転移してから日本の兵器開発は混迷を極めた。
地球から転移した日本は当然ながらそれまでの同盟、友好国との交流が断絶され、技術発展のスピードが低下していた。特にアメリカがほぼ独占していたステルス技術に関しては転移後にほぼ完成していた新型戦闘機を運用可能になるまで10年近い歳月を必要とした。
また転移後に問題になった海空軍の装甲目標に対する攻撃能力の乏しさはABSMの開発や日輪型戦艦の建造によりある程度解消されたがまだ不安がある。
輸出用の兵器開発では退役した旧式兵器の設計図を引っ張り出して輸出に適するか確かめるなど苦労し、またライセンス生産を認める消耗部品については出来る限り古く発展性を使い尽くした技術を使用する事で独自改良が行われない様に再設計し、それ以外の場所との整合性を確かめていたりする。
そうして開発され同盟諸国に輸出された兵器は、これまた日本で指導を受けた教官と共に、多くの兵士を育て上げて行った。
話を変えて日本を中心として形成される東方世界同盟について説明しよう。東方世界同盟とは大日本帝国、アルタラス王国、クワ・トイネ公国、クイラ王国の四ヶ国間で締結された軍事同盟を基にしてルトコ連邦、フェン王国、フィルアデス連合、ロウリア王国、パーパルディア共和国が順に加盟して行った物である。
同盟軍の主力は海軍と空軍においては日本だが、陸軍では人口の多いフィルアデス連合が主力になっている。ロウリア王国とパーパルディア共和国もミリシアル帝国が進めた軍拡に対抗して行われた技術供与制限の緩和によりある程度の技術力と国力を手に入れていた。
基本的に機械文明で栄える東方世界同盟だが、アルタラス王国とパーパルディア共和国は魔導文明の研究に力を入れていた。
しかしパーパルディア共和国の研究が魔導技術のみで成り立つのに対しアルタラス王国の研究は科学技術と組み合わせて使用する事を前提としており、この二国の技術研究によって進歩した魔導技術は上手くすみわけがなされて行き、軍事技術はアルタラス王国が、民間技術はパーパルディア共和国が独占状態になっている。
パーパルディア共和国が魔導研究を行えたのは魔導技術に疎い日本が効果的な研究阻止を行えなかった為、そして民間技術を研究したのは独立後のパーパルディア共和国政府内で「独立後すぐに兵器開発を行えば危機感を持った周辺国に攻められる可能性が否定出来ない」と言う意見が大きかったからである。
民間技術に特化すれば他国から批判を受ける要素は少なくなり、他国に輸出すれば外貨獲得が出来る為である。特に力を入れたのは医療で、日本に並ぶ技術力と超える規模の医療大国となっている。
特にポーションと名付けられた傷薬は多少の擦り傷や切り傷ならば塗るだけで治り、同盟内では軍需物資として民間での販売が規制され一定以上の規模を持つ病院にしか配給されない事になっている。しかも使用した場合は量と誰に使用したかを報告する義務があるほどだった。欠点として使用期限があるが、それは医療現場では普通の事なのであまり気にされなかった。勿論廃棄は軍が行う事になっている。
こうして東方世界同盟は正面戦力として戦う日本、占領時の治安維持を行うフィルアデス連合、西方からの盾になるアルタラス王国、食料と資源の供給拠点であるクワ・トイネ公国とクイラ王国、二国があるロデニウス大陸の防衛基地としてロウリア王国とルトコ連邦、負傷兵の治療を行うパーパルディア共和国、同盟諸国で最強と評されるコマンド部隊を保有するフェン王国と非常に強固な軍事同盟になっている。