大きなドラゴンと小さな女の子   作:海月提督

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  第一話、
   主人公 死す  
 

デュエルスタンバイッ!


トラックには轢かれない

 高野丘高校二年生の岸中結(きしなかゆい)は何時もなら寝坊して焦っている時刻、午前七時に珍しく家を出ていた。珍しすぎて父からは「今は春なのに雪が降るなぁ!」とケラケラと笑われるほどだった。

「は〜〜、何時も遅刻してからって何なのあの反応。私は赤ん坊ですか〜〜ねぇ、クロフネ。」

 少し大きめな独り言を近所のずんぐりむっくりした黒猫相手に話す。クロフネは石塀の上に乗り、結の話など聞かずに寝ている。寝ているクロフネに小さい「ちぇっ」と舌打ちをして高校への通学路を歩き続ける。

(今日は卒業式。莉帆は他県の高校に行くから入学式にはもう来ない………だけど莉帆とは友達でいたい……。)

 耳を桜色に染めて幼稚園の頃から仲のいい幼馴染で入学式までには他県に引っ越してしまう菜原莉帆(なはらりほ)に思いを伝えようか伝えまいか、眉間にシワを寄せて歩きながら考えていた。

 

 結が莉帆のことがlikeからloveに変わったのはたしか中学一年生の涼しくなってきた八月の終わりに二人で行った夏祭りの日だった。

 結と莉帆はかき氷に射的、綿飴に金魚すくと夏祭りを思う存分遊んでいた。大きな打ち上げ花火を綺麗に見れる場所があると結はりんご飴片手に莉帆の手をひき二人以外には誰もいない静かな公園に連れて行った。

 大きな打ち上げ花火が豪快に音を鳴らし大きな花を開いては一瞬で消えていく。そんな事を繰り返す花火に照らされる莉帆の顔を横目でチラッと見た結はその時だった。苦く苦しい恋の海に溺れてしまったのは。

 何時もはポニーテールの黒い髪が、青藍色の生地に雪輪が散りばめられた落ち着いた雰囲気の浴衣に合わせたボブアレンジの髪型になっていて可愛らしく、打ち上げ花火に目を輝かして笑う莉帆に結は自分の心臓の音が相手に聞こえないか心配するほど早く、大きくなっていた。

 

「……よし」 

 震え声で結はもうこの気持ちを伝えるしかないと思い学校までの少し長い通学路を運動部の体力と意地で走っていく。この気持ちが変わらないように心で唱えて祈って。

「ふぅ…ふぅ…」

 少しとばしすぎて息があがった結は空を見上げて目を瞑った。

―――キキッーー!

 信号無視をしたマウンテンバイクがトラックにはねられた。結が驚いて目を開けると、目の前には変形したマウンテンバイクとトラックの割れたガラスが幾つも飛んできていた。

―――間に合わない。

 そう思ったときにはもう遅い。マウンテンバイクが 頭と肋にあたり、ガラスは身体に幾つも深く突き刺さった。

 

 

 

――――――午前七時半頃、〇〇県△△市の信号で三人の死者を出す事故が発生しました。

死亡したのはトラック運転手の比島行文さん三十八歳とマウンテンバイクに乗っていた凍山敬一さん四十二歳と通学途中の岸中結さん十七歳の死亡が確認されました。―――岸中結さんは肋の骨が折れ、心臓と肝臓に突き刺さり頭からは血が出ていたようです。




眠たい
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