ついでに、神威気持ち悪いほどやさしいです。
平気な方は、どうぞ!
苦しい……息もうまくできない。
息する暇もなく、次から次へと相手から繰り出されるけりや拳をよける。
そして一瞬の隙をついて―殺す。
信じられないほど体が軽かった。
どんどん広がっていく血の海と黒い服の山。
それを一瞥して周囲を警戒する。
さっきよりも増していく不安……………
ハッと何かに気づいたかと思うと、慌てて上を見る。
そして、上から飛んできた新たな敵からの一撃目を余裕でよける。
「へぇ…あんた何気にやるじゃん。女のくせにって……」
何かに気づいたように押し黙る敵。
「?」
何があったのか全く分からず不思議そうに首をかしげる神楽。
相手は、病室を出るときに鏡で見た自分にそっくりだった。
「おまえ……どっかであったことある?」
と変なことを聞いてくるやばそうな奴に少し引いてから口を開く。
「敵を装った新手のナンパアルカ?その手には乗らないネ。そして、会ったことあるかはわからないヨ。目が覚めたら病院にいてお医者さんから<キオクそーしつ>って言われたネ。」
そう……なんて言いながらほんの少しだけ寂しそうな顔をする敵に不思議と懐かしさを覚えた。
「お前、名前はなんていうアルカ…?」
その言葉に少し目を開いて答える敵Aさん。
「神威だよ。っていってもまぁ覚えてないんだろうけどね。」
「か…む……い?……カムイ………神威…」
何回も口の中で繰り返す。なじみがある。
忘れてる、大事な何かを。深い深いどこかに。
でも、本能が告げる。私はこの人を……知っていると。
「私は、神楽アル!宜しくネ。」
なんて言いながら、もうすこしこの人と一緒にいようと考える神楽だった。
はぁはぁ…と荒く響く息遣い。
暗い歌舞伎町響く荒々しい足音。
「なんでどこにもいないんだよ…神楽……」
何も手がかりがなくやみくもに走り続ける。
「…あと行ってないところってどこだ?」
銀時がみんなに聞く。
「あとは…港くらいじゃねぇですかィ?旦那。」
問いに応じる沖田に新八が不思議そうに聞く。
「神楽ちゃんを一緒に探してくれるのはうれしですが、沖田さんも探してくれるなんて少し意外です。」
「そりゃそうでしょう。まだ、アイツと決着ついてねぇし、勝手に死なれたらこまりまさァ」
なんて、いつものポーカーフェイスで告げる沖田を保護者組はにやにやしながら見守っていた。
「死ね。土方。」
ちゅどぉぉぉぉん、とどこからともなく表れたバズーカで土方を吹き飛ばす。
「じゃあ、港へ向かいましょうかィ…」
という沖田に、聞かなければよかったと思いながら苦笑を浮かべる新八だった。
「ねぇ、神楽はこれからどうするの?」
「え?」
神威の言葉に戸惑う。
「記憶…戻らなかったらさ…神楽次第でいいんだけど。俺と一緒に宇宙に行かないか?」
「う……ゅう…」
神威と一緒にいるのは楽しい。安心する。
でも………何かが……誰かが………私をダメだってとめてる。
「ち…きゅう……に行かなきゃ…いけない…アル……」
今度は神楽の不意に出た言葉に驚いていた。
「私ネ…大切な誰かと約束したのヨ。一緒に地球行こうって……」
「誰だか…覚えてるの?」
何かに期待したように聞く神威。
「赤い…髪の………えっと……マミー?…と…パピー…と…あと…………か……むい?」
自分で言ったことが信じられないとでもいったように目を大きく見開いて神威を見る神楽。
「覚えてたんだね。……俺のこと。神楽。もう一度聞くよ。俺と一緒に宇宙へ行かないか?」
大きく揺れる瞳。
「ゆっくりでいいんだ。そのうちに答えを出してくれればね。」
二人の間に静寂が訪れる。
すると…遠くから声が聞こえてきた。
「かぐらぁあああああああああ!!!いたら返事しろぉぉぉおおおおお。」
「「!!!」」
一緒に息をのむ二人。
「どうやらタイムアウトみたいだ。シンデレラ。」
名残惜しそうに神楽の肩に触れる。
「行っちゃうの?神威……」
「…うん、残念だけどね。でもきっと近いうちに会いに来るよ。」
そう言ってこれまでにないほどやさしく微笑む神威。
それにつられて神楽もほほを緩ませる。
「じゃあね…」
耳元でささやいて立ち去っていく神威。
ズキンッ
と目の奥が傷んだ。見たことある……このままじゃダメなの!
前と同じに…前?それっていつ?
そんなことを考えている間にも少しづつ神威の背中は遠ざかっていく。
だめ、なの。ダメッ!
「神楽!!」
誰かが私のことを呼んだ。
声の方を向いてみると立っていたのは銀色の例のもじゃもじゃだった。
いや、ほかにもたくさんいた。
神楽の視界に、甘栗色の髪と燃える瞳が目に入った。
思い出して…と声がした気がした。
マミーの声だった。確かにそうだ。
あぁそうか。そうだたのか…
銀時の方を向きながら微笑んだ。
そしてクルリとむきをなおして、叫んだ。
「神威―!」
思い出している間にずいぶんと離れてしまっている影がこちらを見た。
そして、私は思いっきり地面を踏んで駆け出した。
驚いている神威のもとまで走って行って私がずっと思っていたことを伝えた。
「おいていかないでヨ。お兄ちゃん……」
そういったとき、確かに神威の目にはうっすらと水が溜まっていた。
「おもい…出したんだね…」
「うん……神威のおかげヨ。でもね、私…」
神楽が口ごもっていると分かっていたとでもいうかのように言った。
「宇宙には行けないんでしょ?分かってたよ、全部ね。」
「!!じゃあ…なんで……」
そう聞くと神威は視線をずらしていった。
「罪…滅ぼしだよ。自分勝手なね。でも…もうお前には守りたいものが出来たんだろ?俺はそれで十分だよ」
神楽は今までに見せたことのないような嬉しそうな顔で泣いていた。
「相変わらず、なきむしだなぁ…」
なんてつぶやく神威も幸せそうに微笑んでいた。
「あれ?お侍さんとお巡りさんじゃん…ヤッホー」
と言いながら楽しそうに手を振る神威に全員引いていた。
「お前…何やってんだ。こんなことで。」
銀時が疑わしそうに聞く。
「んー?あと始末だよー。春雨から対夜兎用のちょー危険な薬品が盗み出されちゃってさぁ…」
「それで、こんなとこまで来たってか…つーか、チャイナ娘となんで一緒にいんだ?」
と不思議そうに聞く土方の疑問は今誰もが抱いていることだった。
「あれ?神楽言ってないの?」
「…言ってないアル。あ…もちろん銀ちゃんと新八は知ってるアルヨ。」
「「「「「「「え?」」」」」」」」
「「え?」」
みんなの反応に驚く神楽と神威。
「神楽ちゃん……記憶…戻ったの?」
と神楽に問う妙。
「ん?言ってなかったアルカ?戻ったヨ。姉御たちが来た時に丁度。」
とさも当然とでもいうかのように言う神楽にみんなが突っ込んだ。
「「「「「「「テレパシーじゃねぇんだよぉぉぉぉお!!!!!!」」」」」」」
「てへ♡」
港はいつもより一層騒がしくなった。