今年もこの季節がやって来た。全国のポケモンバトル好き、ポケモントレーナーにとっての夢舞台。カラッとした秋晴れの中、スタジアムの観客席だけで約5万人、会場に入れなかった人も含めると10万人に届いたとも言われる大観衆を迎えて、カントーポケモンリーグ・セキエイ大会が先月開催された。カントー地方の8つのジムを突破し、全てのバッジを手に出来たトレーナーのみが出場出来る、1年に1度の全てのポケモントレーナーたちの祭典、ビッグイベントだ。
今回の大会本戦には、カントー地方の8つのジム全てを突破した、総勢264名の腕自慢たちがエントリー。メインスタジムとなったセキエイスタジアムと、その周囲に計7つ建てられているスタジアムに分かれ、3週間もの長期に及ぶトレーナーたちの熱戦が繰り広げられた。今回のトレーナーズ名鑑では、ポケモンリーグ総括特集と題して、今大会の振り返りを行っていく。
今年はどんな名バトル、名シーン、そして新たなるヒーローたちが誕生したのか。出場トレーナーたちへの取材も交えながら早速見ていこう。
◇圧巻、堂々のチャンピオン◇
カントー地方の実力者たちは勿論のこと、お隣のジョウト地方からはるばる参戦して来たトレーナーや、歴代最年少となる11歳の本戦出場者など、今年も開幕前から多くの話題で盛り上がったポケモンリーグ・セキエイ大会。
実績のあるトレーナーたちによる激戦が予想されていた中、圧倒的な力を見せて今大会を制したのが、前回大会で惜しくも準優勝、今大会でも優勝の筆頭候補として名前の上がっていたナナシマ出身の実力者、ユウジ選手。通算4回目の挑戦で、悲願の頂点に上り詰めた。これで現在マスターズリーグで活躍しているカンナさんに続く、2人目のナナシマ諸島出身の大会チャンピオンの誕生。出身地のナナシマ諸島・3の島は、快挙に沸いた。
本戦でユウジ選手が割り振られたのはCブロック。同ブロックには前回大会で決勝トーナメントへも進んだ実力者・セキソウ選手もいたが、全く問題にせず無傷の7戦全勝で本戦を突破。決勝トーナメントでも盤石の試合運びを見せ、決勝戦では先発でエース・カイリューを繰り出して4体抜きを披露。最終決戦を大いに盛り上げた。
カイリュー・ジュゴン・ゲンガー・カイリキー・ウインディ・ライチュウと、タイプのバランスよくまとまったパーティは隙が無く、高いレベルでまとめられたその地力の高さから、今大会を通して抜群の安定感を発揮。本戦での全7試合の損耗率1体未満、決勝トーナメントでも3体以上ポケモンを倒された試合が決勝戦と2回戦だけというのは見事という他ない。中でもエースポケモン・カイリューの存在感は圧倒的だった。決勝戦を除く姿を見せた試合全てでフィニッシャーを担当し、大会中に倒したポケモンのスコアは21。技構成も"げきりん・かみなり・ふぶき・だいもんじ"と、各タイプの大技を状況に応じて使いこなし、対戦相手への圧力は今大会でも随一だったと言える。ユウジ選手本人の選択も適切で無駄がなく、トレーナーとしての実力の高さを見せてくれた。
ユウジ選手はナナシマ諸島を構成する島の一つ、3の島出身で28歳。ポケモンリーグには4年前の大会で初出場し、今大会で4年連続の出場…
…(中略)…
…今後についてユウジ選手からハッキリとした返答は得られなかったが、言葉の節々からマスターズリーグへの参戦を検討している様子が窺えた。今大会での勝ちっぷりから見ても、トップクラスでも十分に戦えるだけの戦力・手腕は持っている。どのような選択をするかは彼の胸三寸次第だが、今後が楽しみな存在であることに変りはない。
◇衝撃の新人、天才少年◇
「今後が楽しみ」という意味では、今大会で優勝を果たしたユウジ選手よりも注目度が上なのが、次に見ていくマサヒデ選手であろう。今大会初出場で、最大のダークホースとなったニューフェイスだ。大会の参加登録〆切の直前に滑り込むような格好で参加登録が伝えられた際、大きく報じられて話題となった。その最大の理由は、何と言ってもその年齢。何と、今年トレーナーズスクールを卒業してトレーナーとなったばかりの11歳だ。言うまでもなく歴代最年少の本戦出場者であり、天才少年トレーナーとして大会前から一部では注目を集めていた。
開会式の入場の際や、初戦のフィールドに立った直後は大歓声に緊張しているのか、初々しさを感じさせる微笑ましい場面も見られたマサヒデ選手。しかししかし、いざバトルとなるとそんな子供らしさはどこへやら。Eブロック初戦をサナギラスでマサシ選手のゴローンを軽々KOすると、そこからサンドパンへと繋ぎ、すなあらしで翻弄。終わってみれば1体も失うことなくストレート勝ちで、初出場初勝利、歴代最年少での勝利記録を樹立した。
その後も11歳の新人とは思えない鮮やかな采配と試合捌きを披露。サナギラスで攻撃しながらすなあらしを起動し、折を見てサンドパンにスイッチ。つるぎのまい・かげぶんしんでステータスを上げてから攻撃するという必勝パターンがズバリ嵌った。その2体を警戒してみずタイプやくさタイプを使う相手には、スピアー・キュウコン・ラフレシアが襲い掛かる。終わってみれば、同ブロックの年長トレーナー全員を相手に勝利を積み上げ、7戦負けなしのパーフェクトな成績で決勝トーナメントへ駒を進めた。本戦を無敗で決勝トーナメントまで上がったのは、優勝したユウジ選手と彼だけであり、その実力に驚愕したファンは多いと思う。
決勝トーナメントでは初戦でJブロックを勝ち上がったテルト選手と対戦し、1時間超の熱戦の末にこれを制した。こうなると俄然、歴代最年少チャンピオンの記録更新への期待も高まったが、次戦にて今大会を制したユウジ選手と対戦し、エースポケモン・カイリューの前に奮戦実らず敗戦。最年少新人トレーナーの初挑戦は、ベスト16という大きすぎる結果を残して幕を下ろした。
今大会に彗星の如く現れた天才少年トレーナー・マサヒデ選手。弱冠11歳ながら、その人生はすでに波瀾万丈と言っていい。
彼はトキワシティ出身の11歳…とプロフィールの上ではなっているが、厳密に言うとそれは事実ではない。何故なら彼は今から3年前、トキワシティの北に広がるトキワの森を彷徨っているところを保護された孤児なのだ。本当の出身地や家族構成は今なお不明であり、11歳という年齢も実は定かではない。保護された直後の体調検査の際、9歳相当*1との判断が医師によってなされたため、そうなっているという。
そんなマサヒデ選手だが、自らのことは分からなくとも、保護された当初からポケモンバトルへの驚異的な才能を示していたことが取材を進める中で判明。その才を保護したサカキ氏に見出され、以降をトキワジムリーダー・サカキ氏の庇護下で薫陶を受けながら育った。トキワトレーナーズスクールでは通った3年間、1度も成績トップの座を譲ることなく卒業。6年時には同スクールの代表として、初等部全国大会にも出場した。*2
今年の春にトレーナーズスクール初等部を卒業後、サカキ氏の勧めもあって進学せず、トレーナーとしてポケモンリーグ挑戦を目指して各地のポケモンジムを巡る旅に。トキワシティを旅立ち、グレンジムを皮切りに各地のジムを攻略。最後は自らの師であるサカキ氏とのバトルを制し、見事歴代最年少でのポケモンリーグ本戦への出場資格を掴み取った。
…(中略)…
続いてはインタビュー企画。大会終了後、今大会でも上位の成績を残したトレーナーたちに取材を申し込み、独占インタビューを行った。実力者たちの素顔や、大会中の舞台裏に迫る。その際の様子を、対談形式で掲載する。(敬称略)
まず紹介するのは、史上最年少の本戦出場者であり、初出場ながらベスト16という成績を残した天才少年トレーナー・マサヒデ選手。取材の中で明らかになったのは、マサヒデ選手の子供らしからぬ素顔の他、他のトレーナーとは一風変わった考え方や、自身の師であるサカキ氏への強い敬意と拘りだった。
11月末…取材を申し込んだ本誌の記者が向かったのは、トキワシティにあるTCP社の社員寮。元々はTCP社の本社であったが、同社の事業が軌道に乗り拡大していく中で本来の役目を終え、現在はトキワ支社で働く社員たちの社員寮として同社を支えている。サカキ氏に保護されたマサヒデ選手がその後の3年間を過ごした場所であり、旅を終えた彼の帰るべき家でもあった。
通されたのは1階の応接室。本社だった頃から調度品等はキチンと手入れがなされており、今でも必要があればすぐに使えるようになっているという。その場に、カントー中の注目を集める少年はいた。
記者 「まずは大会お疲れ様でした」
マサヒデ「ありがとうございます」
記者 「初出場でベスト16という成績でした。一週間経って振り返ってみて、この結果についてはどう思っていますか?」
マサヒデ「そうですね…負けたことへの悔しさもありますが、それよりも「ここら辺が今の自分の限界かな」という納得感の方が強いですよ」
記者 「何故でしょう?」
マサヒデ「経験の差…と言えば良いのでしょうか。僕のポケモンたちは、サカキさんに保護された時から一緒にいたスピアーと、学校での相方だったサンドパンを除けば、この半年間で仲間にした奴ばかりです。ポケモンリーグ、延いてはその先のマスターズリーグ、ポケモンマスターを目指して頑張って来られた先達の皆さんとは、費やしてきた年季が文字通り桁違いに少ない。そんな状態で
記者 「そうでしょうか?本戦ではEブロックの出場者全員に勝利しています。私も幾度もポケモンリーグ関係の取材をしていますが、この結果を運が良かったの一言で片付けるのは難しいですよ」
マサヒデ「ありがとうございます。でも、自分はまだまだですよ。負けたユウジさんとの試合なんか、試合中に「これは無理だな」ってほぼ諦めてましたから。「よくあそこまで粘れたな」って、我ながら感心してる部分さえありますよ」
記者 「ユウジ選手は決勝トーナメントで3体以上ポケモンを倒されたのが2試合しかありません。しかも、その2試合の片方の対戦相手は残り2体まで追い込んだあなたです。少なくとも、対等に渡り合えていたように思いますが…」
マサヒデ「全然対等じゃないですよ。こっちはガス欠覚悟の全力全開なのに、相手は余力残して戦っててコレです。僕のはただの悪足掻きみたいなものなんで、完敗ですよ」
記者 「なるほど…でも、少なくともサカキさんに良い報告が出来たのではないですか?」
マサヒデ「…そうですね。サカキさんの顔に泥は塗らずに済んだと思います」
記者 「さっきから話していて、すごい子供らしくないと言うか、普通に大人と話しているような感じですよね。サラッと難しい単語や言い方で話してますよ」
マサヒデ「はは…結構色んな人から言われます(笑)」
記者 「ですが、ベスト16というこの成績は、例え11歳でなくとも素晴らしいものです。それに年季が違うと言うのなら、今後トレーナーとしての活動に集中すれば数年後、もしかすると来年にも優勝に手が届くのでは?」
マサヒデ「どうでしょうね。ただ、こう言うと怒られるかもしれませんけど、実はあまりポケモンリーグに出場し、優勝することに対して、思い入れと言いますか、拘りはないんです」
記者 「ポケモンリーグに拘りが無い?どういうことでしょう?」
マサヒデ「それが僕の最大の目標は、サカキさんに勝利すること。ポケモンリーグは言ってしまえばその延長線上にあるオマケ。サカキさんに勝ったら出場出来るから、ついでに出た…自分の中ではそんな認識なんです」
記者 「…つまり、ポケモンリーグ優勝の栄光や、大会チャンピオンの地位には興味が無い?」
マサヒデ「全く興味が無いとは言いませんが、絶対に出たい、絶対に勝ちたいという程のものではありません。来年出るかどうかも決めてませんし…」
記者 「では、その先にあるマスターズリーグ…所謂ポケモンマスターへの道は…?」
マサヒデ「今は全く考えていませんね」
記者 「な、なるほど…ですが、8つ目のジムバッジを賭けた最終戦としてサカキさんと戦い、勝ったと伺っていますが?」
マサヒデ「確かに勝ちました。勝ちましたけど、あくまでそれはジムリーダーとしてのサカキさんにです。それに、勝ち方にも全然納得いってませんから。だから、自分の中ではまだサカキさんに勝ててはいない。今回のはノーカンです」
記者 「…どういう勝ち方だったかお聞きしても?」
マサヒデ「…まあ、トレーナーとしては結構屈辱的な勝ち方だったとだけ。たぶん、僕じゃなくても勝ったなんて納得は出来ないと思いますよ。それぐらいに酷い勝ち方でした」
記者 「気になりますが…この話は一旦置いときましょう。話を聞く限り、サカキさんにかなり執着していると言いますか…強い思いを持っているようですね」
マサヒデ「……そうですね。1つの目標として、強く意識しているのは間違いないです。面と向かって指摘されると否定したい気持ちになりますが」
記者 「それはやはり、師匠だから?」
マサヒデ「師匠…まあ、そうですね。ですがそれ以上に、サカキさんに勝つことが出来るようになれれば、トレーナーとしてどこに出ても恥ずかしくない、どんな世界でも生きていける。そう思ってます。僕にとって、サカキさんに勝つ事はポケモンリーグで優勝するよりも重要なことなんです」
記者 「そこまで言うんですね…ん?待ってください。今言ったことをよく考えると、サカキさんからの早期の自立を考えているんですか?」
マサヒデ「そうです。自分で自分の食い扶持ぐらいは稼げるようにならないと、いつまでもサカキさんのお世話になったままです。そういうワケにはいきません」
記者 「…なるほど、そういうことだったんですね。改めて、とても子供とは思えませんね。凄いしっかりしている。そう思います」
マサヒデ「あはは…」
記者 「分かりました。つまり、サカキさんに納得のいく形で勝利すること。それが、現在の最大の目標ということでよろしいですか?」
マサヒデ「はい、そうですね」
記者 「では最後に、今後に向けての意気込みを聞かせ下さい」
マサヒデ「サカキさんは鬼ですから、生半可な鍛え方じゃ絶対に勝たせてくれません。勝つために出来ることは全て、やれるだけやるつもりです。今よりもっと強くなって、必ず納得いく形でサカキさんに勝ちます」
記者 「今日はありがとうございました」
マサヒデ「ありがとうございました」
…ベスト16入りを果たした実力者とは言え、見た目はまだまだ年端もいかない少年を相手にまじめな取材というのも滅多にないこと。戸惑いながらの取材は、30分足らずで終了した。
インタビューの中で浮き彫りになったのは、マサヒデ選手の他のトレーナーとは一線を画した物事の考え方と、子供らしからぬその姿勢。ポケモンリーグの結果について、とても11歳の少年とは思えない落ち着いた口調と言葉で、マサヒデ選手はそう語った。その様子からは、言葉の通り敗れたことへの悔しさは感じられず、結果には納得し、満足しているようだった。
そして、同時に顔を覗かせたサカキ氏に対する勝利への強い執念と敬意。それは彼にとって、ポケモンリーグが積み上げてきた歴史と伝統、その場に立つことや勝利する事の栄光ですらをも霞ませる程のものであった。「ポケモンリーグ優勝より、師に勝利することの方が重要」。これまで数多のトレーナーを取材してきた本誌でも、こんなことを平然と言ってのけるトレーナーを見たのは初めてかもしれない。
問題のサカキ氏との勝負がどのようなものであったのか、気にはなったものの終ぞ語ってはくれず、取材を進めても一向にどのようなものであったのかは分からなかった。だが、子供らしからぬ、それこそ苦虫を噛み潰したようなとしか表現しようのなかったマサヒデ選手の表情から、相当に納得のいかないものであったことだけは確かだ。
ポケモンリーグへの出場、延いてはプロとしてのマスターズリーグ参戦に慎重な、ともすれば否定的な姿勢にも見えるマサヒデ選手。しかし、この少年は未だ11歳。この先、どのような道を選ぶのかは全くの未知数と言ってよい。ただ一つだけ確かなのは、彼がポケモンリーグの大舞台で年長の実力者たちに混じっても、全くの対等に戦えるだけの実力と才能を兼ね備えているという事実。
これは身勝手な思いでしかないが、それでもそのたった一つの事実は、我々ポケモンバトル好きたちに大きな夢を見せてくれる。
今日明日でなくてもいい。いつの日か、彼が自らの意思で大舞台に飛び出して、大輪の花と咲く日が来ることを、今は楽しみに待ちたいと思う。
似非月刊誌風にマサヒデくんのポケモンリーグの結果報告です。DIEジェストでも何でもねぇ…。あと、どこぞのサトシくんみたいな成績だよな
なお、負けた相手の名前は、カイリュー使いということでアニポケのオレンジ諸島編の相手から拝借しました。
次話からは原作までのマサヒデくん強化年間を数話挟んで原作突入です。…え?もう原作突入って言ってたじゃんって?やっぱり主人公が強くなってく過程は描かなきゃダメだよなって…
あと、アンケート作りました。お題はレッドさんの相棒について。〆切は…原作に突入するまでかな。ご協力よろしくお願いします。