中央暦1639年8月1日
「計画が失敗しただと!」
そう怒鳴りつけているのはパーパルディア皇国第3外務局、局長カイオスである。
「はい、何でも日本と言う国がクワ・トイネの支援をしていたようです。海戦では日本の軍艦が200騎以上のワイバーンを撃墜し、クワ・トイネの軍艦は大砲を搭載していたそうで、ロウリアの艦隊は次々と撃沈されて行ったとか。観戦武官も死んだようでこれ以上の情報はありません」
「日本? なんだその国は、聞いたことが無いぞ」
「そう言えば・・・」
不意に部下が反応を示す。
「どうした?」
「いえ、昨年に国交を求めて来た国にそのような名前の国があったはずですが」
「その国は今も来ているのか?」
「いえ、半年ほど前から姿を見ていませんから滅んだのではないか? と言われていましたが・・・どうやら先週から再び来ている様ですな」
「ですから、いい加減に権限のある方へのお目通りをお願いしたいのですが」
大日本帝国外務省の一団は、再びパーパルディア皇国に訪れていた。昨年も訪れてはいたが半年もの間、交渉にすら辿り着いていなかった。
その為一時帰国し、周辺の国との国交樹立に専念していたのだ。そしてそれが一段落した事でパーパルディアとの交渉に向け、動き出したのである。
窓口で押し問答をしていると、一人の職員が向かって来た。
「あなた方が日本の外交団ですか?」
「そうですが」
「局長がお会いになります、直ぐに来て下さい」
「分りました」
その職員の案内に従うと、多くの装飾が凝らされた部屋に通される。
「初めまして、局長のカイオスと言います」
「初めまして、大日本帝国外交官の朝田です。所で我々の椅子は無いのですか?」
「文明圏外国との交渉にそんな物を用意するなどありえませんよ」
その言葉に呆れ返る外交団だが、やっとの事でここまで至った為、とりあえず持ち込んだ折り畳みの椅子に座り交渉を始める。
「そうですか、では交渉を始めましょう」
「・・・これが国交を結ぶにあたって我が国が出す条件です」
*日本は皇国民に対し治外法権を与える。
*日本は皇国に対し毎年700人の奴隷を献上する。
*皇国は奴隷の対価として技術を提供する。
*日本は皇国が望む資源を皇国の要請に従い献上する。
「・・・このような条件はとても飲めませんね。我が国は国交を結びに来たのですよ?」
「我が国は列強ですよ?」
「それが何か?」
「あなたの国は、文明圏外の国とは言え国際常識を知らないにもほどがある。我が国が治外法権を認めない事を了承しているのは世界で4ヶ国、つまり列強国のみです
列強国で無い、まして文明圏外にあるあなたの国が治外法権を認めないなど、列強国の如く要求をする、力の差が解っていないようですね。
ロウリア程度を滅ぼした位で調子に乗らないで貰いたい」
「そうですか、あなた方とは国交を結ぶ事は不可能なようですね。では本国にはあなた方との交渉は止めるように伝えておきます」
外交団はそう宣言すると部屋を出て行った。
「何なんだ! 無礼にもほどがあるだろう!」
外交団は帰国の為にカッターに乗り込んで沖合に出ていた。日本海軍の駆逐艦吹雪に引き上げられ、代表の朝田が大声で怒鳴る。
「一体どんな交渉だったのですか?」
「日本人を奴隷として寄越せと言ってきたんです」
「・・・それは本当に文明国なのか?」
「日本め、皇国を虚仮にして!」
「いかが致しますか?」
「日本の場所は解っているのか?」
「はい、本国の東700㎞の海上にあるそうです」
「あの場所は過去に何度か探索していなかったか?」
「最近の物でも100年前ですよ? その間に発展したのでしょう」
「まあいい、フェン王国との交渉はどうなっている」
フェン王国とは、パーパルディア皇国の東側約210㎞に位置する南北150㎞、東西60㎞の勾玉を逆にした様な形の島を領土とする国の名前である。
その東に内海を挟んでフェン王国を180度回転させたような形の国土を持つガハラ神国が、その更に東へ500㎞の位置に日本がある。
領土拡大計画の一環としてフェン王国の南部、森林地帯の400平方㎞を献上する事を求めた。我が国は実績を得て、フェン王国は技術供与と列強の後ろ盾を得られる。双方に利のある要求だが、フェン王国はこれを断る。
代替案として同場所を498年租借する案を出すも、フェン王国は同じ様に断った。
これに対する報復措置(特に被害を受けたわけでは無いので、実際は報復ではなく侵略である)として、監査軍東洋艦隊の派遣が行われる事となった。
中央暦1639年9月25日======
フェン王国で5年に1回開催される軍祭に日本は、親善として海軍の駆逐艦7隻、巡洋艦1隻を派遣していた。フェン王国主催だが、初参加国は簡易的な演習を行う事になっている。
日本はロウリアで建造した木造船を10隻、曳航して来ており。標的艦として沈める予定である。
軍祭のスケジュールは滞りなく進み、日本軍の演習の時間になった。
艦隊から1隻の船が突出すると煙を吹きだした、何か事故でも起きたかと心配すると音が聞こえる。直後、日本軍の船から2㎞離れた標的艦が次々に爆散、沈没した。
参加していた各国の人間は、理解を超えた攻撃に唖然とする。
1隻からの攻撃で10隻を瞬く間に沈める。列強の一角に位置するパーパルディア皇国でも、同じ事は出来ないだろう。
「凄いな・・・、これほどの国が味方に付いてくれれば心強いのだが」
巡洋艦利根のレーダー画面を見ていた物は西側から飛行物体が近付くことに気が付いた。時速にして約350㎞、20機程が近付いてくる。
すぐさま艦隊司令に報告が上がった。
「西は・・・確かパーパルディア皇国と言う国があった筈だが」
「フェン王国の軍祭に招かれているのではないでしょうか?」
「だといいが・・・確認を取れ、それと全艦に通達しろ、万が一の為機関始動せよ」
パーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に報復する為に首都であるアマノキ上空に来ていた。
軍祭来ている文明圏外の各国武官に皇国に逆らった愚か者の末路を見せる為だ、あえてこの祭りに日を合わせて攻撃する事で各国は、皇国の力と恐ろしさを再認識するのだ。そして逆らう者の末路と逆らった国に関わるだけで被害を被る事を知らしめる。
「ガハラの民への攻撃はするな。フェン王城と・・・・あの一番大きい灰色の船に攻撃を仕掛けろ!」
ワイバーンロードは上空で散開する。
西から飛行して来たワイバーンロードは、二つに別れ片方はフェン王国王城に、もう片方はこちらに向けて飛行する。
10騎のワイバーンロードは旗艦利根の上空に来ると急降下を始め、口の中から火が吹きあがる。
「前進一杯! 回避せよ!」
利根は機関出力を最大まで上げ、回避を始める。降り注ぐ火炎弾は、利根の後方に次々と着弾する。
「正当防衛射撃開始!」
攻撃を回避した利根は、主砲4基の照準をワイバーンに向けて射撃を開始する。
利根以外の駆逐艦は攻撃を確認した時点で「敵」への攻撃を決定し、各々の主砲が上空を飛行する「敵」を照準する。
各艦の主砲が発射され、上空に居たワイバーンロードは全て撃墜される。