのが家族というモノ。わしはそう思っておるよ」

 

「なるほど…」

 

「それに、今まで数え切れぬほど多くの夢と希望に燃える若者が、この研究所でポケモンを貰い、新たな一歩を踏み出して行く姿を見送り続けて来た。1人の大人として応援し、その先に素晴らしい未来が広がっていることを願う気持ちは、誰であろうとも変わらんよ」

 

 

そういう意味では、ヨーギラスを貰ってる俺も、そのオーキドチルドレンとでも言うべき数多の子供たちの1人って言えなくもないのか。それ以上にサカキさんの影響力が強いってだけで。

 

 

「そうですね…そういうものなんでしょうか?」

 

「はっはっは、キミにはまだイマイチ分かり辛いかもしれんが、この先誰かを指導するような立場になれば、自然と分かってくるじゃろう」

 

 

…あれかな?アンズ以下セキチク忍軍の皆さんを見ている感覚が近いだろうか?何となくそんな気がする。

 

あの子ら今頃何やってんだろうな?夏休みも終わってるだろうし、普通にトレーナーズスクールに通ってんのかな?マサヒデさんとしては、全員元気にやってることをお祈り申し上げる…までもなく、元気に野山を駆け回ってるんだろう。

 

 

「…っと、どちらかと言えばまだ未来を目指して駆け出したばかりの側だったのぉ。キミを見ていると、イマイチ子供を相手にしておるような気になれんわい」

 

「ははは…よく言われてます…」

 

 

そりゃあ精神年齢(なかみ)アラサー目前のいい大人ですもの。そう思われるのも致し方無しっす。

 

 

 

その後も博士とポケモン図鑑や孫絡みの話をいくらか交わしながら、オーキド研究所での穏やかなひと時は過ぎ、昼前には博士に別れを告げてニビシティを目指して自転車を漕ぎだした。

 

なお、話に出たナナミさんはモチロンのこと、レッド&グリーンの主人公ライバルコンビもトレーナーズスクールに行っていたため、今回は会えなかった。ちょっと残念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーキド研究所を出た後は、昼ご飯を軽く済ませて1番道路を自転車で北に向かう。以前逆方向とは言え通った道だけど、だからこそ大きく感じる自転車の有無の差。徒歩だとほぼ丸1日かかっていたトキワ-マサラ間の道のりも、自転車があればかかる時間は半日だけ。そして、ニビシティに向かうなら必然的にトキワシティも通らなければならない。その日の夕暮れ前には、懐かしのトキワシティの遠望を拝むことが出来た。

 

そして、この時間からトキワの森攻略は流石に無謀。よって、こっちに来てから3年お世話になった、そして今後もしばらくはお世話になり続ける…かもしれないトキワ支社社員寮へ、半年ぶりとなる帰省…で、いいのかな?

 

 

「やあ、お帰りマサヒデ君」

 

「ご無沙汰してます、ルートさん」

 

 

管理人であるルートさんとも久しぶりの再会。サカキさんプロデュースの地獄の夏休み旅行㏌オーレ地方にも不参加だったようで、電話で話をすることはあっても、旅に出てから全く会っていないので、半年ぶりに見る顔に懐かしさを覚えずにはいられなかった。

 

 

「昨日連絡を貰った時は驚いたけど、元気そうで何よりだ。それに、ちょっと大きくなったかな?」

 

「そうでしょうか?あんまり背が伸びた気はしないんですけど…」

 

 

ちゃんと測ってるワケじゃないからなぁ。まあ、これぐらいの子供って急激に背が伸びたりするし、案外そんなもんなのかもしれん。

 

 

「それもあるけど、内面的な話さ。人として、トレーナーとして、どこか迫力が出てきたかなってこと。少し、社長に似てきたような気もするよ」

 

「え…そ、そうでしょうか…?」

 

 

ああ、『男子三日会わざれば刮目して見よ』の方でしたか。すでに呉下の阿蒙にあらず…ってね。まあ、呂蒙さんと違って俺に足りないのは圧倒的に武力の方だけど。

 

ただ、そんなに変わったかね?仲間も増えて、ジムリーダーたちとも今のとこ互角にやりあえるようになって、心に多少の余裕が持てるようになったとは思うが…そしてサカキさんに似てきたと思われることについては、喜んでいいのやら。

 

 

「ま、土産話はまたゆっくり聞かせてもらうよ。部屋はそのままにしてあるし、お風呂も沸かしてある。荷物を置いて、夕飯が出来るまでに一風呂浴びてきたらどうだい?」

 

「ありがとうございます。そうさせてもらいます」

 

 

ルートさんに案内されるまま部屋に向かい、荷物を放り投げて「行儀がなってない」と軽く(たしな)められる懐かしいやり取りもあった後、風呂でさっぱり。そこから食堂で夕飯を食べて、ルートさんや顔見知りの社員さんと久しぶりのお喋りを楽しむ。

 

たかが半年、されど半年。旅でどんなことがあったのか、思い返して話していけば、ずいぶんと濃密な経験をしたものだと思う。旅に出て、そのついでに押し付けられたお使いでマサラタウンへ。オーキド博士と、幼少期のレッド&グリーンコンビに会って、ヨーギラス貰って、前世?を含めて十数年ぶりのフェリーにも乗った。

 

次のグレンタウンでは、初めての…厳密に言えば初めてではないんだが…ジムリーダー戦にも挑み、勝つことが出来た。その後はポケモン屋敷で野生ポケモンを初ゲットしたり、例のポケモンに関する日記をうっかり持ち出しちゃったりもしたな。ホント、シオンタウンでフジ老人に渡せるまでは、USUMで使ってたこともあって、サカキさんに見つからないかヒヤヒヤもんだった。

 

クチバではキッズカップだったとは言え、トレーナーズスクール関連のものを除いて初めての大会に出場。結果は準優勝だったな。準決勝でスピアーが負傷してなければ或いは…まあ、こればかりは運が無かったと思うしかない。その後はヤマブキシティに着いたと思ったらサカキさんに拉致られてタマムシシティへ。ロケット団幹部の2人、アポロさん・アテナさんと知り合った。正直あまり御近付きにはなりたくなかったが…サカキさんに拾われてしまったが故の致し方ないものと割り切ろう。コラテラルコラテラル。

 

セキチクシティでの生活は、この旅の中でも一番濃密な日々だった。キョウさん&アンズ親子、セキチク忍軍を自称する皆さんとの奇襲的な出会いに始まり、1カ月半もの間ほぼ毎日を一緒に過ごした。色々と教えてもらったし、サファリゾーンにも行って、そこで初めてロケット団の悪行の現場に居合わせることもあった。セキチクシティでの1カ月半は、間違いなく俺自身のレベルアップに繋がる得難い経験をさせてもらった日々だった。

ここで長居し過ぎたが故に今困っていると言えなくもない

 

その後は、シオンタウンでフジ老人に会って、無人発電所に行って、ハナダジムを攻略した後オーレ地方に拉致されたんだよな。オーレと聞かされて嫌な予感はしていたが、まさか本当にシャドーの面々と会うことになろうとは思いも寄らなかった。ダン☆サー。

 

 

 

積もる話も終わった後は、部屋に戻ってテレビを見て就寝。たった一泊だけではあったけど、丸3年も過ごしていた場所だ。勉強時間が無くなった以外、本当に半年前の生活に戻ったよう。濃密な半年間の旅もあって、「帰って来たなぁ…」という気分になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

「それじゃ、行ってらっしゃい」

 

「はい、行ってきます!」

 

「成長した君と社長の本気のバトルが見れることを楽しみに待ってるよ」

 

「任して下さい!ササッとニビジムも制覇してトンボ返りしてきます!」

 

 

 久しぶりの自室のベッドでぐっすり休んだ俺は、朝食を済ませて程なく、ルートさんの見送りを受けニビシティへと自転車を漕ぎだした。

 

その行く手に広がるのは、トキワシティとニビシティの間に跨がる広大なトキワの森。ニビシティに行くためには越えなければならない難所だ。

 

ポケモンとの遭遇、相棒(スピアー)との邂逅(かいこう)、サカキさんとの出会い、そしてトキワシティのマサヒデとしての再出発…俺にとってこの世界における全ての始まりの地、リスポーン地点と言っていいかもしれない。

 

鬱蒼と茂る森林地帯を前に、こっちの世界にやってきた当初を思い出して尻込みするような思いも少しあったが、今はあの時とは違う。

 

本当は昔…と言っても、ほんの数年前のことだが…でも思い出しながらのんびりと感傷に浸りたいところではあるが、それはするべきことをやってからだ。

 

毎年一定数、遭難して救助される人が出ることから天然の迷路と呼ばれることもあるこの森だが、俺は3年も近くの街で過ごしている。余程の事でも起きない限り迷う理由はない。

 

少しずつ色付き始めている木々の間、快晴の日差しと枝葉が創り出す光と影のコントラストの中を、自転車を漕いで一路ニビシティを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

「OK!ヤドン、なみのりでトドメだ!」

「…やぁん!」

 

「ゴローニャ、戦闘不能!よって勝者、チャレンジャー・マサヒデ!」

 

 

 

…旅の終点まで、あと一歩。

 

 

 

 

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