獣の人   作:樫木

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え!?
藤田和日郎、新連載!?


傷

 

はじめは、ただの真似事だった。

 

子どものままごとのような、側から見れば滑稽なくらいに出来損ないの物真似みたいなものだった。

 

どうして始めたのだったか。

 

暇だったから。

なんとなくやってみたかったから。

ふと思いついたから。

ほんの戯れのつもりだったから。

誰かに誘われたから。

体が勝手に動いていたから。

ただ揶揄うつもりだったから。

 

理由は、とうの昔に忘れた。

 

100年は続けたか。

大して上達もしなかった。

だが、奴等は口を揃えてこう言った。

 

「美しい」と。

 

そこから更に100年続けたのは、別に褒めそやされて浮かれたからではない。

ただの気まぐれだ。

たかだか数百年、矮小な阿呆共に付き合ってやらんこともないと思ったのだ。

 

「あなたは世界だ」

「地に降り立ちし時、光溢るるそのお姿に敬服を」

「すべて天地を統べる方なれば」

 

月日は流れ、ままごとは真似事に、真似事は影に、影は形になっていった。

 

「ヤシロを建てましょう」

 

生まれも育ちも誰も知らず、なぜ生きているのかもわからず、ただ暗く閉ざされたどこかで悠久を過ごし、気の向くまま蹂躙すれば飽き、ひたすらにこの姿を匿すことを至上とし、恐れられる程に沸き立ち、夢幻の姿を揺蕩う。

これが生まれ死ぬまでの全てだと思っていた。

それ故に、気付かぬうちに居心地の良さを見つけ出していたのやもしれぬ。

 

「崇められるべきなのです」

 

高じれば、存外本物になるものだと感心した。

瓜二つとは言わねども、代替品程度にはなれるものなのだと。

 

「ただ御身を祀らせていただきますれば」

 

つけ上がっていたわけではない。

しかし、それは許されざることだったのだ。

近づくとは即ち、遠く離れていくことでもあるのだと知った。

 

「ーーーーー」

 

世の理とは至極明快であり、陰陽、光影、その尽くが表裏一体。

ただそれだけのことなのである。

 

だからこそ許せぬ。

 

なんで、われは、ああじゃない

 

 

---------------------

 

「平成の日本に新たな特異点?」

 

ダ・ヴィンチ女史の声がフロアに響く。

オペレーションルームに人影は少なく、少し気の抜けた声が四方に広がった。

 

「例の冬木市のことかい?あそこは随分と変わった土地ではあるけど、そう何度も出向かなきゃいけない事例が発生するものだろうか?」

 

解せない、といった顔でカルデアスと睨めっこをしていたオペレーターからの報告に目を通す。

緊急事態の為、箇条書きや走り書きで雑に纏められてはいるものの要点が

をしっかりと押さえた書面から、瞬きの間に大まかな原因を推測していく。

 

「明らかに過去の報告にもない事例だね。しかも、冬木を起点としているものの…実際にはもっと広い範囲が想定されそうだ。ブリテンやバビロニアの様に都市どころか一つの国に至るような…」

 

背中に冷たい汗が流れる。

グランドオーダーを完遂し、解体を待つだけのカルデアとはいえど、これほどの事案を放置するわけにはいかない。

 

疑念はある。

既に治めた特異点は厳重に監視と管理を行っており、そう簡単に揺らぐ筈もない。

カルデアをよく思わない勢力から罠を仕掛けられた可能性もある。

管理システムに想定外のトラブルが発生している場合も考えられる。

あまりにも我々の今後に不都合すぎる事案の発生は、敵方に都合が良すぎる。

 

「この報告は本当に信頼できるものなんだろうね?」

 

視界の隅に映る、長髪の彼女に投げかける。

凛とした声色で、事の深刻さを告げる。

 

「事態の発生は19分前、9秒前には冬木とは別地域の一部消失を観測、現在解析を進めていますが、かなり強力です。現代では考えられないほどの神秘…神霊クラスの可能性が高いです」

 

最悪である。

バビロニアという過去最高難易度の異常を平定し、神霊の恐ろしさとはなんたるかをその心身に深く刻まれている故に、悪寒が止まらない。

現代兵器ですら歯が立たない神秘が、現代日本という科学全盛の地に降り立っている異常が、更に恐怖心を煽る。

 

「既に信仰心や知名度といったものが廃れているこの時代にこれほどの神秘…相当に名の知れた神なのかな…」

「その姿まではわからず…もやがかっていてシルエットすら判別できず…ただその姿…まるで、ティアマトのよう…です」

「嘘だろう?」

 

天地開闢と共に生まれ落ち、その姿は秘匿されていた始まりの神秘。

それに匹敵する存在が日本にいるなど、どこにも記されていなかった筈である。

それなのにどうだ。

その純粋な膂力で列島を蹂躙していく姿は、魂の原初に刻まれた畏れを呼び起こす。

 

「日本にこれほどの大災害をもたらした存在なんて聞いたことがない…」

 

被害は加速度的に進行していく。

アラートが鳴り響く室内では、職員が慌ただしく駆け回る。

損害が大きすぎて、とても実況できる状態ではない。

カルデアは、未曾有の大事件に踊らされている。

 

「とにかく、藤丸くんをすぐに呼び出して!あとは、潮君とその他日本に縁のあるサーヴァントを片っ端から召集するんだ!」

 

白面。

いつだったか、その名を叫んだ蒼月少年。

何者の話かなどわからなかった。

だが、直感した。

これこそが、白面なのだと。

 

 

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