やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
新イベ完走しました…。調可愛いし切ちゃん可愛いし調可愛いし調やっぱり調だったし調可愛いし切調尊いし調可愛いしで満足しました。
でもif切歌というにはあまりに切ちゃん過ぎたので、改めて別枠にif切歌だしても罰当たらないと思いますね。可愛かったけど。
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…………不思議だ。体は指の先一つ動かないのに、何故か目の前の景色を理解できる。
音の一つも聞こえないのに、ただサイレント映画でも見ているかのように現実が流れ去る。手も出さず、口も出せず、操られるがままの生き人形。
(……でも、これで良かったのかもしれない。動けないまま棒立ちより、好き勝手でも目的のために動いているのなら)
絆され、動くこともままならず、あのまま武器を向けることができたかも怪しいままだったら。きっとこんなにも他人事でいられなかっただろう。
……ただぼーっとしているだけで事態が転がっていく。その事実のなんて楽なことだろう。操られ、選択肢もなく、ドクターの裏切りというには俺の過失が重過ぎて。
(…そも裏切った、なんて。俺が責められることじゃないしな)
目の前の映像を眺め続ける。立花響、雪音クリス、風鳴翼、そしてドクター。いやそれだけじゃない。暁も、月読も、マリアもマムも。俺は最初から裏切っていた。そんな人間のどこに裏切りを責める権利があるのか。
……………ただ。
…本当に些事で、こんな状況だから思ってしまうことがある。
(記憶を失くす前の俺は、あいつらとどうやって関わってたんだろうな)
暴走する立花響と、鞘と剣戟を繰り広げる風鳴翼と、鞘を避けながらドクターを狙う雪音クリスと。友と呼ばれ、腕を犠牲にしても助けるほどの何かを築いていた俺。
俺の記憶と合致しない、俺ではない俺。それが他人の幸せなら、人生不平等と唾を吐いていればいい。本来なら記憶の俺だって忘れてしまった俺にとっては無関係と笑えたはずなのに。
…自分の為に傷を負う人間がいる。自分の為に自らを傷つけてしまう人間がいる。
………まるで、その繋がりの価値を示されているようで。全く想像できない何かに、囚われてしまいそうだ。
(……やめよう。例えそんな過去があっても、今更どうにもならないしな)
考えるのを辞め、目を背ける。きっと眼が覚める頃には、何も変えられない自分の目も醒めるだろう。
………いっそ眼が覚めなければ、それもどうでもいいのかもしれないけれど。
【ほんとにそうかい?】
(……?…誰だ?)
【ああして戦ってるあいつらに伝えたい言葉とか、言いたい気持ちとか、ほんとにアンタにはないの?】
(……さあな。悩んでる時点であるかもしれないが、伝えられないし、伝えるつもりもねえよ)
【……もったいないね。言葉で伝えれば伝わるかもしれないのに】
(……言葉にしたからって伝わると思うのは傲慢だろ。俺は覚えてない、俺は繋がりを感じない。そんな言葉に、何の意味があるんだよ)
突然現れ、勝手に隣に座る誰かに舌打ちする。
……ああそうだ。たしかに価値を示された。繋がりを見せられた。でも俺はその繋がりを一つだって証明できはしない。嘘の言葉を仮初めの気持ちで伝えたとして、それになんの意味がある?中身の詰まってない、触れれば砕ける貰い想い。
…そんなのは欺瞞だ。唾棄すべき感情だ。エゴをただ吐き散らかすだけの醜さが肥大したモンスターだ。
【…かもしれないね。言葉だけじゃ伝わらない。だけど、言葉以外で伝える方法もあるだろう?】
(……)
……………。
【なんで歌わないのさ?】
(…うるせえ)
【あんた知ってるだろ。シンフォギアを纏ってるんだ。歌も、音も、あんたの心に流れ続けてる。それは今だけの、過去も未来も関係ない比企谷八幡の心さ】
(……知るかよ)
【…ま、人のあれこれをとやかく言うつもりはないよ。だけど、一回くらい歌ってみてもいいんじゃない?誰かに聞かせなくたっていい、誰かを思わなくたっていい、ただ気ままに歌う。そんなのもさ】
(………俺の歌は、あいつらの歌とは違う。…聞こえなくたって、分かるんだよ)
…初めて歌を聞いた。そして、その感覚は確信に変わった。前に進もうとする歌、心の中を曝け出すような歌、感情に魂を乗せるような歌。
立花響だけじゃない。暁も月読も、マリアも。二課のあいつらだって。戦場をかけながら、歌いながら、それでも何かを求めていた。全霊を振るい、歌を歌う姿を歌が聞こえなくたって見てきたんだ。
……そこに並べるほどの何かを、俺は持っているだろうか。
…決まってる。持ってるわけがない。
仲間になるのは恐ろしい。友達になるのは恐ろしい。期待されるのも、期待してしまうのも、誰かに頼ってしまうかもしれない未来が何処までも恐ろしい。
そんな気持ちでキャロルに仕え、世界の破壊にすら手を貸した。ただ裏切られるままに使い潰してくれれば、きっと自分に価値も意味もなく平然とした顔で生きていけると思ったから。それが一番、楽だと思ったからだ。努力の苦しみも、夢への憧れも、何もない未来への展望。そんなの…。
…生きるのを諦めているのと、何が違う。
…そんな人間が、どんな歌を歌えって言うんだよ。
【…歌は嫌い?】
(…好きになる理由がないからな)
【……そうか。残念だよ】
そう言い残すと、スッと立ち上がるとそいつは背を向けて消えていく。
そして最後に、こう言った。
【ならさ。あんたが歌わないなら、代わりに歌わせてもらおうかな】
…後ろを振り返ると、したり顔で笑うそいつがいる。勝気な笑顔で、邪気のない瞳に貫かれる。あるがままの美しさを隠さず堂々と。
…そんな姿に、目を逸らす。
(……で、結局あんた誰なんだよ?)
【……んー、結構有名だったとおもうんだけどなー。まだまだだってことか。まあ自己紹介も何もかも、今度にしよう。悪いけど、いい加減昂ぶってるんだ】
…そう言って、そいつは
【歌わなくてもいいさ。代わりに、
……どこまでも、生きる事を楽しむように。
(……聞かなくてもわかる。…やっぱ、違えよ)
☆☆☆.
sideクリス
「だあああ!クソっ、邪魔くせえ!」
撃っても撃っても撃っても撃っても、減らねえ届かねえしゃらくせえ!
…ソロモンの杖。あたしが起動させちまった完全聖遺物の性能は知っている。無限に湧き出るノイズを意のままに操るソレは、一本で国を落とせる代物だ。
シンフォギアがなければ一般人でも操れるからこその完全聖遺物。その相手にどこまでも手こずっていた。
(……それだけじゃ、ないけどな)
…一連の流れを戦いながらみていた。八幡を食おうとしたネフィリムに、それを庇って暴走したあのバカ。
…焦るべきだ。怒るべきだ。なのに…。
(……なんであたしは!こんな時にまで悔しがってんだよ!)
誰も疑問に思わない。だってあたしだけしか知らないはずだから。八幡があのバカの歌だけは聞こえることを、あたしだけが知っているから。
見てたら分かった。やっぱりアイツはあのバカの歌声が聞こえてる。歌い始めてからの表情が、焼きつくように離れない。
惹かれるように、恋い焦がれるように、求めるようにあのバカに向かっていった。記憶を失くして、あたしら全員忘れちまってるってのに、なんでそこだけは変わってないんだよ。
…お前が忘れても、あたしは歌を聞かせてやるって約束を忘れてない。そんなあたしを差し置いて、歌を聞かせられるお前が!なに歌わずに吠えてんだよ!
「邪魔だぁぁああ!!!」
ガトリング砲をかっ飛ばしノイズを退ける。だけどすぐに追加のノイズが行く道を閉ざしてくる。
……届かない。八幡にも、あのバカにも。
「……おいバカ!いつまでそんな格好してんだ!黒いの似合わないんだよ!」
「…雪音?」
「あいつを、八幡を取り戻すのも!言葉を伝えられんのも!お前が一番可能性がでかいの、分かってんだろ!」
…クソっ、情けねえ。自分の言葉を届けられれば一番なのはわかってる。八幡や小町に繋げられたように、あたしが手を繋げればいいのだってわかってる。
…でも歌でしか言えない気持ちは届かなくて。ただ真っ直ぐ伝えることだってどうしたらいいかわかんねえ。だけどウェルの野郎に抑え込まれた八幡に届く可能性があるとしたら、やっぱりお前しかいねえんだよ。
「歌えよバカ!お前の歌なら届くんだよ!お前の歌しか届かねえんだ!」
真っ黒に暴走して、口から出るのは咆哮ばかり。
いつもならバカみたいに笑って、バカみたいに話しかけてきて、バカみたいに近づいてきて。
…ああ、ほんと、似合わねえんだよ!
「さっさと歌えバカ!」
「ヴゥ……!」
…振り向き、唸る。それでも襲いかかってくることはない。何かに耐えるように、何かを振り解くように、身体が震えている。
そんなあいつの元に鞘のアームドギアが今までと変わらず襲いかかる。
「……邪魔すんな。今大事なとこなんだよ」
ガガガッ、とガトリング全弾ぶち当てて軌道を逸らす。例えノイズに囲まれてようと、ここで外すわけにはいかねえんだ。鞘だけじゃなくネフィリムだって相手取ってやるさ。
「……って、おい!?」
……そんな意気込みだったのに、そのネフィリムはまるで逃げるかのように進路をあたし達と逆方面に向けていた。
「……申し訳ありませんが、これ以上長引かせても我々に得はないようですので。撤退させていただきます」
「ここでケツを捲んのかよ!」
「あなた方は大事な彼と遊んでいてください。ネフィリムさえ無事なら、計画に支障はありませんから」
ソロモンの杖で絶えずノイズを出し続けながらも、あの野郎は背を向けて歩き出す。
…逃しちゃなんねえ。でもあのバカも八幡も放っておけない。いやそもそもウェルの持つ機械もなしにあいつを元に戻せるのか?それにあのネフィリムだって放っておいたらどうなるのか想像もつかない。
…全員逃せないのに、誰にも手が届かない。
伸ばされた手に、繋がれた手に、何一つだって掴めやしない。撃鉄に込めた想い、あったけえ絆の為。どこまでだって手を伸ばさなくちゃいけないのに!
「GRaaAAA!!?」
……………リン、と。戦場が静まり返るような錯覚に陥る。肉を貫くような鈍い音と共に、それを打ち消すほどの振動と輝きが響き渡る。
その発生源は…ネフィリムの足。両足を地面に釘付けにするように何かが刺さっていた。
月の輝きを受けながら、月よりも輝く
「……何が…」
何も変わったところなんてなかった。あたし達はノイズに足止めされ、あのバカは未だ動かない。ウェルの野郎はこの現状に驚き足を止め、八幡はその目に炎の如き光を宿している。
「……!?おい…なんだよその目…」
……違う。さっきまでの無表情の顔じゃない。それどころか、八幡が浮かべた事のないような目を、顔をしてる。
…あんな顔知らない。あんな奴知らない。だけど、顔は間違いなく八幡で。
それだけじゃない。さっきまで周囲を飛び回っていた鞘のアームドギアが消えている。残っているのは八幡の手元に残る一つだけ。
…その一つの鞘を、八幡が構える。鞘を左手に持ち、そして右手は鞘の口の、さらに先。
空気を掴むように、だけど間違いなくそこにあるナニカを掴んだ。
「Croitzal ron……おっと。今はこれじゃダメなんだっけ。うっかりうっかり」
口から出てくる言葉すら、軽快で全然らしくない。だけど不思議と安心するような声色が、その口から歌を紡いだ。
…………鞘の先。あるべき場所に、あるべき物があるかのように。
光溢れる、力が漲る。見ているだけで背を押されるように、輝いている。
黄金の輝きを持つ剣が、銀色の輝きを持つ鞘から解き放たれる。
…そして、解き放たれたのはそれだけじゃなかった。
「……そんな…。ありえない、だって…」
「…う、うそ……」
…バサッと、
八幡を内側から塗り替えるような異常現象を起こしたそいつを、映像越しでのみ、あたしも知っていた。
真っ赤な髪は腰まで届き、男にはあり得ない豊満な胸。腐るどころか生命力に満ちているような瞳。一度見たら忘れられない程の美貌も健在だ。
………間違いない、あいつは…。
「……天羽、かなで?」
絶句し言葉も発せない二人の代わりのように口から声が零れ落ちる。
身に纏うはシンフォギア。映像で見たオレンジの名残はなく、白銀に煌めく胸当てと腰の鎧。なにより頭頂部に輝く王冠の如きヘッドギアが月明かりを反射する。
手には腰ほどまである大剣のアームドギア。それもネフィリムの足を突き刺した物と同じような黄金色。さらに背後には日輪の如く五本並ぶ同じ色をした、されど小型化された西洋剣が浮遊している。
……最早状況理解は、この場の注目全てを集める彼女にしか分からない。
月光満ちる真夜中に、死した戦士が降臨した。
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…はい、一部読者様大正解です。普通に感想で予測されて流石と思いました。強い(小並感)。
蛇足:とばしてどうぞ
実は一期の5話くらい書いたところで「どうせなら原作キャラ全員生存にでも」と思い立ち、原作スタートの時点で奏さん死んでんじゃん、そもセレナに全く干渉できないじゃんで諦めた裏話。
八幡がいることで起きるバタフライ以外で原作歪めたくねえという無駄な拘り発揮しました。その結果何故か原作が歪み、奏さんが死にながら登場する不思議。まあ故人の歌が流れるシンフォギアだし問題ないよね。
ただ未だにセレナの役割がないのだけは申し訳ない部分です。さすがに厳しい…。奏さんの役割決まったのかなり後だから思いついたらねじ込みます。
あとドクターなに異世界で少し綺麗になってんの?ダメじゃないか汚くなきゃ!ちゃんと汚れなきゃあ!
……まあどっちも嫌いじゃないけどさ。