My Companion, My Dearest 作:春日むにん
気づくと、わたしはどうやら、ひんやりした台の上に横たわっているようだった。
頭が痛い。とても痛い。アイススパイクを十発撃ち込まれて、さらにメイスで二十回くらい殴られたような凄まじい痛さだ。とても目を開けてあたりを見回せる状態ではない。
感覚を研ぎ澄ますと、右手だけが台の下へ放り出される格好になっているらしい。わたしは右手を弱々しくさまよわせて、周囲に何かないか確かめた。手の甲に硬い感触があった。
「目が覚めたか」
聞き慣れた、しかしいつもよりだいぶとげとげしい男の声が上の方でした。テルドリンだ。わたしの右手は彼のキチンのブーツに当たったらしかった。
「うん……頭、痛い……」
額に冷たくて柔らかいものが乗った。冷水で湿らせた布だろうか。粉々に割れそうだった頭が少し楽になった。
「ここ、どこ?」
「覚えていないのか? マルカルスだ。私は丸四日も馬車を急がせてきたんだぞ」
マルカルス? わたしたちはホワイトランにいたはずだ。それがなぜいきなり、スカイリムの西端の街にいるのか?
わたしの考えていることくらいお見通しだとでも言うように、テルドリンは続けた。
「私にはお前がいったいどうやってここまで来たかなど知るよしもない。私に分かるのは、お前があの男と一緒にいなくなった挙げ句、私にふざけた手紙を寄越し、四日後の今日、ここのディベラ神殿に寝転がっていたということだけだ」
あの男。そうか、バナード・メアでサムという男と、魔法の杖と金を賭けて飲み比べをしたのだ。わたしはあのあと、どうしたんだっけ? 肩を組んで外に出たところまでは記憶にある。でもその先は全く覚えていない――テルドリンの言っていることが正しければ、あれから四日後の今に至るまで。誰かがわたしの頭の中を綺麗にぬぐい去ったかのように完璧に真っ白だ。
とりあえず、テルドリンをものすごく振り回してしまったことは確かだ。
「ごめん、テルドリン。すごい迷惑かけた。今も、かけてる」
素直に謝罪すると、テルドリンはしばらく沈黙した。それからやや落ち込んだ口調で言った。
「いや。私も悪かった。私がすぐに後を追っていればこんなことにはならなかったんだ。……あいつに妙なことはされなかっただろうな?」
妙なこと? 一瞬考えて、それからわたしはくすっと笑った。本当は笑っていられる状況ではないが、テルドリンがまるで父親か兄のようにわたしのことを心配しているのが無性におかしかった。
「全然覚えてない。でも少なくとも変な魔法や病気にはかかってないんじゃないかと……うう、痛っ」
笑ったら頭に響いたらしく、また痛みがぶり返してきた。
「すまん。話させるべきじゃなかった。まだしばらく眠った方がいい」
テルドリンが囁くように言った。それから、ずり落ちたわたしの右手を寝台の上に戻し、はいでいた毛布をかけ直してくれた。わたしは傍らにテルドリンが立っているのを感じ、安心して眠りに落ちた。
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たっぷり眠ったおかげで頭痛は消え去った。
起床して身支度をしながら聞いたところによると、テルドリンはわたしとサムがバナード・メアを飛び出した後、わたしが席に置いていった荷物をかき集めてから、わたしたちを夜通し探し回ったそうだ。明け方になって彼の前に配達人が現れた。配達人は、わたしの筆跡で「マルカルスのディベラ神殿で待つ」とだけ書かれた手紙を彼に渡した。テルドリンが馬車を雇って全速力でマルカルスまでやってきたのが四日後の夜、つまり昨晩。彼はディベラ神殿の床に転がっている泥酔状態のわたしと、カンカンになって怒っている司祭を発見した。わたしはテルドリンが到着するほんの少し前に一人でやってきて、どこから持ってきたのか分からないごみを神殿中にばらまいた後で倒れたらしい。テルドリンは司祭に愚痴られながらわたしの代わりにごみを拾い集め、わたしをマルカルスの宿屋「シルバーブラッド亭」に担ぎ込み、目覚めるまで看病してくれていたのだ。一連の話を聞いた後、わたしが再度謝罪したのは言うまでもない。
今、シルバーブラッド亭のテーブルで、わたしとテルドリンは遅い朝食を摂っている。
「ねえ、テルドリン。まだ契約は破棄しないでいてくれる?」
わたしは情けないくらい色々な失敗をする雇い主だが、こんな醜態をさらしてしまったのは初めてだ。いいかげん嫌気が差したんじゃないだろうか。彼は以前、ノルドの雇い主との契約を自主的に解除したと話していたから、わたしも同じように見捨てられるのではないかという不安が急に襲ってきた。上目遣いにテルドリンを見ると、ルビーのような赤い双眸と目が合った。
テルドリンはキチンの兜を外している。雇ったばかりの頃はどんなときもがんとして兜を外さなかったが、最近はわたしに気を許してくれたのか、食事時には素顔を見せるようになった。彼は弓のような力強い弧を描いた眉をわずかに上げた。
「もちろん破棄などしないさ。ただ、見ず知らずの人間に対してはもう少し疑り深くなれ。私の都合ばかりじゃない、お前の将来のためにもな」
ほっとして、わたしは頷いた。しかし、その後で彼が満足そうな微笑みをたたえると、急に落ち着かない気分になった。
食事を挟んで話をするたび、キチンの兜の、ある種のかわいらしささえ感じさせる丸いレンズの下には、実はこの鋭い鷲のような眼光が宿っていると気づかされる。いつもは兜の下から聞こえる少しざらついた声も、この端正なダンマーの唇から発されていると悟る。そして、食事時でさえ見られない鎧や腕当ての下にはどんなにしなやかな灰色の肉体が隠されているのだろうと考える。それから、なぜかとてつもなく胸がどきどきするのだ。
「昨日からなんだか父さんみたいなことを言うね?」
妙な気持ちを紛らわすためにおどけてみせると、テルドリンは目を丸くした。
「父さん!? そんなつもりはない。ただお前がこのところあまりに危なっかしいから忠告しているだけだ」
彼は不服そうにわたしから目線を外し、グラスの水をがぶ飲みした。おかげでわたしの胸の動悸はだいぶ治まった。二百歳以上違うので本来なら父さんどころではないが、年上扱いされるのは気に食わないみたいだ。
「うえっへん。で、私の話はこれで最後になるが。司祭によると、お前はここに来る前にロリクステッドに寄り道してきたと喚いていたそうだ。まあ、おおかた幻でも見たんだろうが」
水が気管に入ったのか、大げさに咳払いしてからテルドリンは言った。
ロリクステッドに寄っていた? どうも不可解だ。ホワイトランからマルカルスまで来るのには、テルドリンのように馬車を使っても丸四日かかる。ロリクステッドに寄ったのなら時間が足りない。
「神殿で拾ったごみはまだ持ってる?」
テルドリンは眉根に皺を寄せた。これ以上首を突っ込むなとでも言いたげだ。だが、逆らいはせず、枕ほどの大きさの布袋を差し出した。
わたしは袋の中身をテーブルの上に出してみた。巨人のつま先、ハグレイヴンの羽、半分ほど中身の残っているワイン、それにくしゃくしゃになった紙。紙を開くと、手書きの文字で「サム」とあるのがまず目に入った。その上に、「杖を直すには、巨人のつま先、ハグレイヴンの羽、聖水が必要」と走り書きされている。
その文章を読んだ瞬間、いくつかの記憶の断片がわたしの脳裏に浮かび上がった。わたしは魔法の杖を確かに受け取っていた。それはとても強力な杖で、何か……とてつもないものが出てきたような……。
「テルドリン。わたしたち、ロリクステッドに行かなきゃ」
わたしは自分でも知らないうちに立ち上がっていた。テルドリンは、そうなると思ったよ、と諦め気味に言った。