東郷と園子と一緒に友奈の部屋を訪れた僕。端末の反応を追ってやってきたけど、友奈の部屋には端末が置かれたままだった。
机の上には勇者御記が置かれ、東郷はそれを見てみると今日の日付で……
『皆、色々ごめんなさい。私行きます』
と書かれていた。行くって……どこに
「友奈ちゃん…端末を置いてどこに…はっ!!まさか…」
「大赦だね。みんなに連絡を……」
「いや、待て……」
僕の端末に大赦から連絡が入ってきた。内容はすぐに勇者全員で指定された場所に来られたしというものだった。
大赦指定された場所、そこは数多くの勇者たちが眠る英霊碑だった。ここには若葉さん達の名前も、そして空さんの名前も書かれていた。
そしてその中心地には一人の神官が待っていた。
「勇者様に最大限の敬意を」
「やめて下さい」
「ここは歴代の勇者と巫女が祀られている場所」
「私達は友奈ちゃんに会いに来たんです!」
「友奈さんはどこにいるんですか!?」
「今は大赦におられます」
この神官の声……聞き覚えがある。ある人の声に似ている。
「じゃあ大赦に乗り込むわよ!!」
「友奈様から話を聞かれたかと世界を救う方法は神婚しか残されていません。寿命も残り僅か」
「友奈さんの祟りを祓う方法は本当にないんですか?」
「我々は探りました。友奈さんを救う方法を……しかし、なかったんです
。魔法の力でも……外の炎がある限り、友奈様は祟られたまま、もう時間がないのです。友奈様はこれより神婚の儀に入られます」
「ふざけるな!!止めてやる!!」
「歴代の勇者様の多くは、お役目の中で命を落とされました。本来なら銀様も英霊となるはずでしたが……」
「僕は銀を救った。誰も犠牲にしたくないから……」
そしてあの日、あの時再会することが出来た。そして空さんたちと共に呪いに苦しむ少女を、少女を守ろうとした騎士たちを救った。それだけじゃない。陸都のことだって、僕らは助けたんだ
「友奈様もまた、戦い方は違えど、皆の為にその身を捧げようとされています。それこそが勇者であると理解して」
「歴代の勇者と巫女…皆、私達と同じ位の年齢って訳でしょ…いつだって子供達を犠牲にして生き延びてきたって事じゃない…そんな歪な世界ってあるの!?」
「全てを生かす為にはやむを得ないのです。それが、この時代における人の在り方」
「ピーマンが嫌い…だったよね。すっごく厳しいけど、ふとした時に見せるチャーミングな所が私は好きだったよ…でも今は、昔の安芸先生じゃないんだね…」
そうか、聞き覚えがあると思ったら、僕らが小学生の時に一緒にいてくれた安芸先生だったのか……
「あの時、銀が死んだと思ったときに、一緒に悲しんでくれたのに…その辛さを知っているなら…もう一人も犠牲なんて!!」
「あなた達のクラスメイトは、その友達は、家族は、もうすぐ来る春を待ち遠しく思いながら、家でうどんを食べて、温かい布団で寝て、今日も平和な日常生活を送っている。少々の犠牲…このやり方で大部分の人達が幸せに暮らしているのです」
「それなら…それなら、あなた達が人柱になれば良いのに!!」
「出来るものなら、そうしています…だが、私達では神樹様が受け入れない」
「いつだって大赦っていうのは変わらないね」
ふいに声が聞こえ、振り向くとそこには赤嶺と陸都の二人が立っていた。そうか、この二人もまた大赦の犠牲になった……
「平和っていうのは何かを犠牲にしなきゃ手に入れられないって言うなら……僕はそんな未来はいらない」
「私達はその先の結果を知っていた。だけど変えてくれた人たちがいる」
二人は僕の方を見た。最初にやり始めたのは僕じゃない。空さんだ。だけど空さんの思いは僕にも引き継いでいっている
「知ってるか?魔導師と勇者の力を持った一人の男は、悲しい結末しか待ち受けてなかった家族を救ったんだ」
これは上里家に伝わるある物語。一人の勇者が助けてあげてほしいと願った。その男はそれに答え、その家族を救った。
「もしかしたらもっと悲しい結末を迎えたかもしれない家族を救い、仲間たちを救い、呪いに苦しむ少女と少女を守ろうとした騎士たちを救い、蝕まれた子孫とその恋人を救った……上里家に伝わる物語を……知ってるか?」
「………」
「僕もそんな人と同じように誰も犠牲にならない未来を手にしたい。あの物語のタイトル通りの……『魔導勇者』と同じように!!運命を変える」
僕がそう叫んだ瞬間、端末から警報が鳴り響いた。だけどこれはいつもと違う……
それと同時に地響きが起こった
「あなた達の出番です。天の神は、人間が神の力に近付いた事に怒り、裁きを下したと言われています。人間が神婚するなどもってのほか…」
「バーテックスが来る……」
「いいえ」
突然空が真っ赤に染まり、壁の向こうから巨大な円盤状の何かが姿を表した。あれって……アスクが乗っていた戦艦?
「……あれは……天の神……」
「天の神って、女の子じゃ……」
「いいや、僕が……というよりアスクが天の神を殺した時、あの姿をしていたのを見たことがある。いうなれば天の神の戦闘形態……」
陸都の言葉通りなら、ここから始まるのは天の神との戦い……
「神婚が成立すれば人はもう神の一族。人でなければ襲われない。これで皆は神樹様と共に平穏を得ます。これが最後のお役目!敵の攻撃を神婚成立まで防ぎきりなさい」
海凪SIDE
「間に合わないのか……」
あれが聞いていた通りなら、天の神そのもの……あと少しで世界が繋げられるのに……
「まだ……まだだ……」
僕は光の輪に力を流し込み続けた。僕にはこれしか出来ない。友奈を助ける役目を持っているのは……彼らだけだ
「運命を変える力を持った存在……僕はなれないけど……手助けくらいは……」
目を閉じ、最後の力を込めようとした瞬間、光の輪から3つの影が出てきた。完全に開く前に無理やり通ってきたのか?
「悪いな。負担かけて……」
彼が……僕と同じことをやり、命を失ったけど、彼は女神の祝福で新たな肉体を得た。僕はただの気まぐれであの子達のところへ送られた
「いいえ、僕にはこれしか……」
「本当ならお前にも手伝ってもらいたいけど、戦う分の力を絆ぐのに使いすぎだ」
「ごめん……だけどあとは頼むよ」
「というかお前ら誰だ?」
「私達、スカリエッティの装置で無理やり来たけど……というか私達だけ?」
二人の男女はあたりを見渡した。本来なら全員で来てほしいけど、今回は無理をしすぎたから……
「よろしく。違う世界のご先祖様」
「お前、違う世界の夜空的な奴か?」
「何だか空くんにも似てるね」
「僕は……上里……」