成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第7話:前門のネズミ、後門の…

 

 

 

 

「スピアー、ダブルニードル!」

「スピャ!」

『バス、バスッ!』

「ポ、ポ~…」

 

 

 

 

川の畔を川下へと向かって歩き続ける俺とスピアー。道中、襲い来るポッポやオニスズメなんかを蹴散らしながら突き進む。足元は悪いが、基本的に飛んでいるスピアーにはそんなことは関係ない。空中を自由に飛び回りながら、『みだれづき』と準専用技とも言える『ダブルニードル』を状況に応じて相手に叩き込む。

 

別に俺の手持ちポケモンというワケではないんだが、俺もトレーナーの真似事のようなことをノリノリでやっている。スピアーに技を指示する時の気分は完全にポケモントレーナーのソレである。実に良い気分だ。ポッポにしろオニスズメにしろ、スピアーとのタイプ相性は決して良くないが、そこは未進化ポケモンと最終進化済みのポケモンの力の差で押し通す。フハハ、種族値の暴力というものを教えてやろう!

 

 

 

そんな感じで歩き続けて早3時間程度。歩き難かったり回り道したりで思ったよりも進んでいないこともあるが、まだ森の終わりは見えてこない。時間はもうすぐ正午を回るかどうかといったところか。時間的にはあと半日行動出来るはずだが、体力の消耗が思った以上に激しい。いい歳してノリノリでポケモントレーナーごっこに興じていた反動か…?

 

ともかく、先が見通せない以上はここらで一回休憩を挟み、午後に向けて体力の回復を図った方が良いだろう。ついでに昼飯も摂ってしまおう。

 

 

 

「スピアー、一回ここで休憩しよう!」

「スピ!」

 

 

 

俺の後ろに戻ってきたスピアーに声を掛け、近くの大木の根元に座り込む。ポケットに突っ込んでいたモモンのみ(仮)を取り出し、皮を剥いてかぶりつく。

 

 

「うめぇなぁ…」

 

 

甘さの中にほんのりと混じる酸味、滲み出る果汁…毎日食べてきたけど、やっぱりこれが一番ですわ。水も欲しいところだが、流石にあの濁っている川の水を飲むのは流石に…うん、今回は我慢だ。

 

 

「スピ、スピァ」

 

「うん?なんだスピアー、お前も欲しいのか?」

「スピ!」

 

 

俺の食事風景を見ていたスピアーも、木の実が食べたくなったらしい。ポケットに詰め込めるだけしか持ってないから、日没までにどうにかならなかった場合を考えるとキツイが…まあ、仕方がない。モモンのみ(仮)をスピアーに差し出す。

 

 

「…ほら、手持ちが少ないからな。大事に食えよ?」

「……スピ」

 

 

…が、スピアーはモモンのみ(仮)を受け取ろうとはしない。どうしたんだ?欲しかったんじゃないのか?

 

 

「スピ、スピ!」

「んー…?」

 

 

言ってることは分からないが、身振りから見て、どうも欲しかったのはコレじゃなかったらしい。

 

 

「…じゃあ、コレか?」

「スピ!」

 

 

そう言って俺が取り出したのは、オレンのみ(仮)。皮が若干固いが、柑橘系らしい酸味が特徴の果実だ。ゲームでは、使用することで僅かだが体力を回復する効果がある。コクーンの時は全く反応を示さなかったが、今回は反応を見る限り正解だったようだ。まあ、蛹だしそれも当然か。

 

皮を剥いて差し出したオレンのみ(仮)を、早速小さな口でちびちび齧り始めるスピアー。黄色に黒のラインという、警戒心を掻き立てるような体をしたスピアーが、必死になって木の実に齧り付いている姿は見ていて穏やかな気持ちになる。

 

木の実の効果で思い出したが、本来モモンのみには『どく』の状態異常を治す効果がある。さっきスピアーがモモンのみ(仮)を嫌ったのは、案外その辺りに理由がある気がする。例えば、体で作っている毒を中和されるとか。もしくはこれまでの戦闘で体力が減っていたから、体力回復効果のあるオレンのみ(仮)を欲しがったか…まあ、これはあくまで俺の勝手な推測だ。実際どうなのかはわからん。

 

 

 

 

「さあ、そろそろ行くぞスピアー。準備はいいかー?」

「スピー!」

 

 

スピアーが食べ終わり、少しだけゆっくりしてから行動再開。今まで同様、時折襲ってくる鳥ポケモンたちを都度追い払いながら、川に沿って歩いていく。

 

歩みを進めるにつれて、徐々に川幅が広くなり、川の流れも緩やかになっていくのが分かり、かなり下流の方まで来ていることが見て取れるようになった。道も幾分か歩きやすくなったような気がする。

 

そして脱出という目標達成がかなり近づいていることを確信し始めて間もなく、ついに俺の目は捉えた。日暮れを感じさせつつある空の中、明確な森の終わりと、その先遠くに見える人工的な建物の姿…街の灯りを。

 

 

「よっしゃ…よっしゃああぁぁぁぁ‼‼」

 

 

ここまで長かった。実に長かった。何処とも分からぬ森の中に飛ばされて早一週間。望み、求め続けたモノにようやく手が届く範囲まで来れた。ここまで来ればあとは辿り着くだけだ。

 

これまでの疲労も、あの眼前に広がる現実の前には関係ない。感動に打ち震え浮足立つ心を隠すことなく、俺は森と平地の境界目指して走り出し…

 

 

「スピ、スピァ!」

 

 

突然、立ちはだかるように前に出たスピアーによって止められた。何するんだ、と文句を言おうとした次の瞬間。

 

 

 

『バチィ!』

「うわっ!?」

 

 

 

…俺たちの目の前を、黄色い稲妻が横切って行った。スピアーが止めてくれたおかげで当たりはしなかったが、明らかに俺たちに向けて放たれたものだった。稲妻が飛んできた方向に目をやれば、そこにはポケモンファンなら…いや、ゲームをプレイしたことのない人ですら、その多くが名前、姿を知っているであろうあのポケモンがいた。

 

 

「ビッカァ!」

「ピカチュウ…!」

 

 

ピカチュウ。ねずみポケモン。でんき単タイプ。某夢の国のネズミに続き、世界で2番目に有名なネズミとの呼び声が高い、御存知ポケモン界の看板キャラ。アニメでは主人公・サトシの相棒であり、劇中での活躍は最早書き切れないほど。

 

ポケモンを代表するキャラクターとの遭遇に喜びを感じられそうな状況ではなく、先の電撃のとおりすでにあちらさんはヤル気満々な臨戦態勢。こっちの言うことに耳を傾けてくれそうにない。対するこちらもスピアーは早い段階でその存在に気付いていたらしく、すでに準備は出来ている。

 

くっ…ゴールはもう目の前だというのに、幸運の女神がついているなんて豪語した割にはツイてねぇ。でも、ここさえ抜ければあとは街まで俺を一直線だ。そう考えれば、このピカチュウは言うなればダンジョンボスのようなものか。目的地に辿り着くためには、どうしても倒さなくてはいけない相手なんだ。

 

 

日が傾きつつある中で対峙するスピアーとピカチュウ。今までの鳥どもを相手にするのとはまた違う空気に場が包まれる。徐々に高まる緊張感に、俺の心臓の鼓動も早くなる。

 

 

 

 

 

…そして、破局の時は訪れる。

 

 

 

「ピィカ、チュー!!」

 

 

開幕の火蓋を切ったのは、ピカチュウの電撃。さっきの電撃よりも威力がありそうだが…まさか一気に決めようという腹積もりか?

 

しかし、直線的に迫る電撃をスピアーは指示を出す間でもなく難なく回避。電撃は俺とスピアーとの間の地面に着弾し、地表を軽く抉る。中々の威力だ。

 

 

「スピアー、ダブルニードルだ!」

 

 

スピアーに対して反撃の指示を飛ばし、スピアーも即座に反応。お返しに2本の針を撃ち出す。こっちも避けられはしたが、挨拶代わりには十分だ。

 

この場面でまず気を付けないといけないのは、ピカチュウの特性だ。ピカチュウの特性は『せいでんき』。この特性は相手が自分に対して接触する技を使って攻撃した場合、一定の確率でその相手を『まひ』状態にしてしまう。『まひ』状態になったポケモンはすばやさのステータスが半減し、さらに確率で体がしびれて行動出来なくなることがある。運が悪いと何も出来ずに嬲り殺しにされる、勝負所で動けない…なんてことになりかねない。

 

もう一つ『ひらいしん』という特性もあるのだが、これは一般に隠れ特性、或いは夢特性と呼ばれるものであり、加えてその効果は「でんきタイプの攻撃技の対象を強制的に自分にしてダメージを無効化。その上で自分のとくこうのステータスを1段階上昇させる」というもので、現状では考慮に入れる必要がない。

 

更に言うなら、"でんじは"を持っている可能性もある。単純に相手を『まひ』状態にする技だ。こちらも要注意。でんきタイプの攻撃技の追加効果にも気を付けないとな。

 

 

…であるならば、『みだれづき』の使用は出来るだけ控え、空中を使えるこちらのアドバンテージを活かして『ダブルニードル』『どくばり』での遠距離戦に持ち込むのがベスト。鳥どもとは違いメインウェポンの通りも良いし、『どく』状態に出来ればなおgoodだ。

 

 

 

そこからは、概ねこちらの意図した通りに戦いが進んでいく。

 

 

「ピィカァ!」

「スピアー、どくばりで牽制!その後横に回り込んでダブルニードル!避ける方向は任せる!」

「スピャー‼」

 

 

 

電撃…おそらくは"でんきショック"や先制技"でんこうせっか"を使用しての接近&攻撃を試みるピカチュウに対し、こちらは空間を最大限利用して攻撃を躱しながら"ダブルニードル"、場合によっては"どくばり"を撃ち込んでいく。

 

今のところ電撃が掠ったりはあったが、直撃と言えるようなダメージはなく、まひ状態にもなっていない。思った通りの遠距離戦に持ち込めてはいる一方で、こちらの攻撃も明確な直撃は数えられる程しかなく、お互いに有効打を打てていない状況となっている。

 

 

「ピィカァ…」

「スピィ…」

 

 

と言うのもこのピカチュウ、思ってた以上に素早い。元々すばやさの種族値は結構あったような記憶があるが、それにしても速い。それに何とか着いて行ってるスピアーも大したものだが、このままでは埒が明かない。すばやさで先攻後攻を決め、技を撃ち合ってHPを0にしたら終わり…なんてゲームのように簡単に出来ていないのが、現実的なポケモンバトルの面白く楽しいところであり、厄介なところだと感じる。

 

太陽もどんどんとその高度を下げ、徐々に景色がオレンジ色に変わりつつある。街に辿り着いて助けを求める都合上、出来れば公的な機関が開いている内に辿り着きたい。その為にも、これ以上のタイムロスは回避したい。だから決定打が欲しい。一度でいいから決定打を叩きつけることが出来れば、野生のあのピカチュウならきっと無理はしないはず…

 

 

 

そう考えてるうちに、局面が動く。ピカチュウが仕掛けた。

 

 

「ピッカッ…チュー!」

「…!避けろ、スピアー!」

 

 

 

今日何度目かの稲妻が奔る。放たれた"でんきショック"が、スピアーに向けて飛んでくる。躱すように指示を出し、スピアーが横に動いたのを確認し…

 

 

 

「ピッカァ!」

 

「な…!」

 

 

…ピカチュウが、電撃のあとを追いかけるように突っ込んで来ているのを見つける。回避したところに"でんこうせっか"を当て、そのまま接近戦に持ち込む気か!?

 

流石に避けたあとすぐの急な動きはいくらスピアーでも…なら、迎え撃つしかない。だが、"でんこうせっか"は甘んじて受けるにしても、至近距離"でんきショック"をモロにくらうのは避けたい。どうしたらいい?どうすれば……!

 

 

 

「スピアー!………!」

『バチバチバチィ!』

 

 

電撃が地面を音を立てて抉る。砂埃が一瞬視界を奪い、迸る電気の音に俺の声が掻き消される。指示は出した。咄嗟の判断だが、あとはスピアーに届いていてくれることを、そして上手くいってくれていることを願うしかない。祈るように、食い入るようにその場所を見つめる。

 

 

 

砂埃が風に流され、スピアーとピカチュウが衝突した場所には…

 

 

 

「スッピャア‼‼」

「ピッ!?」

 

 

 

…スピアーに頭から突っ込んだピカチュウと、その突撃を胸の前で交差させた2本の針を上手く使いガッチリと受け切ったスピアーの姿が。

 

"でんこうせっか"を受け切られたピカチュウが、弾き返されて宙に投げ出される。

 

 

ここだ、決めるならここしかない!

 

 

「やっちまえスピアー!"みだれづき"だあぁーッ!!」

「スッピャー‼‼」

 

 

これまでの鬱憤を晴らすかの如く、突きの嵐がピカチュウに叩き込まれる。いくら素早いピカチュウと言えども、流石に格ゲーのような空中ジャンプは出来まい。為す術もなくその連撃を一身に受けたピカチュウは、大きく突き飛ばされて地面をバウンドするように転がっていく。

 

 

「ピ…ピカァ…」

 

 

元居た位置ぐらいまで飛ばされたピカチュウは、それでもなおヨロヨロと起き上がった。よく見ると腕や頬など何か所か切り傷が出来ており、僅かだが血も流れているようにも見える。

 

その間にピカチュウは素早く、しかし今までよりかは緩慢な動きで俺たちに背中を向けると、そのまま茂みの中へと消えていった。ダメージが大きく、流石にこれ以上は戦えないと判断したのだろう。

 

…俺たちの勝利だ。

 

 

「よっし!」

 

 

勝利の喜びを思わず出てしまったガッツポーズで表現する。あの時俺がスピアーに何を言ったのかと言うと、ある技を指示していた。それはコクーン時代の代名詞『かたくなる』。防御のステータスを上げて真正面から『でんこうせっか』を受け止めろ、押し負けるな…と。不安だったが、上手くいって良かった。

 

 

 

「スピアー、よくやった!それと、助かったぜ、ありがとう」

「ス、スピィ…」

 

 

 

激闘を制したスピアーを労おうと駆け寄ると、元気ではあるのだが、何となく動き辛そうに思えた。どことなく動きがぎこちない気がする。ダメージが大きかった?いや、そうというよりもこれは…

 

 

「…せいでんきか」

 

 

どうやら、最後の"みだれづき"の時にもらってしまったようだ。ピカチュウの置き土産…だな。ホント、最後の最後まで厄介な相手だった。

 

…でも、俺には焦る必要はない。だって手が無いわけじゃあないからな。俺はポケットを漁り、目的のブツを取り出してスピアーに渡す。

 

 

「スピアー、コイツを食べるんだ。体の痺れに効くはずだ」

「スピ?」

 

 

俺が取り出したのは、念の為と思ってポケットの一番底に押し込んであったクラボのみ(仮)。ゲームでの効果はまひ状態の回復。ゲーム通りの効果があるなら、スピアーは治って俺は(仮)を外すことが出来る。昼に食べさせたオレンのみ(仮)はいまいち効果が分からなかったが、今回は効果が出るようなら確実だ。さくらんぼっぽい見た目のくせにやたら辛くて食べられたもんじゃなかったが、備えあれば患いなし、一石二鳥ってやつだな。

 

 

 

 

そうして、スピアーに木の実を食べさせていた時、第二の乱入者は俺たちの前に姿を見せた。ピカチュウとの戦いを観戦していた者がいたことに、俺は最後まで気付いていなかった。

 

 

「…ふむ、良い戦いだった」

『パチパチパチ』

「!?」

 

 

突如聞こえた拍手の音。久しく聞いていなかった人の出す音だったが、それ以上にこの場には俺たちしかいないと思い込んでいたが故に驚き、顔を上げる。

 

そこにいたのは、黒いスーツに身を包んだガタイの良い20代後半…いや、30代半ばぐらいの男。全く気付かなかった。どこにいたんだ?いつから見られていた?俺の困惑を無視して男は続ける。

 

 

「状況によく対処し、そのスピアーもよくそれに応えていた。良いものを見せてもらった」

「…ど、どうも」

「…だが、君のような子供がポケモンを連れてこの森に入ることは、とてもではないが褒められたことではないな」

「…え?」

 

 

…そう言われて思い出す。確か、ポケモン世界って10歳からでないとポケモンを持つことは認められてなかったような気が…改めて今の俺の姿を思い描く。

 

 

・身長:120㎝ぐらい

・体重:ふ☆め☆い

 

 

…見た目完全にアウトですやん。どうしよう、これは怒られる…

 

 

「何故、この森に入った?ご両親から危ないと聞かされてはいなかったのか?」

「えっと、あの…」

 

 

言い訳など認めないとばかりに、詰問するような口調で男は畳みかけてくる。俺は気圧されながらも、どう答えたものかと思案し…

 

 

 

「…じ、実は分からないんです」

「…む?」

 

 

 

…結局一部秘匿するけど、ほぼありのままを正直に話すことにした。人間正直が一番である。

 

 

「ここがどこなのか、どうやって来たのか、どうしてこんな所にいるのかも分からないんです。僕が気付いた時には、森の中で寝ていました。一週間ほどこの森の中で過ごしました。それで歩き続けて、今日ようやくここまで辿り着いたところなんです。親の名前も分かります。自分の名前も分かります。住んでた所も分かります。でも、分からないんです」

 

 

切実に、必死に訴える俺の答えにあちらさんも面食らったのか、何とも言えない表情で沈黙の時間が流れる。しかし長くは続かず、男は目を瞑って何事か思案したのち、ゆっくりと口を開く。

 

 

「…君、名前は」

「津田政秀です」

「ツダマサヒデ…では、マサヒデと呼ばせてもらおう。マサヒデ、君について幾つか質問をさせてもらう」

 

 

 

そこから先は、俺の個人情報暴露会と化した。

 

出身地に始まり、親の名前、家族構成、趣味、森の中での生活、ここに飛ばされる直前までしていたことetc…全部正直に話した。あ、でも生年月日と年齢だけは「分かりません」でごまかしといた。こんな体で「24歳、社会人です」なんて言って見ろ。絶対コイツ頭おかしいって思われるわ。

 

 

 

「…ふむ、すまないが君の言う地名に私は聞き覚えが無いな」

 

「そ、そうですか…」

 

「それに、年齢・生年月日は分からない…と?」

 

「は、はい…」

 

 

 

俺の住所は聞いたことが無いとの返答を受けて、若干落胆する。まあ、俺が現実で棲んでた所ってポケモン世界では何も言及されてない地域だし、当然と言えば当然か。年齢に関しては凄い疑われてしまっているが、正直に答えるとワケがわからないことになるから仕方がない。それに、ポケモン世界の暦がどうなっているのか、現実日本と一緒だったとしても今がいつなのかが分からないし。

 

 

 

「だが、そこについてはこちらで調べさせてもらう。君が無事に家族の下へ帰れるように努力することを約束しよう」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

でも、見ず知らずの子供のためにここまでやってくれるのは素直にありがたい。このおっさん、パッと見た目怖いけど良い人や。

 

そこに、思い出したかのようにおっさんから追加で質問が飛んでくる。

 

 

「…ああ、もう一つだけ聞いておきたい。知っていると思うが、10歳未満の子供はポケモンの所持は禁止されている。で、そのスピアーは君のポケモンか?」

 

「あ、いえ、森の中で生活してる間に懐かれたと言いますか、意気投合したと言いますか…とりあえず、一緒に行動していただけで僕のポケモンというわけではないです」

 

「スピ!」

 

「……フ、そうか……それと、これを使うといい」

 

 

そう言って、おっさんは薄黄色の小さなスプレー缶を俺に渡してくる。

 

 

「これは?」

 

「『まひなおし』だ。そのスピアー、麻痺していただろう?」

 

 

おお、ポケモン世界のアイテム第一号は『まひなおし』ですか!政秀さんちょっと感動。これはその名の通り、まひ状態を治療するアイテムだ。モンスターボールが見られればもっと感動出来そう。

 

というか、このおっさんそこまで見てたのか?

 

 

「ありがとうございます。でも…大丈夫だと思いますよ?」

 

「…なに?」

 

「(たぶん)まひ状態を治すきのみをさっき食べさせましたから。スピアー、動けるか?」

 

「スピッ!」

 

 

俺が聞くと、スピアーは先ほどまでのぎこちなさはどこへやら、実に機敏に動き回る。『何ともない』とアピールしているようだ。どうやら、あの木の実は思っていた通りの効果を発揮したらしい。クラボのみ(仮)はクラボのみへと進化した!

 

 

 

「………そうか、ならいい。今日はもう直に日が暮れる。部屋は用意しよう、今夜はそこに泊まっていくといい…そのスピアーも一緒にな」

 

 

しばらく呆然とした様子を見せたおっさんだったが、俺の答えに合わせてスピアーが一緒に返事をして動き回る姿を見て、やがて真顔に戻る。というかおっさん、貴方はこの哀れな迷子を家に泊めて下さるのですか!?ようやくまともな食事にありつけるというのですね!?ああ、ありがたや~。

 

 

 

「あ、ありがとうございます!でも、見ず知らずの人の家にそんなにご厄介になるのは…」

 

「…ああ、そうか。君は私のことを知らないのだったな。まあ、その点は気にしなくてもいい。これも私の職務の内だ」

 

 

 

そう言って、おっさんは俺に向き直る。黒いスーツにパンチパーマな頭と鋭い目つき、ぱっと見がっしりとした、それでいてスラッとしているようにも見える体格。やたらとプレッシャーを感じるその風格。ズボンのポケットに手を突っ込んでいる姿が様になるおっさん…

 

…って言うか、アレ?さっきまでは自分のことで精一杯だったからよく見てなかったけど、このおっさん、何かどこかで見たことがあるような記憶が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名はサカキ。トキワジムのジムリーダーをしている者だ」

 

 

 

 

 




 
 はい、というわけで迷子脱出&ロケット団ボスにしてトキワジムリーダー、悪のカリスマことサカキの登場でした。ついでに現在地もこれで判明しましたね。

さあ、一難去ってまた一難。迷子は脱したがサカキに無事捕獲された主人公。サカキに御招待されてしまい、戦々恐々としたまま過ごす日々が今始まる!

色んな意味で震えながら次回へ続く!



…まあ、それはそれとしてスピアーの紹介。

~手持ち(?)ポケモン~

スピアー(NEW)

・レベル:13
・おや:--
・性別:♂
・特性:むしのしらせ
・ワザ:どくばり
    かたくなる
    みだれづき
    ダブルニードル

さみしがりな性格。
レベル6のとき、トキワの森で出会った。
物音に敏感。

 
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