「もう…こんな寒い時に何でマンションのエアコン壊れるかなぁ…」
「私も昨日は急に電灯が切れてとても困ったの…」
「うちなんて昨日、樹が鍵を落として寒空の下2人して大変だったんだから
ちょっとコンビニ行っただけだったのに」
「お姉ちゃんごめんね」
「いいわよ」
「僕は………正直みんなに言いづらいな」
何故か昨日の夜、みんながちょっとした不幸な目にあった話になっていた。ちなみに僕の場合は……陸都と赤嶺がキスしようとしたところにタイミング悪く目撃してしまい、赤嶺に思いっきり怒られていた。
あの二人、いちゃつくなとは言わないから、場所を考えてほしい
「園子参上なんだぜぇー」
遅れてやってきた園子の手には何故か包帯が巻かれていた。一体どうしたんだ?
「園子さんその手…!?」
「おぉ、大丈夫大丈夫。こうしてサンチョを被せれば、あってないようなものシュレリンガー」
園子はそう言って笑ってごまかすけど、本当に大丈夫なのか?
「いったいどうしたのよ?」
「今朝ポットで火傷したんだ~」
何だかみんなして厄日だな。
「勇者部全員厄払いにでも行った方が良いんじゃない?」
「ちょっと縁起でもない事言わないでよー」
「友奈ちゃんは何もなかった?」
「…うん、平気」
「良かった。友奈ちゃんにまで何かあったら、いよいよ怪しいものね」
「また大赦かーって!」
園子の発言で全員が黙り込んだ。園子……それ、笑えないからな
「もしかしてスバルたちは大丈夫かしら?」
先輩が電話をかけ始め、観光中のスバルたちに連絡を入れた。話を聞く限りでは特に何事もなかったみたいだった。
今回の場合は偶々だったのかな?
ふっと気がつくと友奈はまた思いつめた顔をしている。本当にどうしたんだ?
夜、家に帰り、今日、みんなが話していたことを陸都たちに話した。
「偶々なんじゃないの?」
「そうなのか?」
赤嶺は偶々だとは言うけど……どうにも気になる。本当に偶々で済ませていいものか……
「勇者部だけじゃなくって、私達にも不幸が起きたら偶々では済ませられないけどね」
「僕らは特に不幸なことは起きてないし、それにスバルたちも大丈夫みたいなんだろ」
「うん……」
「それにね。私達の場合は小さな不幸ぐらいじゃ不幸だとは思わないから」
「もっと辛い目にあっていたからね」
陸都は大赦から狙われ、更には体をアスクに支配されつつあったからな……
「そういえばりっくん、前に話してた夢の続きは見てるの?」
「うん、アスクは誰かに乗り移っているわけじゃなくって、誰かの精霊としている感じだった」
「夢?」
「何だかりっくんはアスクの夢を見るんだって、でもそのアスクは悪いことを考えている感じではないんだってさ」
「まぁ夢というよりも別世界の様子を見ている感じだね。似たようなことも前にあったから」
陸都の話しでは、他の世界の勇者たちのことを夢で見て知り、アスクの力でその世界に行ったこともあるらしい。陸都の見る夢は他の世界を観ているという事なのか?
三人でそんな事を話していると、樹からメッセージが入った。
『今、病院です。お姉ちゃんが車にはねられてしまって……私、どうしたら……』
僕はそのメッセージを見た瞬間、デバイスを起動し窓から病院へと飛んでいくのであった。
「何があったんだろう?」
「僕らも行こう」
病院にたどり着くとまだみんなは来ていなく、樹は一人椅子に座っていた
「樹!?」
「夜空さん」
僕の姿を見た瞬間、樹は僕に抱きついてきた。そして今にも泣きそうだった。
「お姉ちゃんが……」
「大丈夫……大丈夫だから……」
僕は樹を落ち着かせるのに必死になっていた。すると遅れて東郷達がやってきたけど、何でシャマルさんも一緒にいるんだ?
「樹ちゃん、風先輩は?」
「今、まだ……」
「一応もしもの事を考えて、シャマルん先生呼んでおいたよ~」
「樹ちゃん、安心してね」
「は、はい」
準備がいいのか園子はいろいろと手を打つのが早いな
すると先輩がストレッチャーに乗ってやってきた。
「いやー、参った参った。皆ごめんねー、わざわざ来てもらっちゃって…」
「あの、命には…」
「ふふっ、それは大丈夫だから。大袈裟ねぇ」
「でも受験生に何て酷な事を…」
「それは言わないで!試験は受けるから!絶対受けるから!」
「命に別状がなくってよかったわ」
「シャマル先生まで来てもらって……呼んだの乃木?」
「何が有っても大丈夫かなって思ってね」
「本当にいろいろと気を使わせて悪いわね……夜空」
「なんですか?先輩」
「入院中だけど樹のこと、お願いね」
「はい」
「変なことは……しないわね。シャマル先生も出来たら……」
「えぇ仕事は休みをとっておいたから大丈夫よ。一応ザフィーラも来てくれてるから」
樹は入院の手続きのため、もう少し病院に残るとのことで、僕とシャマル先生も残ることになった。
先輩は重症とかじゃなくって本当に良かった……でも気になるのはまだ勇者システムが手元にあるのに、何で精霊が守らなかったんだ?もしかしてカートリッジシステムの不備とか?いやそれでも守りに関しては完璧に……
陸都SIDE
物陰で二人で様子をうかがう僕ら。特に死んだりとかじゃなくってよかったけど……
「昨日の今日で不幸がおきすぎだよね」
「あぁ……それとちょっと気になることがあるんだ」
「気になること?」
あの時、結城友奈だけが一番辛そうな顔をしていた。まるで自分のせいだって……
「……友奈、どう思う?」
「どうって……何が?」
「結城友奈がどうして一番辛そうにしているかってこと……」
「……人のことを一番思いやってるからじゃないの?もしくは原因だったりして?」
「だとしても……何が原因で……」
考えられることは事故を起こしたのが彼女?だけど車だから無理だし、そんな事をするようには思えない。それは断言できる
あと考えられるのは大きな力が働いて、その原因が彼女にある?
「……大きな力が働いてるとしたら……神樹様か天の神だよね」
だとしてもどうして……
友奈SIDE
先輩が事故にあったのは、私が話そうとしたからだ。私が皆に話そうとしたら、皆に少しずつ嫌な事があった…改めてちゃんと話そうとした風先輩には事故が起きた…
天の力は、現実の私達の世界に影響を及ぼす事が出来る程…何とかしようとしても代わりにどこかに影響が出る。そうやってバランスを取ってるんだ。
私に起きている事は言っちゃだめな事なんだ。私がルールを破ると皆に不幸が起きる。
もう私達の戦いは終わったんだ!皆はもう苦しまなくて良いんだ!私が黙っていればいつも通り何も変わらない、勇者部の楽しい毎日が続くんだ。
誰も、絶対に巻き込んじゃだめなんだ。私が黙っていれば、それで良いんだ。
私は自分にそう言い聞かせ続けていた。もう誰も不幸にならなくていいように……
それから数日後のこと……
風先輩のお見舞いとクリスマスパーティーをするために病室の前に来たときのことだった。
『樹、今日大事なイベントでしょう?』
『いいの。お姉ちゃんが怪我してるのに、私だけ楽しい事は出来ないよ』
『お姉ちゃんの事なんて気にしなくて良いのに』
『ううん、お姉ちゃんが楽しくないと私も楽しくないんだ。だから今日は良いの。ちゃんと代わってもらったから』
『ご飯とか大丈夫?』
『そっちは僕がなんとか……シャマルさんの料理は何というか味が独特だから……』
『悪いわね。迷惑をかけて……』
『別に迷惑だって思ってないですよ』
『……ありがとうね。シャマル先生たちも今日は?』
『来てくれるそうですよ』
『そっか……』
『それに樹も頑張ってますよ』
『朝も頑張って起きてるんだよ』
『樹……成長したわね……』
病室から聞こえてくる話を聞いて、私はその場から逃げ出した。
全部、全部私のせいだ。私が風先輩に話そうとせずに黙ったままでいれば、先輩も樹ちゃんもこんな目に合わなかったんだ。
私は必死に走り、足を滑らせ、転んだ。辛い、辛いよ……相談もできない、誰も頼ることが出来ない。
ただ耐えることしか出来ないけど……もう耐えきれない……
私は泣き叫んだ。そして心から願った……
助けて………
「……大丈夫か?」
見知らぬ声が聞こえ、顔をあげるとそこには一人の男の子が立っていた。
「だ、大丈……」
「………呪いを受けているんだな」
この人……どうしてその事を!?
「あなたは?」
「僕はある人に頼まれたんだ。まだ来ることが出来ない自分のために彼女の支えになってくれって……」
彼の近くには一匹の白い蛇がいた。この蛇は精霊?
「本来だったら関わることはなかった世界同士だったんだけど、彼と僕は似たような境遇だから……誰かのために命を差し出し、同じ人を好きになったんだけど、僕の場合はもう元の世界に戻れなくなった……だから決めたんだ。別の世界でも好きだった人を救いたいって……行くときにあの子達も背中を押してくれたから……」
彼は寂しげな目をしていたけど、でも言葉を聞いていると安心できる
「僕は………海の凪と書いて……みなぎって言うんだ」
というわけで本来だったらもう少ししたら書くつもりだったらあるクロスの主人公である彼の先行登場です。
彼の物語は近々更新します。
もうね……辛くて……海凪を出しました。