やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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時間なくてXDやれてないよー!早くif切調を拝まないといけないのに。






巫女の置き土産

side翼

 

 

 

 

 

 

「くっ、立花…。……比企谷っ」

 

 

ソロモンの杖より無限に供給され続けるノイズを相手取りながら、目まぐるしく変わる戦場の様相を把握する。今日この場所に来たのは決闘ではなかったのか。そうでなくとも比企谷に近づける機会、そして文化祭で関わった彼女らを少しでも理解できるのだと思って来た。

 

…だが現状はなんだ。少女らは現れず、化け物に立花の左腕が喰われ、暴走。あまりにもあんまりな惨劇に、アームドギアを握る手に力がこもる。

 

 

 

 

「ヴォオオオオオアアア……!」

 

 

 

 

立花の咆哮。ネフィリムと呼ばれる化け物を蹂躙する様をありありと見せつけてみせたその姿は、普段の彼女の様相はカケラも見られない。

 

…そしておかしいのは立花だけではなかった。

 

 

「………」

 

 

…先ほどまでは、敵対していたことすら忘れているかのように立花に寄り添い支えていた比企谷。それがまるで表情が抜け落ちたかのように立ち竦んでいる。

 

暴走した立花をアームドギアで殴り飛ばしながら、だ。遠隔操作のように遠距離攻撃とはいえ、寸前の焦燥を忘れ去ったような姿で。

 

……もしも今の一連の動きが比企谷の望むものでないのなら、結論は一つとしか言いようがない。

 

 

「………てめえ!あいつになにしやがった!」

「…高らかに見せびらかしたそのカラクリ。比企谷の変化はソレだな?」

 

 

同様の結論に至った雪音と共に矛先をウェル博士へと向ける。

 

コードBc_Fine_E。その意味合いまでは理解できないが、比企谷の変調に彼が関わっているのは間違いないだろう。

 

その証左に、そんな我々に向かってウェル博士は狂ったように笑ってみせる。

 

 

「……くく。なにをした、だなんて人聞きの悪い。僕はただ彼のギアに元々ついていた機能を発動させただけです」

「機能だと!?あんな人形みたいなツラして戦わせることを、お前は機能と宣うのかよ!?」

「言うですよ!現在の彼の立ち位置は兎も角、あんなものを搭載された彼のギアなんて使い捨てのオモチャも同然なんですから!」

「……っ!どういうことだ、貴様は何を知っている!?」

 

 

話題の中心である比企谷へ目を向ける。そこでは変わらず無表情のままアームドギアで立花の妨害をする比企谷。暴走する立花を今なら食えると思ったのか立ち向かうネフィリムに、そのネフィリムと比企谷のアームドギアを同時に相手取る立花の姿。

 

…戦況は互角に近いが、この状態がどこまで続くかは分からない。

 

 

「……………雪音!」

「…っ、おう!」

 

 

 

 

──MEGA_DETH_PARTY──

 

 

 

 

乱れ撃たれるミサイルによって開かれる突破口。立花の加勢、比企谷の制止。どちらを取るか悩むが、立花が暴走している以上比企谷の制止に走るべきだろう。

 

零れたノイズを斬りつつ比企谷の元へと駆ける。

 

 

 

「比企谷!……っ!」

 

 

 

ギィン!!

 

 

 

…近づこうとするも、死角から迫る鞘に堰き止められる。比企谷のアームドギアが立花だけでなく、数を増やし此方にも襲いかかって来た。それに足を止めれば、追加されるノイズがまた道を塞いでくる。

 

 

「くっ、姑息な!」

「クソ!どこまで弄びやがる!」

「弄ぶなんてとんでもない。言ったでしょう?アレは、元々付いていた機能だと」

 

 

キラリと月光に反射しウェル博士の手元で黒い機械が光る。食い止められる私達に、立花を押さえ込めている現状。その戦果にウェル博士はただニタニタと笑う。

 

 

「………そもそも、彼のシンフォギアの出自なんて分かりきったものでしょう。櫻井理論が少しずつ解明され続けているとはいえ、その集大成であるギアペンダントを作れるのはただ一人」

「………フィーネ」

「…ふっ。そして彼のペンダントの存在は我々も認知していませんでした。その様子だと二課もそうなのでしょう?フィーネと協力関係にあった米国機関とも、櫻井了子が所属していた二課にも明かされていないフィーネ個人の為にのみ作られた新たなペンダント」

 

 

…比企谷の胸に黒く輝くペンダント。F.I.S.の彼女らや私達のピンク色のペンダントではない、異色のギア。

 

…それは異性である故の配慮や気まぐれなどではなく、明らかに使用用途が異なるが故の分別とでもいうのか。

 

 

「聖遺物のカケラも嵌められておらず、それどころかフォニックゲインの減衰機能まで付いていれば推察も考察も付くというもの。そこに現物があれば尚更ね」

「聖遺物のカケラがなく、フォニックゲインの減衰?」

「簡単な事です。減衰機能なんて数値の見せかけ。ただ溢れ出るフォニックゲインを溜め込んでいただけです。溜める場所の問題も、御誂え向きに本来あるべきものが無いのですからね」

「………聖遺物のカケラの代わりに、というわけか。だがフィーネは何故そんなものをわざわざ…」

 

 

ギアに特殊な機能が仕込まれていたのは分かった。だがそのギアが起動したのは、知る限りではルナアタック当日。それまでは比企谷にとってもフィーネにとっても、ギアペンダントとは名ばかりの首飾りだったはずだ。

 

 

「それこそ分かりきったもの!そもあのフィーネが善意や好意なんてお優しい倫理で、シンフォギアなんてものを渡すわけがない!そして彼女の目的も一つ!」

 

 

ビッ!と天は指差せば空に輝く天然の街灯。削られ狙われ、そして今なお地球への落下を危惧される天球。ルナアタックの名の通りであり、ある種真逆の事象。フィーネと戦ったあの日、その最終目標である月の姿。

 

 

「月を穿たんとしたフィーネはソロモンの杖、デュランダル、ネフシュタンの完全聖遺物三つを用意しました。しかし彼女は経緯は知りませんが、聖剣の片割れを見出したのでしょう」

「………それが比企谷だと…」

「ええ。鞘と剣。一対揃ってしまった場合、彼女の計画に支障が出るかもしれないと危惧したのでしょうね。本来なら保持者の一生をかけても起動するか怪しい聖遺物ですが…」

 

 

言葉を切り、ウェル博士が暴走した立花を見やる。

 

 

「………前兆に近いものがあったのでしょう。起動を予見するものが。科学者としてなら理解もできますよ。アクシデントと役立たずは排除するに限ります」

「それがその機械だっていうのかよ!?」

「そうですとも!ベースはフィーネの物ですが、仕組みを解析し僕の手中へと落とし込んだのです!研究にマリアのマネージャーにと多忙ではありましたが、僕の実力を持ってすれば実に容易い!」

「てめえの自慢を聞いてんじゃねえ!あたしはあいつになにしたかって聞いてんだよ!」

 

 

弾丸を撒き散らしながら雪音が激昂する。フィーネが何かを仕込んだのは分かった。それをウェル博士が比企谷に対して使用した事も分かった。

 

だが結局今比企谷の身になにが起こっているのかが分からない。意識の有無も分からないほど脱力し、まるでアームドギアのみが意思を持っているようにすら見える。

 

しかしウェル博士の言葉の端々から感じる不穏な空気。使い捨て、オモチャという言い草。そも聖遺物といえどそう事も無さげに洗脳のような行為を敢行できるのだろうか。

 

 

「………。彼の持つエクスカリバーの鞘。悪意を受け止め増幅するこの聖遺物ですが、数値化できない感情の大きさに合わせる事ができる稀有な特質を持っています。敵意、害意、そんな感情を向ける人間を割り出す事も容易い特異機構(スペシャル・スペック)

「………」

「ならあとは簡単です。フィーネの聖剣に求める利用価値が『計画の邪魔にならなければいい』、『あわよくば自分の補助になればいい』。そんな程度の考えであるならば、その悪意を自らに向ける者を無差別に!無分別に襲う傀儡(マリオネット)であればいいと結論付けるだろうと!」

「…っ、貴様!人を、比企谷をなんだと思って!」

「…そして後は指向性を与えるだけ」

 

 

言葉を切ると、ピッ、ピッ、と。ウェル博士は私と雪音に向けて先程の機械をリモコンのようにボタンを押した。

 

 

「……!避けろ、雪音!」

「なにを……ガッ!?」

 

 

ノイズの影から飛び出てきた灰色の鞘に雪音が殴り飛ばされる。鞘とノイズを相手取っていた私はまだ反応ができた。だがノイズに囲まれ、一番比企谷と距離を取っていた雪音は戦場に這い寄るアームドギアに反応できなかった。

 

 

「………ってえ…。…なんだよ、この威力は」

 

 

空中で体勢を整えて着地するも、フラリとバランスを崩しかける。不意打ちだったこともあるだろう。しかし明らかに先程よりも比企谷のアームドギアの威力が増している。

 

 

「………くっ」

 

 

飛翔し、接近する鞘を受け止めるもその重みに半歩後ずさる。意識を保ったままの時なら戦った記憶があるが、この威力と全く合致しない。この短期間でシンフォギアのリビルドを底上げしたとでも言うのか。

 

 

「戦意も敵意!その数だけエクスカリバーの出力は向上する!そして敵意をフォニックゲインと変えるエクスカリバーであるならば!特定のフォニックゲインを敵意と誤認させ、襲撃させることも可能となる!そして刃さえ交えれば偽りの敵意は本物へと昇華するぅ!」

「その機械はその為の…!」

「溜め込んだフォニックゲインは細胞レベルで融合、変異するシンフォギアによって脳細胞へ直接作用する麻酔作用へと!長時間の適用は廃人の危険性もありますが……世界の救済に比べれば些細な事!」

「…なん、だと!?」

 

 

傾けていた耳も、意識も、立ち尽くす比企谷に向かう。一歩だって動かない。顔の角度も変わらぬまま、彼の周囲に変化が起こる。

 

一つ、二つ、三つ、四つ。アームドギアが分裂し、増えていく。その矛先は立花であり、雪音であり、私だ。敵意や戦意の数だけ出力が上がるのなら、少なくとも私達三人分は上昇しているのだろう。

 

 

「…必ず止める!耐えろ、比企谷!」

「要するにテメエをぶっ飛ばしてあいつを止めさせる!それだけのことだろうが!」

「邪魔はさせませんよ!ネフィリムに、ソロモンの杖!英雄までのカウントダウンをここで止められてなるものか!

 

…さあ呪われた聖剣よ!片割れのまま破滅の時まで踊り続けるがいい!そうであれと望まれるがままに!」

 

 

 

 

 




.




というわけでなんでも洗脳装置というよりはバトルアバターみたいな感じな八幡でした。使い過ぎると壊れます。主に八幡が。

まあフィーネがそんな簡単にギアなんてくれるわけないですからね。書いた当時も訝しまれた記憶がありますがその通りです。何話前の話だよ。

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