中央暦1647年10月7日==============
今、グラ・バルカスの最新空母アンドロメダでは出港後の航空隊受け入れ準備が行われていた。アンドロメダは日本から入手した技術を元にアングルド・デッキと蒸気カタパルトを最初から装備したジェット機の本格的な運用が行われる初の空母である。
アンドロメダは全長250mで、現状の設備で建造可能かつジェット機の運用に耐える事を主眼に設計、建造され、建造は戦艦グレードアトラスターと同じドックで行われた。
準備が完了して少しすると航空基地の方向からド・デカテオン社のサジタリウス型戦闘機16機が飛行して来た。先頭の機体が着艦進入を行うもジェット機での着艦は初めてでアレスティング・ワイヤーにフックを引っ掛ける事が出来なかった。
しかし機体は墜落も衝突もする事無く再び上昇すると次の機体が着艦進入を行い、今度は成功した。
サジタリウス全機と後からやって来たカルスライン社のアスケラ型攻撃機12機の着艦、収容を終えると、発艦訓練が行われる。サジタリウス1機をカタパルトに繋ぐと、合図と共に勢いよく射出され空へと舞い上がる。
またアンドロメダには新たな種類の機体が搭載されていた、キャンサー型艦上早期警戒機である。これは日本の彩雲、瑞雲に影響を受けた物で、大型のレーダーと運用する人員を搭載する為にベガ型双発爆撃機を設計母体として構造強度の増加、エンジンをターボプロップに変更等の改良を経て開発された物の、機体のサイズから現在はアンドロメダ専用になっている。
そしてアンドロメダの周囲を新たな分類であるヘリコプター駆逐艦として建造されたカシオペヤ級駆逐艦とミサイル駆逐艦として建造されたケフェウス級駆逐艦が護衛している。
カシオペヤ級に搭載されるモノコーン型ヘリコプターはこれまで回転翼機の主流であったオートジャイロよりはるかに良い性能を示し、機体からアクティブソナーを吊り下げる事で遠距離での効率的な潜水艦探知を可能にした。
ケフェウス級の対空ミサイルはこれまでの対空砲や機関砲より広範囲で確実な防空が可能になり、対艦ミサイルも戦艦の主砲に匹敵する射程ながら駆逐艦にも搭載可能でより精度も優れている。
この艦隊はグラ・バルカスの最新鋭艦が集められた物であり、今後はこれ等の艦が海軍の中核を担う事になると思われた。
また陸軍航空隊の飛行場では採用された新型戦闘機と新型爆撃機の軍高官へのお披露目が行われていた。最初に上空をフライパスするのは新型戦闘機エリダヌス、それに続いて新型爆撃機ケンタウルスがフライパスを行う。エリダヌスはミサイルの搭載を前提に開発された戦闘機であるが、地球で流行したミサイル万能論はあまり支持を集めなかった。
これは日本がその思想(ミサイル万能論)を支持していない事と、今後他国も開発して来るであろうミサイルを回避するには機動性を犠牲にしてしまっては不可能だとの意見が軍内部で大きかったからである。
ケンタウロスはド・デカテオン社が開発したグラ・バルカス軍初の4発陸上機で日本のレシプロ爆撃機「初代」連山をモデルとした。
その開発には苦難が付きまとい、機体や脚の強度不足による着陸時の損壊は幾度も発生し、エンジン制御の不備によって操縦不能に陥る事態もあった(機体は墜落したがパイロットは脱出)。それでもド・デカテオン社の技術者たちは日本からの情報を最低限以上取り入れる事を良しとせず、自力での開発に拘った。その努力が実を結び完成したのがケンタウロス型爆撃機である。
グラ・バルカス軍内では航空機の発展により戦艦はもはや無用の長物であると言う意見が増えていた。しかし航空機の主な対艦攻撃手段であるミサイルは高価で、同格以上や一段下程度の技術力の相手ならともかく文明圏外国に使うのは非効率的との意見もあり、グレートアトラスター程の規模は必要ないにしても旧式戦艦程度の規模の戦艦は必要になると結論付けられた。