まだよく分かってない所が多いですし、亀のような投稿スピードですが、読んでいただけたらとっても嬉しいです。あと感想とか評価もお待ちしてます!
筒を咥えて息をする。
ただそれだけの行為なのに、私の肺は一瞬で、幸福感に包まれる。
この時間が、1番楽だ。
だって何も考える必要も無ければ、面倒なこともしなくていいから......
私は風紀を取り締まる側だった。
スカートの丈とか、髪染めとか、校則を乱すものを、徹底的に排除していた。
でも、そんなのは私が乱す側になった今からすれば、別に気になるような大きなことでは無いように感じる。
達観した、と言ってもいいのだろうか。
別に私のしてることに比べれば、他の生徒の校則違反など、本当に些細なこと。
そういう考えが私を支配していた。
学校では先生や友達にバレないように隠れてタバコを吸い、家に帰れば鬱陶しい妹を無視して部屋に上がり、またタバコか、ただボーッとするだけ。
支配された私はそんなふうに毎日を過ごし、生きていても死んでいても何も変わらない。そんなナニカに成り下がっていた。
先生からの信頼の厚い私は、適当な理由を付けては屋上でタバコを吸っていた。
もう少しで1本吸い終わるかな...
そんなことを考えながら、また今日を過ごす予定だった。
彼女に出会うまでは...
「あれ?紗夜先輩?こんな所でなにして......」
屋上への一本道である階段に続く、無機質な鉄製のドアを閉め終わった彼女は、私の口から出る白い煙に気づいてしまった。
縮まった私の脳から出る司令より先に、まず身体が動いた。
勢いよく彼女の肩を掴み、そのまま落下防止のフェンスに押し付ける。
「今見たものを、全て秘密に出来ますよね?」
言い聞かせるように、そして脅すようにゆっくりと言うと、彼女は目を見開いて、何度も上下に首を振った。
これなら問題ないだろう。そう思い、肩から手を離す。
「もし約束を破ったら、どうなるか分かりますよね?
1年C組の 奥沢美咲 さん」
その声を振り切るんじゃないかというくらいの速さで、彼女は階段を駆け下り逃げていった。
次の日は、少し時間を変えて屋上に行った。
もし昨日と同じタイミングで行ったら、通報を受けた先生達に待ち伏せされて、現行犯で捕まってしまうかもしれない。
ドアを慎重に開け、誰か居ないかそっと覗いてみると、そこには黄昏ている例の彼女が居た。
やはり待ち伏せされていたか...
幸い、まだ私には気づいていない様なので、バレないように、そっとドアを閉める。
しかし、迂闊だった。
周囲を覗こうと前のめりになっていた私の身体と共に出ていた左足は、閉めようとしたドアにぶつかり、それをシンバルのように鳴らしてしまった。
反動と汗で手から滑り、離れていくドアノブと、思いがけない表情をした彼女を見た私は、その場から逃げることが出来なかった。
罠にはめようとか、何かを企んでいるとかではなく、
満面の笑みを浮かべた彼女がこちらを見ていたのだ。
「待ってました。紗夜先輩」
「どうしてここに?」
「えっと、先輩の事が気になって、ですかね」
「はぁ...、そう言われましても、私が奥沢さんに特別何かをしたということは無かったはずです。私とあなたは気にかけ合うような仲では無いはずですが」
「いやいや...同じ学校の生徒なら誰だって気になりますよそりゃあ...。あのマジメだった紗夜先輩がそんなものを吸ってるなんて知ったら」
心配そうに見つめる彼女の前で、私は薄い灰色の煙を吐いた。
「マジメな私...ですか... ではマジメだった頃の氷川紗夜にでも聞いてください。少なくともイマの私は、吸おうと思った理由をもう、忘れてしまいました」
「そうですか...」
少し悲しそうな、困ったような顔をしているが、イマの私には関係無い。
吸殻を水の中の浸して、バレないようにタバコと一緒に隠した後、教室へ戻る前に、私は最後に一つ、彼女に質問した。
「なぜこのことを、先生に教えなかったのですか?
先生に教えてから尋問なりなんなりすれば、貴方にとっては都合が良かったのでは?」
「うーん...それでもいいですけど、でもそれだと先輩が可哀想じゃないですか?」
「......私は悪人なんですよ?そんな人間に、あなたが可哀想なんて感情を抱くことは無いと思いますが」
「じゃあ先輩は、悪人じゃないんですよ。...少なくとも、あたしはそう思います」
「私がタバコを吸っていることは紛れもない悪です。それを...」
「本当に...そうなんですかね?」
「えっ?」
「氷川先輩...何か辛いことがあったんですよね?......まあそれは、あたしには関係の無いことかもしれないけれど、もしそうだとしたら、先輩はその辛いことから逃げるためにタバコを吸った。そこにタバコの悪い成分がつけ込んでるだけだと思います」
「......つまり...何が言いたいんですか?」
「悪いのはタバコであって、先輩じゃないってことです。むしろ氷川先輩は被害者であって、咎めることは、誰にも出来ませんよ」
彼女の言ってることは、間違っているけど、もしかしたら、間違っていないのかもしれない。
だからこそ、私は彼女を面白いと思った。
「ふふっw」
「えっ......なにか、おかしかったですか?」
「ごめんなさい...そういう面白い解釈をする人は初めて見たので...ついw」
「...まー、私は思ったことを言っただけなので」
彼女が私にちょっぴりニヤッと笑った時だった。
キーンコーンカーンコーン
授業終わりのチャイムが鳴る。
どうやら私たちは、屋上で、丸々1時間話し続けてしまったようだ。
「あっ、やば、次の授業の準備をしないと」
「何を今更...もう1時間もサボってしまっているんですよ?」
「そうなんですけど...流石にそろそろ戻らないとこころが...」
「...そうでしたね。引き止めてしまい、すみません」
確かに、彼女の傍には彼女がいなければ、数分も経たないうちに学校は、まるでサーカス小屋のようになってしまうだろう。
私のその言葉を聞くと、奥沢さんはドアに向かって歩き始めた。
そしてドアノブに手を触れた瞬間、私は彼女に聞こえるよう、少し大きな声で、本当に最後の質問をした。
「また...来てくれますか?」
すると彼女は、振り返って笑顔で返事をしてくれた。
「もちろんです!」
その日の残りの授業は久しぶりにきっちり出席することが出来た。
奥沢さんと屋上で出会ってから、私の中の何かが、少し変わったような気がする。
ソレが何かは私にはまだ分からない...しかしソレが私をいい方向に導いてくれていることは間違いなかった。
明日が楽しみだ。
まあ奥沢さんと会話が出来るというだけで、気分が晴れや
「おーい!紗夜〜!」
不意を付かれた。
考え事に夢中になっている私の背後から、聞き慣れた声が聞こえた。
...二度と、聞くことは無いと思っていたのに。
「やっぱり紗夜じゃーん♪早足で逃げないでよ〜!」
「別に...貴方と話すことはありませんので」
やめて。近寄らないで。触れないで。
「そんな冷たいこと言わないでさ〜☆」
彼女の温かみのある右手が、私の肩に迫ってきた。
悪意や他意の一切無いその右手。少し前の私だったら、その手をなんなく、受け入れられただろう。
だが、今は違うのだ。
「近寄らないで!」
私は、彼女の腕を思いっきり跳ね除けてしまった。
跳ね除けた勢いで上に挙がったままの右腕と、彼女の見開いたその目が、反撃されたことに対する驚きと恐怖をわかりやすく表現していた。
「私に...近寄らないで...」
彼女から逃げようと、走り出そうとした。その時だった。
「リサ...?急に走り出してどうし...」
目の前に、今井さんを心配して先回りしてきた湊さんが飛び出してきた。
二人とも、一瞬の驚きはあったものの、その後はただただ、お互いを睨み付けるだけだった。
そうして、私と湊さんが睨み付けあっているのを、今井さんが心配そうに見ているだけの状況が少し続いたあと、遂に、湊さんが動き出した。
「行きましょう。リサ。」
「えっ?でも友希那...」
何かを話そうとしたリサさんを静止して、湊さんが話し始めた。
「また、ゆっくり落ち着いてから、話し合いましょう。」
「...私は貴方達に対して、何も話すことはありません」
「...例え本当にあなたが話す気が無くても、私達には話す理由があるのよ。だからまた今度、必ずよ。」
「...」
無視して、歩くことにした。
これ以上何かを話そうとしても無駄。
ああなってしまえば、私が話し合いに応じるまで、湊さんは絶対に食い下がらないだろう。
なら無視するのが1番。そう考えて、私はゆっくりと歩き出した。
しかし、既に先程までの軽快な歩みの仕方を、私は、思い出すことが出来なくなってしまった。
家に着いたのは、既に日が沈んだあとだった。
あのアクシデントからしばらくしても、私は家に帰る気になれなかった。
元々ストレスを抱えているのに、更にあんなストレスを上乗せされるのは、流石に心にくるものがあるのはもちろんだが、これからそれと同じくらいのストレスメイカーが、私の家には住み着いているのだ。
「おかえりなさい!おねーちゃん!」
「うるさいわよ!日菜!何時だと思ってるの!」
「あっ...ご、ごめんね。おねーちゃん...
あっ、ご飯...作ってあるから...」
「...。 1人で食べてなさい。私は疲れたから寝るわ。」
「えっ...、うん...わかった。」
私はイラつきのまま、ドタドタと階段を上がった。
別に、そこまで近所迷惑な大声を、日菜が出したわけではなかったと、今なら思う。
しかし、日菜の顔を見ると、どうしてか無性にイライラしてしまうのだ。
だから、とにかく理由を付けて、彼女に怒りをぶつけてしまう。
こんなことはいけないと、思わない訳では無いけれど、私の大部分が、別に変える必要は無い。どうでもいいじゃないか。と、私に囁いてくる。
そして部屋に入り、直ぐにタバコに火をつけた。
学校が終わったあとの嫌なことを、全部忘れてしまいたかった。
それなのに、スゥッ... と吸ったタバコの煙は、いつものものよりいいものだとは到底思えない、劣悪なものだった。
銘柄は一緒のはず...
結局、私はその理由も考えるのが面倒くさくなってしまった。
一体どうして、こんなことになってしまったのか。
私自身が、1番分かっていたはずの答えは、今吸ったタバコの煙に、隠されてしまった。
1話目ですがもう伏線を張り始めてます!読んでいった先で、もし気づいてくれたら嬉しいです。