成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第83話:招かれざる者

 

 

 

~タマムシシティ・ロケット団地下アジト~

 

 

 

「これより、S-4プランの発動・実行に向けた作戦会議を行います」

 

 

 ロケット団アジトでの前回の会合から約1ヶ月。S-4プラン…シルフカンパニー襲撃・占拠計画は、サカキからのGOサインが出されたことで十分な人員と物資を与えられ、1ヶ月という短い期間で急速に練り上げられ、細部を詰められていった。

 

そうして計画案が完成して少ししたこの日、ロケット団幹部たちが一堂に会して計画の実行に向けた会議が開かれたのである。

 

 

「本計画の概要を説明します。モニターにご注目下さい。S-4プランはシルフカンパニーの内部情報、開発中の試作品等の奪取を主目標とする計画です。これを達成するために、シルフカンパニー本社に戦闘員を秘密裏に送り込み、これを速やかに占拠。短時間でこれらの強奪を目指します。

 

主目標の達成を目指すに当たって、すでにシルフ内部に複数の協力者を確保しており、彼らの手引きで我が方の工作員を内部に送り込むことに成功。シルフ社内の警備体制等の内部情報の入手と、いつでも作戦行動に動ける態勢を作るように指示しており、我々の準備が整い次第、内部から制圧の手助けをする手筈となっております。

 

主目標の内、最優先で確保しなくてはならないのが、新型のモンスターボール…開発コード・Mボールです。すでに開発の最終段階にあると見られており、その性能は情報のとおりであれば、どんなポケモンであっても絶対に捕まえることが出来る究極のモンスターボールであるとされています。必ず押さえていただきたい」

 

 

シルフコーポレーションはモンスターボール等、ポケモン関連のアイテム製造と販売をほぼ一手に担う、カントー地方屈指の大企業。その製品開発能力は言うまでもないことであり、その目玉として開発中なのが、今回の目標となる新型のモンスターボールだった。

 

 

「続きまして、計画の進行手順について段階に分けて説明します。シルフカンパニー襲撃・占拠に向けた第一段階として、ジム・警察などの公安側の行動を制限・阻害することを目的とした陽動を実施します。このために、ハナダシティにて実動部隊を用いて複数の施設を襲撃。時間差でタマムシ・クチバの2都市でも同様に陽動を実行します。これら一連の陽動作戦を完了させ敵側戦力を釣り出すまでが作戦の第一段階となります。

 

第二段階はまず、無人発電所への襲撃です。この襲撃で発電所及び管理事務所を制圧し、発電設備を破壊。大規模停電を人為的に引き起こすことで、通信・交通網を麻痺させ、カントー全域の混乱を狙います。発電所を制圧し次第、ヤマブキシティの4カ所のゲートに部隊を送りこれを占拠。同時にヤマブキジムと警察へも部隊を送り込んで、公安勢力を抑え込みます。ヤマブキシティの封鎖を完了させるまでが第二段階です。

 

こうしてヤマブキシティ内外からの干渉を防いだ上で、第三段階、シルフカンパニー本社を襲撃し、内通者と協力し本社内に部隊を送り込み占拠。主目標となるMボール等の試作品・機密情報等を奪取出来次第順次撤収…以上がS-4プランの概要となります。

 

各自の役割等、詳細はお手元の資料もご確認下さい。何か質問、気になること等ありましたら挙手をお願いします」

 

「質問よろしいか?」

 

「どうぞ」

 

 

そこからは、計画についての質疑応答の時間。シルフカンパニーへの侵入手順、攻撃目標の選定の理由、追加の提案等々…活発な議論が交わされていく。

 

しかし、作戦計画に大きな変更はなかった。元々がある程度練り上げられていた計画だったが、そこに潤沢な人員・物資が割り振られた結果、実用的で十分なものに仕上がっていた。

 

 

「…ある程度質問は出尽くしたでしょうか?では…サカキ様、何かございますか?」

 

「良く出来た計画であると思う。アポロ、御苦労だった」

 

「もったいないお言葉です」

 

「最終的な微調整は必要だろうが、今日の計画案を基本軸として準備を進める。作戦決行の日時は、調整が終了し次第伝える。各自、来る日に向けて備えを怠るな!」

 

「「「はっ!」」」

 

 

サカキの締めで、この日の会議は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ボス、お疲れさまでした」

 

「アポロも御苦労だったな。この短期間でよく仕上げた」

 

「これぐらい、ワケもありません」

 

 

 会議終了後、サカキはアジトの自室へと戻っていた。傍には数人の秘書に加え、S-4プランを含めシルフコーポレーションへの工作を主導していたアポロの姿もあった。

 

 

「シルフのガードは固いとは報告しましたが、それはあくまで機密情報に関する部分のみ。我々からしてみれば、色々と入り込む穴は多かったです。こちらの息のかかった者を潜り込ませることも簡単でしたし…こちらを」

 

「これは?」

 

「潜入させた工作員が成果として送って来た物で、【シルフスコープ】と言う試作品だそうです。人の目には見えないものを見ることが出来る…という物らしいのですが、よく分かりませんでした。ただ、使われている技術はシルフの地力の高さを裏付けるだけのものがあります。うちの技術部の見解です」

 

「ふむ…やはり、シルフには多少無茶をしてでも手を突っ込む価値はあるか」

 

「はっ」

 

 

サカキとアポロの話が弾む中、そこに秘書の1人が口を挟んだ。

 

 

「…サカキ様。その計画案につきまして、1点だけご質問が」

 

「何か」

 

「少々本筋から外れることでしたので、先程の会議では質問しなかったのですが…作戦案を聞く限り、考慮されていない戦力がありますね」

 

「考慮されていない戦力?」

 

「トキワジムリーダー代行。サカキ様がトキワジムリーダー代行を任せておられるだけのことはあって、戦力としてはロケット団全体で見ても5本指には入るだけの実力は持っています。これだけの大きな山場です。使わないのはもったいないのでは?」

 

「マサヒデか…」

 

 

マサヒデは立場としてはトキワジムリーダー代行であると同時に、サカキの愛弟子だ。サカキがハナダの洞窟調査のため留守にしてるトキワジムを、1年半もの間ジムリーダー代行という看板を背負って守り、過去には最年少のポケモンリーグファイナリストという実績もある。仮に現役ジムリーダーたちを相手させても、互角以上に戦えるだろう。

 

そんな存在が、計画の中では完全に無いものとして扱われていた。

 

 

「アレは顔が広く知られてしまっている。表で動かし過ぎたのもあるが、今後も我々の表看板として扱う方がメリットは大きい。少なくとも、今回は使わん」

 

 

ポケモンリーグ最年少ファイナリストとなったことで、世間から大きな注目を集めたマサヒデ。サカキも自らのジムリーダー、指導者としての実力・功績をアピールする象徴的な存在として、自社製品の宣伝に起用したり、シロガネ山調査団の一員として派遣したり、ジムリーダー代行を任せたりと、自身の名で脚光を浴びる舞台に立たせてきた。

 

結果、マサヒデは今や歴代でも屈指の天才少年トレーナーとして、カントー地方で広く名前も顔も知られている。こちらの裏の顔については全く知らない、半分部外者のようなもの。ロケット団の戦力として動かすことは難しい…サカキはそう考えていた。

 

 

「…サカキ様、私からもよろしいでしょうか?」

 

 

そこに、また別の秘書が口を挟む。

 

 

「セドナか…何だ」

 

「彼を戦力として計算しない理由は分かります。ですが、ジムリーダー代行という立場にあり、トレーナーとしても優秀である者を、このまま放置するのは得策ではないかと」

 

 

それはサカキとマサヒデの連絡役でもあったセドナ。マサヒデがジム巡りの旅に出て以来の付き合いがあり、現在もマサヒデが住んでいるTCP社トキワ支部の社員寮の管理人や、トキワジムのスタッフ等、複数のルート経由で様々な情報をえている。マサヒデのことについてはサカキと同等、或いはそれ以上によく知っていた。

 

 

「また、報告によればターゲットの1つであるヤマブキジムのジムリーダーとはかなり懇意にしている、との情報も上がっております。頻繁に電話をしたり、会ったりしているようです」

 

 

ヤマブキジムのナツメと言えば、その実力もさることながら、タマムシジムのエリカとともに美人ジムリーダーとしても知られている。他にも、セキチクジムリーダー・キョウの娘とも数年来の仲だとの報告も受けた覚えがある。

 

幼子の頃から見てきた少年も、色を知る年頃か…と、少々場違いなことではあるが、親代わりでもあったサカキは感慨深く感じていた。

 

 

「この繋がりから要請を受けた場合、今回の計画で障害となる可能性があります」

 

「…フ、アイツも中々隅に置けんな」

 

「まあ、そうですね。ともかく、戦力にはせずとも何らかの対応策を講じる必要はあると愚考いたします。せっかく手の内にあるのですから」

 

「私もセドナの意見に賛成です。この重大な作戦に、不確定要素は可能な限り排除すべきです」

 

「アポロもそう思うか」

 

「はっ…不本意ではありますが、ヤツのトレーナーとしての実力は本物であり、万が一敵に回られた場合、致命的な障害になり得る可能性は十分あります」

 

 

話を聞いていたアポロからも、同様の意見が出る。トレーナーとして、時々ではあるが手を合わせてきた実力者・アポロから見ても、マサヒデは敵とするなら警戒して然るべき実力の持ち主だった。

 

 

「それで、どうしたらいいと思う」

 

「…では、僭越ながら。1つは彼を公的な地位…ジムリーダー代行を解任する、というのは如何でしょう」

 

「…なるほどな」

 

 

マサヒデの公的な地位…それは言うまでもなく、ジムリーダー代行という立場。ジムリーダーの業務は多岐にわたるが、その中には治安維持も含まれる。通常は管轄地域のみだが、緊急時に要請があれば、他ジムのテリトリーでも対応することが義務となっている。当然、今回の計画でもそうなる可能性は十分にあり得た。

 

なので、まずは地位を剥奪することでマサヒデが動く義務を無くす。それは、ジムリーダー代行からの解任に他ならない。これが彼女の1つ目の提案だった。

 

 

「確かに、このタイミングであれば無理なく自然な形で解任出来るか」

 

「はい。代行はあくまで代行。本来のジムリーダーが復帰する以上、遅かれ早かれ解任は避けられないことで、自然な流れでしょう」

 

 

元々、マサヒデのジムリーダー代行職はサカキがハナダの洞窟調査に専念するために任されたもので、その調査が無期限中止となり再開の目途も立たない以上、サカキが元の職務に復帰するというのは自然な流れだった。そうなれば当然、ジムリーダー代行は必要なくなる。

 

 

「他には?」

 

「2つ目は、物理的に関与出来ないようにしてしまうことです。具体的に言いますと、作戦決行が予定されている辺りで1つ、表絡みで大きな会合があります。会場となる場所はセキエイ高原。我が社からは副社長が出席される予定ですが、これに同行してもらうのです。この会合に日程を合わせることで、関与出来なくしてしまうことが出来ます」

 

「なるほど」

 

 

2つ目の提案は、マサヒデを物理的にヤマブキシティやその周辺から引き離してしまおうというもの。時期的に丁度いい表のイベントに参加させることで遠隔地に送れれば、どうあがいても関与出来なくなる。

 

 

「無理なく自然な形で出来るとすれば、これぐらいではないかと思います」

 

「ジムリーダー復帰は元々そのつもりであったし、1つ目についてはいいだろう。作戦決行までにはジムリーダーに復帰する。そして、2つ目についてだが…」

 

 

そこで、サカキはしばし考え込む。マサヒデが敵に回る可能性があるか、敵に回ったとして計画にどの程度の支障が出るかを。

 

まず、仮にもジムリーダー代行であり、ポケモンリーグファイナリストの経験もある、ロケット団はおろか、カントー地方全体で見ても上位に位置するトレーナーだ。今となってはマスターズリーグで戦うプロと比べても遜色ない。そういう領域にまで足を踏み入れている。誰よりも近くでマサヒデのことを見てきた最上位の実力者として、サカキはそう断言出来る。

 

上記を踏まえ、敵に回ったとしてどの程度計画に支障が出るか?と言われれば、それは出るだろう。最悪の場合、計画そのものが達成困難ないしは破綻するレベルで。

 

では、そもそもの話、マサヒデが敵対する可能性があるか?と言われると、どうだろうか。サカキにとっては愛弟子であると同時に、実力も実績もネームヴァリューもあるトレーナーである。サカキの言うことにも概ね忠実であり、10年近く見てきた者としては、トレーナーとしての才能も実力もあるが、雰囲気に流されやすく押しに弱い…結論とすると、色々と使い勝手のいい手駒。それがサカキのマサヒデへの評価だった。

 

正直、大それたことが出来るとはサカキには思えない。思えないが…

 

 

「…アポロ」

 

「はっ」

 

「計画発動をその会合に合わせる場合、そこまでに計画修正は間に合いそうか?」

 

「内容から考えて、計画修正そのものは一月もかからないかと思います。ですが、新型ボールの正確な完成時期が不透明です。場合によっては、作戦決行日を前倒しする必要が出てくるかもしれません」

 

「そうなった時はそうなった時だ。念には念を入れておこう。セドナ、その方向で検討せよ」

 

「かしこまりました」

 

「あと、私としてラムダを参加させる。アポロ、準備をさせておけ」

 

「はっ!」

 

「では、作戦の決行日については会合の日に合わせることを基本線とする」

 

 

こうして、サカキのジムリーダー復帰と同時に、本人の与り知らぬところでマサヒデのジムリーダー代行解任が決まり、図らずもロケット団によるシルフカンパニー襲撃事件の現場からも遠ざけられる形になった。

 

もっとも、サカキと袂を分かつことにまだ躊躇があるマサヒデとしては、この大事件に関わらないで済むのは渡に船だったり。実際、後日この一連の内容を告げられたマサヒデは、多少考える素振りは見せたが、すぐに二つ返事で承諾することになる。ある意味、サカキの見立て通りになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ところでボス、このシルフスコープですが…」

 

「ふむ…特に使い道がない、下らん玩具なのだろう?まあ、技術部に回して解析させてしまえばいい」

 

「では、そのように……何者だ!」

 

 

 

「………」

 

「ほう…まさか、このような場所に招かれざる客が来るとはな」

 

「ちっ…警護の者は何をやっているんだ!ボス、ここは私に…」

 

「いいだろう。任せる」

 

「はっ…さて、何故こんな場所にこんな子供がいるのかは知りませんが、ここは子供が来ていいような場所ではありません。即刻立ち去りなさい!」

 

「………お前、ロケット団か…?」

 

「…だったら何だというのです。すぐに立ち去らぬというのなら…少々怖い思いをしてもらうしかありませんね。生憎調整中のポケモンしか連れてはいませんが、子供と言えど容赦はしませんよ…!」

 

「………!」

 

 

 

 

 

 




 ロケット団のシルフカンパニー襲撃事件もいよいよ目前、というところまでやってきましたが、ここで主人公はジムリーダー代行を解任&まさかの戦線離脱か?態度を決めかねている主人公にとっては願ったり叶ったりな状況に…?そしてしれっとレッドさん登場。アポロとのバトル、そしてサカキとの初邂逅の行方は…?
どうなる、原作。どうなる、レッド。そして…どうする、主人公。
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