成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第72話:霊峰を征する者(4)

 

 

 

 

 偶発的なものか、はたまた必然か。暁のシロガネ山で突如始まったバンギラス同士による怪獣大戦争は、我が方のバンギラスの敗色濃厚。このままでは、俺の人生もジ・エンド…だが、まだ頼れる手札はある。

 

 

「スピアー、ミサイルばり!レアコイルは10まんボルト!何としても奴をバンギから引き剥がすんだ!」

「スピィッ!」

「ビ!」

「サンドパン!ヘラクロス!ヌシが怯んだら懐に潜り込め!無理そうなら牽制するだけでいい!」

「キュイ!」

「ヘラッ!」

 

 

号令に応えて一斉にスピアーたちが動き出す。バンギラスを救出するべく、ヌシに向かって殺到していく。VSヌシ戦第二ラウンドの幕が上がった。

 

 

「ギィッ!?ギラアァッ!!!」

 

 

まずは先手を取ったスピアーとレアコイルの攻撃が立て続けにヒット。バンギラスへのトドメを邪魔されて、ヌシは完全にご立腹モード。視線だけで人を殺せそうな鋭い目で睨まれる。生きた心地がしないんで止めて欲しい。無理なのは分かってるけど。

 

とは言え、さしものヌシと言えどこの状況では迫るスピアーたちを無視することは出来ないようで、俺も瀕死のバンギラスも捨て置いて、迎撃に動き出した。

 

 

「ギィラアッ!!!」

 

「キュイ!」

「ヘラァッ!」

 

 

狙われたのは、一直線にヌシへと迫っていたサンドパンとヘラクロス。ヘラクロスはバンギラスを真正面から打ち抜けるポテンシャルは持っているが、レベル、能力面でまだ不安がある。だから、ここは…

 

 

「サンドパン、受け止めろぉ!」

「キュイッ!」

 

 

…サンドパンにタンク役を頼みたい。その指示でサンドパンはスピードを上げ、守るようにヘラクロスの前に出る。

 

 

「ギィィ、ラアァーーーーッ!!!」

「キュイ…ッ!」

 

 

倍以上の体格差があるヌシが繰り出す、重く威力のある上段からの右腕の振り下ろしを、サンドパンは完全に受け止めた。流石はサンドパンだ。

 

ただ、両足が大地にめり込んでいる辺り、ヌシの能力の高さを、否が応でも思い知らされる。

 

そんな強敵相手だからこそ、その頑張りを無駄にはしない。後ろから一気にサンドパンの脇をすり抜け、ヘラクロスがヌシに迫る。サンドパンに止められてがら空きになったバンギラスのどてっ腹に、ヘラクロス渾身の一撃を叩き込んでやれ。

 

 

「ブッ込めヘラクロス!"メガホーン"!!」

「ヘラァァァッ!」

 

「ギラァッ!」

「ベラ…ッ」

 

 

しかし、その思惑はフリーだった左腕の一振りで弾き返され、あっさりと防がれてしまった。ヘラクロスも不安はあるとは言え、決してレベルが低いワケじゃないんだが…ヌシ相手だとまだ荷が重いかの…?

 

 

「ギラァァァッ!!」

「キュ…イィ…ィ…ッ!」

 

 

ヘラクロスが退けられ、単独でヌシの圧力を受け止めることを余儀なくされているサンドパン。よく抵抗しているが、それでもなおジリジリ圧し潰されつつある。麻痺はしているんだが、そんなことは一切感じさせない力強さだ。

 

もしサンドパンがやられるようなことがあれば、他のポケモンではタンク役が出来ない。ヌシを正面切って阻めなくなってしまう。サンドパン、そしてスピアーがやられた時点で詰みだ。サンドパンを切る選択肢はない。

 

 

「だったら…!スピアー、ミサイルばりだ!」

「スピィッ!」

 

 

サンドパンを援護するべく、スピアーに側面上空から仕掛けさせる。効果抜群、それもうちのエースの攻撃だ。意識せざるを得まい。

 

 

「ギィ…!」

 

 

スピアーの攻撃は、見事にヌシから集中力を奪い、サンドパンへの圧力を削いだ。

 

 

「…今だ!サンドパン、押せぇッ!」

「キュ、イィィーーッ!!」

 

「ギラ、ァッ!?」

 

 

ヌシの押し込む力が弱くなった隙を逃さず、激に応えるようにサンドパンが超重量級な巨体を僅かに持ち上げるように押し返し、そのまま突き飛ばした。

 

 

「スピアー、ミサイルばりッ!レアコイル、10まんボルトッ!」

「スピャァッ!」

「ビビーッ!」

 

 

体勢を崩されたヌシへ、すかさず追撃のミサイルばりと10まんボルト。

 

 

「ギ、ギラァッ!!」

「スピッ!?」

 

 

体勢を崩されたこともあって、2体がかりの攻撃をヌシは防げない。しかし、そんな状況でもヌシは無理矢理スピアーへ大岩を飛ばして攻撃してきた。相性やレベルなど、スピアーの方を問題視しての攻撃だったのかもしれない。

 

結果、スピアーの攻撃が一旦途切れる。

 

 

「ギィィァァ……ッ!」

 

 

代わりに、その分レアコイルの攻撃には無防備となり、強力な電流がヌシを襲う。砂嵐もあってダメージ的にどうか?とは思ったが、攻撃を受けたヌシの巨体が一瞬動きが止まったかと思った後、ぐらりと大きく傾いた。

 

 

「サンドパン、じしん!」

「キュイィィッ!」

 

 

そして倒れかけたヌシへの追い打ち、サンドパンのじしんがシロガネ山を揺るがす。しばらくは何とか倒れまいと踏ん張っていたが、ついに堪え切れずその巨体が地に伏せた。揺れに合わせて、陸に釣り上げられたコイキングのように、跳ねたり転がったりを繰り返す。

 

 

「次は決めるぞ!ヘラクロス!メガホーンッ!」

「ヘラァァーーーッ!」

 

 

仕上げはヘラクロス。一振りであっさり跳ね返されたリベンジを果たすべく、受けたダメージに怯まず再度突っ込んだ。今度は強固な大角による一撃が完璧に炸裂…

 

 

「ギ…ラァッ!」

「ヘラッ!?」

 

「これでもダメか…!?」

 

 

…とはいかなかった。苦しい体勢にはなりながらも、ヌシはヘラクロス渾身の一撃を両腕で組み止めてしまった。

 

 

「スピアー!」

「スピィィーーッ!」

 

 

そうなれば、頼るべきはコイツしかいない。ヘラクロスを組み止めるのに精一杯なヌシの背後上空から迫り、必殺のミサイルばりを再度叩き込む。

 

 

「ギィァァ……ッ!」

 

 

 

背中から撃ち抜かれたヌシが、海老反りになる。

 

 

「ヘラァッ!」

「ギィァ…」

 

 

それは、抑えつけられていたヘラクロスがフリーになるということ。拘束を振り払ったヘラクロスは、そのままメガホーンをヌシのどてっ腹に突き刺した。ヌシは短い悲鳴を上げると、地響きと共にその巨体を大地に沈めた。これなら、さしものヌシと言えど…

 

 

「ギィ…ラァ…ァ…!」

 

「まだ動けるのか…!?」

 

 

…しかし、ミサイルばりに10まんボルト、じしんにメガホーン…こんだけ受けてまだなおヌシは立ち上がろうとした。6体がかり、しかも内3体はつるぎのまい積んでてこれとか…バンギラス恐るべし。これが600族のスペックか…

 

でも、如何にヌシが高レベル…仮に70ぐらいだったとしても、レベル50、60ぐらいのポケモンに束になって一斉に掛かったら?十分勝ち負けを計算出来る。端的に言えば、結局のところ「戦いは数だよアニキ」ってことだネ。昔のエライ人も言ってたし。

 

実際、バンギラスとの激闘で消耗したところに、4体がかりの集中砲火をヌシは結局捌き切れなかった。レベル90とか、カンスト近くまでいってるような個体なら話はまた変わるんだろうけど、そんな領域まで辿り着いた個体なんぞ野生でも流石におらんだろ。

 

 

 

…おらんよな?

 

 

「ギィ…ラアァ…ァ……ッ!」

 

 

息も絶え絶えな状態でも、ヌシはまだ戦う姿勢を崩さない。

 

 

「ィ…ラアァ…ッ!」

 

「ッ、ヘラクロス躱せッ!」

「ヘラ…ァッ!?」

 

 

フラフラしながらも立ち上がったヌシは、大岩を一番近い所にいたヘラクロスに投げ付ける。まさか反撃が来るとは思っていなかったのか、ヘラクロスは呆気なく直撃をくらって吹っ飛んだ。

 

 

「っ…、戻れヘラクロス」

 

 

ヘラクロス、戦闘不能。満身創痍でもこの不屈と思える闘争心だ。王者のプライドなのか、それとも600族の身体能力と戦闘力のか…恐るべしだ。

 

やはり、ヌシはきっちり仕留めきらなきゃならん。そうでなきゃ、安全な撤退は難しいか。

 

それに、まだヌシの後ろにいるバンギラスの回収も出来てない。中途半端な対応は慎むべきでだろう。幸い、総力戦にはなったが何とか追い詰めることは出来ている。もうひと頑張りだ…!

 

スピアーたちにもう一度ヌシを攻撃する指示を出そうとしたが…

 

 

「スピアー、もう一度…」

 

「ギィアッ!?」

 

「!?」

 

 

それよりも早く、ヌシの後頭部を巨大な岩がヒット。ヌシはたまらず、前のめりに大地に沈んだ。

 

 

「……ギラ…ァ…ッ!」

 

「バンギラス!」

 

 

犯人は、やられて瀕死状態だったはずのバンギラス。ズタボロで肩で息をしていながらも、なんとか立ち上がりヌシを睨み付けている。俺たちが相手をして気を逸らしている間に、何とか立てるまでに回復したのか…

 

無防備かつ不注意な背後からの奇襲を受ける格好になったヌシは、倒れたままピクリとも動かない。戦闘不能状態だ。

 

ヌシが沈黙し、バンギラスもなんとか立てるまでには回復した。これで安全に逃げることが出来る。

 

 

 

 

 

「……ギラァアァァッ!!」

ギィアァァァ……ァ…ッ!」

 

 

…そう思った直後、バンギラスが思いがけない行動に出た。

 

倒れたヌシに、バンギラスが襲い掛かり、首筋の辺りに噛み付いた。

 

 

「お、おい!もう十分だ!止めろバンギラス!」

 

 

慌てて止めるよう声を張り上げるが、バンギラスは止まらない。2度、3度とヌシの首筋へと鋭い牙を突き立てることを繰り返す。俺の声が届いた様子は見えない。

 

 

「チィ…!戻れ、バンギラスッ!」

 

 

明らかにこのままじゃマズいことを察して、すぐさま腰のベルトからボールを外してバンギラスに向ける。ボールから赤色の光線がバンギラスに伸びる。

 

 

しかし…

 

 

「ラァァ…ッ!」

 

「ハァッ!?」

 

 

自らにに伸びる赤い光に対して、バンギラスが煩わしそうにその巨躯を捩ると、光は霧散。バンギラスがボールに戻ることはなかった。

 

こんなこと初めてで、何が何やら…まさか、バンギラスがボールに戻ること拒否している…のか?オメーさんはサトシのピカチュウかよ!?

 

 

「ええい、だったらこっちで…!」

 

 

原因不明のまさかの事態に困惑しつつも、事態は一刻を争う状況に。何もしなけりゃヌシの命がどんどん危なくなっていく。

 

バンギラスが拒否するなら、ヌシを狙うしかない。急いで鞄の中から新品のモンスターボールを取り出して、力一杯に投げつけた。

 

 

『カァン』

「ギァ…!」

 

 

ボールは真っ直ぐ飛んで行ってヌシに当たった。ヌシが光となってボールに吸い込まれ、寄り掛かる者を失ったバンギラスが、ヌシに噛み付いた姿勢そのままに倒れ込む。

 

 

カタカタカタ…カチン!

 

「………フゥー…!」

 

 

ゲームでは捕まり辛いポケモンでもあるのでどうかと思ったが、あそこまで弱っていれば流石に一発か。何事もなくボールはヌシを収めて動きを止めた。

 

バンギラスに妨害されるか?という疑念も過ぎったが、幸か不幸か、それはなかった。

 

後はさっきは拒否されたが、バンギラスも回収して撤退だ。バンギラスもヌシも満身創痍。一度キチンとした設備のある所…ポケモンセンターで治療を受けさせたい。一度、セキエイ高原かトキワシティまで戻る必要があるだろうな。

 

ついさっきまで命を狙っていた相手の命を心配するのは、文字に起こすと何とも支離滅裂な感じだが、退ける必要はあったとは言え、命まで取りたいワケじゃない。

 

 

 

目先の脅威が去ったと思い込んだことで、俺の意識は完全に未来のことに向いていた。だから、まさか目の前の仲間が、新たな脅威になるなんて考え付きもしなかった。

 

 

「ギィ…ッ!!」

 

「は…?」

 

 

 

 

今度こそボールに戻そうと視線を向けたバンギラスは、一目見て何かがおかしいと感じた。カッと見開かれた眼はどこか焦点が定まらず、ここにはない何かを見ているよう。満身創痍でボロボロな身体を大きく上下させ、早く荒い呼吸を繰り返す。

 

直後、バンギラスは緩慢な動きだが、徐に大口を開いた。その中で光り始めるオレンジ色の光球。一瞬で本能的にまずいとは思ったが、突然のことに俺の頭と足は即座には着いて来てくれない。

 

ようやく身体が頭から発せられた警告に従おうとしてくれた頃には、時すでに遅し。

 

 

「ラァァッ!!」

 

 

短い咆哮と共に、バンギラスの口から棒立ちの俺に目掛けて、破壊の奔流が撃ち出された。万全な状態で放ったものほどのエネルギーはないが、それでも生身の人間など容易く消し飛ばせるだけの威力を有することは明らかで、ましてや相当な至近距離からの一撃。

 

あぁ…死んだわこれ。

 

 

「スピィィィーッ!!」

「スピアー!?」

 

 

しかし、一瞬のうちにスピアーが迫りくる一撃と俺の間に割り込み、俺を守るように攻撃の真正面に立ちはだかった。

 

 

ドオオォォォォーーン!!!!

 

「うぐぅ……っ、ぐっ…がぁっ…」

 

 

すぐ目の前で強烈な爆発が巻き起こり、スピアーだけでは到底受け止め切れないその余波と爆風で、俺は吹き飛ばされた。ほんのわずかに宙を舞った後、2回3回と青草のクッションの上を転がり、止まったのは勢いそのまま背中を強かに木に打ち付けてから。

 

背中を中心に身体の節々が痛む。が、幸い骨折とかの重症まではいってなさそうな感じだ。

 

 

「つっ…ス、スピアー!」

 

 

そんなことよりもスピアーだ。俺の身代わりになってバンギラスの攻撃…恐らくは"はかいこうせん"を受けたスピアー。全ての技の中でも最高クラスの威力を持つ大技を、スピアーは至近距離で真正面から俺を守るために、盾になったんだ。

 

元々高くない耐久能力の上、今日のこれまでの戦闘で多少消耗もしている。スピアーの安否が気がかりだ。

 

 

「ス…ピィ……ッ!」

 

 

しかし、幸いなことに徐々に晴れていく砂煙の向こうに、スピアーは健在だった。

 

 

「スピアーすまん、助かった…」

「…スピ!」

 

 

傷だらけになりながらもしっかりと空に浮かび続けているその姿と、力強い返事にひとまず胸を撫で下ろす。

 

 

「いっつつ…」

「キュイッ!?」

 

 

痛みを無視して立ち上がる。サンドパンも心配して集まってきた。擦り傷切り傷打撲の数はちょっと自慢出来るかも。まあ、全部スピアーの機転と献身のおかげなんだけど。

 

で、俺とスピアーをこんな状態にしてくれやがったバンギラス。技の反動でか、攻撃した場所から動きが無い…

 

 

「ギィ……ァァ……」

 

 

…と思いきや、そのまま前のめりに倒れた。

 

 

「っ!?…も、戻れ」

 

 

再度掲げたボールに、今度は抵抗なく戻った。ヌシとの戦いに敗れて、あれが限界だったのかもしれない。

 

それでもまさか、仲間に攻撃されるとまでは思っていなかった。戦いの邪魔されてキレた?それなら一回完敗してんだから文句言うなと言いたい。それとも…仲間という認識が出来ない程にギリギリの状態だったんだろうか?

 

 

「スピ…」

 

「スピアーもサンキューな。助かったよ」

 

 

スピアーも、流石に正面からはかいこうせんを受け止めたことのダメージは気になるよな。バンギー’s共々、一度キチンと休ませたい。

 

 

『prrrrr…prrrrr…』

 

 

ポケギアに電話だ。

 

 

「…ハイ、マサヒデです」

 

『あ!良かった、繋がった!こちらベースキャンプです!大きな戦闘音を観測しましたが、そちらに何か異常はありませんか!?』

 

 

電話の相手は、シロガネ山調査隊のベースキャンプの職員さんだった。

 

26・27番道路の敷設を安全に進めるために設置された、シロガネ山調査のベースキャンプ。大掛かりな調査はすでに終了しているが、規模を縮小しての活動は続けられており、他にもトレーナーの入山管理等も担っている。また、俺のようなシロガネ山で活動するトレーナーに義務付けられているポケモン協会への状況報告等は、ここを窓口として行われている。

 

どうもベースキャンプまで戦闘音が聞こえていたらしい。状況把握と安否確認のため、入山しているトレーナー全員に連絡を取っているとのことで、俺にもかけたが繋がらず心配されてしまっていたらしい。

 

…スンマセン、電話鳴ってるのに気付かなかった。ただ、どの道あの状況じゃ電話出てる余裕なかったから仕方ない。

 

 

「…野生のバンギラスと遭遇し、戦闘になりました。先程の戦闘音はそれだと思います」

 

『野生のバンギラスだって…!?大丈夫かい!?』

 

「何とか捕獲し、事なきを得ました。ですが、こちらのポケモンも大きなダメージを受けてしまいました。捕獲したバンギラスも含めて、キチンとした設備で治療を受けさせたいのです。セキエイ高原、もしくはトキワシティまでの足を用意してもらえないでしょうか?」

 

『んん…分かりました。確認してみますね。一度かけ直すので、少しお待ちいただけますか?』

 

「お願いします」

 

 

一度通話を切り、折り返しの電話が来るまでの間にスピアー、キュウコン、サンドパン、ヘラクロスに手持ちの傷薬を使っていく。この中では瀕死にされたキュウコン、それとやはりスピアーのダメージが特に大きい。

 

バンギー’sについては必要性は認識しつつも、「どうしようか…」と悩んでいるところで、再びポケギアが鳴った。

 

 

「ハイ」

 

『マサヒデさん、お待たせしました。で、頼まれていた足についてなんですが…班長に話をしたところ「現地の状況確認をしたい」とのことでして…マサヒデさんには、そのまま現地にいてもらって、調査班の案内をお願いしたいのです。代わりに、調査班にポケモン転送装置を持たせます。セキエイ高原のポケモンセンターに受け入れ要請を出していますので、それでどうでしょうか?』

 

 

ポケモンたちだけ転送装置で飛ばして、俺には現地に残れってことね。

 

 

「大丈夫です。それでお願いします。到着まではどれくらいかかりそうですか?」

 

『そちらへの到着までは、準備も込みで恐らく2~3時間程度でしょうか』

 

「2〜3時間…では、こちらは一度キャンプ地まで戻ります。場所は以前報告した場所から変更していません。調査隊の方々にはそちらに向かうようお伝え下さい」

 

『分かりました。そのように伝えます。では、また後程』

 

 

提案の了承と、キャンプに戻ることを伝えて通話を終える。とりあえずはこれでいいだろう。後はバンギー’sを治療するかどうか…と言うよりも、そもそもボールから出して大丈夫かどうか…

 

 

「…いや、流石にそれは、な」

 

 

…いや、トレーナーなら応急処置ぐらいはして然るべきだ。

 

 

「サンドパン、レアコイル。すまんがもう一仕事頼む」

 

「キュイ!」

「ビ!」

 

「…じゃ、1体ずついこう」

 

 

暴れ出すことを覚悟の上で、バンギー’sの応急処置を行った。2体ともに睨まれはしたものの、暴れることはなく、スムーズに対応出来た。幸いなことであり、同時にそれだけ重度な疲弊、消耗をしていることの裏返しでもあるから良くないことでもあるが。

 

とりあえず、終わったならさっさと引き上げて調査隊を待とう。

 

薙ぎ倒された大量の巨木、荒れ果てた大地、山肌にぽっかりと開いた大穴。眩い夏の朝日に照らされる破壊の限りを尽くされた戦闘痕は、このほんの1時間足らずの時間が、如何に濃厚で困難なものだったかを物語っている。

 

最後の最後に大変なことになった…そう思いながら、ピリピリとした僅かな痛みの残る足でキャンプ地への帰路に就いた。

 

 

 

 この後、キャンプ地にてベースから来た調査隊の人たちと無事に合流。彼らが持ってきた携帯式のポケモン転送装置で、バンギー’sとスピアー、キュウコンがポケセンへと送られていった。

 

それを見送った後、調査隊の先導役として激戦の跡地へととんぼ返り。現場の隅で説明&質問を受けながら状況確認の進捗を見守り、キャンプ地に帰ってようやく寝袋に潜り込めたのは、太陽が真上を通り過ぎてからのことだった。

 

そして翌日、ベースキャンプの職員さんから、4体とも命の危険はないが、スピアーとキュウコンは数日安静、バンギー’sは揃って1カ月程度の加療が必要という診断が出たとの連絡があった。ひとまずは胸をなでおろしたが、エース格のスピアーとバンギラスに加え、キュウコンの計3体は当面の戦線離脱が確定した。

 

この結果を受けて、これ以上のシロガネ山での活動は危険だと判断。特訓は中断し、トキワシティに戻ることを決めた。丸1年半もシロガネ山にほぼ籠り切っていたんだ。時期的にはちょうど夏休みだし、一度羽を伸ばすのもありだろうさ。

 

トキワシティに戻ったら…そうだな、とりあえずはグータラしたいな。ただグータラしてるだけだと管理人のルートさんに叱られるから、生活リズムも整えて…

 

…ああ、成り行きで捕まえちゃったヌシの方もどうしたものかね。いや、ホント。てか、バンギー’sのこと考えると気が休まりそうにないんだが。

 

まあ、こればかりはトレーナーの責務だと思って頑張りますかー…

 

 

 

 

 

 

…あ。あと、スピアーの努力値も微調整し直さなきゃ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、俺のシロガネ山籠りは中途半端ではあるが、不本意な形で一度終わることとなった。

 

無論、何れはまた来るつもりだ。結局スピアーしか努力値振り切れなかったワケだし。

 

なお、ヌシが現れた時にはかいこうせんで造った大穴が、後にシロガネ山内部を通って山頂へと続く、所謂原作でのシロガネ山マップの入口になったことを知るのは、もうしばらく後のことである。

 

 

 




モチベが回復したので2週間投稿です。前話は後書き書く気が起きなかったり、試案の話を前書きに置いていたのを消し忘れたり、結構やらかしちゃってました。ご迷惑おかけしました…オウフ。

とりあえず、今後に向けた主人公強化&バンギの性格矯正のための71・72話だったんですが…バンギに言うこと聞かせるようにするならどういう展開が良いんだろう?と悩んだ末に出した答えは、「リザードンにはリザードンを、バンギにはバンギを」でした。懐かしのアニポケ要素。で、肝心な言うこと聞いてくれるようになったかどうかは…まあ、どうなんでしょうねっていう。

レッドがオーキド博士から貰ったポケモンは?

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