『はじめに…年末に大赦の人たちが私の変化に気づいてうちにやって来た。事情は信託や研究を交えて知ったので、神聖な記録として残したいからこの本に日記を付けてほしいと…自分は大きな戦いで相当無理をしたようで、体中ほとんどを散華してしまった。さらに、敵の御霊に触れたことで魂が御霊に吸い込まれてしまった。気が付くとそこは、東郷さんを助けに行ったあの場所だった。どこまでも広がる世界…頑張って抜け出そうともがいてみたけど…どこまでも、どこまでも、どこまでも…そこは広がっていた。私は勇者だ…勇者は根性!絶対帰るんだ!!』
その時、友奈は一匹の青いカラスに出会った。友奈はその時は青いカラスが何なのか分からないでいた。
『カラスは私について来いって言ってる気がした。だから私は、光の方へ。ずっとずっと進み続けて…そしたら東郷さんの声が聞こえてきた。その声に向かって進んでいくと戻って来ることができたんだ!でも、体は違っていた。私やみんなは散華から回復したけど、あれは捧げられた供物が戻って来たわけじゃないみたい。回復した体の機能は神樹様がつくったものらしい。強引な満開をして散華した私なんかは治すために全身神樹様がつくったパーツになったわけで…大赦では私を、"御姿"と呼んでるとか……』
『御姿は、良く言えばとても神聖な存在なので、神様からは好かれるんだそうだ。だから私は、私の望んだことが、友達の代わりになることができて、それで世界のバランスが守られた。あれから大赦は異変に気付いて、私を調べてくれた。分かったのは炎の世界がある限り、この体が治ることはないということ。そして、私は今年の春を迎えられないだろうということ』
『1/7…皆といると元気が出てくるけど、うつさないように気を付けなきゃ。食欲はなかったけど、甘酒が美味しくて喉が喜んでた。…でも、家で吐いちゃった』
『1/9…吐き気はひどかったけど、部室にいると心がほわほわする。風先輩は温泉旅行を提案してくれたけど、今の私の裸を見たらみんながびっくりしちゃう…とても行けない。ごめんなさい…』
『1/11…今日は調子がいい。しっかり休んでいるのが効いたのかも』
『1/13…胸がとても痛くて、なんだか頭がくらくらする。多分みんなと会話が成立してなかったかも…』
『1/14…いっぱい寝て、体力を回復させなくちゃ、でも、電気を消して寝るのが怖い、暗いのが怖い。そのまま暗いものに包まれてしまいそうで』
『1/16…今日は夏凛ちゃんを傷つけてしまった。でも絶対言うわけにはいかない。ごめんなさい…とても苦しい、体も痛い、心も痛い、ぐちゃぐちゃになりそう…私はただ、みんなと毎日過ごしたいだけなのに…』
『…弱音を吐いたらダメだ、私は勇者だから頑張れ自分、結城友奈!勇者はくじけない!!』
『とにかく、夏凛ちゃんと仲直りしたい。でも本当のことを話せない。どうすればいいんだろう。もうここでいっぱい書く。夏凛ちゃん、私、夏凛ちゃんのこと大好きだよ。夏凛ちゃん、本当にごめんね!』
『そしてあの時会ったあの海凪って子に会った時、体が辛くなくなったけど……あの子の言う大好きな人って誰なんだろう?それにどうして悲しそうにしていたのかな?』
「すべて私のせいじゃない!天の神の怒りは収まっていなかった!私が受けるべき祟りなのよ!!」
日記を読み終えた僕ら、東郷は怒りをこらえながら、大赦に行こうとするが、それを園子が止めた
「日記に書いてあったでしょ!わっしーにうつっても、本人は祟られたままなんだよ!」
「大赦はまた、私たちに重要なことを黙って…」
「うかつに説明するとみんなに祟りがいくかもしれないから話せなかったんだよ」
「友奈が…こんなに苦しんでるのに…私…酷いこと言っちゃった…ひどいこと言っちゃったよ…」
みんなが後悔し、なのはたちは……
「呪い……昔の私みたいやね……」
「でもはやてとは違って、かなり悪質だ」
「陸都さんたちは気がついていたの?この事を」
「あぁ、呪いについてと言うよりかは……」
「違和感があったっていう感じかな?りっくんはこれに書かれている海凪って子にあったことあるみたいだしね」
みんなが悲しむ中、僕はただ後悔していた。
「空さんはずっと前から感じ取っていたのか?」
「うん、最初に気がついたのはスカリエッティの言葉を聞いてからだけど……」
「空さんがいてくれたら……もっと早く友奈のことに気がついていたのに……僕は気が付かないでただ……」
ただ平穏を過ごしていたただのバカ野郎だ。仲間が苦しんでいたのに……
「こんなときに空さんがいてくれたら……僕なんかじゃ何も出来ない……」
僕がそう告げた瞬間、陸都が急に僕の胸ぐらをつかんできた。
「お前、今なんて言った?」
「僕なんかじゃ何も出来ないって言ったんだよ!!だってそうだろ……」
「お前!!」
陸都は僕の顔を思いっきり殴った。僕はそのまま倒れ、陸都を見上げた
「お前はいつまで空さんを期待してるんだ?夜空!!」
「あんたに何がわかるんだ!!陸都!!」
僕は立ち上がり、陸都を殴った。陸都は殴り返さず、僕の胸ぐらをつかみ
「お前、何も出来ないって言ったな。それは違う」
「違くない……陸都、お前を救ったのだって空さんが……」
「違う!!僕を救ってくれたのは空さんだけじゃない……空さんとお前なんだよ!!お前もいたから僕は救われたんだ!」
僕がいたから……そうなのか?僕はみんなの方を見た。みんなは頷いていた。
「そうだった……そうだったんだな」
「忘れるなよ……お前にだって誰かを助ける力があるんだから……」
「あぁ……」
「りっくん、喧嘩終わったみたいだけど……これからどうするの?」
「友奈、僕に聞くなよ。ここは夜空」
「あぁ、今はどうにかして友奈を助ける方法を見つけるぞ」
友奈SIDE
数日後の夕方。私の家に大赦の人が訪ねてきていた。
「あ、あの…頭を上げて下さい。今日はなんの御用でしょうか」
大赦の人は頭を下げたまま、話を始めた。
「友奈様に急ぎお知らせしなければならない事があります。私達を約300年の間守ってきて下さった、神樹様の寿命が近付いております」
神樹様の寿命が……それって死んじゃうってことだよね。それが本当だったら世界は……
「神樹様が枯れてしまわれれば、外の炎から守る結界が無くなり、我々の暮らすこの世界は炎に飲まれ消えてしまいます」
「消える……」
「人間を全滅させる訳には参りません。全滅を免れ皆が生き伸びる解決法を、我々は見つけております」
そんな方法があるなら安心なのかな?でも、こういう話はやっぱり皆に聞いてもらったほうが……
「あの。これって勇者部全員で聞いた方が…」
「まずは、友奈様にだけお話を……皆が助かる方法は一つ。選ばれた人間が神樹様と結婚するのです」
「えっ…結婚?!結婚って…あの結婚ですか?」
「神との結婚を神婚と言います。神と聖なる乙女の結合によって、世界の安寧を確かなものとする儀式。それが神婚」
神樹様と結婚すれば世界は消えることはない。それしか方法がないのかな?
「神婚する事で新たな力を得て、人は神の一族となり皆永久に神樹様と共に生きられるのです。ご理解頂けましたでしょうか?神婚した少女は、死ぬという事です」
「な…なんで私を…」
「心も体も神に近い存在。御姿だからです。私達大赦は人類が生き延びる為に、様々な方法を模索し続けてきました。そして、神婚という選択肢のみが残されたのです」
世界を救うために私が神婚すれば……でも私は……この人は悪意を持って言っているんじゃないって言うことはわかっている。きっと仮面の中では必死に辛そうな顔をしているんだろうな……
「私、友達を傷付けちゃって………」
「皆を慈しむ心。友奈様は素晴らしい勇者であると私は思います。その友達を、人間を救う事が出来るのは友奈様だけです」
「神婚したとして…その…人が神の一族になってずっと生きるって言うのは…」
「言葉通りの意味です。我々を神樹様に管理して頂く優しい世界……人は死んでしまえば終わりですが、神の眷属となり神樹様と共に生きていけば希望が持てます」
「それって皆、ちゃんと人間なんですか…?」
「神の膝下で確かに存在出来ます。信仰心の高い者から神樹様の下へ……どうか…この世の全ての人々をお救い下さい。慈悲深い選択を」