やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
side…
戦場に光が満ちる。世界の主役を指し示すスポットライトのように、暗闇の中で輝きが溢れた。
その中心にいるのは、死んだはずの戦士。二年前に、風鳴翼の手の中で、立花響の目の前で、絶唱を口にして塵のように風に吹かれて消え去った少女。
「………かな、で?」
「…奏さん?」
天羽奏。ツヴァイウィングの片翼で、翼とユニットを組んでいたシンフォギア装者で、響の胸に埋め込まれたガングニールの前任で。
「………かなで……奏!」
名前で呼ぶ。それ以外の言葉が出てこなかった。浮かぶ想いは幾らだってある。なんで、どうして、会いたかった、隣にいて欲しい、触れたい。
……また一緒に、歌いたい。
現れた経緯は分からない。纏うギアも知っているものと全然違う。だけど見間違えるわけがないんだ。奏が、目の前にいる。その事実だけが、心に満ちていた。
「………まったく。久しぶりに会ったのに、変わんないな。やっぱり翼は、泣き虫で弱虫だ」
「…久々なのに、やっぱり奏は私に意地悪だ…」
涙を流す翼に変わらない笑顔で、変わらない言葉で笑みを交わし合う。つい昨日まで同じ会話をしているかのような気安さで、悲しげに視線を交わし合った。
「…アンタも……」
「え、私、ですか?」
そんな二人の姿を眺める響に奏の目がいく。ツヴァイウィング感動の再会に挟まる筈がないと思っていたせいか動揺してしまう。
「あたしがこうしていれるのも、あの日にアンタがこいつに手を伸ばしたからだからね。お礼を言いたかったんだ」
「そんなお礼だなんて!わ、私こそ奏さんに助けてもらって…。…ほんと、助けてもらってばっかりで…。……生きるのを諦めるなって言葉、今でも私の心に生きてます」
「………そっか、そりゃいい。もう一人に伝える勇気にもなるってもんさ」
スッと、左手に持っている鞘を持ち上げる。すると鞘は限界を迎えるようにヒビが走り、最後にはパキンッと音を立てて崩れ去った。
片方のアームドギアが崩れ去っても右手の黄金の剣に変化はない。同時の顕現とはいかないようだ。
「…鞘が」
「完全に起動、とはいかないみたいだね。ま、そうじゃなきゃあたしもこうしちゃいられないけどさ」
「……それってどういう…」
「GRaaAAAAA!!」
「感動の再会もいいが!さっさと戦線に復帰してくれ!」
吠え立てるネフィリム、怒号するクリス。戦場の只中、蚊帳の外で銃を撃ち続けていた。
「アンタも押っ取り刀で駆けつけたんならそいつを振るってくれねえか!」
「悪いね!ああ、そうさせてもらう!翼!と…」
「立花響です!」
「雪音クリス!纏ったことないギアで歌えんのかよ!?」
「当たり前だろ!胸に音が溢れて止まらないくらいさ!」
右手の剣を改めて強く握り直す。新しいアームドギア、慣れない武器。相棒がずっと使い続けてるからって、その心得が分かるわけでもない。
「………やっぱあたしには、槍の方が合うからね」
ギュルギュル!と大剣の刃の部分を回転させる。斬る性能はなくなる、取り回しの良さも薄い。取っ手の部分も随分と短い。
だけど歌と同じであたしのアームドギアは何者をも貫き通す無双の一振りに他ならない。歌だって、ギアの姿形が変わろうと何も変わりはしないのだから。
(…翼と一緒に歌いたいし、翼の新しい仲間とだって色々話してみたいけど。悪いね。今だけは全部八幡、アンタのために歌ってやる。聞き逃すんじゃないよ!)
♪逆光のリゾルヴ
♪君ト云ウ音紡ぐ為…
二人で歩んだ
♪暴虐から、生まれ出た……
残酷が飲み込む…
アームドギアを振り抜く。それだけで目の前のノイズが消え去った。
……ああ、不調もない。腹から声が出る感覚、久しぶりだ。リンカーに頼っていた時とは違い、制限なく力の限りにシンフォギアを振るえる。
…いや、それだけじゃないな。黄金の輝きに、鼓動が早くなるような煌めきを感じる。
「……身体が、軽い?」
「…いや、ギアの出力が増しているのか?」
「はぁ!?どんなサービスだよ!あたしにはなんもねえぞ!?」
……鞘の能力は悪意、敵意によるフォニックゲインの上昇。そして剣の能力は……なるほどね。嬉しい事してくれる。クリスって子とはまだ関係も薄いし仕方ないか。
「…ネフィリムに、ドクターウェルだっけ?逃がさないよあんたら」
切っ先をむける。蠢くノイズ、いつも通りの邪魔者だ。
♪涙でハネが濡れた日、
重くて飛べないなら…!
♪その右手に添えようと…。
差し伸ばした、片手が、風を切るっ…
ジタバタともがくネフィリム、そして逃げようとするドクターウェル。だけどこっちはシンフォギア、何より今は二人分のブーストがかかってる。
「喰らいな!」
五本の西洋剣が回転し、無作為にネフィリムに襲いかかりながら行く道を閉ざすノイズを切り開いていく。二本がネフィリムの両腕を斬り飛ばし、残り三本が口を縫い合わせるように突き刺さる。
暴食暴虐っていっても、口を塞いでしまえば何もできないだろう。
「GRuuua!!?」
「ひぃ!こ、こんな馬鹿なことが!死人が生者を依り代に蘇るなんてあり得るはずがっ!」
「閻魔様に土下座した記憶はないんだけどね!情状酌量の余地ありってことかな!」
「ふざけるなぁ!死者が現世に口出しなんて馬鹿げてる!もう一度このソロモンの杖で三途の川まで送り返してぇ!」
「借りてる身体だ、殺させやしない!だけどあんたにとって、ここを地獄の一丁目にしてやるよ!」
切り拓かれた道を真っ直ぐに突き進む。途中に追加されるノイズだって、あたしの道を閉ざすことはない。
胸の歌が、1秒だって止まることがないように。
♪……
絶望の音と共に降り注ぐ…
♪望み落ちた地獄から…
…這い上がる勇気を!
♪…一歩も退く気はない!
背を見つめる者への、
…命の盾の手紙!
…ああそうさ。あたしは死んでる、こうして出しゃばったって、生きてるのはあたしじゃないんだ。
…わかるだろ、八幡。あんたは今、生きてるんだよ。諦めてたって、目指すものがなくたって、そうさ記憶がなくったってだ。
なんだってできる、なんだって目指せるんだ。それって死んじまった奴からしたら、すげえ羨ましいことなんだよ?
だからさ、多分この歌は嫉妬の歌なんだよ。あんだけかっこいい事言っといて、あたしが歌えるのはこんな歌だけ。ツヴァイウィングの片翼としちゃあ情けない限りだけど、今のあたしはあんたに取り憑いた悪霊みたいなもんだ。
…だから悪霊らしく、嫌がらせのように真っ直ぐに、恨みがましく真正面から!あんたに思いの丈をぶつけてやる!
「………ヒィィィイ!!!!」
「はぁああああ!!!!」
♪…1000年後の今日(もし出会い)
……生まれても!
魂のフリューゲルは、二人を待つ!
♪逆光の…(
もはやノイズに止められる事はない。逃げ去ろうとしたネフィリムにアームドギアでの一撃を叩き込む。その一撃はまるで捻りとるようにネフィリムの両足を弾き消した。
もはや芋虫状態のネフィリムの腹にアームドギアを突き立てる。
「止めろ!それだけは!この星にはネフィリムが必要なんだ!ヒーロー気取りの亡霊が!月に滅ぼされるこの世界の、人類の、未来を奪われるなんてぇぇ!!」
「……好き勝手言ってくれるね。こんな暴力の塊、野放しにするわけには………っ!?」
…ぐらりと、視界が揺らぐ。さっきまでの絶好調が嘘のように、自分が揺らいで行く。
「………っく、そいつは…」
「死者の顕現なんて非常識、普通だったらありえない!なら彼の異常を正常へと戻すだけのこと!」
「て、めえ…、洗脳装置切りやがったな」
ドクターウェルを見ればソロモンの杖を持つ手と逆の手に、八幡を洗脳した機械を握りしめていた。
「ここに死者の居場所なんてどこにもない!英雄は命の限りの努力の果て、その先に輝く奇跡を掴むもの!これ以上亡霊に邪魔なんてさせるものかぁ!」
「………はっ!そうかい、だったら覚えときな!そんな小狡いオモチャを使えば、あたしを呼ぶ引き金にしかならないってこと!…そして!」
朦朧とする意識。だけどこの寸前で負けるように消えるなんて真っ平さ!
「奏!」
「奏さん!」
「………ああ、見てな!」
…それにこれ以上、あたしの片翼にカッコ悪いところは見せられないんでね。
…あたし以外の奴らと、今も立派に生き続けてる翼。それならせめて思い出の中でくらいカッコよくありたいじゃないか。例え将来誰と肩を並べても、最高はあたしだって言わせてやるくらいに!
♪『翼』が、描いた! あたしでいる為に!
「はぁああああ!!!!」
五本の西洋剣、そして手元の大剣全てをネフィリムに突き立てる。ぐちゃりと固い肉を貫き、そしてなお力を込める。八幡と、そして響って子の未来の障害はここで消させてもらう。
…先達には程遠いかもしれないけど、それでも見せる背中まで小さくするつもりもない。だからあたしの歌を、刻み込んで歩いていきな。
なんたって、あんた達のそばにあたしがずっといてやるんだからな!
だから進みな。
………そう!
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蛇足。飛ばしてどうぞ。
戦闘は文字数少なめのフィーリングで。XDの曲だけどめちゃいい曲だから是非聞いて欲しい。
ちなみに奏さんの響へのあんたのおかげ発言は鞘起動時の謎の光です。たぶん本編で説明するタイミングなさそうなので補足しときます。
感想にも書きましたが八幡の聖詠【Builder Excalibur knight tronー輝く未来に屍を背負う】
輝く未来→君ト言ウ音奏デ尽キルマデの歌詞
屍を背負う→奏さん(屍)背負う
で大体ネタバレ聖詠だったりします。