「あの襲撃について何か分かりましたか?」
艦隊司令の飯塚大佐は外交官の島田に質問する。島田が集めた情報では以下の事態らしいことが分かった。
*フェン王国、各国武官に質問した所、襲って来たワイバーンロード(ワイバーンの上位種らしい)はフェン王国から西に500㎞にあるフィルアデス大陸の三大文明圏に属する世界5列強国の一つであるパーパルディア皇国で間違いないと思われる。
*パーパルディア皇国の皇国監査軍と言う部隊で、文明圏外の国と交渉する第3外務局の命令で動く部隊である。
*フェン王国に対する報復を各国武官の集まる軍祭に合わせる事で、各国に対する脅しも兼ねている砲艦外交の一環と思われる。
「そうですか・・・。この事は既に政府に連絡しました、数日で避難指示が出される筈です」
「戦争の可能性がある以上仕方ない事でしょう」
皇国監査軍東洋艦隊
「竜騎士隊との通信、繋がりません」
「どういう事だ?」
「何度も通信しましたが、返答がありません。撃墜された可能性があります」
「何があったと言うのだ・・・」
その報告を聞いた提督ポクトアールはそう呟くがこの遠征は国家の威信を保つ為に行われた物で、実行しない訳には行かない。
皇国監査軍東洋艦隊22隻は、フェン王国への報復と、ワイバーンロードを撃墜した物への懲罰の為に、風神の涙を使用して東へ向かう。
日本海軍巡洋艦利根 会議室
「さて、今現在フェン王国と外務省の会談が行われているが・・・これからどうなるのだろうな」
「フェン王国とパーパルディア皇国・・・でしたっけ? の戦争が始まるのではないでしょうか?」
「だとするとこの国にいる日本人を避難させる必要があるが・・・船が足りん」
「ですが応援を呼べば良いのでは?」
「政府から通信があったんだが、衛星からフェン王国から西に180㎞程の海域に22隻の船団があり、東におよそ15ノットで進んでいる様だ。それがパーパルディア軍だった場合、避難は間に合わない」
「どうすれば・・・」
フェン王国にいる日本人の避難をどうするか会議をしていると、兵士が部屋に入ってくる。
「司令! 政府から通信が来ました!」
「内容は?」
「外交団を乗せた船をパーパルディアに向けた、船団にワイバーンロードを発進させたか尋ねた後、そうであるならば報復として撃沈せよ」
「・・・いいのか?」
「この世界では力を示さねば舐められると判断したようです。もしかしたら政府は全面戦争も覚悟しているかもしれません」
「おい! 滅多な事を言うな!」
「申し訳ありません」
皇国監査軍東洋艦隊
「島が見えました」
提督ポクトアールは報告を受ける。
「何を言っている? フェン王国はまだ先だぞ」
「島が動きました! こちらに接近して来ます!」
「何! まさか船だと言うのか!」
「通信が入ってきました! この艦隊の責任者を呼び出しています!」
新たな報告を受け、ポクトアールは通信室へ向かう。
「私がこの艦隊の提督ポクトアールだ、貴様は何者だ?」
「私は日本海軍フェン王国親善艦隊司令の飯塚だ、我が艦隊を攻撃したワイバーンは貴艦隊の傘下か?」
「そうだが? それがどうした」
「直ちに撤退せよ、今から2分以内に撤退しない場合、報復として撃沈する」
「通信、切れました」
「まさか奴らがワイバーンロードを撃墜したのか?」
「ですが1隻でこの艦隊を撃沈するなど、その前に向こうを撃沈出来ます」
実際にそうだろう、かなり巨大な大砲を装備しているがたった4門、こちらは大半が50門級戦列艦で、80門級戦列艦も数隻いる。
大砲など狙って命中させる物ではなく、多数を発射して2つ3つの命中を期待する物なのだ。たった4門では命中弾など夢だ。
日本とやらの軍艦は右舷4㎞程を並走している。
「また通信が入って来ました」
「こちら日本海軍、撤退の意思無しと判断し、我が艦隊への攻撃の報復を行う」
「敵艦発砲!」
「焦るな! どうせ威嚇だ!」
次の瞬間最前列を航行していた戦列艦パオス、ガリアス、マミズ、クマシロが弾け飛ぶ。
「戦列艦パオス、ガリアス、マミズ、クマシロ、撃沈されました!」
「何だと! この距離から届く、しかも命中だと!」
「再び発砲!」
敵艦が発砲するたびに4隻の船が沈む。それが4度繰り返され、残る船が6隻になると敵艦は遠ざかっていく。
「再び通信です」
「船員救助用の船は残した。船員を救助する間は攻撃しない、しかしこちらに攻撃をすれば全て撃沈する」
「くそっ! 漂っている味方を救助! その後直ちに撤退!」
パーパルディア皇国 第3外務局
局長カイオスはその報告に憤慨していた。
フェン王国への報復の為に派遣した皇国監査軍東洋艦隊22隻とワイバーンロード20騎が敗北したと言うのだ。
報告によればワイバーンロードは通信を行う間も無く消息を絶ち、全滅した物と思われる。更に海戦でも僅か1隻の船に壊滅させられたと有り得ない事を言っている。
提督の証言によると。
*灰色の超巨大船(全長150m以上)と会敵する。超巨大船は日本と言う国の軍艦だと名乗った。
*日本軍は並走しながらワイバーンロードが我々の物かを尋ね、そうだと答えると撤退しなければ攻撃すると警告を行った。
*2分後、再び通信を行い攻撃すると通達をした後、日本軍は距離4㎞で射撃を行い味方戦列艦4隻が撃沈される。
*日本軍は4門の砲を4度斉射し、16隻が撃沈された。
*通信で救助行為を行っている間は撃沈しないと言って来た為、兵士の救助を行った後で撤退した。
・・・実に想像力豊かな妄想だ、まず4㎞もの距離からの砲撃など不可能、列強国でさえ2㎞が最大なのにその2倍の射程距離など文明圏外の国が持っているはずがない。更に4門の砲を4度斉射と言う事は放った砲弾は16発、16発の砲弾で16隻が撃沈されたと言う事は全弾命中した事になる。砲弾は発射時の角度が1度ずれただけで目標から大きく外れる、海と言う向こうもこちらも動きながら、しかも波がある状況でその様な事は不可能だ。
つまりこれは完全に負けた言い訳である。文明圏外の国にそんな超高度な兵器がある筈がない。
日本がどんな手段を使ったか調査が必要だが、恐らく数に物を言わせたのだろう。我が国の艦隊が強いとはいえ100隻200隻に22隻では流石に対抗は無理だ。