成り行き任せのポケモン世界   作:バックパサー

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第86話:南風に吹かれて

 

 

 

 

 カヒリ…いや、呼び捨ても何か失礼な気がしてきたので、カヒリ嬢と呼ばせてもらおうか。カヒリ嬢と話をしていたら、成り行きでポケモンバトルをすることになってしまった俺。そんな無理に断る理由もなかったので安請け合いしたら、なんやかんやでスルスルと話が進み、30分後にはバトル用のフィールドに立っていた。簡単にバトルすることを認めるオーナーさんとか、ここまですぐにバトルの準備が出来るホテルとか、流石はポケモン世界。数千人は入りそうな大きな観客席付きのポケモンバトル用の屋内フィールドも完備しているあたりは、セレブ御用達の高級ホテルなだけある。

 

観客席には会合に参加していたうちの副社長とハノハノリゾートオーナーはもちろんのこと、会合に参加していた社長さんたちはおろか、ホテルに泊まっていた宿泊客と見られる人たちで、観客席はそこそこ埋まっていた。

 

そして、サカキさんはまだ来ない。

 

 

「マサヒデさん、突然の申し出にも関わらず勝負を受けていただき、感謝いたします」

 

「いえ、全然かまいませんよ。僕もこっちに立ってる方が気が楽ですから。あの場には少々居辛かったので…」

 

「ふふ…そうですか。では、お手柔らかに」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 

そうして、俺とカヒリ嬢はフィールドの両サイドに分かれた。審判を務めるホテルスタッフの宣言が、スタジアムに響く。このスタッフさん、公式戦でも審判が出来る資格持ってるんだとかなんとか。

 

 

「それではこれより、マサヒデ様とカヒリ様によるポケモンバトルを行います!使用するポケモンは3体、交代、持ち物はともになし。お二方、準備はよろしいでしょうか?」

 

「いつでもどうぞ」

 

「こちらもです。カントーの天才トレーナーの実力、そしてあたしがこの先トレーナーとしてやっていけるのか、確かめさせていただきます。あたしと飛行ポケモンたちによる華麗な舞…とくとご覧あれ!」

 

「では…バトル開始ッ!」

 

「いけ、サンドパン!」

「キュイッ!」

 

「いきなさい、エアームド!」

「ェアーッ!」

 

 

こちらの先発はサンドパン。コイツはスクール時代からの相方だったサンドパンではなく、ジム戦用に新しく育てた別個体だ。ジムリーダー代行として使っていたポケモンは、辞めた際に一部はそのまま俺のポケモンとなっている。ハガネールとかな。

 

未来の四天王とは言え、現時点のカヒリを1軍メンバーで相手するのは流石にどうか?というのもあるので、この選択になった。

 

そんなカヒリ嬢の初手はエアームド。俗に言う受けループ構築でも採用されていたぐらい物理耐久に定評のある、はがね・ひこうの複合タイプ…サンドパンだと有効打がないな。お手並み拝見、と言うにはかなり厳しい対面だ。

 

…まあ、正直それぐらいでちょうどいいんじゃないかとは思うが。

 

 

「サンドパン…これが?」

 

「…どうかされましたか?」

 

「いえ、私の知るアローラのサンドパンとは違うので少し驚いただけです」

 

 

…そう言えば、アローラ地方のサンドパンはリージョンフォーム…その地域の環境に適合し、独自の進化を遂げた姿だったな。初めてリージョンフォームの情報が出た時は、アローラナッシーのインパクト抜群の姿で大きな話題になったのを覚えている。

 

 

「では、行きます!エアームド、“ドリルくちばし”です!」

「エァッ!」

 

 

どうするか考えつつ出方を窺っていると、先手を取って仕掛けてきた。

 

 

「エアムーッ!」

 

「受け止めて、“つばめがえし”!」

「キュイィッ!キュイッ!」

「ェアッ!?」

 

エアームドは物理耐久に優れたポケモンだが、サンドパンも単純な数値の上ではそこまで見劣りはしない。体ごと回転させて突っ込んで来たエアームドを、正面からガッチリと組み止めた。

 

そのまま返す刀で右腕を一閃。斬り付けられたエアームドは離れ、距離を取った。とは言え、効果今一つなだけあってそこまで効いている様子はない。

 

 

「サンドパン、どうだ?」

「…キュイッ!」

 

 

一応、それなりには削られたか。このサンドパンも何だかんだレベル40ぐらいはあるので、ちゃんとダメージが入る辺りはそれなりに育てられているように感じる。流石は将来のアローラ四天王と言ったところか。

 

 

「押していきましょう!エアームド、“はがねのつばさ”です!」

「エアムーッ!」

 

 

再度突っ込んで来るエアームド。攻撃が届きにくい空中から、今度はその鋼鉄で覆われた翼を輝かせての急降下だ。

 

 

「“いわなだれ”!」

「キュィイィッ!」

 

 

対するこちらは“いわなだれ”で迎撃。エアームドの進路上に、大量の岩石の雨を降らせていく。こういう飛び道具のような技があると、戦い方の幅が広がるんだよな。それに、サンドパンにとって唯一のエアームドに対する有効打だ。

 

 

「エアームド!」

「エアァアァ-ッ!!」

 

 

しかし、エアームドは降り続く岩石の雨の中を、その鋼鉄の翼で切り裂きながら突っ込んで来た。

 

 

「キュ…ッ!」

 

 

突破を許したエアームドの翼が、サンドパンを強かに打ち据える。

 

 

「“ドリルくちばし”ッ!」

「エアーッ!」

 

 

強烈な一撃を貰ってよろめくサンドパンを見て、追撃に動くカヒリとエアームド。サンドパンを叩いた勢いそのままに急上昇し、真上からほぼ垂直に近いような、さっき以上の角度での急降下だ。

 

体力的にまだ余裕はありそうだが、これは…あまりよろしくはないな。

 

 

「来るぞサンドパン!“つばめがえし”!」

「キュィ…ッ!」

 

 

最大打点の“いわなだれ”を撃つだけの時間的猶予はない。苦肉の策だ。

 

 

「エアムーーッ!!」

「キ"ュゥ……」

 

 

サンドパンは何とか態勢を持ちなおそうとしていたが、逆落としに突っ込んで来るエアームドの方がずっと速かった。翼を畳んで回転までして、まるで精密射撃された砲弾のような一撃をモロにくらって、サンドパンは大きく弾き飛ばされる。

 

 

「キュウ…」

 

「サンドパン、戦闘不能!」

 

 

…まだ一発耐えるぐらいの余裕はありそうな感じだったが、倒されてしまったか。最後の一撃はかなり強烈だったし、急所に貰っていたかもしれない。

 

しかし、エアームドの一連の動きは素晴らしいな。“いわなだれ”で降り注ぐ岩石の中を突っ込むのには勇気がいると思うし、その指示をこの年で迷わず出来るカヒリ嬢も大したものだ。でも、この様子だと“まきびし・ステルスロック”なんかのエアームド定番の技は持っていなさそう。

 

さて、では次は…

 

 

「お疲れ、サンドパン。そんで…いけ、ハガネール!」

「ガァネェェ!」

 

 

ズシン!とフィールドを軽く揺らして登場したのは、デカイ!硬い!遅い!の3拍子?が揃った超重量級なてつへびポケモン・ハガネール。そう、かつてサカキさんとのジム戦を、“じばく”で不完全燃焼に終わらせてくれたあのハガネール…ではなく、こちらもサンドパン同様に別個体である。あっちは代行辞める前にサカキさんに返した。

 

スペック上の物理耐久値はエアームドよりも硬いという、ガッチガチの防御力だ。実際?…まあ、エアームドの方が色々使いやすいよね。

 

サンドパンと同じくメインウェポンとして積んでいる“じしん”は無効だが、こちらもはがねタイプなので相手の飛行技は半減。さあ、どうくるかな。

 

 

「大きい…!アローラでは見ないポケモンですね。とても硬そうなポケモンですが…打ち破ります!エアームド、“はがねのつばさ”です!」

「エアーッ!」

 

 

この超重量級のハガネール相手にも、果敢に突っ込んで来るエアームド。まあ、バトルだから戦わなきゃならんのは当然なんだが…

 

 

『カァン!』

「エァッ!?」

 

「ガネェ?」

 

 

…エアームドの突撃は、甲高い金属音を響かせて弾き返された。流石はハガネールだ。どこぞの伝説の超戦士よろしく『なんなんだぁ、今のは…?』とでも言いたげで、如何にも効いてなさそうな感じ。

 

 

「“アイアンテール”ッ!」

「ガネェ!」

 

「ェァアアッ!?」

 

 

そして、掠り傷にすらなったかどうか怪しい攻撃のために、至近距離まで飛び込んできたエアームド。指示を受けてその巨体をもたげたハガネールは、空中のエアームドにも余裕で届くぐらいに長い、その鋼鉄に光る尻尾を一薙ぎ。

 

逃げ遅れたエアームドが、その一振りで横に吹っ飛ばされフィールドを転がる。

 

 

「“いわなだれ”!」

「ガァネェッ!」

 

「エアームド、“こうそくいどう”!」

「ェア…エアッ…!」

 

 

地面を転がったエアームドに対して追撃を仕掛けるが、ここは攻撃が届くよりも先に動かれて躱されてしまった。ハガネールの鈍重さが足枷となってしまったか。

 

ただ、エアームドは辛うじて動けただけといった感じ。スピードが乗り切る前に仕留めたいが…

 

 

「逃がさない!そのまま“いわなだれ”!」

「ガァネェッ!」

 

「そのまま振り切って!」

「ッ…エアーッ!」

 

 

残念ながらこれも躱されてしまう。指示の通り、振り切られてしまったな。

 

これで一旦仕切り直しの様相だけど…流石に空を飛んでいる相手に対して、ハガネールから距離を詰めてもというところ。さて、どうしたもんかな。

 

 

「エアームド、“エアカッター”!」

「エアッ!」

 

 

とか思ってたら、向こうから動いてくれるか、ありがたい。しかし、エアカッターか。近接戦が得意なポケモンに、こういうミドル~ロングレンジで使える飛び道具みたいな技があると、実際のバトルだとすごく戦いやすいんだよな。

 

 

「攻撃に構わず“いわなだれ”!」

「ガネェーッ!」

 

 

…まあ、戦いやすいのとそれが有効かどうかはまた別の問題なのだけれども。そして、ハガネールには全くと言っていいほど有効ではない。

 

攻撃に動いたエアームドに対して、こちらも『待ってました』とばかりにクロスカウンター気味に“いわなだれ”を放っていく。当然エアームドの攻撃はほぼ無条件でハガネールに直撃するが…やはり、掠り傷程度だ。

 

 

「っ…エアームド!」

「エアッ…ェ……エアーッ!?」

 

 

一方のエアームドはと言えば、自分の攻撃のためにハガネールの攻撃への反応が遅れた結果、回避も間に合わず岩石の雨に呑まれていた。

 

 

「ェァ……」

 

「エアームド、戦闘不能ッ!」

 

 

よしよし、厄介なポケモンを処理出来た。

 

 

「お疲れ様です、エアームド。流石ですね、マサヒデさん。ハガネールは初めて見たポケモンですが…見た目や名前から見てはがねタイプですね?」

 

「ええ、御名答です。ハガネールはイワークの進化した姿。タイプははがね・じめんの複合タイプで、そちらの飛行技は効果今一つですよ」

 

「はがね・じめん…なら、華麗に舞いましょう、オドリドリ!」

「めらめら~!」

 

 

カヒリ嬢の2体目は…オドリドリか。

 

 

「オドリドリ…アローラ地方のポケモンですか?」

 

「ええ。カントー地方では見かけませんので、そうだと思います」

 

 

如何にも「初めて見ました」感を出していくが、当然存じております。オドリドリは与えた蜜によって、姿とタイプを変えるという、とても個性的なアローラ地方のポケモン。そして、このオドリドリはフラメンコの踊り手のような真っ赤な姿…ほのお・ひこうタイプのめらめらスタイルだ。

 

 

「では、参ります!オドリドリ、“フラフラダンス”です!」

「めらめら~!」

 

「ガネ?ガ…ガネ、ガ~ネ~?」

 

「なるほど…」

 

 

“フラフラダンス”…抵抗も出来ず、ハガネールは混乱状態に。

 

 

「よし!続けて“めざめるダンス”!」

「めらら~ッ!」

 

 

“めざめるダンス”は確か、オドリドリのスタイルによってタイプの変わる特殊技だったはず。つまり、炎技。

 

 

「ハガネール、“いわなだれ”ッ!」

「ガァ~……ネッ!?」

 

 

周囲に炎を纏って踊り狂うオドリドリに、これはマズイと潰しに動いたものの、混乱状態のハガネールはバランスを崩して頭から地面に突っ込んでしまい技を出せない。

 

 

「めら、めらら~ッ!」

「ガネェェーーッ!?」

 

 

そのまま、ハガネールは燃え盛る炎に焼き払われてしまった。

 

 

「ガ……ネェ……」

 

「ハガネール、戦闘不能ッ!」

 

 

物理技には素で鉄壁の防御力を誇るハガネールも、特殊耐久はまあ見掛け倒しもいいところ。それも弱点を突かれてしまってはどうしようもない。敢え無くノックアウトだ。ひこうタイプ使いだからどうやってハガネール攻略してくるか、そもそも攻略出来るのか不安だったけど、あっさりと突破されてしまった。

 

 

 

さて、これで残り1体まで追い込まれたワケなんだが…どうしたもんかな。というのも、本来であれば勝利を目指すのが普通なんだけど、今回は状況がよろしくないんだよ。これだけ大勢のギャラリーがいる中で、サカキさんの会社の取引先…かは知らないけど、同業者のお嬢さんを負かすのもちょっと…ネ?

 

冒頭でも言ったように実力面での問題もあるが、そういう考えもあって、俺の本来の主力メンバーは使っていなかった。実際、バンギラスとかレアコイル辺り出しとけば余裕の3タテだっただろうし。

 

まあ、それでも現時点でカントー地方のジムならバッジ6~7個ぐらいは集められると思うぐらいには実力があるのは分かった。そう考えると、実質ジム戦みたいなもんだな。そんなワケなんで、ラスト3体目のポケモンは…そうだな、コイツでどうだ?

 

 

「いけ、ニドクイン!」

「ニドーッ!」

 

 

御存じ、初代技のデパートことニド夫婦の片割れ・ニドクイン。トキワジムリーダーを代行するなら…ということで、ニドキングと併せてしっかりと育ててある。USUMのサカキさんに倣ってニドキングは物理型、そしてニドクインは特殊型のフルアタ構成だ。元祖・技のデパートの力、とくとご覧あれ。

 

 

「オドリドリ、“フラフラダンス”!」

「めらめら~!」

 

「ニドクイン、“10まんボルト”!」

「ニィ…ドーッ!」

 

 

オドリドリはさっきと同様に初手“フラフラダンス”で混乱狙い。それを貰いたくないので、こちらは弱点を突いていく形で潰しに動く。

 

 

「めらぁぁ…ッ!」

 

 

良いダメージが入った。が、倒すまでは至らず。まあ、ニドクインの素の火力自体はそこそこ止まりだからなぁ…特性が【とうそうしん】もしくは隠れ特性の【ちからづく】であれば多少はマシだったんだろうけど、生憎とこのニドクインの特性は【どくのトゲ】である。

 

 

「ニ、ド……ニ~ド~…」

 

 

そして、倒しきれなかったということは、オドリドリの踊りは止められなかったということ。攻撃のためにオドリドリを見続けていたニドクインは、無事混乱した。

 

 

「動けニドクイン!“10まんボルト”!」

「ニ~……ドッ!?」

 

「チャンス!オドリドリ、“エアスラッシュ”です!」

「めらぁっ!」

 

「ニィ…ッ」

 

 

ニドクインはもう一度電撃を放つ動作には入ったものの、混乱していたせいで溜めたエネルギーを暴発させてしまう。その隙を見逃さずに襲い掛かるオドリドリ。

 

混乱+ひるみで運ゲー、ワンチャン完封でも狙っている感じか?白い悪魔との異名も取ったてんめぐ麻痺るみトゲキッスほどの凶悪さはないが、やられる側としては嫌なことこの上ない。

 

そう言えば、“エアスラッシュ”って確か第4世代が初出の技だったよな?“どくづき”以外では初めて見たかもしれん。

 

…ああ、そう言えばもう1つあったわ。“メタルクロー(バレットパンチ)”が。

 

 

「続けて“エアスラッシュ”!」

「めららぁっ!」

 

「根性の見せ所だぞ、ニドクイン!“10まんボルト”!」

「ニ…ニィドォーッ!」

 

 

流石にこのまま負けるのは、代行とはいえジムリーダーを務めた者として格好がつかない。そんな思いが届いたか、それともニドクインの意地か、ハガネールから数えて三度目の正直とばかりに、今回は動いた。

 

 

「ニド…ッ!」

「めらぁぁーーッ!?」

 

 

空気の刃と迸る電撃が交差し、それぞれ相手に突き刺さる。

 

 

「ニ…ドォッ!」

「めぅ…めらぁ…」

 

 

火力は微妙だが、耐久は多少高めなのがニドクイン。オドリドリの2度の攻撃もキッチリと耐えきった。一方で、そうはいかなかったのがお相手。“フラフラダンス”を踊るまでもなくフラフラで、辛うじて立っていると言っていい状態。

 

 

「あと一歩です!頑張って下さい、オドリドリ!」

「め、めらぁ…!」

 

 

それでも、まだ倒れてはいない、ボロボロの状態でもファイティングポーズは崩さないその根性は素晴らしい。そして、それは俺を崖っぷちに追いやり、ともすればそのまま追い落とすことに繋がるものだ。

 

いくらニドクインの耐久性能が高めで相性も等倍の攻撃とは言っても、3発も貰ってピンピンしていられるほど硬くはない。それに、カヒリ嬢はまだ1体ポケモンを残している。要は倒せなかった=絶体絶命のピンチだ。

 

 

「め…めら……ッ!?」

 

 

しかし、ここで天は俺に味方した。動こうとしたであろうオドリドリだが、動作が遅くなった。さっきまでと比べると、どこかぎこちなさがある。どうやら、思うように身体が動かせないようだ。

 

ここで麻痺を引くか!

 

 

「ニ、ドォッ!」

「おっと!」

 

 

加えて、ニドクインの混乱も解けた。

 

 

「よし!ニドクイン、“10まんボルト”だ!」

「ニィ…ドォーッ!」

 

「めらぁぁーーッ!?」

 

 

オドリドリが動けない隙を突いてニドクインの電撃が、三度オドリドリを襲う。根性を見せていたオドリドリも、これにはたまらず地に伏せた。

 

 

「め~ら~…」

 

「オ、オドリドリ戦闘不能!」

 

 

オドリドリ撃破。ニドクインはかなり消耗してしまっているのでピンチなのは変わらないが、数字の上では互いにラスト1体を残すのみとなった。これで最低限、元ジムリーダー代行としての意地は見せられたかね?

 

しかし、数の上ではイーブンと言えど、すでにこちらのニドクインはかなり消耗してしまっており、劣勢は否めない。

 

 

「飛行ポケモンが苦手なはずの地面タイプのポケモンでここまで…流石はジムリーダー代行を務められただけはありますね」

 

「まあ、これぐらいはやれないと務まりませんから。それに、カヒリさんもゴルフと両立を目指しておられるだけあって流石です。ジム戦でも使っていた上級ランクのポケモンを相手に、ここまでやれる同年代のトレーナーはほとんどいませんよ」

 

 

まあ、これは原作知識は抜きに考えても疑いようのない事実だ。全力ではないとはいえ、トキワジムリーダー代行としての俺と対等にやれる同年代のトレーナーなんてのは、某忍者娘こと未来のセキチクジムリーダー・アンズを筆頭に、数えられる程度しか記憶にない。それと比較すると流石に格は落ちるが、トップ10ぐらいには入ると思う。

 

 

「ふふ、お褒めに与り光栄です。ですが、勝負は勝ってこそのもの。さあ、いきなさいケララッパ!」

「ケラッパー!」

 

 

そんなカヒリ嬢の最後のポケモンはケララッパ。アローラ地方における、俗に言う序盤鳥ポケモンであるツツケラの進化形。まだドデカバシには進化していないのは意外…いや、時期的なことを考えれば納得は出来るか。

 

 

「勝たせていただきます!ケララッパ、“タネマシンガン”!」

「ケラッパァ!」

 

「もうひと頑張りだ!ニドクイン、“10まんボルト”」

「ニィドー!」

 

 

ケララッパ目指して突き進む“10まんボルト”を、ケララッパの撃ち出す“タネマシンガン”がぶつかり合う。力と力の真っ向勝負だ。

 

カヒリ嬢の側から見れば勝利まであと一押しで、ケララッパが高めの物理火力に特性【スキルリンク】による最大回数の連続技を特徴としている。一方、ニドクインがかなり削られていて、なおかつ特殊技主体のフルアタ構成と小細工を弄せる様な技構成をしていない。だから、双方が力押しするしかない状況になっていた。

 

 

「ニィ…ッ…ドォォーーッ!」

「ケラ…ッ!?ケラァーーッ!?」

「ケ、ケララッパ!?」

 

拮抗していた双方の攻撃だが、ここはニドクインに軍配が上がった。連射が弱まったところを一気に押し切り、電撃がケララッパに突き刺さる。まだ進化を残しているというのもあってか、オドリドリと比べて大ダメージを受けているように見えた。

 

この様子であれば、あと一発ダメージを与えられれば倒せるのではないか。

 

 

「いけるぞ、ニドクイン!“10まんボルト”」

「ニィドォーッ!」

 

 

まあ、どの道ニドクインがやることは変わらない。正面から火力を叩き付ける、ただそれだけだ。

 

 

「負けません…!ケララッパ、“ドリルくちばし”ですッ!」

「ケラッパァーッ!」

 

 

対するカヒリ嬢は、今ので遠距離戦での力押しが分が悪いと見たか、一か八かの作戦に打って出た。捨て身の近接戦だ。だいぶ苦しいと思えた戦いだったが、勝ちの目が見えてきた。

 

 

「近付けるなよニドクイン!“ヘドロばくだん”!」

「ニィッドォー!」

 

『ドパァン!』

「ケラァ!?」

 

 

乾坤一擲の突撃を敢行するケララッパに対して、ヘドロの塊を吐き出し…いや、ここは撃ち出すと言っておこうか。ニドクインの口から撃ち出されるヘドロの塊が、ケララッパの行く手に降り注ぐ。

 

フィールドに落ちたヘドロは、若干粘り気のある小気味良い音を響かせて炸裂。ケララッパの進路上にヘドロが飛び散る。

 

 

「上ですケララッパ!高く飛んで距離を取るんです!」

「ケ、ケラッパ!」

 

 

辛うじてこれを回避したケララッパは、カヒリ嬢の指示を受けて急上昇。残念ながら間一髪で攻撃を躱された格好だが、相手の突撃は阻んだ。

 

 

「良いぞニドクイン!」

「ニドッ!」

 

「くっ…もう一度!ケララッパ、“ドリルくちばし”!」

「ケラァッ!」

 

 

昔から古今東西ありとあらゆる戦闘において、攻撃にせよ防御にせよ『上を取った方が有利』とは言われている。カヒリとケララッパが選んだ『高度を取る』という選択は、間違いなく正しいものだった。

 

そして気勢を削がれた形だが、接近戦の選択に変化はなし。今度は高空からの逆落としだ。ここは“10まんボルト”…いや、この状況ならこっちの方が!

 

 

「迎え撃て、“ヘドロばくだん”!」

「ニィドォー!」

 

 

“ヘドロばくだん”が今度は空中で炸裂し、敵を絡め取ろうとヘドロを撒き散らす。きたねぇ花火だ。

 

ケララッパはそんな汚い弾幕に臆することなく、その高さも力に変えて突っ込んで来る。激しく回転しながらの急降下突撃は、俄かにひこうタイプのZ技…Zクリスタルという力の結晶体を持たせることで、クリスタルに対応するタイプ、もしくは特定の技をパワーアップさせる、アローラ地方特有の技…である、“ファイナルダイブクラッシュ”を想起させた。

 

もっとも、話を聞くにまだ島巡りでの試練を達成していない彼女にはZ技は使用出来ないはずなので、あくまでそれっぽいってだけだけど。

 

それに、あの見ていて恥ずかしくなりそうなポーズもとってないしな。俺には…うん、たぶん無理。

 

 

「ケラァ……ッ!」

 

 

ほぼ一直線の突撃で、その進路予測は非常に容易だった。しかし、その進路上で炸裂する攻撃は、ケララッパを捉えているようには見えるのに、墜とせそうで墜とせなかった。

 

そうこうしている間にもグングンと迫るケララッパと、それを叩き落さんときたねぇ花火を打ち上げるニドクイン。ケララッパとニドクイン、俺とカヒリ…勝利の女神が微笑むのはどちらか。自然と手に力が入った。

 

 

 

そして…ケララッパの決死の一撃は、ついに撃ち落とされることなくニドクインまで届いた。

 

 

「ケラッパァァーーーッ!!」

「ニドォーッ!?」

 

 

砲弾と化したケララッパはニドクインに突き刺さり、大きくフッ飛ばされてフィールドに崩れ落ちた。ケララッパも反動で弾かれて、フィールドに転がった。

 

 

「ケ…ケラァーッ!」

「ニド~…」

 

 

大きく翼を広げて健在を誇示するケララッパ。対するニドクインは大の字で倒れこんだまま、起き上がる様子はなかった。

 

 

「ニドクイン、戦闘不能!よって、この勝負の勝者はカヒリ様です!」

 

 

あと一歩が届かず…か。まあ、それだけカヒリ嬢のトレーナーとしての資質、現時点での実力が高かったということでもある。お見事だった、と言う他ないな。俺も別に本気じゃないから悔しくないし…ホントダヨ?

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、やはりサカキさんの姿はまだ見えない。

 

 

 

 




えー、大変お待たせいたしました。前の連続投稿でこの話まではいけるか?とか思ってたんですが、ギリ間に合わずそのまま無事新年度…でした。そしてカヒリの口調これでいいのだろうか…?
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