「私たちが」
「IS学園に入学する?」
千冬の提案にレントンとエウレカは目を丸くした。
「そうだ」
「なんのために俺たちが学園に入学するんですか?」
「お前たちを保護するためだ」
「保護? 何のために?」
「お前たちがISを、所持している異世界人。つまり、お前たちが世界から狙われる可能性がある。その理由は言わなくてもわかるだろ?」
千冬の言っている意味は理解できる。自分たちは異世界から来た人間。しかも、エウレカは人型コーラリアン。下手に捕まればひどいことをされることは目に見えている。
「それを防ぐためにこのIS学園にいる必要がある。この学園はどの国も手が出せない治外法権があるからな。それにここならいざという時にすぐに動けるかもしれない。調べ物もしやすい」
「それは俺たちのことを思って言っているですか?」
「ああ。悪くない条件だと思うが」
レントンとエウレカは顔を見合わせる。確かに千冬の言うことは正しい。今の自分たちにはこの世界では孤立無援だ。しかも、下手をすれば月光号時代よりも過酷な生活をなるかもしれない。
「エウレカ。大丈夫だよね?」
「うん。私はレントンを信じるよ」
エウレカの言葉にレントンは静かに頷き、千冬を見る。
「千冬さん。お願いします」
「わかった。すぐに手配する。今日のところは話はこれでいいだろう。詳しいこととお前の持っているISのことは明日、話そう」
話し合いの後、レントンとエウレカは学園内にある寮へ案内された。部屋は1026号室。誰も使ってない部屋だ。
「この部屋は自由に使って構いません。夕食はさっき案内した食堂で食べてください」
「わかりました。えっと‥‥‥お名前は?」
レントンが案内してくれた教師を見て、戸惑うと
「私は山田真耶といいます。明日は午前9時からいろいろとしなくてはならないので気をつけてください。それでは」
真耶が一礼して去っていく。2人が部屋に入る。部屋はかなり広く、ホテル並みのベッドが2つ並び、ユニットバスもある。
「広いね」
「うん。月光号とは大違いだ」
かつて、衣食住していた巡洋艦のことを思い出す。あのときのレントンの部屋はかなり狭く。寝るためのスペースしかなかった記憶がある。
レントンがベッドに座るとエウレカが隣に座る。
「なんか、色々あったね」
「うん。‥‥‥レントン。大丈夫かな」
「大丈夫だよ。きっと。スカブとだって分かり合える。それはちゃんと証明できる」
自信に満ちたレントンの表情にエウレカは頷き、彼の左肩に頭を乗せる。
「ひさしぶりだね。こうやって2人きりになったの」
エウレカの言葉にレントンは帰郷してからの生活を振り返る。結婚して、子供たちとじっちゃんとの生活。工場での作業。子供たちが学校の時にたまにデートする。そんな生活だった。
「そうだね」
「レントン」
「なに?」
「大丈夫だよね。きっとまた、わかりあえるよね」
「もちろん」
レントンは力強く頷き、エウレカと唇を重ねた。
翌日。レントンとエウレカは朝食後、千冬と真耶に案内され、学園にある第一アリーナへやってきた。
「まず、昨日渡されたニルヴァーシュのスペックを確認したところ。第三世代相当の力を持った機体だということが分かりました」
真耶がピットの中にある画面を見ながら説明する。その言葉にレントンは首を傾げる。
「第三世代? それより、聞いて良いですか? そもそもISって一体どんな兵器なんです?」
レントンの質問に口を開いたは千冬だった。
「昨日言ったようにISは現存するどの兵器をも凌駕するパワードスーツがとある科学者が人間の宇宙進出を目的に作ったのだが、現在では軍事兵器として利用されている。それと、ISには最大の欠陥が存在する」
「最大の欠陥?」
今度はエウレカが聞く。
「女性にしか扱えないということだ」
「え? でも、昨日、レントンにも使えるって‥‥‥」
「おそらく、それはニルヴァーシュが平行宇宙きたからだと考えられる。その証拠にニルヴァーシュはお前ら2人の専用機となっているからな」
千冬の説明にレントンとエウレカはなるほどとうなずく。
「まあ、詳しいこととは後で渡す参考資料を見ておくように。さて、で、どっちがニルヴァーシュを使うんだ?」
「俺です。戦闘は俺がします」
レントンが即答する。
「そうか。では、これからニルヴァーシュを実際に使ってもらう」
千冬が言うと真耶が遠慮がちに
「その前に聞いておきたいんですけど。ニルヴァーシュやLFOと呼ばれる機械はトラパーはリフボードに受けて、空を飛ぶんですよね? この世界にトラパーがあるか‥‥‥」
「大丈夫です。この世界にもありますよ。スカブコーラルが、あると言うことはトラパーもある証拠にもなります」
レントンはノルブ師とドクターベアの対談を思い出す。トラパーはスカブコーラルの、吐息。彼はそう言っていた。現にこの世界にトラパーは存在している。それは来たときから薄々とだが、感じていたことだ。
「わかった。では、これから実演してもらう」
「はい」
レントンは左手のブレスレットを見つめる。イメージするのはともに戦っていた白い巨人を纏うもの。
「いこう! ニルヴァーシュ!」
レントンの体に粒子がまとい、それが形を作る。それは白い全身装甲のISに変わった。
すべてのLFOの原点もいえる機体。ニルヴァーシュtype0。
レントンとエウレカにとって、かけがえのない機体だった。